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*風のクロノア door to phantomile
【かぜのくろのあ どあ とぅ ふぁんとまいる】
|ジャンル|アクションゲーム|&amazon(B00005Q2W9,image);|
|対応機種|プレイステーション|~|
|発売・開発元|ナムコ|~|
|発売日|1997年12月11日|~|
|定価|6,090円|~|
|廉価版|PlayStation the Best for Family&br;1999年11月18日/2,800円|~|
|配信|ゲームアーカイブス&br;2011年7月6日/600円|~|
|その他|PS2『ナムコレクション』に収録&br;2005年7月21日/3,990円|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''[[風のクロノアシリーズリンク>風のクロノアシリーズ]]''|
#contents(fromhere)
----
**概要
1997年にナムコが発売した横スクロールアクションゲーム。以前に『[[ワギャンパラダイス]]』を手掛けたチームによって開発された。~
発売当初はあまり注目されていなかったが、その深みのあるゲームシステムや各演出から、隠れた名作として高く評価されている。
----
**あらすじ
夢の世界ファントマイルに住む主人公の少年クロノアは、相棒であるリングの精ヒューポーとともに、~
歌姫レフィスをさらい全ての夢を悪夢に変えようと企む魔王ガディウスの野望を止めるべく冒険の旅に出る。
----
**特徴
-地形や背景は3Dポリゴンだがキャラクターは基本ドット絵という、3D化全盛期の作品としては珍しい横スクロールアクションゲーム。
--横スクロールを基調としつつ、3Dならではの奥行きと立体感を活かした空間構成となっており、移動するにしたがってカメラアングルが自在に変化していく。~
建造物などの空間も全て立体で描写されているので、建物の外周に沿って通路を進んだり、リフトやゴンドラが奥や手前に動いたりする。
--キャラクターの向きにも奥と手前の概念があり、奥や手前の敵に攻撃する、ステージ奥にあるスイッチを動かすなどの立体構成を活かしたギミックが多い。
-主人公クロノアの相棒ヒューポーのリングの力で「風だま」を発射し敵を膨らませ、捕まえて投げるというのが基本アクション。方向キー以外のボタンはジャンプとリング操作の2つしか使わない((厳密には4つだが操作が重複しており代用可能なボタンといったところ。))。
--捕まえた敵を踏み台にして2段ジャンプすることもでき、ジャンプした際に真下に敵を蹴飛ばす。これを利用しないと倒せない敵や到達できない足場もある。
---ザコ敵は捕まえて投げる毎に画面奥や手前から出現して適宜、補充されるため、敵を投げる必要がある場所で敵をムダに倒してしまって詰むということはない。
-全面クリア後のセーブデータで再開するとステージセレクトが可能になる。
--また、各ステージに存在する悪夢に囚われた住人たちを全て救出すると、エクストラステージが解禁される。1周目で全員救出できなくてもクリア後に残った全員を救出すればOK。
---エクストラステージは既存のステージ内にある分岐点の先に存在し、エクストラステージを制覇するとサウンドテストモードが解禁される。
----
**評価点
***雰囲気を大事にするゲーム
このゲームで何より重視すべきは世界観とシナリオである。本作に多くのファンを作り、名作と評された要因がここにある。
-世界観を大事にする姿勢と丁寧なつくりの演出面。
--例えば、登場人物の話す言葉は「るぷるどぅ」「わふぅ」等といったこの世界の独自言語「ファントマイル語」が使われており、プレイヤーは字幕で意味を理解する事となる。~
キャラの発する言葉に役割はないかというとそうではなく、意味をあえてわからないようにすることで悲しみや怒りが普通の日本語よりも顕著に表現される他、~
声優の演技力の高さも相まって場面場面のキャラクターの感情がより強く訴えかけてくるため、キャラの掛け合いに現実臭さを感じることもない。
---プロの声優はクロノア・ヒューポーを担当((このお2方は一部端役も兼任しているらしく、渡辺氏は月の国の兵士を担当している事が声色で分かる。))する渡辺久美子氏・瀧本富士子氏((それぞれ『ケロロ軍曹』のケロロ・『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の子供リンクでおなじみだろう。))のみで、それ以外は開発スタッフなのだが、独自言語により違和感無く溶け込んでいる。
---スタッフクレジットでも現実感を排する為か、ボイス担当の欄が登場せず、前述のプロ声優の2名も未掲載としているほど徹底されている。
--グラフィックもカラフルながら優しいタッチで描かれており、主人公クロノアを初めとする喋る動物風のキャラクター達はもちろん、~
幻想的な月の国、滝や湖面の美しい水の国といったファンタジーもの定番のステージと相まってまるで童話の世界を冒険しているかのような臨場感を得られる。
---そこかしこで登場する雑魚敵ですら、通常時の細かな仕草や膨らんだ姿までも可愛くデザインされている。~
ただ、終盤になると不気味・グロテスクな雑魚敵も多くなっていく。特に最終ボスは非常に醜悪な容貌である。
--ステージのことを「ビジョン」と呼び、ゲームオーバーを「ビジョンオーバー」と呼ぶ点なども現実を感じさせない雰囲気作りに拘っているといえる点である。
-世界観を大切にした音楽
--ファンタジー調の幻想的な色合いと、民族調の旋律が混じったようなオリジナリティ溢れる風味で、主張しすぎることなく世界観によく溶け込んでいる。~
単体の曲としても名曲が多く、4番目のボス戦のテーマ『baladium's drive』はシリーズでも屈指の人気を誇る((Wiiのリメイク版のCMでも流れたほど。))。
---本作の2ヵ月後に発売された公式サントラもスタッフの拘りで圧縮無しのマスター音質で収録されており、2017年時点で定期的な再販もされている。
--同じBGMでも建物の中と外、ステージのギミックの変化に合わせて主旋律の音量が違ったり、全く違う曲に即座に切り替わる、~
ステージ内に捕らわれた各ステージの住人を助け出すことでマップ画面のBGMのパート数が増えて賑やかに変化していく…と、音楽を用いた演出も目立たないながら秀逸。
***シナリオの評価(ネタバレ注意)
序盤の展開はオーソドックスで易しめなものだが、中盤以降は登場人物が殺害される、ヒューポーの正体が明かされたりと重い内容や意外性のある展開も入ってきて、単なる王道と思わせないテイストになっていく。~
そして、何よりファンの間で語り草にされているのが、その衝撃的なエンディングである。
#region(重大ネタバレ注意)
-クロノアと月の国の王子だったヒューポー、そしてファントマイルの人々によってガディウス達は倒され、歌姫レフィスは救われた。その後、彼女はガディウスによって荒れた世界を再生させる歌を歌いだす。
--その時クロノアは故郷の風の村に戻り、妙に塞ぎこんでいるヒューポーと他愛の無い会話をしていた。様子を心配するクロノアに対し、ヒューポーは突然「君はこの世界に存在していないんだ!」と叫ぶ。~
困惑するクロノア。ヒューポーは更に語った。クロノアの正体は、この世界の崩れた夢のバランスを救うため、ヒューポーにより呼び出されニセの記憶を植えつけられた『この世ならざる夢』であると。
--そのため、世界が再生の歌によって本来の姿を取り戻すと、この世ならざる場所から来たクロノアはこの世界から去らなければならないのだ。「どこへも行くものか!」と否定するクロノア。~
元々が偽りの記憶であったとしても、いまやクロノアとヒューポーは強い絆によって結ばれていた。再生の力に逆らおうとする2人だが、クロノアは吹き飛ばされて世界から追われてしまう。
…という切ないラストだが、『この世ならざる夢』とはつまり『プレイヤーの夢』である。~
最初からずっと細かい部分までファントマイルらしさ、現実要素の排除を徹底していただけに、最後の最後でメタ視点を大きく出したことで多くのプレイヤーを驚かせ、そして感動させた。~
最初に行うプレイヤーの名前の登録がここで初めて意味を成すことになり、プレイヤーはその意味を知る。まさに下記のディレクターが語った通りの「ゲームならではのストーリー」である。
//ちなみに、続編『[[風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れもの~]]』はストーリーや世界観的なつながりは全くないが、オープニングの内容からおそらくこのシーンの後から始まると見られている。
本作のディレクター・吉沢秀雄氏が[[自らのTwitter>https://twitter.com/yoshi_clonoa]]で明かしている開発秘話によると、開発当時「ゲームのストーリーは雰囲気作りのためのおまけ」という風潮が業界にはあり、~
それに対する疑問から「ゲームでしか描けないストーリーを作りたい」と考え、開発初期にオープニングとエンディングを思い付き、それにシナリオを肉付けしていったのだという。
#endregion
***シンプルで取っつきやすい操作
-『[[星のカービィ]]』(敵を吸い込んで吐き出す)や『[[ヨッシーアイランド>スーパーマリオ ヨッシーアイランド]]』(敵を飲み込んで卵にして投げる)を髣髴とさせるようなわかりやすい操作で、ゲーム初心者でもすぐにとっつける。
--複雑な操作は全くないが、それでも十分と感じられるように丁寧に作りこまれており、目立ったバグやロードもなく、ストレスを感じることなくプレイできる。
--ゲームシステム面での主張があまり強くないのも、世界観の印象を強く残すのに一役買っているだろう。
-ステージの難易度も低くアクションに手馴れた人には物足りないかもしれないが、オーソドックスで人を選ばないお手軽なもの。総じて難易度自体は非常にバランスよく調整されている。
--ライトユーザーでもとっつきやすい内容であり、世界観やストーリーを味わうのにちょうど良い塩梅と言える。~
だからといって極端にぬるいわけでもなく、序盤から終盤にかけて徐々に難しくなっていき、謎解きやアクションにも応用が必要になっていく。
----
**問題点
-ボリュームが少ない。慣れてしまえば5、6時間程度でクリアできる。
--総じて難易度は低めの設定だが、スイッチの起動などには多少頭を使わないとなかなか起動できずタイミングもややシビア。
--クリア後の隠しステージも一つしかなく、即死トラップは多いが難易度はそこまで高いとは言えない。
-カメラアングルが見難い角度に変化してしまう箇所が少なからずある。
----
**総評
ハードなゲーマーにはボリューム不足と感じられるが、単純な操作と易しめの難易度により幅広い層を取り込めた作品。~
さらに緻密に練られた世界観とストーリー、そしてそれらをしっかり踏まえた演出は多くのプレイヤーを虜にした。~
近年ではハード性能の向上などもあって映画的な演出や世界観・ストーリーも重視するゲームが増えてきたが、~
現在と比較すれば限られた性能であるPS1というハードでゲームならではのストーリーと演出を打ち出した本作は、いわゆる「雰囲気ゲー」の金字塔と言っても過言ではないだろう。
----
**その後
-本作の高評価から、1999年に携帯機のワンダースワンで外伝作品『[[風のクロノア ムーンライトミュージアム]]』が発売されてシリーズ化。~
続編が出る度に着実にファンを増やしていき、2001年にはPS2でナンバリングタイトル『[[風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れもの~]]』が発売され、ナムコの看板作品の一つにまで上り詰めた。
--以後は下記のWii版まで、さまざまなハードで続編や派生作品が出ていたが、いずれも初代作である本作とストーリー上の直接的なつながりはない。~
『2』以降・『ビーチバレー』以降でキャラクター設定やデザイン変更が施されていることもあり、それぞれ本作と異なるパラレルワールド的な位置づけにもなっている。
---続編以降でクロノアのデザイン自体が変更されたこと、1作目の世界観・ストーリーに感動した層が多いことから、続編毎に好き嫌いが分かれる((本作のエンディングのみで見てみれば続編の作りようがない話だし、もしこの続きがあったらそれこそぶち壊し…というファンも少なからず存在する。))事もある。
--もちろん『ムーンライト』『2』共に単体でいえば該当項目にある通り、本作同様に非常に丁寧に作られた名作であり、続編以降のファンも少なくない。
-PS2で発売されたコレクションソフト『ナムコレクション』に、5作品の1つとして収録されている。
--他のタイトル同様に内容はPS版のほぼベタ移植で、ごく一部のバグが修正されている。
--ゲーム開始時にタイトル選択が必要なため起動にやや手間が掛かるが、ゲーム開始後はPS2のためロード時間は短く快適。
--オマケとしてイラストや設定資料が閲覧できるギャラリーが収録されている(収録枚数はあまり多くない)。
--『[[リッジレーサー]]』『[[エースコンバット2]]』『[[鉄拳]]』『[[ミスタードリラー]]』も同時収録されているためお得感はある。
-Wiiにてリメイクされた。詳細は&bold(){『[[風のクロノア door to phantomile (Wii)]]』}を参照。
//--ただし、キャラデザインの変更、ムービーの削除(全てリアルタイム演出に変更)、ステージ演出の劣化などからPS版をやったことがあるプレイヤーからは評判はよくない。
//--とはいえゲーム自体は問題なく普通に遊べる上に追加要素もあるので、やや期待はずれなガッカリリメイクといったところ。
//評価については先の記事で。
-『[[R4 リッジレーサータイプ4]]』にファントマイルというコースが存在する。
&br
*風のクロノア door to phantomile
【かぜのくろのあ どあ とぅ ふぁんとまいる】
|ジャンル|アクションゲーム|&amazon(B00005Q2W9,image);|
|対応機種|プレイステーション|~|
|発売・開発元|ナムコ|~|
|発売日|1997年12月11日|~|
|定価|6,090円|~|
|廉価版|PlayStation the Best for Family&br;1999年11月18日/2,800円|~|
|配信|ゲームアーカイブス&br;2011年7月6日/600円|~|
|その他|PS2『ナムコレクション』に収録&br;2005年7月21日/3,990円|~|
|備考|Wiiリメイク版に関する記事は[[こちら>風のクロノア door to phantomile (Wii)]]&br;(''なし判定'')|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''[[風のクロノアシリーズリンク>風のクロノアシリーズ]]''|
#contents(fromhere)
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**概要
1997年にナムコが発売した横スクロールアクションゲーム。以前に『[[ワギャンパラダイス]]』を手掛けたチームによって開発された。~
発売当初はあまり注目されていなかったが、その深みのあるゲームシステムや各演出から、隠れた名作として高く評価されている。
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**あらすじ
夢の世界ファントマイルに住む主人公の少年クロノアは、相棒であるリングの精ヒューポーとともに、~
歌姫レフィスをさらい全ての夢を悪夢に変えようと企む魔王ガディウスの野望を止めるべく冒険の旅に出る。
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**特徴
-地形や背景は3Dポリゴンだがキャラクターは基本ドット絵という、3D化全盛期の作品としては珍しい横スクロールアクションゲーム。
--横スクロールを基調としつつ、3Dならではの奥行きと立体感を活かした空間構成となっており、移動するにしたがってカメラアングルが自在に変化していく。~
建造物などの空間も全て立体で描写されているので、建物の外周に沿って通路を進んだり、リフトやゴンドラが奥や手前に動いたりする。
--キャラクターの向きにも奥と手前の概念があり、奥や手前の敵に攻撃する、ステージ奥にあるスイッチを動かすなどの立体構成を活かしたギミックが多い。
-主人公クロノアの相棒ヒューポーのリングの力で「風だま」を発射し敵を膨らませ、捕まえて投げるというのが基本アクション。方向キー以外のボタンはジャンプとリング操作の2つしか使わない((厳密には4つだが操作が重複しており代用可能なボタンといったところ。))。
--捕まえた敵を踏み台にして2段ジャンプすることもでき、ジャンプした際に真下に敵を蹴飛ばす。これを利用しないと倒せない敵や到達できない足場もある。
---ザコ敵は捕まえて投げる毎に画面奥や手前から出現して適宜、補充されるため、敵を投げる必要がある場所で敵をムダに倒してしまって詰むということはない。
-全面クリア後のセーブデータで再開するとステージセレクトが可能になる。
--また、各ステージに存在する悪夢に囚われた住人たちを全て救出すると、エクストラステージが解禁される。1周目で全員救出できなくてもクリア後に残った全員を救出すればOK。
---エクストラステージは既存のステージ内にある分岐点の先に存在し、エクストラステージを制覇するとサウンドテストモードが解禁される。
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**評価点
***シンプルで取っつきやすい操作
-『[[星のカービィ]]』(敵を吸い込んで吐き出す)や『[[ヨッシーアイランド>スーパーマリオ ヨッシーアイランド]]』(敵を飲み込んで卵にして投げる)を髣髴とさせるようなわかりやすい操作で、ゲーム初心者でもすぐにとっつける。
--複雑な操作は全くないが、それでも十分と感じられるように丁寧に作りこまれており、目立ったバグやロードもなく、ストレスを感じることなくプレイできる。
--ゲームシステム面での主張があまり強くないのも、世界観の印象を強く残すのに一役買っているだろう。
-ステージの難易度も低くアクションに手馴れた人には物足りないかもしれないが、オーソドックスで人を選ばないお手軽なもの。総じて難易度自体は非常にバランスよく調整されている。
--ライトユーザーでもとっつきやすい内容であり、世界観やストーリーを味わうのにちょうど良い塩梅と言える。~
だからといって極端にぬるいわけでもなく、序盤から終盤にかけて徐々に難しくなっていき、謎解きやアクションにも応用が必要になっていく。
***雰囲気を大事にするゲーム
このゲームで何より重視すべきは世界観とシナリオである。本作に多くのファンを作り、名作と評された要因がここにある。
-世界観を大事にする姿勢と丁寧なつくりの演出面。
--例えば、登場人物の話す言葉は「るぷるどぅ」「わふぅ」等といったこの世界の独自言語「ファントマイル語」が使われており、プレイヤーは字幕で意味を理解する事となる。~
キャラの発する言葉に役割はないかというとそうではなく、意味をあえてわからないようにすることで悲しみや怒りが普通の日本語よりも顕著に表現される他、~
声優の演技力の高さも相まって場面場面のキャラクターの感情がより強く訴えかけてくるため、キャラの掛け合いに現実臭さを感じることもない。
---プロの声優はクロノア・ヒューポーを担当((このお2方は一部端役も兼任しているらしく、渡辺氏は月の国の兵士を担当している事が声色で分かる。))する渡辺久美子氏・瀧本富士子氏((それぞれ『ケロロ軍曹』のケロロ・『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の子供リンクでおなじみだろう。))のみで、それ以外は開発スタッフなのだが、独自言語により違和感無く溶け込んでいる。
---スタッフクレジットでも現実感を排する為か、ボイス担当の欄が登場せず、前述のプロ声優の2名も未掲載としているほど徹底されている。
--グラフィックもカラフルながら優しいタッチで描かれており、主人公クロノアを初めとする喋る動物風のキャラクター達はもちろん、~
幻想的な月の国、滝や湖面の美しい水の国といったファンタジーもの定番のステージと相まってまるで童話の世界を冒険しているかのような臨場感を得られる。
---そこかしこで登場する雑魚敵ですら、通常時の細かな仕草や膨らんだ姿までも可愛くデザインされている。~
ただ、終盤になると不気味・グロテスクな雑魚敵も多くなっていく。特に最終ボスは非常に醜悪な容貌である。
--ステージのことを「ビジョン」と呼び、ゲームオーバーを「ビジョンオーバー」と呼ぶ点なども現実を感じさせない雰囲気作りに拘っているといえる点である。
-世界観を大切にした音楽
--ファンタジー調の幻想的な色合いと、民族調の旋律が混じったようなオリジナリティ溢れる風味で、主張しすぎることなく世界観によく溶け込んでいる。~
単体の曲としても名曲が多く、4番目のボス戦のテーマ『baladium's drive』はシリーズでも屈指の人気を誇る((Wiiのリメイク版のCMでも流れたほど。))。
---本作の2ヵ月後に発売された公式サントラもスタッフの拘りで圧縮無しのマスター音質で収録されており、2017年時点で定期的な再販もされている。
--同じBGMでも建物の中と外、ステージのギミックの変化に合わせて主旋律の音量が違ったり、全く違う曲に即座に切り替わる、~
ステージ内に捕らわれた各ステージの住人を助け出すことでマップ画面のBGMのパート数が増えて賑やかに変化していく…と、音楽を用いた演出も目立たないながら秀逸。
***シナリオの評価(ネタバレ注意)
序盤の展開はオーソドックスで易しめなものだが、中盤以降は登場人物が殺害される、ヒューポーの正体が明かされたりと重い内容や意外性のある展開も入ってきて、単なる王道と思わせないテイストになっていく。~
そして、何よりファンの間で語り草にされているのが、その衝撃的なエンディングである。
#region(重大ネタバレ注意)
-クロノアと月の国の王子だったヒューポー、そしてファントマイルの人々によってガディウス達は倒され、歌姫レフィスは救われた。その後、彼女はガディウスによって荒れた世界を再生させる歌を歌いだす。
--その時クロノアは故郷の風の村に戻り、妙に塞ぎこんでいるヒューポーと他愛の無い会話をしていた。様子を心配するクロノアに対し、ヒューポーは突然「君はこの世界に存在していないんだ!」と叫ぶ。~
困惑するクロノア。ヒューポーは更に語った。クロノアの正体は、この世界の崩れた夢のバランスを救うため、ヒューポーにより呼び出されニセの記憶を植えつけられた『この世ならざる夢』であると。
--そのため、世界が再生の歌によって本来の姿を取り戻すと、この世ならざる場所から来たクロノアはこの世界から去らなければならないのだ。「どこへも行くものか!」と否定するクロノア。~
元々が偽りの記憶であったとしても、いまやクロノアとヒューポーは強い絆によって結ばれていた。再生の力に逆らおうとする2人だが、クロノアは吹き飛ばされて世界から追われてしまう。
…という切ないラストだが、『この世ならざる夢』とはつまり『プレイヤーの夢』である。~
最初からずっと細かい部分までファントマイルらしさ、現実要素の排除を徹底していただけに、最後の最後でメタ視点を大きく出したことで多くのプレイヤーを驚かせ、そして感動させた。~
最初に行うプレイヤーの名前の登録がここで初めて意味を成すことになり、プレイヤーはその意味を知る。まさに下記のディレクターが語った通りの「ゲームならではのストーリー」である。
//ちなみに、続編『[[風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れもの~]]』はストーリーや世界観的なつながりは全くないが、オープニングの内容からおそらくこのシーンの後から始まると見られている。
本作のディレクター・吉沢秀雄氏が[[自らのTwitter>https://twitter.com/yoshi_clonoa]]で明かしている開発秘話によると、開発当時「ゲームのストーリーは雰囲気作りのためのおまけ」という風潮が業界にはあり、~
それに対する疑問から「ゲームでしか描けないストーリーを作りたい」と考え、開発初期にオープニングとエンディングを思い付き、それにシナリオを肉付けしていったのだという。
#endregion
----
**問題点
-ボリュームが少ない。慣れてしまえば5、6時間程度でクリアできる。
--総じて難易度は低めの設定だが、スイッチの起動などには多少頭を使わないとなかなか起動できずタイミングもややシビア。
--クリア後の隠しステージも一つしかなく、即死トラップは多いが難易度はそこまで高いとは言えない。
-カメラアングルが見難い角度に変化してしまう箇所が少なからずある。
----
**総評
ハードなゲーマーにはボリューム不足と感じられるが、単純な操作と易しめの難易度により幅広い層を取り込めた作品。~
さらに緻密に練られた世界観とストーリー、そしてそれらをしっかり踏まえた演出は多くのプレイヤーを虜にした。~
近年ではハード性能の向上などもあって映画的な演出や世界観・ストーリーも重視するゲームが増えてきたが、~
現在と比較すれば限られた性能であるPS1というハードでゲームならではのストーリーと演出を打ち出した本作は、いわゆる「雰囲気ゲー」の金字塔と言っても過言ではないだろう。
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**その後
-本作の高評価から、1999年に携帯機のワンダースワンで外伝作品『[[風のクロノア ムーンライトミュージアム]]』が発売されてシリーズ化。~
続編が出る度に着実にファンを増やしていき、2001年にはPS2でナンバリングタイトル『[[風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れもの~]]』が発売され、ナムコの看板作品の一つにまで上り詰めた。
--以後は下記のWii版まで、さまざまなハードで続編や派生作品が出ていたが、いずれも初代作である本作とストーリー上の直接的なつながりはない。~
『2』以降・『ビーチバレー』以降でキャラクター設定やデザイン変更が施されていることもあり、それぞれ本作と異なるパラレルワールド的な位置づけにもなっている。
---続編以降でクロノアのデザイン自体が変更されたこと、1作目の世界観・ストーリーに感動した層が多いことから、続編毎に好き嫌いが分かれる((本作のエンディングのみで見てみれば続編の作りようがない話だし、もしこの続きがあったらそれこそぶち壊し…というファンも少なからず存在する。))事もある。
--もちろん『ムーンライト』『2』共に単体でいえば該当項目にある通り、本作同様に非常に丁寧に作られた名作であり、続編以降のファンも少なくない。
-ナムコ作品には他のナムコキャラがゲスト登場する事が半ばお約束となっているが、クロノアもその例に漏れていない。
--本作のヒットはナムコ内でも結構な反響があったようで、98年~2000年初頭までの出演数はPS1発祥のキャラにしてはかなり多かった。~
クロノアチームとは無関係な3Dゲームのチームから出演依頼がかかった際は、クロノアチームがモデルを新規製作した事もあったとか((バイクゲーム『MotoGP』のプロデューサーが当時のインタビューで発言している。))。
---詳細は『[[風のクロノアシリーズリンク>風のクロノアシリーズ]]』を参照されたい。
-PS2で発売されたコレクションソフト『ナムコレクション』に、5作品の1つとして収録されている。
--他のタイトル同様に内容はPS版のほぼベタ移植で、ごく一部のバグが修正されている。
--ゲーム開始時にタイトル選択が必要なため起動にやや手間が掛かるが、ゲーム開始後はPS2のためロード時間は短く快適。
--オマケとしてイラストや設定資料が閲覧できるギャラリーが収録されている(収録枚数はあまり多くない)。
--『[[リッジレーサー]]』『[[エースコンバット2]]』『[[鉄拳]]』『[[ミスタードリラー]]』も同時収録されているためお得感はある。
//-Wiiにてリメイクされた。詳細は&bold(){『[[風のクロノア door to phantomile (Wii)]]』}を参照。
//--ただし、キャラデザインの変更、ムービーの削除(全てリアルタイム演出に変更)、ステージ演出の劣化などからPS版をやったことがあるプレイヤーからは評判はよくない。
//--とはいえゲーム自体は問題なく普通に遊べる上に追加要素もあるので、やや期待はずれなガッカリリメイクといったところ。
//評価については先の記事で。
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