「クロックタワー2」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

クロックタワー2 - (2023/03/29 (水) 10:00:51) の編集履歴(バックアップ)


クロックタワー2

【くろっくたわーせかんど】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 ヒューマン
発売日 1996年12月13日
定価 5,800円(税抜)
備考 プレイステーションマウス対応
廉価版 PlayStation the Best
1998年3月19日/2,800円
配信 ゲームアーカイブス
2012年2月22日/600円
判定 良作
クロックタワーシリーズ
クロックタワー / 2 / ゴーストヘッド / 3



生存確率1/10000の恐怖



概要

SFCで発売されたアドベンチャーゲーム『クロックタワー』の続編。
ダリオ・アルジェント監督のサスペンスホラー映画『フェノミナ』と『サスペリア』を下敷きにしたゴシックホラー調の世界観がベースであった前作に対し、今作ではサイコホラーサスペンス調の世界観を取り入れ、平穏な日常が殺人鬼の出現によって一瞬にして非日常に変貌してしまう恐怖を描き出している。

ハードがPSに移った事でグラフィックとサウンド・演出面が強化され、前作以上にパワーアップした。


ストーリー

前作から1年後。

バロウズ邸で発生した猟奇殺人事件は「クロックタワー事件」と呼び習わされ、
事件の生還者ジェニファーが証言する不死身の怪物はマスコミによって「シザーマン」と名づけられ、
恐怖のシンボルとして巷の若者達の間で取りざたされていた。

ジェニファーはオスロ大学の助教授ヘレンに引き取られて姉妹のように仲良く暮らし、徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。
一方、ヘレンの恩師バートン教授は、彼女の証言する事件の犯人「シザーマン」を恐怖が生み出した妄想と決め付けつつも、
犯人像の割り出しに手間取り、真実を知る為として催眠治療によって彼女の記憶をムリヤリ引き出そうとし、
そんなやり方にヘレンは反感と疑問を抱いていた。

そんなある日。 ジェニファーがバロウズ邸での戦いで葬り去ったはずのシザーマンが再び現れ、血と恐怖に塗れた非日常へと人々を引きずり込んでゆく……。


ゲームシステム

  • 本作では、全3章のシナリオが存在し、インターミッションモードとシナリオ本編の2つから構成されている。
    • インターミッションは、次のシナリオへ進む為にキャラクター同士で会話をしてフラグ立てをしていく*1日常と非日常の対比がテーマとなっている本作における日常のシーンであり、全て日中の明るい時間帯で進みシザーマンは出現しない。
    • 時折現れる選択肢によってシナリオが分岐し、シナリオの流れに影響を及ぼす。場合によってはバッドエンド確定でやり直さなければならなくなることもある。
    • フラグを立て終えるとシナリオ本編へ移行し、シザーマンの出現をもってゲーム本編が開始される。
    • エンディングはジェニファー編、ヘレン編双方で5種類ずつ、計10種類のマルチエンディング方式。
      • それぞれA~Eの5つ、全10種類。ランクD以外のエンディングにはムービーが用意されており、スタートメニューのエンディングリストからいつでも閲覧可能である。
  • カーソルによる操作法は概ね前作をそのまま踏襲している。
    • 敵が出現しておらずBGMなしで無音の状態を通常状態と呼び、カーソルを合わせることでカーソルの形が変化するオブジェをクリックポイントと呼ぶ。通常状態中に画面内のクリックポイントをクリックすることで、調査・移動・アイテムの使用を行う。
    • 画面内をダブルクリックすると、キャラクターが走る。
    • 画面上部のシネスコ部分にカーソルを当てると、入手したアイテムがアイコンで表示される。これをクリックすると、アイテムのアイコンがカーソルの先についた状態になるので、アイテムを使う対象をそのままクリックすることでアイテムを使用する。
    • アイテム欄に表示されず、特定の地点をクリックすることで自動的に使用されるアイテムも存在する。
  • 特定のクリックポイントをクリックする又は撃退後の時間経過による確率抽選*2でシザーマンが出現し、BGMが鳴り響くと共に 逃走状態 に移行する。
    • この時にはシザーマンの撃退及び回避に有効なオブジェにしかクリックポイントが発生しなくなり、完全に撃退・回避しないかぎり逃走状態は継続する。
      • 今作では回避ポイントと見せかけた罠や特殊な手順を踏まなければ回避できない罠が多く設けられており、一筋縄では行かなくなっている。*3
  • シザーマンに追い詰められると、パニック状態に陥りカーソルが激しく点滅する。この状態の時にクリックボタンを規定回数以上連打することで、体力の減少と引き換えに、緊急回避して一時的に危機を脱するができる。(通称:RSI(連打せずにはいられない)システム)
    • ただし、ジェニファーとヘレンの場合、回避を成功させるためにはシザーマンと同じ高さで隣接する事が条件。これらを満たさなければ問答無用で殺されてしまう。
      • 一例としてあげると、階段を下りた直後に階段から降りてきたシザーマンに接触してパニック状態になる等、段差がある場所でシザーマンが主人公よりも高い位置にいる場合が該当する。
        これは、この2人がシザーマンの攻撃に対して下方に回避行動をとるため*4。男性陣はハサミを受け止めて動きを封じた後に殴り飛ばして回避するため、条件を満たす必要がない。
    • シザーマンの襲撃を一時回避すると、自動で一番近い部屋に逃げ込むか、室内であれば部屋の外へ出る。
  • 今作では体力は3段階となっている。
    • 前作にあった「疲労」の概念は廃止されており、体力の減少条件はある例外を除いてパニック状態回避のみ。減少した体力は通常状態時にのみ、時間経過で回復する。
      • 体力はカーソルの色で表わされ、白が最大で赤が最低。カーソルが赤の時にパニック状態になると死亡が確定し、タイトル画面に戻る。
        メニューからコンティニューを選択すると、体力が一段階分だけ回復し殺された地点に入室した直後の状態から再スタートとなる。
  • 本作ではシザーマンがリアルタイムで追ってくるようになっており、前作に存在した『シザーマンが侵入してこない安全地帯』も極一部を除いてなくなった。
    • このため前作で使えた「扉に出入りして仕切り直し」のテクニックが不可能になり、じっとしているとすぐ追い詰められてしまうのでより緊張感と焦燥感が増した。
      • ただし、部屋に入室した地点の扉の前から一歩も動かなかったり、クリックポイントに向かって移動している間はシザーマンは侵入してこないため、焦って動き回るよりは落ち着いて行動すれば対処はしやすい。
  • 前作のオートセーブに代わり、メニュー画面から任意でセーブ可能(逃走状態中は除く)で、プレイ途中で任意のデータから再開することも可能になった。
    • データも最大で3つまで保存できる為、バッドエンド後の再挑戦の手間を省けるようになった他、トラップが仕掛けられていそうな個所を調べる際の保険などにも使える。

メインキャラクター

物語に関わる重要キャラクターを記す。

+ ...
  • ジェニファー・シンプソン ―Jennifer Simpson―
    • バロウズ邸で発生した猟奇殺人事件『クロックタワー事件』の生還者。前作に引き続く本作の主人公。
      事件後、事件の調査を担当したオスロ大学の犯罪心理学助教授ヘレンに引き取られ、バートン教授の催眠治療を受けている。
      育ちゆえか、可憐で儚げな容姿とは裏腹に精神的にはタフで逆境に強い。
    • 前作から1年後ということもあり、服装や雰囲気も大人びており、取材を称して近づいてきたノランを軽くあしらったりと、年相応のコケティッシュな一面も見せ始めている。
  • ヘレン・マクスウェル ― Hellen Maxwell―
    • サミュエル・バートン研究室所属の犯罪心理学助教授。30歳。本作のもう1人の主人公。凛とした雰囲気を持つ知的美人。
      ゼミ参加がきっかけで才能を認められ研究室に入ったが、最近ではバートンのやり方を疑問視し彼と対立している。
    • 事件後に重要参考人として保護されたジェニファーを引き取って大学の寮で共に暮らしており、姉妹のように仲がいい。
      再び姿を現したシザーマンから自らの身とジェニファーを守るため、シザーマンを倒すための方法を探ることに尽力する。
  • ノラン・キャンベル ― Noran Cambell―
    • オスロウィーク新聞社の三流イエローペーパー記者。26歳。
    • クロックタワー事件に強い関心を持ち、ジェニファーに近付いたことで事件に巻き込まれてしまう。
      一見、軟派で軽率だが、記者としての洞察力と取材力は優れており、ジェニファーの証言する不死身の怪物シザーマンの存在を信じて一行を積極的にサポートする。
  • スターン・ゴッツ ― Stan Gotts―
    • クロックタワー事件担当の警部補。42歳。事件発生時、担当警部が入院中だったため捜査を担当することになった。
    • 経験至上主義者で超常現象などは一切信じない頑固者だが、そんな彼もまた、否応なしにシザーマンのもたらす死の恐怖に引きずり込まれていくことになる。
    • ジェニファーにはいつも警部と間違えられており、その都度、律義に訂正するのがお約束である。
  • サミュエル・バートン ― ProfessorBurton―
    • 南オスロ大学犯罪心理学教授。クロックタワー事件を引き起こした犯人に興味を持ちプロファイリングを行う。52歳。ジェニファーとエドワードの治療も受け持っている
    • “不死身の怪物シザーマン”の存在を冷徹に否定する一方、一連の事件を「面白い」と言い放つエキセントリックな一面も。ヘレン編において物語の核となる。
  • エドワード ― Edward ―
    • クロックタワー事件の現場から救出されたもう一人の生存者。見る者を卑下させる高貴な雰囲気と雪のような素肌を持つ、金髪碧眼の美少年。推定10歳。
    • 発見時、事件を含む全ての記憶を失っており、身元不明のままグラニット孤児院に引き取られた。「エドワード」はグラニッド孤児院の教師で彼の後見人となったケイが与えた仮の名前。
      ジェニファーとともにバートンの治療を受けており、彼女をお姉ちゃんと呼んで慕っている。

この他、物語に直接関わらないNPCも含め多数のキャラクターが登場。その生死はプレイヤーの手に委ねられている……。


評価点

  • 3D化により、立体化されたキャラクターとカメラワークが映画的臨場感を盛り上げている。
    • キャラクターの動きにモーションキャプチャーが取り入れられ、リアルな動きを追求している。
  • 数々の既存のホラー映画のモチーフを取り入れた作風
    • 本作ではホラー映画全般からキャラクターのモチーフやイメージを取り込んでおり、ホラー映画ファンをにやりとさせてくれる。
  • シザーマンの出現により、日常的に見慣れたはずの場所が瞬く間に非日常的空間と化していく恐怖感と、PS初期ながらのあまりキレイでない無骨なポリゴングラフィックが醸し出す独特なホラー映画的空気感が、前作とは一味違った雰囲気を演出している。
  • 主人公が2人になった事で、同じステージでもストーリー展開と謎解きの手順が異なる「二度美味しい」作品となった。
    • それぞれのシナリオでサブキャラクターを操作する機会もあるので、プロローグを含めれば操作キャラは全5人である。
      • ただし、ジェニファー編の第2章で発生する分岐では、片方のシナリオでヘレンを操作することになるため、総合的にはヘレンを操作する機会が多い*5
    • ジェニファーとヘレンではストーリーは勿論、オブジェクトへのコメントやキャラとのやり取りも異なり、それぞれの性格や立場の違いがよく表れている。
      • ジェニファーは明かりに蝋燭を使ったり、短剣がキーアイテムになったりと前作のようなゴシック調の演出やアナクロな仕掛けが多い一方、ヘレンは懐中電灯や拳銃と言った文明の利器を活用するなど、謎解きにもそれぞれ違ったイメージが与えられている。
      • 他にもジェニファーとヘレンでマップ内のカメラアングルや微妙な演出が異なっていることが多いので、探索する同じ部屋でも異なった印象を感じやすい。
  • シザーマンのビジュアル的恐怖感のアップ。
    • 本作のシザーマンは、コートを着込んで更に巨大で無骨なハサミを構え、片足を引きずりながら鋭い開閉音を鳴らして無言で殺しに掛かって来る。3D描写により様々なアングルから描写される臨場感も相まって、より恐怖感が増した。
    • 神出鬼没ぶりは前作譲り。クリックポイントのトラップで出現する際の登場の仕方も前作に負けじと劣らぬ奇抜かつ大胆なもので、時には思わず笑ってしまいそうな方法で現れることも。登場時の恐怖を煽る演出にも一段と磨きがかかっている。
  • 前作に比べ、死亡描写はかなり直接的でグロいものが多く、プレイヤーの恐怖感をさらに盛り上げる。
    • シザーマン回避失敗時には、巨大なハサミで串刺しにされるシーンが克明に映し出される。
    • また、特定のゲームオーバー演出では、恐怖のあまり身がすくんで動けなくなった所で首を切断されるという珍しく本来のハサミの使い方をする恐ろしい演出がある。
  • シザーマン出現イベントを始め、舞台はどこも恐怖演出がてんこ盛り。クリア後の再プレイで脅かされる事も珍しくない。
    • クリックポイントを調べるだけでなく、部屋への入室直後や時間経過によるランダム、さらには特定ルートを通行するだけでも発生する場合もあるのでいつ何が起こるか分からない緊張感はまさに恐怖。
    • 第1章は手順を知っていればすぐにクリアできる*6が、建物内はさっさと脱出してしまうのは勿体無いほどの恐怖演出が随所に用意されている。時には早く逃げ出したい気を抑えて、敢えて恐怖に身を震わせてみてはいかが…?
  • 相変わらず無音とBGMの対比による恐怖感も健在。
    • シザーマン登場時のBGMはサイコサスペンス調にふさわしく、より喧騒感と緊迫感あふれるものになっている。
      • 前作と違って時間経過でもシザーマンは出現するため、探索している最中に徐々にBGMがフェードインしてくる様は正に冷や汗ものである。
    • 最終章で登場人物が殺害されている部屋では恐怖感を煽るBGMが流れ、プレイヤーにより強烈なショックと恐怖を与えてくれる。
  • 犯人探しの要素
    • 前作同様、殺人犯から逃げるというゲーム性がメインになるが、シザーマンの正体にまつわる伏線もさりげなくちりばめられており、注意深く見ていくとそれとなく正体を察することができるようになっている。
  • 最終章は前作に劣らず即死トラップの宝庫であり、気を抜けばすぐに「DEAD END」の文字が画面に表示される事必至である。
    • 更に最終章の登場人物の生死はプレイヤー次第。各キャラに生存条件が設定されており、生存時間内もしくは一定条件を満たした状態で再会できないと死亡してしまう。何も考えないでグダグダなプレイをしていれば、気がついた時には死体だらけなんて事はザラ。しかも殺害方法はどれも例によってエグい。中には死体を調べたら「俺がやった」と言わんばかりにシザーマンが出現するケースも。
    • 最高ランクのエンディングを迎えると最後に生存者数が表示される*7。果たして何人生き残れるか…?
  • ヒント機能が追加された
    • ノーヒントが前提であった前作に比べ、少し親切になった。計10個。
      • ただし、特定の場所をクリックしないと見つからない。全部見つけるにはジェニファー編、ヘレン編双方のシナリオ内でよく調べる必要がある。
  • クリア後のおまけも用意されている。
    • 操作キャラ全員とシザーマンに隠しコスチュームが用意されている。
      • コスチュームと言っても色違いのキャラが多いが、ジェニファーはウエイトレス服(多分)にセーラー服と実に優遇されている。コスチュームチェンジをするとシザーマンのコートも黒くなるので、何となく怪しい組み合わせに。
      • ゴッツ警部「警部補だ」もコスチュームには漢字の当て字が書いてある等ネタには事欠かない。
    • 更にエンディングコンプリート後のおまけはシュール過ぎてホラーを喜劇に変えてしまうだろう。
    • その他、コンセプトアートの閲覧やBGMの視聴、字幕の表示方法を変更できる隠しオプションも選択可能。

賛否両論点

  • セーブ・ロードの自由度の増加
    • ゲーム自体が繰り返しプレイ前提の作りになっているので純粋に利便性が増した一方、緊張感が削がれるという意見もあるにはある。
  • 最終章の舞台は廃墟となった古城だが、それまでの舞台に比べて内部が明るくなっている*8。また、中庭やテラスなどで屋外に出る事もあるが、こちらも明るい。
    • そのため、「雰囲気で十分怖い」という意見もあれば「不気味さがやや弱い」という意見もある。
      描写上は城に侵入した時間帯が日中なので明るいこと自体はおかしいことではないが。
    • ただし、城内の一部では暗闇に包まれて主人公の周りしか視界が見えないエリアがある他、教会内は前シナリオ同様の薄暗さであるため、これらのエリアの探索の不気味さはとても強い。

問題点

  • 移動しにくい
    • キャラクターの動きに合わせてカメラが移動する為、どこから移動してきたのかが把握しにくい。
    • ダッシュ中にクリックボタンを押すと立ち止まってしまう為、スムーズに動かしにくい。
      • この反省を生かし、次回作『ゴーストヘッド』ではカーソルを少しずつ滑らせつつ連続でクリックすることでスムーズな移動が可能になっている。
    • ドアをダブルクリックしてダッシュで到達させる場合、ドアの前で変なポーズのままぐるぐる一回転してからやっとストップ→ドアを開けて移動、という感じになりがちでテンポが悪く、その時の動きも滑稽に見えてしまう。
  • ゲーム内での描写不足が目立つ
    • バロウズ家の闇の歴史、悪魔の子供の出生の秘密など、ゲーム内で掲示される要素は多いのだが、描写が断片的で説明不足であり、1度クリアを達成しただけでは全容や詳細が理解し辛い。詳しいストーリーやキャラ設定周りを補完したければメディアミックスで発売された小説版の一読が必須。*9
      • 前作も真相に関する具体的な説明がゲーム中ではほとんどなかったが、SFCで容量に制約があったことや、主人公がジェニファー1人で本作の最終シナリオのようにゲーム中で仲間と多く会話するといったシーンもなかったため不自然さはあまりなく、深く語らぬことで想像の余地を残した、と捉えることもできる。
        一方の本作では、登場人物が増えてシナリオ中でのキャラ同士の会話シーンも増えたにもかかわらず断片的にしか語られていない要素が多いために説明不足感が否めない。
    • この点に関して製作者の河野氏は「(ゲーム内で明かされなかった設定に関して)あえて語らなかった」と上述の小説版にコメントを寄せている。
  • シナリオ終盤になるとだれやすい。
    • 全3章(内分岐シナリオ2つ)のオムニバス形式で、その内の1章、2章は比較的内容が短く、手順さえ覚えてしまえば短時間で終了させられるのだが、最終章のシナリオはそれまでと比べてやるべきことが一気に増え、前作同様に謎解きの手順と各エンディングに至るまでの経緯が複雑化していくので詰まりやすい。
    • そのため、何度も現れるシザーマンに対し、恐怖よりもうっとうしさの方が感じられやすくなってしまう。追跡のリアルタイム化や3D化による演出の強化も余計に面倒な感を助長している。
      • また、各シナリオには何度でも確実に回避できるポイントが最低一つは存在しており、そのポイントに気付くと安牌となってしまい、緊張感や恐怖感も薄れやすくなってしまう。手順が複雑化する最終章ではその傾向が一層強い。
  • スタッフロールは全エンディングで流れるのだが、これがスキップ不可。最後まで見ないとシステムデータへのセーブも行われないので毎回見る必要がある。
    • 10種類もエンディングが用意されているだけに、周回プレイに多少のわずらわしさが生じている。
  • マップが俯瞰視点の箱庭的表現であるため、全体的にせせこましさが感じられる。
    • 特に、最終章のバロウズ城は、設定上はそれなりに広大な城なのだが、キャラクターのスケールに対して内部がかなり狭く、窮屈な感じがある。
  • 評価点で少し触れたが、2章は邸宅と図書館の二つの舞台が用意されているが、図書館はどちらの主人公でも内容が全く同じ。
    • 邸宅はジェニファー編とヘレン編で操作キャラも謎解きも変化する一方、図書館の方はジェニファー編でもヘレンを操作する事になり、謎解きも脱出の手順も一切変化が無い。
  • ベストエンディングの到達条件に付いて(攻略情報に関するネタバレなので隠し)
    + ...
  • ジェニファー、ヘレン編双方において、AランクED取得の為に必須のアイテムが最終章以前のシナリオに存在している。
    その為、事前情報を知らないと見逃してしまい易く、アイテムの存在を知らないまま詰んでしまうことになり得る。
    • このことは第1章で手に入るヒントに書かれている。前述の通りヒントはなかなか見つけにくいので人によっては気付くのに時間が掛かってしまう。
    • しかもジェニファー編はフラグの関係で、そのアイテムが無いとAランクどころかBもCも迎えられず、Dランク直行になってしまう

総評

独特な洋画ホラー的な空気感と雰囲気は前作からそのまま引き継がれており、3D化を取り入れることで前作の持ち味であった映画的演出がうまく活かされている。
独特の敵モンスター「シザーマン」が持つインパクト、徹底したビジュアルデザイン、「喧騒と静寂」をコンセプトにしたサウンド、またホラー映画や実在の猟奇殺人犯のパロディ要素が多くのホラーファンに受け入れられ、ホラーゲームの代表作品の一つとなった。ホラーゲームファンはもちろん、ホラー映画が好きな人にもぜひおススメしておきたい1作である。


余談

  • 本作のPVは映画評論家で有名であった淀川長治氏が内容解説してくれるという非常に手が込んだ物であった。スタッフの本作に対する拘りが感じられる。
    + PV
  • テレビCMは海外ホラー映画の予告編を意識したドラマチックなもの。映像中には本編未使用と思われる大聖堂のような建物のグラフィックが移っている
    + CM
  • ナンバリングの読みは公式には「ツー」ではなく「セカンド」だが、OPムービーのラストでは「ツー」と読み上げており、少々紛らわしい。
  • ジェニファーのモデルがオマージュ元である映画『フェノミナ』の主演女優で、名前も同じジェニファー・コネリーなのは有名だが、本作のヘレンは『X-ファイル』のスカリー役で有名な女優ジリアン・アンダーソンをモデルにしているらしい。
    • 当初は『エイリアン』シリーズで知られるシガニー・ウィーバーをモデルにするつもりだったが、「もっと美人にしたい」という事から変更したという話もあり、恐らく最初はもっと年齢が上の設定だったのだろう。
  • 説明書には河野一二三氏を始めとするスタッフのコメントが記載されている。
    • 生存確率1/10000を謳うだけあり、河野氏曰くこのゲームで一度も殺されずにクリア出来たら「ジェイソンに襲われても生き残れる自信を持ってもいい」との事。
    • また、ランクの高いエンディングが(この作品にとって)最良とは限らず、特にベストエンドであるAランクエンドは明らかなご都合主義的展開という事で、ハリウッドバージョンと命名されていたとか。
      • なのでAランクが気に入らなかった人は自分にとっての最良のエンディングを見つけて欲しいとの事である。ただ、ジェニファー達の為に一度はハッピーエンドを見てあげて欲しいとも述べている。
    • ちなみにこの点はゲームブック風のスタイルでマルチエンディングを取り入れた公式ノベライズ版でも踏襲されており、「最悪な結末ほど最高な結末」という位置づけで描かれている。
  • 本作はジェニファー編とヘレン編でストーリー展開が異なる点について、海外フォーラムでどちらが正史なのかという質問に河野氏が回答している(リンク)。
    • 氏によると、正史はジェニファー編だが、バートン教授関連について理解するためにヘレン編も重要であるとの事で、一つの大きな事件を複数の側面から見るようなものとも語っている。
  • 海外版は初代が未発売で『2』が「CLOCK TOWER」名義で発売されている。
    • 更に日本を舞台にした『ゴーストヘッド』が向こうでは『II』として発売されたため、ナンバリングが微妙にややこしいことになっている(『3』はどちらも共通)。
  • 初代から20年近く経った2014年シリーズの産みの親の河野氏により、本人曰く「クロックタワーの魂を受け継ぐ新作ホラーゲーム」の制作プロジェクトの立ち上げが発表され、2016年に精神的続編『Night Cry』(PC版)が発売された。
    • PC版発売以降は音沙汰が無かったが、3年後の2019年には当初予定されていたPS Vita版も配信開始された。
  • レトロゲーム専門サントラレーベル「クラリスディスク」より、シリーズ初期3作品のサウンドトラックが発売された。

メディア展開


  • ラジオドラマ版
    • ラジオ番組「子安・氷上のゲムドラナイト」でラジオドラマがオンエアされた。リスナーの投票で放送されるシナリオが決まるというもので、同作品を収録したドラマCDには未放送分も完全収録されている。キャストも西村ちなみ氏や鶴ひろみ氏、真殿光昭氏に大塚明夫氏、佐藤正治氏と結構豪華な顔ぶれが並ぶ。
  • 小説家の牧野修氏が手がけたノベライズ版が、『クロックタワー2 アドベンチャーノベル』のタイトルで『ジェニファー編』と『ヘレン編』の2作発売された。
    • 選択肢によって展開が分岐する方式でゲームの雰囲気を再現する試みがなされている。本編では語られなかった多くの設定が明らかにされており本編の補完を兼ねた作品となっている。
    • 上述した通り本作の世界観を深く理解するには必読と言っても良い書籍だが、現在はプレミア化している。
  • 2008年に映画化の告知がされ、ポスター等も作られたが未だに音沙汰が無い。恐らくは凍結されてしまったものと思われる。