「東方見文録」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
東方見文録 - (2016/12/25 (日) 14:55:08) の編集履歴(バックアップ)
東方見文録
【とうほうけん ぶんろく】
ジャンル
|
ニューウェーブ・サイケデリック・アドベンチャー
|
|
対応機種
|
ファミリーコンピュータ
|
メディア
|
2MbitROMカートリッジ
|
発売・開発元
|
ナツメ
|
発売日
|
1988年11月10日
|
価格
|
5,800円(税別)
|
判定
|
怪作
|
ポイント
|
トンデモ展開の目白押し わりと人が死ぬ 文字通り発狂もののエンディング
|
概要
後に『メダロットシリーズ』でその名を知られることになるナツメ(後のナツメアタリ)のデビュー作。『見「聞」録』ではない。
アドベンチャーゲームとしては何の問題もないのだが、ストーリー展開が、あまりにぶっ飛んでいる・・・を通り越して完全にトチ狂っていたために、プレイヤーに強烈な印象を植えつけることになった。
ストーリー
東南アジア大学歴史工学部旅行学科4回生の「東方見 文録(トウホウケン ブンロク)」は卒業論文を書くためにタイムマシンを開発し、
敬愛するマルコ・ポーロが生きた1275年にタイムスリップした。
タイムスリップは無事に成功し、文録は中国にキリスト教を布教するべく父ニコロと旅に出ていたマルコの前に姿をあらわす。~]
ショックで腰を抜かし、なぜか背も低くなってしまったニコロに代わって、文録はマルコとともに中国を目指すことになったのだが、
その行く手には不条理極まりない、奇天烈な出来事の数々が待ち受けているのであった……。。
特徴
システム
-
総当たり・コマンド選択型のアドベンチャーゲームで全5章構成。
-
基本的には文禄とマルコの2人旅だが、ストーリーが進むと文禄だけ、マルコだけで進む場面も出てくる。
-
登場人物のセリフ以外は、ナレーターの解説という体裁を取っている。このナレーターにも一キャラクターとしての人格があるらしく、夜の砂漠で「ツキのー サバクをーときたもんだ」と口ずさむなど、どこかノリが軽い。
-
コマンドは「みる」「はなす」「とる」などの他に「なぐる」が常備されている。主人公の性格を表すと共に、誰彼構わず殴る事が出来るシステムとなっているのである。
-
但し、ナレーションに怒られて実際には殴れないパターンも多い。
-
しかし殴る時は平気で殴る為、お偉いさんを殴って処刑されたり、使命を果たせなくなって野垂れ死にしたり、ナレーションに天罰を下されたりと言った事が普通にある。ゲームオーバーの原因は大抵このコマンドである。
奇怪さ漂う作風
-
そんな本作の特徴は何といっても、どこを取り出してもそこはかとなく漂う「怪しさ」である。
-
太田螢一が描くパッケージ絵(上参照)をはじめ、パスワード入力画面で「マイムマイム」に合わせて表示される「バタイユの小説に出てくる眼球」「プラナリア」のアイコン、パスワード表示画面に出てくる「パスワードは これだビッチ!」「ロシアよりアイをこめて…」というメッセージ等等…。
-
脇役の名前や登場人物の台詞、BGMにTV・映画などからのパロディが大量に盛り込まれている。以下はその一例。
-
ゲーム序盤で訪れる街で「イスラム語」のワンポイントアドバイスをしてくれるラッキーさん。
-
文録の荷物を盗んだ犯人を追いかける場面で文録が道行く人を手当たり次第に殴ろうとすると、ナレーターが「カワバタ クンジですか?」と言う。
-
彼らの旅路は意外と元ネタの『東方見聞録』に忠実なのだが、章が進むにつれてストーリーは混沌としてくる。さらに、軽いノリで話が進むわりに人死にが多い。以下はその一例。
+
|
... |
-
キリストの磔刑像にうっかり金的をかましてしまった悪党が像のライダーキックで死ぬ。
-
背中合わせの状態で大樹にされた恋人どうしを助けるためにチェーンソーでタテ割りに。当然2人とも死ぬ。
-
元寇の大船団が日本に上陸しようとしているのに「神風」が吹かないことに焦った文録がタイムマシンをいじったことで「神風」特攻隊があらわれる。元軍は壊滅するが、マルコも流れ弾に当たって死ぬ。
|
-
そして、本作のカオスさの総決算とも言えるエンディング(参考)。これでも完全クリア時のものである。
評価点
-
BGMやグラフィックのバリエーションが豊富。
-
上記の展開をそのまま絵にしたグラフィックはプレイヤーを飽きさせず、2コマアニメで面白おかしく強調されているシーンも多い。
-
メッセージパターンも簡素ながら豊富
-
プレイヤーが無意味な行動をとった時のナレーターの反応も楽しめる。
問題点
-
テキストが読みにくい。
-
容量節約のためではあるが濁点が1文字扱い、文末の読点の省略、改行が少ないため単語が分断されている長セリフ、誤字脱字などが多く、可読性にやや難がある。
総評
洗練されていない部分はあるものの、理不尽な謎解きを要求されることもなく、BGM・グラフィック・メッセージパターンが多彩で小ネタも豊富である。本作の独特のユーモアは現在でもなかなかお目にかかれない。
しかし、ぶっ飛びすぎてまともな理解が追いつかないシナリオ、シリアスなのかおふざけなのか判断に困るカオスな雰囲気、そして何より、奇抜な作風にそこそこ馴染んだプレイヤーですら唖然とさせるエンディングの存在によって、本作はオーソドックスなテキストADVを突き抜けた強烈な印象を残すこととなった。
一定の評価を下すのが困難な、まさに「怪作」と呼ぶにふさわしいゲームである。
余談
-
『美食倶楽部バカゲー専科』(キルタイムコミュニケーション)にて、本作についてのバタイユ論をまじえた詳細な考察及び解説が加えられている。
-
本作の翌年に発売された『アイドル八犬伝』には、本作のシステムが流用されている。こちらは現代日本を舞台にしたコミカル路線であり、本作のようなイカれた狂気っぷりはさすがに鳴りを潜めているが、また違った方向性で本作に負けず劣らずのカオス作品である。