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DRIVING EMOTION TYPE-S」を以下のとおり復元します。
*DRIVING EMOTION TYPE-S
【どらいびんぐえもーしょん たいぷえす】

|ジャンル|レース|#amazon(B00005OVV3)|
|対応機種|プレイステーション2|~|
|発売元|スクウェア|~|
|発売日|2000年3月30日|~|
|定価|6,800円(税別)|~|
|判定|BGCOLOR(lightsalmon):''クソゲー''|~|
|ポイント|極悪な操作性&br;実はバグだらけ、でも結構笑えるものが多い|~|
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#contents(fromhere)
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**概要
-PS2が2000年3月4日に発売され、同時発売の『リッジレーサーV』はPS2のグラフィック性能を遺憾なく発揮していた。少し遅れて発売された本作は、PS2では初となる“実在する車によるドライブシミュレーター”として、数々の目玉要素を引っさげて登場した。
-通称として「ドラえもん(''ドラ''イビング''エモ''ーショ''ン'')」なるものが存在する。

**カーマニア垂涎の要素
-国内6メーカー、海外5メーカーの車が実名で登場する。
--特にフェラーリ、ポルシェは後に出る『[[グランツーリスモ3 A-spec]]』(GT3)ですらファンに望まれながらライセンスを獲得できず、ポルシェのシャシーをベースにコンプリートカーを制作しているRUFの車を代わりに登場させていた((フェラーリは8年近く後の『グランツーリスモ5プロローグ』から収録されたが、当時ポルシェはEAとの契約で不可能であった。しかもグランツーリスモ3の没データにポルシェ911の名前が載った車両が存在した事から問題となったとも言われ、『[[グランツーリスモ5]]』が発売された2010年当時でもかなり力を入れて交渉したが無理だったの事。ポルシェ自身も「独占契約がなければ出したい」とコメントしていたが、結局ポルシェ名義で登場したのは、ハードが二世代進化した17年後に発売された『グランツーリスモスポーツ』での事である。))。
-これまたGT3で望まれながら実現しなかった(登場は4から)要素の、鈴鹿サーキット(東コース・フルコース)・筑波サーキットの国内有名サーキットを収録。90年代のチューニングカーブーム時、チューナー達はこぞって筑波サーキットでのタイムを競い合っており、チューニング雑誌やビデオマガジンにも頻繁に登場するチューニングカーの聖地のような存在であった。
-コックピット視点ではハンドル、メーター、ミラー等車の内装まで再現している。もちろん操作に合わせて手がハンドルを動かす。
-『グランツーリスモ』シリーズやXboxでの『Forza Motorsport』シリーズをはじめ、今でこそ車の内装まで描くのも一般的であるが、PS2時代はここまでこだわっているゲームは少なかった。((PS2時代で車の内装まで描かれている作品は主に『バトルギア2』『バトルギア3』(いずれもタイトー)などがあり、しかも前述の2作品はACからの移植作品である。))

**問題点
-''操作性が悪い''。これに尽きる。
--タイヤの接地感は皆無で、少しステアリングを切るとタイヤが滑り出してしまい、立てなおそうと逆に切ると今度は逆に…と真っ直ぐ走ることすら難しい。''FF車が自然にカウンターを当てながらコーナーをドリフトで曲がる''((基本は駆動輪が後輪のFR・MRなどの車で起きる挙動であり、まずありえない事象である。))姿は、自動車好きには笑いのポイントだろう。
--ステアリング位置も「ボタンを離すと中立に戻る」一般的なシステムではなく、ステアリングコントローラーのフォースフィードバック機能を前提とした「自ら切った方向と逆へ操作する」タイプ((FFBが備わったハンコンだと、ステアリングから手を離せば「直進状態に自ら戻る」という車そのものの特性が働き、自然に中立位置へ戻る。))を採用した。
---これが曲者で、ハンコン対応でもない(当時PS2対応の製品は''存在すらしていない''((正確に言うとCS機向け製品の存在はあったが、PS2では未発売の状態。加えて現在のような“ステアリング+アクセル/ブレーキ(/クラッチ)ペダル”の形式のもの、FFBが備わったものなどは売られていなかった。このタイプが登場したのは翌年の『GT3』発売と合わせて発売された「GT-FORCE」(ロジクール製)が最初。)))のにそんな高度な設定を加えたことで、更なる特異な挙動を生むこととなってしまった。
-PS2では標準となったアナログ入力に対応したため、アクセル操作などは逆に入力がシビアになるといった弊害もある((他のレースゲームでも起こりうる「ボタンの押圧が足りないとスロットル開度が100%に到達しない」というもの。ソフトの設定によっては指への負担が大きい。))。
--一方で、昨今のPS向けレースゲームにおいて当たり前になった「スティックでのステアリング・アクセル・ブレーキの操作」には非対応。こちらが可能であればまた評価は変わったのではないか。
-一方で地道に練習さえすればちゃんと車の制御は可能。一定のスリルを感じながらレースしたい、という人には美点であるともいえる。
--また、このレースゲームのハンドリング操作のシビアさに慣れ親しんでしまうと、''他のリアル系レースゲームの挙動が軒並みぬるく感じられてしまう''という場合も。そういう意味では「極端にハードなレースゲーム」ではあるが操作のシビアさが万人における欠点とは言いがたい。
-登場する車種はカラーリングとホイールの変更やマシンセッティングが可能であるのみで、エンジン・シャシーなどへいわゆるチューニングは一切出来ない。
-AIが若干馬鹿。特にライバルカー(自車含む)の動きに対する反応が希薄。レース開始時に盛大なクラッシュが起きる場合もある。
-DVDを使用したゲームに比べるとボリューム不足な感じは否めない。
--各々の要素を全て合わせても内容はかなり薄い部類。ある意味やりこみ系ゲーム(''挙動に慣れるという意味合いで'')ではあるが…。

**評価点
-視点だけでなく、エンジン音やメーターの動きまで、車載カメラのような雰囲気がよく出ている。
--背景の美しさは当時としては良好。『リッジレーサーV』と比較するとビビッドさに欠ける((フィルター効果で薄ぼんやりとした色調になっている。))ため、目立ちはしないが。
-クラッシュすると横転することも(横転したら強制的にポーズがかかり、やり直しさせられる)。
--横転した状態では当然操作はできないが、放置しておくと別の車が追突したはずみで起き上がり、再びレースに参加できるという冗談みたいなことが起きることも。さらにクラッシュして車が浮いた状態で別の車がぶつかってくると、なんとその車と合体してしまうことがある。2台の車が合体して走る姿はかなりシュールで、他のレースゲームではまず見られない貴重な光景(しかもリプレイの保存もできる)。
--これらの怪奇現象を目当てにプレイしてみるのも面白い、かもしれない。……ただし、そこまで''このゲームの駄目っぷりに耐えられれば''の話だが。
-BGMはかの細江慎治が担当しているので良曲揃い。

**総評
魅力的な要素は多いが、全て宝の持ち腐れ。それを諦めたプレイヤーの精神的ダメージと怒りはより大きくなった。~
PS2発売当初のゲームということもあって、とにかく納期に間に合わせただけという、お粗末な作りの作品の見本のように思える。

**余談
-アスキーがかつて運営していた自動車ニュースサイト「オートアスキー」上でも本作のレビューが行われており、[[やはり挙動は辛辣な評価が下された>https://response.jp/article/2000/03/31/1648.html]]。
-前述のメーカー、サーキットなどは『GT3』が実現できなかったのもあり、「本作にライセンスを横取りされた」と邪推するGTファンの声もあった。ちなみに、当時のスクウェアはフェラーリ・ポルシェのライセンスを独占していたエレクトロニック・アーツ(EA)と合弁しており、フェラーリ・ポルシェの収録もその縁で実現したのである((1998年よりビクターから合弁相手がスクウェアに変更になったため。一応5年の期限が切れ2003年に合弁解消。偶然ではあるが、同年には映画事業失敗などの諸事情で現在のスクウェア・エニックスが誕生している。))。
--後年EAは『Burnout』『Need for Speed』など良質なレースゲームを生み出したので、「開発もEAに任せればよかったのではないか?」とも思えるが、当時EAが発売していたコンシューマ群のレースゲームも大方大概の出来((当時はF1のゲームなども製作していたが、全体的に評価の高かったPC版に比べてアーケードライクな挙動が大変不評だった。))であり、どっちにしろ期待は出来なかっただろう。
--なお、これに懲りたのかは不明ではあるが、スクウェア(・エニックス)は現在に至るまで純粋な「レースゲーム」には手を出していない(乗るのが車だけではない『[[チョコボレーシング>チョコボレーシング ~幻界へのロード~]]』3DS版も開発中止)。少数ながら熱心だった『[[レーシングラグーン]]』ファンの続編への希望も奪うことに((一応続編を匂わせる演出がされた事があったが、結局ソシャゲのタネであった。))。
-現在の『グランツーリスモ』『Forza』などは本作が目指し、失敗したことを成功させつつある。本作はドライブシミュレーターの方向性を示した、早すぎた作品なのかもしれない。
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