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STELLA GLOW - (2016/01/03 (日) 13:31:16) の編集履歴(バックアップ)


ステラ グロウ

【すてら ぐろう】

ジャンル 剣と魔法のメロディアスSRPG
対応機種 ニンテンドー3DS
発売元 セガゲームス
開発元 イメージエポック
発売日 2015年6月4日
定価 5,990円(税別)
レーティング CERO:C (15歳以上対象)
判定 良作
ポイント イメージエポックの10周年記念にして遺作
イメージエポックの原点回帰・集大成



歌の力が、世界を変えるー。剣と魔法のメロディアスSRPG



概要

  • 「イメージエポック創業10周年記念作品」として開発されるも、販売が難航してセガゲームスから発売されることになる。
    • 発売前の2015年5月7日にイメージエポックは破産手続きを開始し、事実上倒産したので本作が最終作品(遺作)となった。
      (2014年11月には本編及び体験版のマスターアップが完了しており、その後に本作を手掛けた水谷英之氏は株式会社イルカ*1に移籍)。
  • イメージエポックの原点回帰を目指したという作品。主なスタッフはプロデューサーの水谷英之氏やideolo氏とともにキャラクターデザインを担当した釋迦堂真人氏、BGMを作成したプロキオン・スタジオ(光田康典氏、土屋俊輔氏)など、同社の処女作である『ルミナスアーク』シリーズにも関わっていた顔ぶれと、ディレクターの大峡大氏、シナリオの与田想氏、モンスターデザインの山本章史氏など『セブンスドラゴン2020-II』の製作に関わっていた面々が並んでいる。
    • 元々は『ARK Project』という名前の企画で、「魔女」に立ち向かう「騎士」をテーマにしたSRPGという点は『ルミナスアーク』シリーズに非常に似ている。
    • 「歌」や「結晶化」などの要素が登場する世界観は同社自身が最高傑作と評する同スタッフが開発した『アークライズファンタジア』を意識していると思われる。
    • イメージエポックは「ひ、ひどすぎるよー!」な作品の印象が強く(実際は良作もそれなりに開発していたのだが)、出来を危惧していたプレイヤーも少なくなかったが、蓋を開けてみればイメージエポック創業10周年記念の原点回帰・集大成と呼ぶに相応しい作品となった。

ストーリー

かつて、世界は歌の力によって繁栄していた。
やがて、その繁栄は争いを呼び、戦乱の世がはじまった。
神は嘆き、人類から「歌」を奪った。

それから数千年の時が過ぎ、福音使徒を率いる滅びの魔女ヒルダの「歌」により、
世界は結晶化の危機に見舞われていた。

失ったはずの「歌」の力を行使する5人の魔女。
立ち上がる王立騎士団。

魔女の呪いを解けるのは、魔女の歌だけ。
レグナント王立騎士団と福音使徒との魔女争奪戦が今、はじまる─

システム

基本的なシステムは『ルミナスアーク2 ウィル』のワールドマップと『ルミナスアーク3 アイズ』の交流システムを合わせた感じ。 とはいえイメージエポック開発の『アークライズファンタジア』や『セブンスドラゴン』シリーズ、『闘神都市』3DS版との類似点も多く見受けられる。 好感度を最大まで上げた味方ユニットは、女性キャラや男性キャラを問わず「全員」一枚絵付きの個別EDを迎えられるという点はルミナスアーク3と同じ。

ゲーム進行

  • ひとつの章はルミナスアーク2のようにワールドマップを移動して戦闘パートなどを行う『作戦時間』と、ルミナスアーク3のように拠点で仲間たちと交流などができる『自由時間』の二タイプの時間で構成されている。
  • 作戦時間
    • 戦闘パート。ワールドマップで移動し、場所によってイベントや戦闘が発生する。
      「フリーミッション」で戦うこともできる。
  • 自由時間
    • 「王都ランベルト」を拠点に、行動コストを消費して行動する。
      1つの自由時間につき最大3回分の行動コストが与えられる。お店での買い物やマイルームメニューは行動コストを消費せずにいつでも利用可能。
      • 騎士団兵舎:仲間を一人を選択して、仲間交流して、絆を強化する。
      • 赤熊の酒場:アルバイトをしてお金を獲得する。お金以外のものが入手できる場合も。
      • 調律の館:仲間の魔女との調律イベントを行い新たな歌や特性などを習得させる。
      • 探索する:王都を探索してアイテムを発見することができる。レアアイテムを入手できることも。

戦闘システム

  • 戦闘は複雑なシステムもないオーソドックスなSRPG。
    高低差・地形効果ありのクォータービューマップのシミュレーション形式で、ユニットの敏捷の数値に応じて順番が回ってくる仕組み。
  • 本作の最大の特徴は魔女が行使できる「歌魔法」。
    • 魔女単独のソロと、指揮者である主人公とのアンサンブル(合奏)がある。特に後者はマップ全体に影響を及ぼし、効果中は魔女の歌が流れ続ける。

長所

  • バトル
    • ユニットごとに多彩なアクションを披露する。特に魔女が使う「歌魔法」と呼ばれる技はそれぞれの声優の歌を聴くことができ豪華。
      • ただし魔女によって性能差がけっこう激しく、非常に強力なものから歌以外のスキルが強力すぎて歌わずに殴った方が…と言われるようなものまである。
      • 魔女に限らず、あるキャラはあまりに強く、あるキャラは使いづらいという性能差がある…一部のキャラではあるが*2
      • しかし好感度を上げていくことで能力が強化されていくので、愛情でカバーできるのがこのゲームの醍醐味でもある。
      • 序盤は簡単で少しずつ上がっていく難易度などバランスが良く、中断セーブがロードしても消えない仕様のためSRPG初心者も楽しめる。
  • 音楽
    • 「歌」がテーマのゲームということもありサントラを要望する声が多い*3
    • 本作のテーマに「歌」があることもあり、15曲近くがフルコーラスで入っている。
      • 南條愛乃、内田真礼、榊原ゆい、新田恵海、田村ゆかり、堀江由衣と音楽面でも活動している声優を起用しており、かなり豪華である。
      • 特にひとつ目の合奏である「錆びついた鍵」「藍桜」「赤い銀河」「伝説の海へ」「氷世界」は初出の時のストーリー展開も相まって人気が高い。
      • 主題歌である「真聖輝(ひかり)のメタモルフォシス」はトゥルーエンドルートのラスボス戦で使用され、ストーリー展開や演出も含めて非常に評価が高い。
    • 歌が話題に上がりやすいが、プロキオン・スタジオ製作のBGMもそれに負けておらず、高いクオリティを発揮している。
      • 福音使徒との最終決戦や、逆境からの反撃シーン、とあるキャラとの一騎討ちの3シーンで流れる戦闘BGMは、そこに至るまでの熱いストーリーも相まって、本作の中でも特に人気が高い。
  • グラフィック
    • 戦闘時は3Dアニメーションでの攻撃演出は3DSとしては非常に凝っており必見。
    • 一枚絵やムービー等は、演出のよさも相俟ってかなりの仕上がりになっている。
  • シナリオ
    • シナリオは『セブンスドラゴン2020』シリーズや『クリミナルガールズ』などの与田想氏が担当。
      • 王道ながらもそれを完璧に完成させた物語は秀逸で、各キャラの掘り下げが上手く熱い展開もあり、BGMを流すタイミングが絶妙など演出面も凝っており好評。
      • 魔女が前面に出たシナリオながらも、そのほかのキャラクターにも存在感と見せ場がしっかりとあり、空気扱いになるキャラがまずいない。またパーティメンバーのみならずNPCの町の店員ポジションのキャラクターたちもストーリーにおいて出番が非常に多く魅力的なキャラ付けがされている*4
      • 物語のシチュエーションに合わせてキャラクターの戦闘時のボイスが変化するといった点も『アークライズファンタジア』程ではないが凝っている。
      • ノーマルエンディングや各キャラとの個別EDとは別に、条件を満たすと真のラスボスと戦うことができるトゥルーエンディングがある。
  • ヘルプ・チュートリアル
    • カートリッジに入っている電子説明書を読んでいなくても新しい要素が出てくる度にチュートリアルが表示されるため、操作や機能に戸惑うことはない。
    • 新しくキャラ仲間が加わった際にも、そのキャラの特徴をチュートリアルで教えてくれる。

短所

  • SRPGとはいえ、若干戦闘のテンポが悪い
    • 毎回敵の思考時間が入るうえ、全体攻撃はダメージ・状態異常・撃破時のエフェクト等が細かく入る。
      • 敵のターンのスキップや早送りができないので、どうしてもテンポが悪く感じてしまう。
    • おまけに合奏は全体効果なので敵ユニット数が多いとそれだけ処理する情報量が増す。その上ユニットごとにではなく効果ごとに処理しているためにカメラがそれだけ移動を繰り返し見ている側に多大な負担をもたらす。
  • キャラクター間の格差
    • ゲームシステムの都合上、「敏捷」が低いキャラが使いにくい。単純に敏捷が遅いとターンが回ってこないので、敏捷が高いキャラはそれだけで行動機会が増える。
    • 「移動力」、「ジャンプ力」が低いキャラはまず戦闘すら起こしにくい為成長させづらい。
  • 2周目以降の引き継ぎ要素
    • お金しか引き継げなくなり、『ルミナスアーク』シリーズと比べて微妙になっている。…余程開発現場が大変だったのだろうか。
      • ただしレベルが上がりやすくなり、また自由時間のコストも9と大幅に上がっているためプレイ自体は楽になる。
+ 分岐EDについて

トゥルーEDの条件についてしばしば勘違いされていることがあるが、正しくは「7章あたりまでの自由時間にクラウスとの会話を5回行っておくと最終決戦時に選択肢が登場するので、そこで『否定する』を選択すること」である。よってこの条件は一周目でも達成できる。

  • サウンドテスト、ギャラリーモードは未実装
    • ビジュアルや音楽が優秀なゲームだが、それだけにゲーム内の音楽を自由に聴いたり、ideolo氏の美麗な一枚絵を鑑賞するいわゆる「ギャラリーモード」が無いのが悔やまれる。また、用語解説も備わっていない。
      • 『ルミナスアーク』シリーズや3DS版『闘神都市』などの同社の開発作品では当たり前のように搭載されていたのだが…。
      • そういえば以前にもありましたね。ギャラリーなし、STARTボタンでしか始められないイメージエポック開発のセガ作品…。
  • すれちがい通信機能
    • 今作にはすれちがい通信によってアイテムが手に入る機能があるがそのアイテムがしょぼいためほとんど死んでいる機能になっている。
      • もっともゲームの流通数の少なさからこの機能で限定アイテムが出てきたらそれはそれで批判点になっているだろうから仕方ないとはいえるが…。

総評

目新しさや斬新さはあまりないが、全体的にキャラゲー及びSRPGとしては、システム・ストーリー・イラスト・音楽・演出とどれも高水準でまとまっているので、万人にオススメできる良作。

ニンテンドーeショップで体験版がダウンロードできるので、興味を持った人はプレイしてみるとよいだろう。


余談

一つの物語として綺麗に完結しているが、ノーマルエンディングでは本編で登場したとあるキャラが意味深な台詞を言って謎を残したまま終わる。トゥルーエンディングの存在を暗示した内容ではあるが、そのキャラ自体に意味深な要素が多く「私が登場するのはまた別のお話」という発言を残して、トゥルーエンディングを迎えても一切登場しない。イメージエポック倒産が無ければ、続編や世界観の繋がった作品の開発を予定していたのかもしれない…水谷英之氏は株式会社イルカに移籍しているが、「今後も“魔女ゲー決定版”を作りたい」と発言しており、本作の版権はセガゲームスが持っているのでそういった作品が出る可能性はゼロではない。

ちなみに後のファミ通の特集記事「ファミ通編集者42人が選ぶ大好きなゲーム10本」では2名がこのゲームの名前を挙げている。

また、本作の発売日と同時にイラストレーターのideolo氏が商業活動の引退を発表した(後に活動再開を発表しています)。