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ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡 - (2016/06/02 (木) 22:29:31) の編集履歴(バックアップ)


ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡

【ふぁいあーえむぶれむ そうえんのきせき】

ジャンル ロールプレイングシミュレーション
対応機種 ニンテンドーゲームキューブ
発売元 任天堂
開発元 インテリジェントシステムズ
発売日 2005年4月20日
定価 6,476円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 5個
(メモリーカード使用ブロック数:19)
レーティング CERO:全年齢(全年齢対象)
周辺機器 GBAケーブル
判定 良作
ポイント 初心者から上級者まで楽しめる出来
現在は人気から高騰している
ファイアーエムブレムシリーズ関連作品リンク


概要

  • シミュレーションRPGの金字塔、ファイアーエムブレムシリーズの9作目にあたる作品。据え置き機としてはシリーズ5作目である『トラキア776』以来で、実に5年ぶりとなる。
  • FE15周年記念作品であり、シリーズ初のフル3Dグラフィックなど「進化したFE」という印象をユーザーにアピールした作品である。
  • 主人公である少年アイクの成長と新舞台テリウス大陸でのベオク(人間)とラグズ(獣人族)、二種族の対立と和解を中心に据えたストーリーが展開される。

新要素・評価点

  • 竜人族マムクートに代わる新たな亜人種族「ラグズ」の登場
    • ラグズとは獣人族で、獣牙族(猫、虎、獅子系)、鳥翼族(鷹、烏、鷺系)、竜鱗族(赤竜、白竜、黒竜系)に大別される。
      • いわゆる人間は「ベオク」と呼称され、ラグズ・ベオクともに古代人種「マンナズ」より分化した種族であるとされる。
        すべてルーン文字に由来する名称であり、それぞれ「水」(L:ラグ)もしくは「乗り物」(R:ラド)、「成長」(B:ベオグ)、「人間」(M:マンナズ)を意味する。詳しくはルーン文字の解説書を参照されたし。
    • 設定面でラグズは多くのベオクから半獣と蔑まれ、ラグズもまたベオクをニンゲンと言う差別的な呼び方をしており、ゲーム内で両種族は大きく反発しあっている。また、両者のハーフである「印つき」に対する処遇はさらに賤しいとされる。
    • 戦闘面では人と獣の形態をそれぞれ使い分けている。人形態ではステータスも低めで攻撃もできないが、ゲージが最大値になると自動的に「化身」して獣の姿に。数ターンで解除されるものの、その間は強力なステータス補正を得られるという特徴を持つ。
      • 他、重量のステータスが見かけによらず非常に重かったり非常に軽かったり、爪やくちばしで戦うため装備や耐久値とは無縁などの特徴も持つ。
      • その仕様上味方ユニットとしては使いにくいが、ステータスの高さから戦力としては非常に有用。即座に化身ゲージを溜める「化身の石」や、能力補正は落ちるものの常に化身状態を維持できる「半化身の腕輪」などのアイテムが存在。
    • 一方で、敵ユニットとしては歯ごたえのある相手に。攻撃される前に一気に落とすか、守りに入って化身解除を待って叩くかなどの駆け引きができ戦略性の向上に一役買った。
      • ラグズそのものに対して特効が発生する武器もあったり、今作では魔法でも特効が発生する。
  • クラスチェンジの仕様変更
    • これまでのシリーズでは、下級のユニットは特定のクラスチェンジアイテムを使わない限り上級のユニットになることはできなかった。
      • しかし、この作品ではレベル20でEXPを貯めると自動的にクラスチェンジができるようになった。
    • 従来通りレベル10以上であれば、「マスタープルフ」の使用でレベル20にならなくてもクラスチェンジができる。
      • 前作まではクラスチェンジアイテムも魔導師ならこれ、騎士ならこれと決められていたが、本作では『聖魔』で初登場した「マスタープルフ」のみに統一されている。
    • これにより、クラスチェンジさせたいキャラが沢山いるのにクラスチェンジアイテムが足りなくて困った、という従来作品では誰もが遭遇した事態がなくなり、気ままに好きなキャラを育成することができるようになった。
  • 拠点システム
    • 章が終わるごとにパーティーは拠点に戻り、次の戦いのための準備をする。GBA版でも似たような編成システムがあったが、この作品では更にできることが増えている。
    • イベント経験値の分配
      • 章が終わると、その戦闘の内容によってイベント経験値が入手でき、それを好きなキャラに与えられるようになった。マップごとに条件が設定され、それを満たすことでさらに増える。
      • これにより育てたいが弱くて実戦に出しにくいキャラを強化しやすくなり、敵の強い中盤以降に仲間になるキャラも即戦力にしやすくなった。
      • ただしレベルが高ければ高いほどイベント経験値の変換率が落ちていくので、主力キャラに一気にこれを投入して最高レベルにするという方法がしづらくバランスは崩れにくい。
  • 支援会話の仕様変更
    • 共闘を続けてきたキャラ同士が会話することでイベントが発生し、そのキャラ同士の支援率が上がる従来でも人気のあったシステム。
    • 従来では戦闘中に支援会話が発生していたため、「戦いの最中にカップルがラブラブになったり、お弁当の話をしていたりしていて緊張感もリアリティもない」という批判もあったが、
      この作品では拠点で会話するようになったためそのような批判はなくなった。
    • また、従来は根気さえあれば一気に支援レベルを上げられたが、今作では支援相手を同時に一定数出撃させる事で支援レベルを上げる仕様なのでバランスが取れている。
  • 買い物
    • 拠点での買い物は従来作品でもできたが、この作品では戦闘マップに店がないため武器やアイテムの購入は全て拠点で行うようになった。
      • これにより、武器の買い忘れで起こる詰み状態が起こりづらくなった。
    • 購入する武具を特注することができ、重さや威力、命中率、クリティカル発生率を+したものが買える。更に名前や色の変更も可能。
      • ただし特注品は一章に一本しか買えない上に、ちゃんとしたものを作ろうとすると値段も通常の数倍以上かかる。このため金に物を言わせて大量に強い武器を買うということはできないので、バランスブレイカーの域は逃れている。
      • 余談だが、この名前の変更の際に使える漢字の量が凄まじい。常用漢字はもちろん、それ以外の作中でも使われないような漢字まで多く用意されている。
  • これらの斬新な要素がある一方で基本的なルールは以前のシリーズと変わりがなく、他のシリーズをプレイする感覚で遊べるため予想されていた批判はほとんど出なかった。勿論使わなくてもクリアは可能。
  • 3すくみのバランス
    • 「剣は斧に強く、斧は槍に強く、槍は剣に強い」というおなじみのルール。
    • 武器については以前の作品(特に『聖戦』以前)では3すくみとはいうものの、剣がかなり優遇され、斧が不遇にあっていた。
      • しかしこの作品では反対に、斧が非常に強い。序盤から優秀な斧使いが仲間になり、敵は斧が有利に働く槍装備の兵が多く、加えて全体的に防御力が高い敵(特にボスやアーマー系)が多いため、剣で2回攻撃するより斧で一撃食らわせる方が強い状況が多いからである。
      • 故に手斧を持った騎兵を突っ込ませて壊滅させるのが効率的となり、「手斧地雷ゲー」と揶揄される事も。
    • 一方で剣が弱くなってしまっている。理由は斧が強い理由と同じく剣に不利な槍持ちの敵が多く、全体的に固い敵が多いため攻撃力が低い剣では削りきれない状況が増えたため。
      • ただし主人公専用装備の神剣ラグネルは使用機会が少ないものの、これまでのシリーズの主人公専用武器と比べても例外的に別格の強さと存在感を誇っている。何故ならこの剣がストーリー上でもシステム上でも非常に重要な役割を果たすからである。
    • 魔法については、GBA版の「理魔法>光魔法>闇魔法>理魔法」から、光魔法や闇魔法を使うユニットの減少によってトラキア以前の「炎>風>雷>炎」という関係に戻った。
    • 3すくみの補正値も敵味方の能力バランスを考えれば適正な値(命中±10%、威力±1)に。
  • 武器の重量周りの調整
    • 今作では武器の重さを「力で」軽減できるようになっている。これが何を意味するかと言うと、これまでのシリーズでは重すぎて(+味方の体格が低くて)攻速がガタ落ちし、まるで使い物にならなくなっていた「鋼系」「大剣」などの重い武器が使いやすくなっているという事である。
      • これによって物理職の味方は力が育ってくる中盤以降は気兼ねなく強い武器を使えるようになっており、敵も中盤以降は鋼武器を装備して攻速が下がってカモにされるようなことは少なくなっている。
    • 一方で、魔道士の力はあまり伸びない(+力の伸びる味方魔道士はあまり速くない)ため、遠距離魔法や上級の魔法などの「威力が高く非常に重い」魔法は無暗に乱発できないように調整されている。
  • 魔法については今作ではかなりきつい調整が行われた。
    • まず敵の魔防(魔法防御力)が全体的に上がったため、これにより1回で倒すのが難しくなった。
      そして魔道書自体の威力と使用回数の低下もあり、このため以前の作品で行われていた魔道士無双がしづらくなった。
      • 前述したラグズに魔法で特効が発生するためその処置であるとも言える。
    • しかし決して必要ないほどに弱体化はしておらず、むしろ対ラグズ特効が付加したことにより重要度で言えば価値は従来より上がっているためこの調整は評価が高い。
  • 店で売られる武器の品揃えも大幅に変更されている。特に大きいのが、従来では銀系統武器を超える性能を誇ったキル系統武器が非売品化したことである。
    • キル系統武器とは、鋼とほぼ同じスペックを持ちながら、鋼より軽い上に装備時の必殺率が大きく増加する(+30%)武器である。
      • 敵の耐久(というか守備力)がそれほどではなかった従来では銀武器を買うよりも、高確率で実質一撃粉砕できるキル系武器を買ったほうが圧倒的に効率が良く、価格もキル系の方が安いためしばしばシリーズ全体の問題として挙げられていた。
      • 回避ゲーへの対策や敵の硬さでぬるくなり過ぎと言われたバランスを大きく修正したことを考えればこの判断は妥当である。『暁』以降では非売品ではなくなったが、値段が銀系統の倍以上に上昇している。
    • 難易度ごとに拠点で買える武器が変わるという今作独自の試みも存在。
  • 全体的な難易度は大幅に上がっているが、その分バランスは良くなっている。
    • 難易度は低くはないものの『トラキア』ほど運要素は強くなく、難解な配置でもない。手堅く戦術を組み立てていればきちんと勝てるようになっており、イベント経験値の利用などの救済措置もあるためSRPGでは必然的だった運の要素をかなり排除したゲームバランスは高く評価されている。
    • GBA3作で強すぎると言われ続けてきた支援効果も支援自体の仕様変更と共に大幅な修正が入り、殆どの属性の支援効果は「あれば便利」程度のレベルに落ち着いた。
    • GBA3作共通の問題点とされた回避ゲー化の問題も、敵の命中を底上げしたことによって解決。
      • 武器の命中を上げるやり方ではなく、ステータスの「技」の部分を上げるやり方なので命中のインフレは起こらず、回避と命中のバランスはシリーズの最高のレベルになったと言える。
    • 『封印の剣』で回避ゲーの原因として挙げられた「地形効果の大きさ」も削られ、これまであった森、山、高い山といった概念をあえて全て削除している。
      • その代わり以前のシリーズで山や高い山に該当する部分は飛行系でなければ待機不可になり、森に該当する部分は全部「茂み(回避+10%,防御+1)」に統一されたことにより更に回避ゲーが起こりづらくなった。
      • こちらはSFC時代のバランスを引きずって来たせいで現在のFEと弊害が生じた部分を上手くそぎ落した良調整といえる。地形名を受け継いだものの、『新・暗黒竜』や『新・紋章の謎』もこの数値に近づいている。
      • よくよく考えてみれば3Dの空間で山や高い山と表示された部分をユニットが上り詰めていくのは極めて不自然なことである。これらが許されたのはあくまで2Dだったからとも言える。
    • 闘技場が廃止されレベル上げ・資金調達がしづらくなったが、一気にレベル上げをするパワープレイは基本的にFEにおいては戦闘の魅力を損ねるものである。
      • その代わり弱キャラを育てる方法としてイベント経験値が導入されているので批判はあまりない。やろうと思えば全員上級職レベル20も可能なところも自由度が高いと評価されている。
      • 資金も余るほどあるため資金調達ではそれほど気にする必要は無い(ただし有限なのは変わりないので錬成などで使いすぎると詰むので注意)
      • その他にも、「敵側の上級職の比率が大幅上昇」「特攻の倍率が2倍に下がった」など、細部に至るまで伝統だったバランスが変化している。
  • 難易度選択はノーマル、ハードの他にハードより上のマニアックモードが搭載されている。
    • このマニアックモードは『烈火』の「へクトル編ハードモード」、『トラキア』そのものなどと並べられシリーズでも屈指の難しさを持つためマニアを唸らせている。このマニアックモードの調整は高い評価を得ている。
    • 例えば序盤は武器不足になるほど敵が多く強いのだが、そのような状況だからこそほぼ全てのキャラを使わされるためいわゆる2軍ユニットが生まれないことによる平等感、大量の敵を処理するためにお助けユニットを活用しつつ、いかに弱いユニットを育てるかという高い戦略性、
      敵の命中回避のバランスゆえ確実な命中や回避が望めないものの、トラキアほど極端な理不尽さはない程々の運要素、
      ゲーム中一貫して絶妙な攻守のバランスが常に油断できない緊張感を生み出しているなど、まさしくマニアならば十二分に楽しめる内容となっている。
      • 後続作品でマニアックモードよりも上の難易度として登場した「ルナティックモード」では敵の能力インフレが更に加速した結果、ユニット運用の自由度が大幅に下がる詰将棋的なバランスになってしまったことから、戦略性と自由度と適度なランダム要素を兼ね備えた今作のバランスをシリーズ最高と評す人は今なお数多い。
    • イベント経験値の中に「ターンボーナス」というクリアしたターン数が早ければ早いほど経験値ボーナスが増えるという要素もあるが、これで最大値を出すのは本編を散々やった人でも投げ出すほどの超難易度。だがやろうと思えばマニアックでも可能である上無理なら無視しても問題ないため、GBA作品であった評価狙いプレイのようなやりこみたい人向けの要素として受け入れられている。
  • 以上のように、今作はシリーズ中でもかなり自由度が高い部類に入る。旧来のFEによくいた必要ないほど冷遇されたクラスやキャラ(一部ギリギリなのはいるが)が少ないのもポイントであろう。
    • SRPGというジャンルでは基本的に自由度の高さがそのまま戦略性の高さに繋がる例が多い。
    • 今作の場合もその例に漏れず、いかなる状況でもいくらでも戦略を立てることが出来るためマゾいプレイヤーが好んでする「縛りプレイ」なども盛んに行われている。
  • シリーズ初心者への配慮
    • 以上のように決して初心者に優しくないのかと言うとそうではなく、ノーマルモードではラスボスの第二形態が削られたり、索敵マップと呼ばれる難しいマップが取り分けて楽になるなど絶妙な緩和がなされる。
  • そしてなによりも、チュートリアルの解り易さがシリーズ随一。
    • 今作のチュートリアルは強制されない上見たいときにいつでも身振り手振りの動きつきで非常に分かりやすく教えてくれることから、初心者への配慮もばっちりと、様々な面で隙の無い作りとなっている。
  • 2周目からは難易度選択時に「乱数成長」と「固定成長」といった二つのモードが選べる。
    • キャラの成長方式のことで、「固定成長」にするとほぼ期待値どおりのステータスとなり極端に弱くなること(いわゆるヘたれ成長)がないというFEファンの理想が現実となったものである。
    • 勿論、乱数成長ではキャラクターの成長を楽しめるという利点もある。そのためどっちがいいかは自分のプレイスタイル次第。
    • 実際にかなり好評を得たシステムであるのだが、何故か以降のFEシリーズでは搭載されていない。
  • おまけ要素も従来のFEのそれ以上に充実している。
    • 『封印』に存在したトライアルマップが今作にも採用されており、キャラを育てる楽しみが更に増えた。
      • マップ自体も「周りを海で囲まれた孤島で精鋭飛行系軍団の猛攻から拠点を防衛」などテーマに沿った濃い内容のものが多く、今作の作りこみの深さが窺える。
      • しかもこのトライアルマップはGBAのFEとの連動で更に増えるためクリア後のおまけとして見るなら十分すぎるボリュームである。
      • なお今作でもトライアル限定のキャラは存在する。本編を15周すると無敵状態のラスボスが使えるというすごいご褒美付。
      • 周回の仕様も従来のようなセーブデータに周回数を記録する方式でなく内部データとして記録する方式なので、例えデータを全部消したとしても周回数がリセットされないのも良心的。
    • GBAのFEにあったサウンドルームを搭載しており、更にはゲーム中で使用されたムービーが見れたり、なんとキャラクターの公式イラストまで見れる。
    • しかも蒼炎に限ったものではなく、GBAのFEとの連動によりGBA3作全てのキャラクターイラストも見られる。凄まじいサービス精神である。
      • ただし、発売時期の関係上『聖魔』のイラストは一部のキャラクター(今作発売時点でメディア露出していたもの)だけ。全員分のイラストが見られるようになったのは『暁』発売後しばらくしての公式ホームページであった。
  • シナリオは一部伏線が放置されたままエンディングに入ってしまうため、一部では評価が低かったが、 残った謎を明らかにした次回作の評価が芳しくなかった こともあり、現在ではむしろ「いい感じに王道っぽさがある」「マップの構成がストーリーとうまく融合している」など好意的に見る人の方が多くなっている。
  • また序盤で主人公の父親が宿命の敵に殺されることをはじめ(ムービー付き)、ベオクによるラグズの差別、なりそこないの存在、人体実験、ベグニオン帝国の腐敗貴族の横暴、といった陰惨・暗めの描写が多く、そしてそれらの陰の部分に負けないほど味方軍のたくましく生き生きとした雰囲気、ラグズとの和解といった陽の描写も強いためバランスがよく、負の設定の生々しさを交えた紋章・聖戦のシナリオに近い色合いになっている。
  • 更に主人公アイクは『烈火』のへクトル、『聖魔』のエフラムを踏襲したようなアクティブで熱い性格の主人公であり感情移入しやすく、しかも歴代主人公の中でもトップクラスの強さと相まって非常に人気が高い。
    • 歴代主人公とは違い王族ではなく、傭兵という設定もシナリオ中に十分生かされている。
  • ラスボスのアシュナードは「主人公の専用武器とラグズ王族でしかダメージを与えられない上に必殺無効」「それまでのラスボスと比較しても高いステータスを持つ」「移動力も高く、戦場を縦横無尽に飛び回る」という「固い、強い、はやい」の三拍子を揃え、現在に至るまでシリーズ最強のラスボスとして君臨している。ストーリー上でもゲーム序盤から全編にかけて登場するため、これまで弱いとか地味と言われていたラスボスたちに比べて圧倒的な存在感を持ち、これぞラスボスだと好評である。
    • 彼に対する描写が多めなのも好評であり、他のユニットでの戦闘会話が非常に多い。中には即死の危険があるユニットでの戦闘会話も。
  • またシリーズ中でもとりわけてネタとなるイベントが多い。
    • 特にファンの間で「しっこくハウス」、「ボルトアクス将軍」と呼ばれているイベントは伝説級と言われており、そのネタのフラッシュまで作られたほど。
    • こちら側のユニットが敵に説得されて寝返るというイベントもある。これは多くのプレイヤーがまず引っかかるだろうと思われるシチュエーションであったため、このイベントに唖然とするプレイヤーが続出した。
      • だがある方法で回避することが可能。また、今までにない自軍側に寝返ってしまったユニットに対する敵将の気持ちが分かり、その敵将が敵軍とは思えない屈指の善人であることも加わった貴重なイベントである。
      • が、その自軍ユニットが寝返ったデータを次回作への引き継ぎに使用するとフリーズしてしまうバグが存在。
  • そして小ネタ面では、アイクとその宿敵との会話が主に取り上げられる。
    • これは、序盤でいきなり登場する宿命の敵と戦闘して、1ターン耐えてマップをクリアすると拠点会話に特別な会話が追加されるといったもの(戦闘そのものは任意)。
    • 当然、この宿敵は負けイベント同然のステータスを持つ強さを持ち、主人公も余程育てていなければ2回攻撃を食らって死ぬのが普通である。もちろん死んだらゲームオーバーで最初からやり直し。ただしあるスキルを使えば(運ゲーではあるが)耐えることが可能。

問題点

  • パラディンが攻撃後に再移動で撤退でき、武器を2種類使えて上限も高いなど強すぎる。
    • それだけでなく専用奥義が相手に与えたダメージ分だけ体力を回復する『太陽』、後述の『騎士の護り』による守備と魔防の底上げなどかなりの厚遇。
    • さらにパラディンへ昇格できる下級兵は4人、最初からパラディンの上級兵は2人と人数が多い。
    • このため、武器が一つしか使えず移動力も高くない専門歩兵はパラディンに大きく見劣りしてしまう。
      • 特にソードマスターとバーサーカーに至っては奥義も不遇。詳しくは後述。
  • ソードマスターとバーサーカーの弱体化。
    • 前作までと異なり今回は武器が一つしか使えない兵種に必殺補正がなく、素の状態では強みがない。
      • これは問題点として、海外版では必殺補正を復活させている。
    • それでもスナイパーやハルバ―ディアについては強力な奥義を持っているが、ソードマスターの奥義は2.5倍のダメージを与える代わりに武器が5倍壊れる『流星』、バーサーカーの奥義は攻撃時に力の1/4を加算する『鳴動』、と奥義でありながらどちらも一般スキルに劣る
      • さらに槍使いが多いせいで槍に弱いソードマスターは格段に辛く、ランスバスターのような槍対策の剣も今回はない。
  • S武器の問題。
    • 剣と槍にはあるのに斧には無く、雷と光と杖はあるのに炎と風には無いといったところ。
      • しかも槍は本編中では入手できず、条件を満たせばトライアルマップでのみ使用可能。光も基本的に入手不可だが、ある裏技を使えば入手できる。
      • 『烈火』や『聖魔』と同様、今作も一つの武器レベルしかSにできず、Sランクの補正もないので風や炎のSは完全に地雷。
      • さらにSランクの弓はスナイパー専用。性能も4マス先だけを攻撃できるというもので、相手の射程2の弓に反撃ができない
      • 一応武器レベルを次回作に引き継ぐことが可能なキャラも存在するが、引き継げない武器レベルも結構存在する(ステラの斧やイレースの炎風など)。
      • 解析ではS武器の斧はグレイルの使用した「ウルヴァン」、風と炎は『暁の女神』に登場した「レクスカリバー」と「レクスフレイム」である事が判明している。また、3つとも国内版のデータにも入っており、武器グラフィック・エフェクトもちゃんと作られている。ウルヴァンはともかく、雷のS武器は普通に手に入るのになぜ炎・風魔法の方が登場できなかったのかは不明。
  • 特効の倍率変化による問題
    • 特効の倍率が従来の3倍から2倍になった。この影響で特効状態でも銀の武器より弱い展開が続出し、飛行系に強いはずの風魔法の威力が通常の雷魔法の威力と大差なくなっている。
      • さらにこれらの特効武器は従来よりも重く設定されており、序盤で使うには使いづらく終盤では必要がないという状態。
    • これによってパラディン、ジェネラル、ドラゴンマスターは特効による脅威が失われ、それぞれが猛威を振るった。
      • アーマーキラーにビクともしないジェネラルや銀の槍に劣るナイトキラーを恐れもしないパラディンなどもはや敵なし。
    • 結果としては不評だったのか、暁以降では従来通りの3倍に戻されている。
  • 戦闘アニメが地味でかつ長くストレスがたまる。マップ上ユニットが3D描写されているためアニメOFFでも見れるが、そっちも妙にもっさりしている。
    • 特にマニアックモードでは敵の数がものすごいことになるため、「余裕で漫画が読める」などといわれるくらい敵ターンが長くなる。
      • ただしこの点についてはFE初の3Dであるためノウハウ不足ということもあり仕方が無いという声もある。
    • 実際、続編の『暁』ではテンポが改善されかなり派手・スピーディーになっている。またそうでなくても必殺時や奥義のアニメは当時を考えれば頑張って作られている方。
  • 時々フリーズする。
    • これに対してはマップ攻略中に一旦中断してすぐ再開 することで回避できるのでそれほど問題ではない(公式回答より)。
    • 持ち物一杯の時に、8文字の道具(マジックシールド、サンダーストームなど)を輸送隊に送ると必ずフリーズする。
    • しっかり守らなければ最悪の場合会話を見るだけでもフリーズするので要注意。
      • 唯一の救いは再現性のあるフリーズばかりと言う事だろうか。
  • スキルや奥義の性能にかなりの格差があり、実用的ではないものが多い。
    • ある章で仲間の加入を断ると代わりにスキル「回復」を習得できるアイテムが貰えるが、これを習得可能な仲間ユニットはすでに「回復」を習得しているため、まったく役に立たない。
    • 仲間ユニットの一人、サザは「大器晩成」と言う「経験値入手量が減る代わりに成長率が上がる」効果を持ついかにもなスキルを持つが、初期レベル1・職業は戦闘能力の低い盗賊・上級職になれないと多くの欠陥を持っているため、事実上まったく役に立たない。
      • 次回作の引継ぎもあるためサザの育成は無駄ではないが、その次回作でもサザの性能は微妙なままである。
    • 奥義は例えば、獣牙族の奥義の一つである「咆哮」は「1マップに1回だけ、隣接した敵兵一人を1ターン移動不能(「行動不能」ではない)」にするというもの。見てのとおり実用性に欠ける。
      • また、ベオクの弓兵ユニットの奥義である「狙撃」はこれの実質完全上位版であるなど、奥義の当たり外れの差が酷い。
  • BGMが印象に残りにくい。
    • 単体で聞く分には良曲も十分に多いのだが、前作以前や次回作のBGMが印象的であるのに比べると見劣りするように感じてしまう。
    • しかしそれ以上に問題なのはBGMの音量が小さい事である。対して効果音やフェイズジングル(自軍や敵軍の行動開始時に流れるファンファーレ)の音量は適切(人によってはややうるさく感じることも)であるため、BGMが流れていることに気づかず、気づいてもジングルなど他の音がうるさくなるから音量が上げられないというプレイヤーが後を絶たない。
      • 設定でBGMと効果音の音量を個別に調整する機能はあるが、BGMとジングルの調整は共通で行われるため結局問題の解決には至らない。
    • 前述の通り良曲も多く、下記のように『スマブラX』には今作出典の曲が何曲か収録されている。また、中盤、およびエンディングで流れる「Life Returns」はシリーズ初のボーカル付きBGMであり、リュシオンとリアーネ、二人の重唱の魅力がこれ以上なく再現されており、人気を集めた。ゲーム中に流れるボーカル付きのBGMは、「if ひとり思う」が登場するまでの長い間、この一曲のみであった。
  • 進展の遅いストーリー。
    • 同じ戦況のもとでの戦いが連続し、ストーリー的に単調・冗長な面が目立つ。
      • 終盤は自軍が敵陣を侵攻するストーリーが12章連続で続くが、その間は常に自軍の攻め一辺倒で、基本的に自軍の勢力を根幹的に覆すピンチなどはない。一応、兵力的には敵軍優位という状況が続く。中には丸ごと消滅してもストーリー的には影響のない章も複数存在。
    • 地理的な移動がなかなか起こらない。
      • せっかく広大な大陸を用意したのに、地理的には足踏みやとんぼ返りをすることが多い。
      • 第6章から第9章まではすべてガリア北端が戦場となる。次の2章は引き返してクリミアへ。
      • 大陸に存在する7か国中、2か国にはゲーム終了まで訪れることすらないという、何とも勿体ない事態に。また残る5か国中、1か国にはイベントで船を接岸するだけに留まる。
      • 「訪れない国の存在」はシリーズ中でも異例(続編持ちのシリーズ作は除く)。

賛否両論点

  • 秘密の店の廃止
    • 特定の場所で待機すると珍しいアイテムが購入できるシリーズ恒例のお楽しみ要素、秘密の店が廃止されている。
  • 練成関係にもバグがあり、元の武器に必殺補正がついている場合、それを0にする事によって必殺率255の武器が作れてしまうというひどいバグがある。
    • 当然ながらマニアックであろうとこれがあればバランスは大崩壊する。そのため、ファンの間では縛るのがもはや常識と化しているほど。
    • ただし、その対象は細身シリーズやサンダーなど元が弱い武器なのでダメージが通らなければ意味がないし、またあまりに単純かつあからさまなバグであるため、ワザと残したんじゃないかという疑惑まである。
    • 通常だったら鋼や銀を錬成するだろうし、進んで細身系統を錬成しようというプレイヤーは稀であるため。今作では弱体化させるにも強化させるのと同等の金額が上乗せされるため尚更である。
    • 今作はシリーズ中でも最も敵の守備面が高いと言われる作品である。上記で挙げた2種類はソードマスターや魔導士が扱う系統であり、両方とも今作で火力を大きく減らされたクラスであるということもあるため救済目的で容認されることもある。
  • 地属性同士での支援効果があまりにも強すぎる。
    • どれくらい強いかというと、支援Aの地属性だと回避に+30%。これがあるだけで敵の命中率はダントツに下がり、結果前作でも言われた戦略性の崩壊が簡単に起こってしまうのである。
    • しかも主人公のアイクは地属性であり、支援相手の中に同じ地属性のオスカーという強い騎兵がいる。というわけで結局彼らに関しては超のつく避けゲーたるを避けられなかった。
      • それを差し引いてもマニアックモードは難しいのだが、いくらなんでもやりすぎという意見は多い。
      • ただし支援そのものを封印すれば敵の命中は常時50~60で安定する。現在では主人公が地属性であることを考えるとラスボスで詰まないための救済であるとも言われる。
        GBA3作などの近年のFEでは最高難易度で例え主人公だけになってしまっても、ラスボスがそこまで強くないためお助けキャラなどを駆使すればなんとかクリアできるようには調整されていた。しかし今作の場合、ハード以上の難易度で主人公だけになってしまうと、周りの取り巻きやラスボスの形態変化などの関係から専用武器やお助けキャラを以てしてもクリアは事実上不可能となる。
      • 上記のように地属性支援以外の支援効果は「あれば便利」程度の補正にとどまっているのもそのように扱われる根拠になっている。
  • 今作の特徴として、全体的に敵味方ともにHPが低く守備力が高めで、かなり守備ゲーの傾向が強い。が、強すぎるとも。
    • 理由としては敵にあまり魔道士が登場しない、敵味方ともに守備面が上がりやすい成長率に設定されているため敵の攻撃力がそれほど高く感じないといった要素が挙げられる。
    • 止めを刺すかのように今作では守備魔防が+2される「騎士の守り」といった道具が登場。これだけならまだ良かったのだが…
      • なんと隠し効果で「速さ成長率+30%」というとんでもない補正があることが判明。しかもこれがアーマー系につけられる為結果速さと守備が異常に高い凄まじいバランスブレイカーが容易に作れてしまうのである。
      • 一応擁護するとすれば「自由度が上がった」「アーマーが使いやすくなった」といったものが挙げられるが、それにしても強力すぎる。一応装備品なので着脱は自由。
    • このため、アーマー系統が非常に強力。意図的にそうした節は否めないが、上記アイテムを併用することで序盤から終盤までほぼ全ての敵の物理攻撃をシャットアウト可能なのはやりすぎである。
    • 以降の作品では魔導士の登場回数を増やす、敵に積極的に銀装備など強力な武器を持たせる、更に威力を高くした錬成武器を持たせるなど火力をインフレさせる方向でアーマーの弱体化を図っている。また、守備力に補正をかけるアイテムも登場しておらず、あったとしても魔導士専用などといった扱いになっている。
  • 敵将のネーミングに妙なものが多い。
    • 「ヒブッティ」、「ノシトヒ」、「ガシラマ」、「シークコ」など、由来不明の変な名前の敵が大半を占めており、一部でネタにされている。
      • FEシリーズもかなり歴史のあるゲームシリーズとなっていたため、「スタッフが敵の名前付けにネタ切れを起こして適当なカタカナの羅列に走ったのでは?」といった邪推も呼んだ。
    • もちろん、こういった名前が笑えるという意見もあるが、しっくりこなさすぎて気に障るという意見も見られる。
    • こういった名前の傾向は次回作の『暁』でも同様である。そこからさらに後に発売された完全新作である『覚醒』からは、再びまともな名前が多くなった。

総評

  • 発売前の不安は以上の内容によって払拭され、良作には間違いないが長い歴史によるシステムのマンネリ化に陥っていたGBAのFEシリーズから、新要素の導入やゲームバランスの刷新によってシリーズの新たな境地を切り開くことに成功した。
    • 様々な新システムを搭載したゆえか粗は見受けられるものの、システムの完成度自体は記念作品にふさわしい十分な出来であり、後続の作品は全て今作のバランスをベースに作られることとなっていく。
    • 主人公のアイクはそれまでのFEの主人公とは一味違った「熱血漢を地で行く少年」と言えるようなキャラクターが大人気となり、その後『スマブラX』に参戦した事もあり、『聖魔』以降若干低迷気味だったFEシリーズの人気を盛り返した。こういった主人公のキャラ付け傾向も後作に引き継がれていくことになる。
  • 据置新作にふさわしい真新しさを兼ね揃えた概ね隙のないクオリティで、古参・新参問わず購入者から好評を得た。発売されたハードが生産数の少なく、かつ末期であったGCで、売り上げが特別高いわけではなかったのが惜しまれる作品である。
    • とはいえ本作の発売週はGCの売り上げが他の週の2倍になったという逸話があり、これはかなりの快挙である。任天堂内でも若干低迷気味だった、GCとFEシリーズそれぞれの地位の向上に少なからず貢献した作品といえよう。

中古価格の高騰

  • 次世代機のWiiが大ヒットすると次回作かつ続編である『暁』がハード売り上げに非常に貢献した『蒼炎』の影響でWiiのキラータイトルとして発売され、ファンの間でも「面白いらしいけどやったことがない」というような扱いを受けていたこの作品は再び注目されるようになった。
    • そのため、以前は中古価格が高くて2,000円程度しかなかった(安くて1,000円を切っている店すらあった)のが『暁』発売後から急激に高騰し、中古でも新品定価とほぼ同じもしくは上回る価格が当たり前となってしまった。
      • しかもそれは序の口に過ぎず、その後『スマブラX』にアイク(それもデザインは蒼炎アイク寄り)が参戦したことをきっかけに、ただでさえ高くなっていた中古価格が更に高くなってしまった。
      • WiiでGCのゲームが遊べるのと、『蒼炎』のクリアデータを『暁』に持ち越すことができるという仕様もこの高騰の原因だろう。
    • なお現在はすでに生産を終了しており、上記の持ち越し仕様のためかWiiで遊ぶセレクションでの発売も絶望的。だがゲーム自体の評判も良いこともあって手放す人が非常に少なく暁発売及び『スマブラX』発売から数年たった現在でも中古価格は下がるどころか上がっている始末。
    • なお『スマブラfor』にもアイクは続投している。外観が『暁』スタイルにチェンジしたが、ワザ内容は概ね同じ。
      • 残念ながらWiiUではGCソフトへの後方互換性を失ってしまっているが、値段は更に上がる事が容易に想像できるので興味のある方はぜひお早めに購入することをお勧めする。

余談

  • 上述の通り『大乱闘スマッシュブラザーズX』,『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』にアイクがプレイヤーキャラクターとして登場。
    • シリーズのBGMも今作からの引用が多く、漆黒の騎士の戦闘曲や今作に登場する敵ユニット・オリヴァーのテーマソングまで収録されている。
    • フィギュアにはアシュナード、漆黒の騎士が登場。エリンシアやサザのフィギュアもあるが、デザインは姿は『暁』に準拠。
    • また、アイクの他にグレイル、ミスト、漆黒の騎士、アシュナードのシールも用意されている。
  • 海外版では、今作で主に冷遇気味と言われたソードマスター・スナイパー・バーサーカーに必殺補正が追加されている。
    • その代わりやり応え抜群のマニアックモードが遊べないこともあってか、日本版購入ユーザーからは叩かれることは無かった。
  • 今作は他作品に比べバグやフリーズが目立つが、どうやら今作はディスク容量の限界以上に大量のデータが圧縮されているらしくGC本体にかなりの負荷がかかっているようで、フリーズやバグはこれが原因であるという説がある。
    • ハードに起因するフリーズバグが多い関係上、GCではなくWiiで遊ぶことでフリーズのリスクはやや下がるとの説もあるが、それでも完全になくなる訳ではないようだ。
  • アイクの初期名はパリス、デイン軍の初期名がデロス兵であった。この「パリス」という名はのちの『ファイアーエムブレム 覚醒』にて再利用されている。