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夢幻戦士 ヴァリス - (2015/06/30 (火) 12:04:42) の編集履歴(バックアップ)


夢幻戦士 ヴァリス

【むげんせんし う゛ぁりす】

ジャンル ACT
対応機種 PC-8801mkIISR以降、PC-9801VM/UV以降、
X1、FM77AV、MSX、
ファミリーコンピュータ、メガドライブ、PCエンジン
発売・開発元
【各種PC】
日本テレネット(ウルフチーム)
発売元【FC】 徳間書店
発売日 1986年12月
定価 7,800円
配信 PCエンジンアーカイブス:2010年12月15日/800円


概要

1980年代のOVAに良く見られた「ビキニアーマーを身にまとってファンタジー風の異世界で戦う少女戦士」というコンセプトを取り込んだアクションゲーム。
ごく普通の女子高生がビキニアーマーをまとって悪と戦うという設定のインパクトや、当時のゲーム界隈ではまだ珍しかった女性が主人公のゲームであったという話題性、
キャラクター自身の魅力、ステージの幕間で語られる一見、軟派な見た目とは裏腹のシリアスなストーリーで人気を博し、日本テレネットの80年代における代表作となるとともに、 ギャルゲーの始祖 とも評された。


ストーリー

ごく普通の女子高生だった麻生優子は、最近、奇妙な夢をよく見ていた。誰かから話しかけられる夢だった。ある日、学校帰りの途中で、クラスメイトの桐島麗子に話かけられる。近々彼女が遠くに行くという。そして優子は家に帰れないとも。一方でいつか会うかもしれないとも。聞いていた優子には、その意味が今ひとつ理解できなかった。

やがて麗子が去り、家路に付こうとした優子の前に突如、得体の知れない魔物が現れる。その時、どこからともなく一振りの剣が現れ、夢の中の声が剣を手に取り、逃げずに立ち向かうよう優子に促すのだった。促されるままに身を守るため、優子は剣を手に魔物に向かっていく。
その後、導かれるまま自分のいた世界とは別の異次元世界・夢幻界へと足を踏み入れた優子は、夢幻界の女王ヴァリアから、暗黒界の魔王ログレスの台頭と夢幻界の危機を知らされ、ヴァリスの戦士として闘って欲しいと懇願される。
あまりに唐突で突飛な話に困惑しながらも、ヴァリスの戦士の力の源ファンタズムジュエリーを取り戻し、魔王ログレスを打ち倒すべく戦士の使命に目覚めていく……。


特徴・システム

  • サイドビューのACT。プレイヤーは麻生優子となり、襲い掛かる魔物を倒しながら、ステージクリアを目指す。
  • 動きは左右の移動、しゃがみ、ジャンプがある。ジャンプは二段ジャンプができるが、一段目のジャンプと二段目のジャンプは方向転換ができない。また、ジャンプ中、落下中では空中制御ができない。
  • ステージは高低差が大きいものが多い。ステージのどこかに潜むボスキャラを倒すと、ステージクリアとなる。ボスキャラの場所は誘導用の矢印が教えてくれる。
  • 攻撃は基本的に射撃。
    • 初期状態こそ剣での打撃のみだが、一度パワーアップすると弾を撃つようになる。魔物の攻撃も体当たりより弾を放つ攻撃がもっぱらで打撃はほとんどないため、シューティングアクションゲーム的な側面が強い。
  • パワーアップは攻撃側と防御側の二種類に分かれる。ステージ内に落ちているアイテムによりパワーアップする。攻撃はもっぱら射撃性能が上がり、防御はダメージ比率が下がるようになる。
    • この攻撃側パワーアップは注意しなければならない。矛盾するようだが、パワーアップすると瀕死となる可能性がある。それというのもパワーアップは体力ゲージとの交換で得るため、体力が十分ない場合に瀕死となるのである。アイテムの中には、初期状態の10倍もの体力を持っていくものもある。この体力、本作では魔物の落とすアイテムで増加する。しかも魔物は頻繁に落とす。最大でスタート状態の30倍以上に。
    • 一方で防御のパワーアップは体力を必要としない。ただし、ステージをクリアしてしまうと消滅し、また探さなければならない。
  • ストーリーは、ファンタジーものとしては当時としてもありがちで大味なもの。ただキャラクター性はよく出ており、本作の魅力を訴えるには十分だった。
    • ヴァリスの戦士に指名され、何も分からぬまま自分を異世界に召喚した夢幻女王ヴァリアに対する反発心と戸惑いを抱えながらも、次第に悪と戦う使命への自覚を深めていく優子の姿や、悪しき心に付け入られ対立することになったクラスメートの麗子との悲しい戦いの結末は、一見軟派な外見とシリアスなストーリーのギャップで深くユーザーに印象を残した。

評価点

  • 美少女のアップとビキニアーマー。
    • ビキニアーマーの美少女を操って魔物を打ちのめす。ステージ間に入る大ボリュームのアニメ調デモシーンでは、美少女がアップになってアニメーションする。これだけでもインパクトは強烈である。主人公のファンクラブが作られるほどの人気を集めた。
      • ゲーム業界に与えた影響も非常に大きい。『マドゥーラの翼』で人気キャラ・ルシアをデザインした「もりけん」は「僕は美少女のデザインが恥ずかしかったので、ルシアを完全なビキニアーマーにしなかったのだが、『ヴァリス』の優子を見てしまった!と思った」と、当時を回想して語っている。
  • セーブができる。
    • 当時のACTやSTGなどは、セーブはおろかコンティニューもないものが少なくなかった。さらにコンシューマーより容量が多いため、長丁場なものも結構ある。その点では、本作のセーブ機能は難易度が高いだけに尚のこと有り難いものだった。

問題点

  • アクションゲームとしてはいろいろ雑。
    • 高低差のあるゲームなのでジャンプの頻度は当然高い。しかし、そのジャンプの性能がとても悪い。空中制御ができないため距離を調整できず、思い通りの足場につけない事も多い。それを踏まえて足場が広め…という訳でもない。
      ステージによっては、グラフィックのせいで、足場がよく分からないというようなものまである。
    • 自分も魔物も判定が大きく、避けたつもりで当たる事も少なくない。
    • 四方八方から魔物がやってくる割には、方向転換がやや鈍い。
    • 空中にいると制御できないのは先述の通り。このため一端落ちると、どこまでも落ちていく。空中制御して手近な足場に降りるという訳にはいかない。運が悪いとかなり下へ行ってしまう。
  • 容赦ない魔物。
    • 魔物の攻撃は狙いが正確。一方、優子は防御ができないのでかわすしかないが、ジャンプの性能が悪く当たり判定も大きいのでかわせない事も多い。
      更に被弾時のヒットバック(後方への弾き飛ばし)がかなり大きく、連続で被弾したりするとあっさり足場から落る。
      そして上を目指すとまた打ち落とされて…というパターンがこのゲームの常。 しかも高所から落ちると、優子は尻餅をついて隙を晒してしまい、そこに被弾してまた落ちるという事もよくある。
  • ゴチャゴチャしたグラフィック。
    • 背景はよく描き込まれているのだが、そのせいで逆に問題が発生している。
    • まず先述したように、足場が分かりにくくなっているステージが多い。また背景に比べ魔物の方は大雑把な描かれ方をしてるので、背景にまぎれてしまう。
      さらに白っぽいステージに白っぽい魔物を出すなど、迷彩も魔物の攻撃なのかと思わせる悩ましい配置も。せめてもの救いは弾が点滅しているおかげで分かりやすい事くらい。
  • 実は体力にものを言わせた単調なゲーム性。
    • 魔物の攻撃に対応しながら進むと、落とされて進んでまた落とされてという目に会い体力もなかなか増えないため、むしろ体力に物を言わせて一気に進んでしまった方がいい。
      比較的安定した場所で、なんとかして地道に体力を溜め、一気にボスを目指す。だいたいこの調子でゲームが進む。
    • 各ステージのグラフィック自体は変わるが、ゲーム性としてはそう大きな変化はない。
    • ボス戦も体力まかせ。ボスは後半ほど弾幕が激しくなる。優子の攻撃で相殺できるとはいえ、被弾しないのは無理。相手の死角や弱点をつく位置取りをして攻撃はするのだが、結局の所は体力にものを言わせた殴り合いになる。

総評

ギャルゲーという言葉もない時代に現れた、美少女を前面に押し出したACTとして有名。このため、ギャルゲーの祖とも呼ばれる事がある。
しかも清純な女子高生がビキニアーマーで戦う。もはや説明不要。その強力な訴求力で、多くのユーザーの心を捕らえた。さらに大ボリュームでアニメーションするデモは、それに応えるのに十分なものだった。
一方で、ゲーム自体はかなり残念なもの。難易度は非常に高く、ゲームそのものを楽しむと言うよりもデモ見たさにプレイの難関さに耐えて泣く泣くプレイすると言う有様。もし主役が少年剣士でデモが淡白だったら、クソゲーという評価もあり得る出来。とはいえ、しかし、主役は少年剣士ではない。麻生優子である。彼女の魅力は、そんなものを一蹴するほどのものであった。

これ以前にもビジュアルシーンを売りにする作品を多く手掛けていた日本テレネットではあるが、本作はキャラクターの魅力という一点を持って、その特徴的な作風を確立させたといっても過言ではない。
後の時代、ハードの大容量化に伴ってビジュアルやキャラクター重視の作風が大きく花開くと共に、女性が主人公のゲームと言う要素が一般化していったことを鑑みるに、
本作の先進性と影響の大きさは多大なものがあったと言えるだろう。

移植

最初、PC88、X1、MSXで同時発売され、その後様々な機種に移植された。次にPC98、FM77AV、さらにコンシューマーへと展開していく。

  • MSX版
    • 面数が全5面に減少した上、ビジュアルシーンが全て省略された影響でストーリー性がオミットされている。
    • ハードウェアのスプライトによる滑らかな動きのおかげでアクションゲームとしての出来はよい。
  • ファミリーコンピュータ版
    • 横スクロールアクションから一転、アクションRPG要素の強いゲーム性に変更され、マルチエンディングシステムが採用されている。マップ構成が複雑で難易度は高い。 一部、キャラクターやストーリー設定が変更されており、ハード容量の都合上ビジュアルシーンはカット・簡略化されている。
  • メガドライブ版
    • PCエンジン版『I』の移植。発売自体はメガドライブ版『III』の後だった。
  • S!アプリ版
    • PC版『II』の着せ替えシステムを踏襲して「コスチューム」が追加されており、セーラー服・ヴァリススーツ・巫女服・体操服・チャイナ服が手に入る。
      衣装によって攻撃方法が変化し、追加ダウンロードでメイド服・ナース服が手に入る。

続編

パソコン版

  • 『夢幻戦士ヴァリスII』(PC)
    • パソコン版の続編かつ最終作。開発はウルフチームに代わりレーザーソフトが担当している。
    • 本作のゲーム性を踏襲しつつ、複数の装備を任意に変更していく『着せ替えシステム』が搭載された。
    • 売りであるビジュアルシーンもよりパワーアップしており、随所にビジュアルシーンが挿入されてよりドラマチックになった。
      また要所要所で細かくアニメーションするようになっており、より映像的な趣が増している。
    • ログレスの死後、統治者を失って内乱に陥った暗黒界に蘇った狂帝・残忍王メガスとの死闘が展開する。

PCエンジンシリーズ
別チームの開発による『ヴァリスII』の発売以降、シリーズの主流はPCエンジンを舞台に移し、新作三作品及び初代のリメイク版の発売を持ってシリーズは完結している。
PCエンジン版の内、『I~III』がメガドライブに移植*1され、『IV』のみ『SUPERヴァリス』のタイトルでSFCに移植された。

  • 『ヴァリスII』(PCエンジン [CD-ROM²] / 1989年6月23日)
    • PC版『II』と同時期に開発されていた作品で開発チームが異なるため移殖ではない。
      ストーリーの大筋とキャラクターはPC版を踏襲しつつ、システム・シナリオ共に別物になっており、商品の区別のためタイトルから「夢幻戦士」の冠がなくなっている。
    • PC版に搭載されていた着せ替えシステムは採用されていない。
    • PCエンジンの大容量を生かしてビジュアルシーンは常にフルボイスで展開する。
  • 『ヴァリスIII』(PCエンジン [CD-ROM²] / 1990年9月7日)
    • 三人のプレイヤーキャラから任意にキャラを変更して進めていくキャラクターチェンジシステムと、スライディングアクションが導入された。
  • 『ヴァリスIV』(PCエンジン [CD-ROM²] / 1991年8月23日発売)
    • 新主人公『レナ』を主役とする事実上のシリーズ最終作。
    • ゲーム性自体は『III』のキャラチェンジシステムを踏襲しており、スライディングアクションも引き続き搭載。
  • 『夢幻戦士ヴァリス』(PCエンジン[SUPER CD-ROM²])
    • PCエンジン版シリーズの完結後に発売された初代のリメイク版。システム面では『II~IV』までのシステムを取り入れており、『III』のスライディングアクションが採用されている。
    • 自機そのものの機動性能も改善されている他、PC版におけるパワーアップシステムやマップの迷路要素等は排除され、オーソドックスな横スクロールアクションとして作り直されている。
      これにより、難易度自体は他のPCエンジン版シリーズ作品同様に高いが、PC版と比較して万人向けのバランスに調整されている。
    • ゲームシーンはもちろん、ビジュアルシーンのグラフィックも後発だけあってPCエンジン版シリーズの中ではもっとも質が高く、決定番的な内容に仕上がっている。

余談

  • PS3『神次元ゲイムネプテューヌV』に『Ⅰ』が同名のスキルとともにDLCとして配信されている。ただしあくまでオマケであるためかセーブ不可となっている。
  • 開発チームが同じということもあり、ウルフチーム製作のADV『あーくしゅ』に本作登場人物の優子と麗子が「U子(ゆーこ)」「0子(れいこ)」という名前で登場する。
  • 1989年には優子のイメージガール「ミス優子」コンテストが開かれていた。
  • 本作のプロモーションアニメ・CMを後に『エヴァンゲリオン』シリーズを制作する庵野秀明が監督を担当した。ちなみにその作品が庵野にとってのアニメーション初監督作品となる。