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黄昏のオード ‐ODE TO THE SUNSET ERA‐
【たそがれのおーど おーど とぅ ざ さんせっと えら】
ジャンル
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シンフォニックRPG
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対応機種
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プレイステーション
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発売・開発元
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トンキンハウス
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発売日
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1996年12月27日
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定価
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5,800円(税別)
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廉価版
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BEST PRICE 2000年8月3日/2,500円(税別)
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判定
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クソゲー
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ポイント
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前世代的なグラフィック シナリオはお使いの繰り返し とにかく不便なシステム ひたすら太鼓が響く戦闘シーン 純粋な評価点はイラストだけ 黄昏のオードロイド
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概要
トンキンハウスが世に送り出した「シンフォニックRPG」を自称するゲーム。
イラストレーターの弘司氏を起用した美麗なキャラクターデザイン、プレイヤーが呪文を設定できる「ルーンソングシステム(歌魔法自動作曲システム)」など音楽を前面に押し出したシステムや世界観が魅力の作品。
…となるはずが、その実態はPSのRPGとしては『里見の謎』『アンシャントロマン』に匹敵するネタクソゲーであった。
OPからして文字がびっしりのプロローグとひどく不気味なポリゴンのムービー、そして予想の遥か斜め上を行く超展開を見せつけ、(クソゲー愛好家としての)期待を感じさせてくれる怪作である。
特徴
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「ルーンソングシステム(歌魔法自動作曲システム)」
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魔法の呪文の内容を最大7文字までプレイヤー自身が決めることができ、実際にボイスつきで詠唱してくれる。
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必殺技
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仲間キャラにはそれぞれ固有の必殺技が存在し、戦闘中にランダムで指定した行動をキャンセルして発動する。
問題点
システム面
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戦闘が非常に冗長かつ退屈
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攻撃力と防御力の計算方式が甘く、攻撃失敗の頻度を高くすることでゲームバランスを調整している節がある。そのため物理攻撃命中率がとにかく低く設定されており、敵も味方も攻撃を外してばかりで無駄に戦闘が長引きがち。
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回復や特殊攻撃のエフェクトも全体的に長いためテンポが悪く、そもそものエフェクト自体もショボい。特殊攻撃をミス連発した時の時間を無駄にした感は相当なものである。
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必殺技も基本的に戦闘の邪魔。
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プレイヤーの任意のタイミングで使用することができない。しかも発動する場合は、直前のプレイヤーの指示がキャンセルされて無理やり発動する。
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また効果も攻撃技とは限らず、効果の薄い補助魔法であったり、自爆技であったりするためなおさら厄介。回復技の場合は勝手にHPが全快状態の味方を回復するなど、呆れてしまうようなアホさ加減を発揮するのは日常茶飯事。
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敵の素早さが軒並み高く設定されており、自然な育成をしている場合は普通に探索しているだけでも先手を取られて消耗しやすい。そのため、小まめに宿屋で回復する必要がある。
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その他戦闘システムの問題
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仲間は残りHPが少なくなると戦闘から勝手に逃亡してしまう事がある。
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しかも主人公が戦闘不能になった時点でゲームオーバーとなるため、事故率を上げる要因になっている。ゲームオーバーの場合、セーブ地点からやり直しとなるため、テンポの悪さに拍車をかけている。
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キャラごとの性能差も酷い。
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エンカウント率が両極端。
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出るときはほんの少し足を踏み出すだけで出るのに、出ないときはいくら歩いても出ない。
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ギルドシステムに反する強制加入
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ストーリー上強制加入するキャラでパーティー枠4人が埋まってしまうと、雇った仲間は問答無用で解雇されてしまう。
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加えてそうして加入したキャラも頻繁に入れ替わるため、育成も感情移入もしにくい。
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シナリオは一本道かつ一方通行なので、プレイヤーの任意のタイミングで街を訪れることは出来ない。したがってイベント後に仲間にしたいキャラを再加入させることも出来ない。
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仲間がくだらない理由で加入・離脱を繰り返すシステムは『里見の謎』等、この時代のクソゲーとしては珍しくない。だが本作の場合、任意で加入できる仲間がいるにも拘らずそれを強制的に離脱させられるというのがかなり厄介。しかもそこまでして加入しておいてあっさり離脱することが多いので、新たな仲間を得た喜びよりも以前の仲間を失う喪失感の方が大きくなりがちで、キャラの育成要素すら楽しむことが出来ない。加入・離脱の回数もそれらのゲームよりも圧倒的に多いので、ストレスが溜まる仕様となっている。こんな有様なら最初からギルドシステムがない方がマシだっただろう。
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なんと最終決戦ですら強制加入するキャラで埋まってしまう。それぞれのキャラ自体は悪くないのだが、ギルドでスカウトしたキャラを育てたプレイヤーは泣きを見ることになる。
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インターフェース面も不便
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アイテムのまとめ買いができない、パラメーターを参照しにくい等、不便さが目立つシーンが散見される。
演出面
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貧相なグラフィック
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前述の通り、OPのムービーは船に乗った主人公が登場し、沈むだけの不気味且つシュールな内容。それも低品質かつ不気味なポリゴンで描かれた主人公がどんどんズームアップしていく場面があるため、見るに堪えない。
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服や船の書き込みが浅く、海でさえゼリーのような質感で、貧相さが際立っている。
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ドットは特別出来が悪いという訳ではないが、当時発売されたゲームの中でも色数が少なく、SFCかMD並。戦闘画面などは正に前時代的である。
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後述するように本作唯一の評価点と言えるキャラデザインだが、ステータス画面の全身画はゲーム内のドット絵で打ち直されたというより、イラストをそのまま取り込んだような感じであり、ステータス画面内で浮いて見える。
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また、顔グラフィックは解像度やコントラストにばらつきがあったりなど、せっかくのイラストを台無しにしている部分もある。男性キャラが特に顕著。
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音楽を題材にしながら出来の悪い歌魔法
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ボイスは指定された文字をそれぞれ予め決まった音階で読んで繋げるだけという仕様のため、ハッキリ言って出来は酷い。
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せめて文字ごとに音階を設定できれば、ゲームの出来の悪さを置いても音楽(ネタ)ツールとして少しは使えただろうが…。
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主人公のグラフィックは若いイケメンなのに、やたら野太い声なのも合っていない。
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ただ本作が発売されたのは、「VOCALOID(ボーカロイド)」やフリーの「SofTalk(ソフトーク、いわゆる「ゆっくりボイス」)」といった個人の趣味で手に入るレベルの音声読み上げソフトが世に出る十数年も前である。合成音声の技術は確立されていたにせよゲームへの実装は殆どまたは全くと言っていいほど無い頃であり、致し方ない面が無いとは言い切れない。
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歌魔法もさることながら、仮にも音をテーマにしたゲームにもかかわらず音楽もひどい。
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特に戦闘曲はエンカウント音、通常戦闘、勝利のテーマ、そしてボス戦ともにティンパニとスネアドラムの音だけ。おそらく歌魔法がメインであるため戦闘BGMは控えめになったと思われるが、音質がチープ&構成が単調という二重苦がただでさえ苦痛な戦闘に拍車をかける。
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唯一の例外はラスボス戦である。曲自体は単調だが、打楽器のみに比べれば…。
シナリオ面
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お使いイベントが無駄に多い。
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というかストーリーのほとんどがアレを取ってこい、アレを探して来いという内容ばかり。しかもつまらない理由で延々と歩かされるケースばかりで、本筋のストーリーがなかなか進まない。
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ダンジョンに進んで結局入れなかったため、一度戻ってから再度挑戦するという水増し感漂う場面も非常に多い。エンカウント率の高さから来るストレスフルな戦闘システムと重なり、途中で投げ出したくなるほどイライラさせられる。
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お使いの途中に別のお使いが挟まれることも珍しくなく、何が目的だったかを見失いやすい。
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タイトルにもありお使いの主軸となるオードだが、集めた後はほとんどシナリオに絡まなくなる。
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キャラクター自体は薄い訳ではないのだが、トラブルメーカーがやたらと多く、プレイヤーをたびたび困惑させる(イラつかせる)イベントが発生する。
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中には適当な事を言って無駄なダンジョン探索を2回も行わせるとんでもない輩まで居る始末。しかも3回目も当たり前のように嘘をつこうとしており、非常にタチが悪い。
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加えて前述したような仲間の入れ替わりの激しさも相俟って、キャラに感情移入しにくい。
笑える要素
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歌魔法にネタ要素があまりにも強すぎる。
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決まった音階で読んで繋げるだけという仕様のせいで酷い物が出来るのは前述の通りだが、それが突き抜けすぎていてもはや笑えるレベルになっている。
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使用時にその都度「ぼ~ん♪」というリュートの音色が混ざるのもシュールさに拍車を掛ける。
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そもそもデフォルトの呪文からして「おおいわおちろ」「こおりのや」「なぞなぞふしぎ」「どくどくあめだ」等々変なものばかりで、ネーミングも小学生が考えたレベル。
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とはいえプレイヤーが自由に歌詞を変更できる関係上、「わざわざ自分で考えるのが面倒」という人のためにわかりやすい名前にすること自体はそこまで問題ではない。前述の通り質がアレなだけで。
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本作を代表するネタであることもあって、黄昏のオード関連の動画ではVOCALOIDの代わりにこのシステムを使ってボイスを読み上げているものもある。通称「黄昏のオードロイド」。
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ちなみに、とあるダンジョンでヒロインが主人公の歌にツッコミを入れるシーンがあるのだが、その時の主人公の反応は「…ふん。もともとヘンな歌なのさ!歌がヘタなわけでは決してないぞ」である。どうやら自覚は無いようだ。
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ツッコミ所ありありなストーリー。
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主人公の乗っていた船が難破する所から始まるのだが、最初の村で「悪神が復活した」という話を聞いて特に根拠もなく「船が沈んだのはその悪神の所為では?」と決めつけるなど、ラスボスへの因縁付けが安易過ぎて、結果超展開と化してしまっている。
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その後も異変がある度に「悪神が復活した影響では?」として片づけられるため、主人公一行と悪神ガリハアクとの間に直接的な因縁は無いまま、旅の目的がガリハアク討伐へと仕向けられていく。とにもかくにも「だいたいガリハアクのせい」でシナリオが進んでいくため、「このゲームがクソゲーなのはガリハアクのせい」というネタが囁かれることも。
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酒場で酔っぱらいを止めに入れば即外の海に放り出される。かと思ったら流れ着いた先で拾ったオールの破片を武器に再び挑み、今度は逆に酔っぱらいを海に放り投げるという、まるでコント番組のような展開が続く。
バカゲーのつもりか? ひょっとしてバカゲーと割り切れと言う事なのか!?
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台詞回しも独特、悪く言えば変なものが多く、口調が安定しなかったり、おかしな事を口走るキャラが多い。これは主人公とて例外ではなく、最後まで一人称が安定しなかったり、キャラクターが定まらなかったりするままストーリーが終わってしまう。
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悪神、善神と呼ばれている存在が絶対的な善悪ではなかったりと、単純な勧善懲悪では終わらず物語を奥深くできそうな背景は存在するのだが、正直活かされているとは言い難い。
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最終決戦にて「(リュッケルトが持っていたであろう)タクトが避雷針になったおかげで悪神の放つ雷を回避できた」という突っ込み所満載の展開が出てくる。
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まず曲がりなりにもファンタジー世界において唐突に出て来る「避雷針」と言う科学ワードもどうかと思うが、避雷針になるものを持っていたが故にその人物に雷が落ちた、と言う描写は古来よりギャグ漫画でも描かれるほど一般的な描写である。むしろ「タクトが避雷針になったせいでリュッケルトが感電した」が正しい描写であろう。多分名前から「針さえ持っていれば雷を避けられる」と脚本家が勘違いしていたのだろうが、スタッフは誰一人として可笑しさに気づかなかったのであろうか?
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最終決戦ではまずラスボスに挑むも全く歯が立たないという展開になる。それ自体はRPGでよくある展開であり、この場合は仲間たちの力が終結する等の展開でラスボスに攻撃が通るようになるというのが一般的。だが本作の場合は仲間の1人が反動ダメージ有りの捨て身攻撃をした程度で攻撃が通るようになってしまう。
評価点
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弘司氏によるイラストは好評。主人公は(イラストで見る限りは)イケメンで、女性キャラもヒロインのアイリスを始めとして美女揃いである。
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ドットではいまいち魅力が伝わってこないが、(前述した問題はあれど)メニューや戦闘では顔グラフィックが表示されており、ステータス画面では全身画が見られる。
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これでキャラの個性がもっといい方向に働いていて、思い入れも湧きやすい作りだったのなら、キャラクター面は純粋に評価されたかもしれないが…。
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任意加入の仲間キャラでもストーリー中に固有の台詞が用意されており、誰を仲間にしているかに応じて会話内容に変化が生じる事がある。
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最終決戦で戦う仲間に限っては比較的良キャラで固まっている。本作にしては珍しく旅の目的が終わったはずなのに最後までついて来てくれる仲間、その人物と因縁があったがその後共通の敵と戦う目的で和解する仲間、長年暮らしていくうちに情が湧いて悪党から寝返った仲間と、ここだけはキャラづくりはしっかりしている。
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本来の意味での評価点ではないが、任意に声を設定できる歌魔法はネタとしてなら存分に笑える。
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独特の台詞回しやおかしい掛け合い、なんでもガリハアクのせいという超展開も、バカゲーとして見ていれば妙な愛嬌を感じるかもしれない。(恐らく)狙ってバカゲーとして作られている訳ではないので、これも本来の評価点とは言い難いが。
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キャラが安定しない、矛盾、超展開、誤字脱字と言ったものに目を瞑れば、文章が稚拙で読みにくい『里見の謎』や、台詞が悉くスベっている『アンシャントロマン』よりはテキスト自体は整っている為、(広い心を以ってすれば)バカゲーとして楽しみやすい。
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とはいえ無駄に冗長な展開や、プレイしていくうえで非常にストレスが溜まる仕様があるので、その苦痛に耐えられる人でなければプレイすることはお勧めできない。
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前述のとおり戦闘曲はドラムスの音だけだが、ストリングスを生かしたクラシカルなBGMもあり、それらは聞きごたえがある。
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街のBGMはアカペラ曲「Now is the month of Maying(邦題:今や五月の季節)」のアレンジで親しみやすいメロディー。
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アイデアやソースコードの盗作などの、不法行為、倫理違反が制作において一切絡んでいなかった。近年のパクリゲーとは一線を画すクリーンさであり、腐っても中堅メーカーだと言えよう。
総評
キャラクターデザインを除けばほぼクソ要素で塗り固められた紛れも無いクソゲーであり、今も尚『里見の謎』と並んでPS屈指のクソRPGと名高い迷作である。
ストーリー・システム共に不便で不可解ではあるが、一方でどことなく憎みきれない絶妙な愛嬌(=クソさ加減)を誇る要素も多く、逆に熱狂的なファンを生み出すまでにも至っている。
単なる駄作では終わらず、(ネタとして)愛される側面も持ち合わせており、RPGとして最低限の体裁が取れているあたり、クソゲーとしては充分恵まれた立場にある作品と言えなくもない。
余談
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「黄昏のオードをプレイする奴は悪の手先」という2chのスレタイから、本作のプレイヤーを「悪の手先」と呼ぶネタが存在する。
最後まで遊ぶと実はこの表現が正しいことが分かる。
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こんなクソゲーだが、2000年8月3日には『ベストプライス 黄昏のオード』としてベスト版が発売されている。
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本作のプレイ動画について弘司氏がTwitterでコメントを残している。
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ネタ扱いされている事を楽しんでいる様子。以下、原文まま。
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「悪い気はしていない(笑)。ある意味ボーカロイド超えたのでは。この仕事やって良かったなぁ。続きはよ。」(コメントその1)
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「続き来てた。その昔キャラデザインで参加したゲームです。今になってもこうしてネタにして貰えるのは、ある意味愛されてるなーと(笑)。」(コメントその2)
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有志が作製したオードロイドの音声シミュレータが存在する。2020年末のFlash Playerのサポート終了に伴って2021年1月からFlash自体が通常の方法では再生不可となった為、利用できなくなっていた(リンク)が、2021年09月頃からは簡易かつ暫定的であるが、JavaScript版が公開されている。
参考動画