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*ワイルドカード
【わいるどかーど】
|ジャンル|ロールプレイングカードゲーム|&amazon(B00014ATTM)|
|対応機種|ワンダースワンカラー(専用)|~|
|メディア|16MbitROMカートリッジ|~|
|発売・開発元|スクウェア|~|
|発売日|2001年3月29日|~|
|定価|4,300円(税込)|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|あらゆる物が「カード」で表現&br;のちのアンサガである|~|
|>|>|CENTER:''[[サガシリーズ・関連作品リンク>サガシリーズ]]''|
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#contents(fromhere)
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**概要・特徴
-『サガ』シリーズでお馴染みの河津秋敏や伊藤賢治らに加え、『[[ファイナルファンタジータクティクス]]』の吉田明彦をデザインとして加えたスタッフ陣によるRPG。
-クエスト形式の進行や技の成長システム、一部のネーミングなどサガシリーズと類似する部分がある。
--特にキャラクターの能力成長システムや、ダンジョンにおけるトラップ解除、宝箱の鍵を開ける仕組みなどは後の『[[アンリミテッド:サガ]]』に通じており、ユーザーからは 「初代アンサガ」 や 「アンサガの前身」 などと言われることもある。
-ほぼあらゆるものが「カード」で表現されている。
--キャラクターも場所も、コマンドもアイテムも、ライフやパワーなどの能力値もカード。制限ターン数はカードの「山札」で表現される。
--あくまでも従来のRPGにおける各種インターフェイスをカードという形に統一したものであり、いわゆるカードゲーム的なルールは皆無である。
--世界観的にもカードである必然性はそれほどないが、恐らくはワンダースワンというハードの特性を意識したもの。~
ワンダースワンは液晶の関係で残像が出やすく激しいアニメーションとの相性が悪いが、カードで世界観を統一すればアニメーションしなくてもそれほど違和感が無い。このゲームの中で動く場面は全てカードを「出す」「並べる」「めくる」といった非常にシンプルな動作であり、残像で見にくいということは全くない。

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**ゲームシステム
***シナリオ進行
-一貫したストーリーはほとんどなく、大量のサブクエストをクリアしていくことでゲームが進む。
--ゲームはいくつかの章ごとに分けられており、一定期間が経過すると章が進行する。
-ゲームが始まるといくつかの質問が行われ、それへの回答によって主人公が決定される。
--リメイク版『ドラゴンクエストIII』の性格決定システムと似たようなものなので、知っている人はそちらを想像すれば把握しやすいはず。
--その後は、街で仲間を探しパーティを組む。パーティメンバーは主人公を入れて最大5人。
---各キャラクターが仲間になってくれるかは、主人公のステータスに依存する。必ずしも全てのキャラクターを仲間にできる訳ではない。
-大きな特徴が、''章ごとに主人公や仲間が完全に交代する''ことである。
--2章に入ると今までの主人公や仲間は失われ、ゲーム開始時と同様の質問によって、今まで仲間にしていないキャラクターが新たに主人公として設定される。
---その後はまた新しいパーティを組むことになるが、既に仲間にしたキャラクターは登場しないので、仲間にはできない。
---他の偶数章(4章、6章)でも同じ展開となる。そのため、仲間にできるキャラクターの選択肢はどんどん減っていくことになる。
---仲間になった際のステータスは、何章で仲間にしようが同じである。一方で、敵は章に関わらずゲーム進行と共にどんどん強くなっていく。
--一転して、奇数章(3章、5章、7章)では元々の1章の主人公1人に戻り、逆に今まで仲間にしたことのある全てのキャラクターを仲間にできる。
---偶数章とは対照的に、仲間にできるキャラクターはどんどん増えていく。成長も引き継がれるので、偶数章よりは大分楽である。
---ラスボスの待ち受けるクエストには、3章以降の任意の奇数章から突入できる。通常のラスボスは何種類もおり、ある条件を満たせば隠しボスと戦うことも可能。
-このような仕様のため、後半まで進むには、後々の為に強いキャラを残しておいたり、ステータスを上昇させるカードや強力な装備を温存しておく必要がある。
--計画的なプレイを行わないと終盤非常に辛くなるというシビアな面は、『サガ』シリーズを彷彿とさせる。
--最後の章のラスボスを倒すまでには大体40時間前後と、それなりに長く遊べる。

***ワイルドカード
-プレイヤーの戦闘以外の基本行動は 「前進」 「見回す」 「アクション」 の3種類のワイルドカードというカードを使うことで実行される。
--これらを使用することで、マップの移動や周囲の探索、目の前のアイテムや人などに対するアクションなどが行える。
--ワイルドカードの使用には制限が無く、無限に使える。
--なお、アイテムやパラメーター等のキャラクターに与えることで効果を発揮するカードもワイルドカードとして管理される。いわばパーティ全体の行動コマンドと共通アイテム欄を兼ねた存在であり、主人公を交代してもワイルドカードのみ引き継がれる。

***クエスト攻略の流れ
-クエスト攻略およびマップの進め方は非常に独特。
--クエストごとに定められた「特定の敵を倒す」「特定のアイテムを入手する」「特定のマップに辿り着く」いずれかの条件を達成すればそのクエストはクリアとなる。
--「前進」することで、いくつかの種類がある「トランジット((通過・横断といった意味。このゲームでは地形と地形を繋ぐ通路のような存在。))」を通していずれかの「地形」へと移動する。
---過去に来たことのある地形と同種の地形に移動することもザラにある。
--地形ごとにモンスターに出会いやすい危険度や障害((ダメージを与えることで破壊できる大岩や、スキルで渡れる川等。))が設定されており、より危険な地形を何度も通ったり障害を打破していくことで&bold(){「クリア条件のカードに遭遇する確率」を上げていく}。
--どのクエストにも制限ターン数が設定されている。基本的に残りターン数がゼロになるとクエスト失敗となる。残りターン数が少なくなるほど、クリア条件のカードに遭遇する確率も高くなる。
--敵への攻撃や味方の回復などは、技や魔法などのカードを対象に使用することで行う。
---カードの効果量は一定の数値の範囲内でランダムに決定される。運が良ければクリティカルが発生し、数値のランダム決定がもう一度追加(加算)される。運が良ければクリティカルは何度でも発生するので、どんなカードでも運次第で絶大な効果を発揮し得る。
--敵の攻撃はいずれも単体攻撃であり、「パーティ内の誰が攻撃を受けるか」はその都度プレイヤーが任意で決める。
---そのため、物理防御や魔法防御の高い盾役1名に攻撃を受けさせるといった、パーティ内の役割分担を徹底しやすい。
--目の前の物(宝箱など)にトラップや鍵が仕掛けられている場合は、「トラップ解除」や「オープンロック」といった専用のカードを使用することでそれらを解除できる。
---ただし確実に解除できるわけではなく、一定値以上の数値を出さないと成功しない。

***成長システム
-成長はクエストクリア後にまとめて行われ、能力値や技など、キャラの成長に関わるカードをいくつかの候補の中から選んでゲットできる。
-ここでカードを入手する際は、キャラごとに「ゲットカードポイント」というポイントを消費する必要がある。
--ゲットカードポイントは、そのクエスト内でモンスターを倒したりアイテムを拾うことで蓄積されていく、言わば経験値のようなもの。ポイントは次回以降のクエストには持ち越されず、クエスト毎にゼロからポイントを貯める必要がある。
--ゲットカードポイントはパーティの人数分だけ均等に分けられる。そのためパーティの人数が少ないほど成長はしやすく、人数が多いほど成長はしにくい。
--強力なカードや高い能力値ほど、必要なゲットカードポイントも大きい。
-候補となるカードは、そのクエスト全体での各キャラの行動内容や各カードの使用回数によって決定される。
--そのため、特定の能力値や技の使用回数などを重点的に上げたい場合は、その辺りも考慮した上でプレイする必要がある。
--クエストに時間がかかり行った行動が多ければ、その分有用なカードも入手しやすく、ゲットカードポイントも沢山稼げる。そのため、必ずしもさっさと各シナリオをクリアするのが良い訳ではない。

***その他
--中断機能あり。ゲーム中ではいつでも中断セーブ可能。

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**評価点
-良く練られた独特のゲームシステム。
--いつでも中断できる上に、一つ当たりのクエストは10~20分ほどで終わる、非常に携帯機らしいゲームデザイン。ストーリー性は皆無だが、それもまた「いつでも始められていつでも止められる」という手軽さに繋がっている。
--クリティカルや強力なリンク攻撃によって、ダメージが飛躍的に増加する様は快感。

-グラフィック
--全930枚もの各種カードは緻密なドット絵で描き込まれており、その一枚一枚にドッターの職人芸が伺える。ドット絵好きにはたまらないだろう。
---名前違いや色違いのカードもあるにはあるが、それでも800種類近くのイラストが使われている。
---ラスボス達は複数枚のカードを繋げて美麗に描かれているし、スキルカードには仲間キャラがスキルを使う絵が描かれていて面白い。
--一度手に入れたアイテムや技、一度遭遇して調べた敵・場所などはアルバムモードで観賞でき、やりこみ要素としても楽しめる。

-音楽
--伊藤賢治作曲の音楽も聴き応えがあり、耳に残る。ワンダースワンカラーの音質の中でいわゆる「イトケン節」をよく出しており、戦闘曲を中心に評価は高い。
---特にボス敵は、探し回った末に現れ「ALERT!!」の文字と共に格好いい曲が流れる演出が「これを倒せばクエストクリアだ!」という喜びもあって非常に盛り上がる。
--ちなみに、スクウェア社員としては本作が伊藤氏の最後の担当作品となった。

-所々に炸裂する河津節
--河津秋敏プロデュースのゲームらしく、台詞や文章は意図的に少なく抑えており、その中でインパクトを残している。
---下記のように、キャラクターが仲間になる際でさえも二言程度の会話で終了する。
---世界設定もぼんやりとしており、プレイヤーの想像をかきたてる作りになっている。
--特に、キャラクターを仲間にする際の選択肢(もっと言うなら断る方の選択肢)は、どう考えても遊んでるとしか思えないものがチラホラ。
---「仲間になってやってもいいぞ。」→「ぜひお願いします」or「''一人で行けば?''」(オスカー)なんてのはまだいい方。
---「私の腕で良かったら使ってくれないか?」→「頼みます!」or「''腕をもらってもね。''」(ダイ・ヤング)なんてのや、
---「よお! おいらも連れていってくれよ。」→「いいぜ!」or「''ヨッパライか。''」(ロテリー)なんてのもある。
--若い女性に見えるが実は50代のルーム・モー、''ムーミンを気持ち悪くしたような''容姿のヌーチョ、上述のロテリー等のネタキャラもプレイヤーに愛されている。

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**問題点
***作業感が強い
-見た目の変化に乏しく、同じようなことの繰り返しという感覚が強い。
-シナリオ内で使ったカードによって獲得カードが決まるという性質上、目当てのカードを狙って入手するためには特定のカードを何度も乱発することになる。
--各種アイテムやパラメーターカードをワイルドカードからキャラに分配する際、途中でキャンセルしても使った扱いになるという『[[ファイナルファンタジーII]]』のABキャンセルのようなバグらしきものがある。また何もない地形に対して技を使うといった「素振り」ではターン数は経過しない。これを駆使すれば目当てのカードを引き当てる確率は大幅に上げられるが、ますます作業感が強くなってしまう。

***快適性の問題
-カード選択の操作が非常に煩雑で面倒
--特にカードの所持枚数が増えてくると、任意のカードを選択するまでには左右キーを長々と連続入力しなければならなくなり、手間が掛かる。
--一つのクエストだけで何十回と使うことになる「見回す」などのワイルドカードでも、「手持ちカードを表示 → カード選択 → カード使用確認 → 対象選択」といった手順を踏まなければならず、ボタン入力回数が多い。
--ワンダースワンはボタン数が多い携帯型ゲームにもかかわらず、そのボタンの多さをショートカットキーに当てるといった親切設計が全くなされていない。
-敵味方のカード使用時の演出(効果音)がやたらと長いものがあり、無駄に待たされることがある。

***ゲームバランス
-序盤の一番最初のクエストが最難関。
--各カードの枚数はそのクエスト中には復活しない。そのため、使えるカードが少ない序盤では無計画にカードを使うと攻撃できるカードが0になるなんてザラ。
---序盤は1回でターン数を大幅に消費する「逃走」カードでギリギリ切り抜けるという事態になりがち。
-下手すれば取り返しのつかないことになる、罠のような仕様がある。
--特定のステータスを上げすぎると新しいカードが入手できなくなってしまう。ゲーム中での説明は一切無し。
--パーティの人数は、基本的に2~3人で十分。4~5人でパーティを組むと逆に辛くなりやすい。
---一旦仲間にしたキャラクターを外すことはできないため、その章の中では人数を途中で減らすことはできない。
-終盤になるにつれて役に立たないカードが顕著に表れる。
--特に序盤~中盤では敵の一掃&アイテム入手に有用なスキル「アニマルトーク」は、終盤になるとクリティカルが発生しない限り成功しなくなる。
-麻痺や石化の状態異常が非常に強い。
--味方全員がこれらの状態に陥ると全滅する。
---パーティの人数が少ないほど脅威。このために一人旅プレイはかなりの運ゲーになっており、制限プレイ(縛りプレイ)のやり甲斐に欠ける。
--敵を麻痺や石化の状態にすれば、その敵は即死扱いになる。
---敵をこれらの状態にする魔法は最強の攻撃手段。終盤は敵のライフが多いこともあって、これらの魔法を連発する麻痺・石化ゲーになりがち。
---ただしこれらの魔法に耐性がある敵もいるので、その他の攻撃手段が無意味なわけではない。
-途中でラスボスと戦う展開があるが、わりと勝ててしまう。
--当然勝てばそこでエンディングである。

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**総評
ワンダースワンユーザーには隠れた意欲作として比較的知られており、河津秋敏ら製作陣の「色」もよく出ている作品である。~
やっていることは実はかなり地味であるが、グラフィックや音楽の演出に優れているためそれなりに緩和される。~
ただし独特なシステムとバランスによりクセが強く、やや作業的な面も含めて人を選ぶゲームではある。ハマる人はかなりハマるが、合わない人には全く合わない。~
もっとも、暇潰しのつもりで遊ぶならかなり遊べるゲームである。~
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**余談
本作は、PCの人気フリーゲーム「カードワース」をモデルとしたものであると、ファンの間で騒がれていた。
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