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ファイナルファンタジータクティクスアドバンス
【ふぁいなるふぁんたじーたくてぃくすあどばんす】
ジャンル
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シミュレーションRPG
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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メディア
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128MbitROMカートリッジ
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発売・開発元
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スクウェア
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発売日
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2003年2月14日
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定価
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5,800円
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配信
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バーチャルコンソール 【WiiU】2016円3月30日/702円(税8%込)
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判定
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なし
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ポイント
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ロウがきつすぎる 海外版は追加要素が多い ゲームとしての出来は良い 『FFT』とは別ベクトルの黒さ
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ファイナルファンタジーシリーズ関連作品リンク
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概要
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『ファイナルファンタジータクティクス』(FFT)の続編として出た作品。
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ストーリー的にはFFTとの関連はほとんど無い(舞台となる世界の名前が同じ「イヴァリース」である程度)が、『ファイナルファンタジーXII』との関連性が強い。
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ゲームシステムはFFTとほぼ同じ。『タクティクスオウガ外伝?』とは違い、ターンの順番が敵味方順不同・変動していく形式。
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最大の違いは新システムである「ロウ」。これが本作の賛否両論を招く点ともなっており、詳しくは後述。
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各キャラには性別の代わりに種族が設定されており、種族によって就けるジョブと召喚できる神獣が異なる。
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万能型の人間、物理攻撃重視のバンガ、魔法重視のン・モゥ、俊敏なヴィエラ、トリッキーなモーグリの5種類。
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アビリティは武器・防具を装備することで使え、マップをクリアすることで与えられるAP(アビリティポイント)が一定まで溜まると、その装備を外してもアビリティが使えるようになる、という『ファイナルファンタジーIX』と同じ形式。
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細かい点では「アビリティにチャージタイムがない」「レベルによるパワーアップの比重が大きい」など、やはり携帯機ゆえに簡単に進められるよう作られている印象を受ける。
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前作の儲け話のように街にあるパブで「クエスト」を受け、指定された拠点に行くことで戦闘を行い、ゲームが進行していく。
好評点
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グラフィック
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細かいところまで作りこまれたドット絵は、GBAの中でも高い完成度を誇る。
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武器はひとつひとつ違うグラフィックになっており、魔法も滑らかで時間がかかるなど演出が過剰にならない程度に抑えつつ見応えのあるアニメになっている。
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召喚魔法や神獣はスクウェアらしい派手で長い演出だが、両者とも使用頻度の少ない魔法であるため気になることはない。
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シナリオ
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後述のとおり賛否両論なところもあるが、明るい雰囲気ながらも所々に暗い要素を含んだシナリオは高く評価されている。
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本作はメインキャラクターが少年少女であり、前作のような戦争や宗教・階級・民族の対立といった重厚なドラマが描かれているわけではない。
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しかし、本作には現実からの逃避や対峙といった、現代の行き過ぎた個人主義に身近で深刻な問題を訴えかける一面がある。
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登場人物達のコンプレックスや、いじめっ子のコリン・ライル・ギネスの設定など、現代にも通じる暗さがある。
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システム
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FFTの基本システムを受け継いでおり、変更点はあるにしろ同様のシステムで遊べることを喜んだファンは多い。
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FFシリーズ恒例のジョブシステムによって、アビリティのコンプリートや青魔法の習得など、成長要素がそのままやり込み要素に繋がっている。
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やり込み要素
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クエストの総数は多く、6割以上が戦闘のないサブクエストではあるが、実に300ものクエストが存在する。是非コンプリートを目指したい。
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FFTと同じく、通常のプレイでは1~2個しか入手できずその機会も限られるレアアイテムが多数用意されている。
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「捕獲」コマンドで捕まえたモンスターが送られるモンスターバンクなど、その他のやり込み要素もある。
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音楽
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難易度
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「ウィーグラフとの一騎打ち」や「赤チョコボ」などの難所が多かった前作より格段に難易度が下がっている。
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ストーリー終盤にもなると強敵が増えてくる上、ストーリークリア後にはさらに手強い相手と戦うクエストもあるので、難しさを求める人にも問題はない。
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ランダムバトルがシンボルエンカウント制になり、逃げることも出来るようになった。
賛否両論点
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「ロウ」システム
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「Law」(日本語で「法律」)の名の通り、プレイヤーや敵の行動を制限するシステムである。破ると戦闘を監視する「ジャッジ」がすぐさま飛んできてサッカーのごとくイエローカード・レッドカードが堆積され、ステータス減少やアイテム没収などが行われる。特にイエロー2回かレッド1回を受けた場合は、「プリズン送り」となって一定期間戦闘に参加できなくなるという重いペナルティが科せられる。適用されるロウはゲームの経過日数と全体のゲーム進行によって変化する。
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「ダメージ50以下」、「HP回復禁止」などの違反しやすい重いロウもあるので、スケジュールを調節しながらエンゲージ(戦闘)に臨むのが基本戦略となっている。
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ロウを破らないよう注意していても、偶発的な事故で破ってしまう場合がある。「ダメージ○○以下」のロウの適用下でクリティカルが出てしまったりする場合が好例。
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特に主人公がプリズンに送られてしまうと即ゲームオーバーになるため、戦闘時はかなり注意せねばならない。
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魔法剣に対する「最後が『ト』禁止」、忍術に対する「最後に『ン」禁止』など、技をほとんど封じられてしまう例もある。
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終盤まで進めなければならないが、敵にわざとロウを破らせて(「ダメージ50以下」のロウのときに敵にバーサクをかける等)プリズン送りを狙ったり、ロウの抜け道を発見したり(「最後に『ン』禁止」のロウがある場合、赤魔法の「連続魔」を使えば「マディーン」や「ポイズン」といった最後に「ン」の付いた魔法もロウにひっかかることなく使うことができる等)と今までになかった戦略性が生まれている。
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ただ敵にロウを破らせるのは手間がかかり、毎回やろうものなら単純な作業ゲーにもなりやすい。
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また多くのボス敵には「免罪符」が付いており、その敵がロウを破ってもプリズン送りにされないためせっかくのシステムを活かせていない。
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ただし、とあるボスは「チャーム」による同士討ちを狙ってくるが、チャーム禁止だとその魔法を使ってこないなど、ロウに対する考え方にも個性があるといえる
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アイテム「ロウカード」によって戦闘中にロウをつけたり消したりすることもできるが、消耗品で所持できる数も少なく、便利なロウカードはレア度が高く手に入れにくい。
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ロウの制限を受けないバトルフィールド「ヤクト」も存在するが、そこでは代わりに「マップクリア時、戦闘不能になっていたキャラは死亡して二度と使えなくなる」というペナルティがある。
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このスケジュール管理やルールを守るシステムは「理不尽」という意見や「新しい戦略性があってよい」と賛否が分かれるポイント。
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この「ロウ」のせいで、ゲーム中は常に縛りプレイを強要されてしまい、「ダメージ20以下」など出ようものなら折角育てたキャラの力を発揮できず、態々卑怯な手を使って敵を殲滅しなければならない。うっかりロウを破ろうものなら、愛を込めて育てたキャラがプリズンへ送られる。
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このことから次作『2』では「守ると良いことがある」という存在に変更され、破った際のペナルティも緩くなった。
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地形を自由に配置し、その組み合わせによってアイテムが貰えるという『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』の「ランドメイクシステム」に似たシステムがある。
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上手くいくと「トレジャーハント」というシステムでレアアイテムを貰えるが、攻略情報を見て配置していかないと活用するのは難しい。
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あちらのような2周目要素はないため、やり直しはきかない。レアアイテムを取り逃した場合、通信要素でしかフォローはできない。
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『ベイグラントストーリー』に近いダークファンタジー風の世界観・シナリオを持っていたFFTとは打って変わった雰囲気になったことを残念に思う人もいる。
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ただし、前述したように明るいのは雰囲気だけであり、シナリオは案外重い。
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人によっては忘れたい古傷をえぐるような場面もある為、見ようによっては本作の方が暗いという意見もある。
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携帯機ゆえかシナリオの本筋も短くなっており、設定面を含めやや小ぢんまりとしたまま終わってしまうところもないではない。
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キャラクターデザインが吉田明彦から彼の弟子にあたる伊藤龍馬に変わり、アニメや絵本のようなタッチになっているのも大きな要因だろう。
不評点
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行動時にロウが表示されない。
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このため、うっかり禁止行動を取ってしまうことが多い。その後に出るジャッジの「!」マークときつい笛の音がトラウマになったプレイヤーは多いだろう。
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何故ジャッジを攻撃できないのか、と思ったプレイヤーも少なくないだろう。
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戦闘中ジャッジが邪魔になっても動くのを待つしか手段が無いため、展開によっては余計にターン数が掛かる。
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一部アビリティがやたら強い。
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敵味方全体を眠らせる「夜」、即死攻撃の「息根止」・「デス」、MPがあるかぎりHPダメージを受けない「MPすりかえ」など。
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それに付随して、種族間の格差もある。あまりに極端なものはないが、バンガ族の不遇は顕著。
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パワー系の種族であるが、この手のゲームで重要な素早さが低い上、サポートアビリティも弱くて搦め手が取りづらい。売りのパワーも大したものではなく、人間族の二刀流での威力に負けてしまう。
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シナリオキャラにバンガ族がいないというストーリー面での不遇も受けており、徐々に空気化する。
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一騎打ちイベントでのアビリティの付け替えが出来ない。何も知らずに進めるとバブズ戦やレドナ戦で泣きを見る。
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キャラの動きやコマンド選択周りのUIが遅く、ゲームのテンポが悪い。
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アイテムがずらずらと縦に並ぶため、管理が面倒。特に武器防具で顕著である。
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全体的に敵が弱い。射程外から攻撃すれば無傷で済むアルテマクリスタル戦や「人間愛護」と「ハメどる」を使えばマーシュ一人で何もしないまま完封勝利できるクイーン・レメディ(ラスボス第一形態)戦など。
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「コンボアビリティ」という必殺技が各ジョブに用意されているが、これを覚えるための武器がなかなか手に入らないので空気システム化。
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戦闘クエストのほとんどが「全ての敵を倒す」が目標となるものであり、やや単調。
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続編では変わった勝利条件を持つクエストも登場し、多彩になった。
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サブクエストの内容(特に派遣系)が薄い。
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依頼文自体はそれなりなのだが、派遣系のクエストは酒場で派遣するキャラを選ぶだけであり、終了時は成否が知らされる程度で、後日談などは語られない(クエストが派生することはある)。
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続編では、派遣クエストに対しても特定の場所に行って依頼人と会ったり、成功後にクラン宛に依頼主からの手紙が届いたり、酒場で話題になるなどの要素が追加された。
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戦闘のないサブクエストでは「クエストアイテム」が手に入る。このクエストアイテムがないと次のサブクエストを受けられないという連鎖構造になっていることも多いのだが、このクエストアイテムに32個しか持てない所持数制限があり、見た目以上に管理が大変。
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二度と手に入らないクエストアイテムも多く、捨てるクエストアイテムを間違えるとその先のサブクエストは永久に進行不可能となってしまう。
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クエストアイテムは通信要素で他のプレイヤーと交換できるので、もう一組のGBA+ソフトを用意できればハマリは解決できるが、現実的には厳しい。
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汎用ユニットの名前が固定されており、変更できない。前作では変更できたのに……。
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時間は掛かるが、ランダムでシステム内部の名前テーブルから選ばれる仕様のため、気に入った名前のキャラが加入してくるまで待つことは可能。
総評
既にベースの完成されたシミュレーションRPGというジャンルから出来合い自体は悪くなく、携帯機のシミュレーションRPGとしてはかなりのポテンシャルも備えている。
ただし、前作とベクトルの異なる、少年少女を主人公とするシナリオは評価が分かれたほか、バランス調整・ユーザビリティなどでも問題点が指摘される。
特に「ロウ」システムはゲーム全体の面倒臭さを強めてしまった印象が強く、一見面白そうには見えても実際遊んだプレイヤーからは否寄りの賛否両論であった。
総合的には『FFT』ほどの評価は得られなかったが、シナリオを評価するプレイヤーや、何十時間もかけてやりこんだプレイヤーも少ない訳ではない。
続編『A2』ではロウが改良され、かなり遊びやすくなった。
海外版
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海外版が、国内版発売の約半年後に発売された。不満点を受けてか、国内版と比較して大きく進歩している。
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敵として登場したリッツやバブズ、操作できないキャラであるシドを仲間にすることが出来る。彼らに対する追加イベントも用意されている。
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クエストアイテムの所持数制限が倍の64個になり、サブクエストの進行順序に頭を悩ませる必要が殆どなくなった。
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他に、「ダメージ○○以下」「○○愛護」「最後に『ン』禁止」など一部のきついロウの削除および縛りの緩和、アビリティの変更などの調整が入っている。
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この海外版は他のFFのようにインターナショナル版として国内に逆輸入されておらず、国内版との格差を嘆くファンも少なからず見受けられた。
余談
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開発時の画面写真と製品版の画面は印象が異なる。開発時の写真の台詞も製品版ではほとんど喋っていない。
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最も過去に松野氏が制作した『タクティクスオウガ』も、開発当初の画面写真と製品版とで全然違う出来栄えになっていたという過去があるのだが。
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本作で登場人物たちがプレイしている『ファイナルファンタジー』は『FF12』という裏設定がある。
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種族にバンガやヴィエラが登場している、ジャッジの存在、ギーザ平原やサリカ樹林といったFF12のロケーションが登場するなど本作と共通点が多く、FF12での召喚獣の一部(アルテマ・エクセデス・ファムフリート・アドラメレク・マティウス)が神獣として登場する。しかし、FF12で敵対関係にあったジャッジは本作(のストーリー上)では比較的味方に近い立場にある。