*ウィザーズ・ハーモニー 【うぃざーず・はーもにー】 |ジャンル|そだベンチャー&br()(アドベンチャー+育成シミュレーション)|&image(31z89ZpXvgL.jpg,width=160,http://www.amazon.co.jp/dp/B000069UQ1)| |対応機種|プレイステーション、セガサターン|~| |発売元|アークシステムワークス|~| |発売日|1995年12月29日|~| |定価|4,900円(税別)|~| |判定|なし|~| |ポイント|声優への評価だけでクソゲー扱いされた悲劇のタイトル|~| **概要 -プレイヤーは主人公ルーファス・クローウンとして、天才だが大問題児のデイル・マース先輩のせいで廃部寸前になった冒険者養成学校「スキル・アンド・ウィズタム」の名門魔法クラブ「ウィザーズアカデミー」を立て直すことになる。 -学年男女を問わず新部員を集めて鍛え上げ、テストに合格することが目的。 -『[[ときめきメモリアル]]』の大ヒットを受け、当時のパソコン通信内ではポスト『ときメモ』として期待されていた。が、実際のゲームシステムは『[[卒業>卒業 ~Graduation~]]』に近く、似て非なるゲームである。 -発売当時のプレイステーションでは、数少ないギャルゲーであり定価も安めであったため、それなりに注目を集めた。 **ゲームシステム -基本的にはオーソドックスな育成SLG。1回のクリアまでは4~5時間程度。 --育成対象が主人公+5人の部員というユニークな構成になっている。 ---勧誘という形で、育成する対象をプレイヤーが自由に選ぶことができたのも大きな特徴。 -ゲーム期間は4月から年明けの3月までの1年間。 -ゲーム開始時にまず、育成するキャラクターを5人勧誘する。 -平日には主人公自身と部員を育成する。 -平日では部室で噂を聞くと発生する「自発イベント」と、該当キャラが所属していて特定の日付を迎えると発生する「突発イベント」が発生する。 -週末は自由行動。 -各学期ごとに期末テストがあり、合格しないとゲームオーバーになる。 --4教科×部員6人の計24のうち、12合格すればクリアとなる。 -基本的には仲良くなった部員(もしくは特定の条件を満たした相手)とエンディングを迎える。 --ルーファスと男性部員とのエンディングもある。 ---誰ともくっつかなかった場合のルーファスと、ルーファスとくっつかなかった3年生達は、パラメーターに応じてエンディングが分岐する。 ---また、ルーファスとくっつかなかった1・2年生の中で最もパラメータが高かったキャラが次期部長となり、普通と違ったエンディングとなる。 **特徴 -主人公(プレイヤー)が育成の指揮を取って第三者達を育成するというのは、実は『卒業』や『メルティランサー』が最も近い。 --本作でも、1年生達など初期能力が低いキャラクターが結構いるので、主人公以外のキャラクターの育成がゲームの鍵を握る。 ---またルーファスを含む3年生達の、パラメーターによるエンディング分岐も『卒業』的な要素である。 **評価点 -操作性とテンポの良さ。 --操作性も上々で、育成シーンのアニメスキップをしていくと、2周目以降もテンポよく遊ぶ事ができる。 ---慣れてくるとクリアまで2時間弱。手軽に楽しめる。 -よくイベントが起きる。 --「自発イベント」と「突発イベント」の配置が絶妙で、頻繁(約2週間に一回ペース)にサークル全体を巻き込むイベントがおこるので飽きさせない。体感としては次のイベントがすぐに発生するゲームである。 -イベント時の作り込み。 --自発イベントや突発イベントでは展開が選択肢で大きく分岐する。何周遊んでいても、こんな展開あったんだ!と驚かされることがある。もちろん成功選択肢も複数。 ---また同じイベントでも、キャラクター毎に展開が根本的に違うことも多い。 -独特の雰囲気。 --イベントの頻繁さと様々な展開に支えられ、唯我独尊のデイルの造詣やそれに翻弄されるルーファスをはじめ、アカデミーの部員達の一体感をよく表現できている。 ---さらに清潔感・清涼感を加わった、本作独特の雰囲気を愛するファンは多い。 -女性キャラとのエンディングも、男性キャラとのエンディングも用意されている。 --これも本作独特の、主人公を中心としたアカデミーの一体感の表現に少なからず貢献している。 -浅乃一氏による音楽も、世界観によくマッチしていると好評で、サントラも発売された。 -OPムービーで流れる歌は独特の世界観を持った良曲であり、また本作の雰囲気にもよくあっている。 **問題点 -''「声優」これに尽きる''。ファンの間ですら総じて評価が悪かったほどのヘタクソさ加減。 --本作がクソゲー扱いされるに当たって声優への評価がどれだけ強い影響を与えたかについては、続編の『ウィザーズハーモニー2』『ウィザーズハーモニーR』は本作のマイナーチェンジに過ぎないにも関わらず、本作のようにクソゲー扱いされるといった話は皆無であるあたりからも伺える。 ---&bold(){本作も声優がまともだったらクソゲー扱いされていなかった可能性が高い。} --メーカーも問題点と自覚していたのか、スタートボタン一つで音声のON/OFF切り替えが可能。システムメニューを介することなく変更可能というのは、当時どころか現在ですら珍しい。 -不親切な部分がちらほらある。 --休日イベントや冬祭り等は雑な作り。 -ゲームを始めた直後の勧誘イベントが、いきなり極めて不親切。 --誰がいつどこにいるのか、そもそもどんなキャラクター達がいるかも不明なまま、複数のポイントの中から「誰かがいる場所」を探さなければいけない。 ---キャラクター一覧そのものは説明書で確認できるが、ヒントとしては不十分。また特定の誰かをピンポイントで勧誘したいと思った場合、難易度が更に跳ね上がる。 --当たり前のように時間(移動回数)制限が課せられており、なおかつ時間と場所の組み合わせ次第では「誰にも出会えなかった」としてチャンスが空費されることも多々ある。 --誰かに出会えたとしても、ノーヒントに近い会話三択で正しい返答をしないと機嫌を損ね、あっさり勧誘失敗となる。期間内にもう一度出会えれば再び勧誘できるが、その際もやはり会話三択が要求され、更に初期好感度も下がる。 --既定の期間内に人数が揃わなかった場合、救済処置として教官が足りない分のメンバーを''ランダムに''集めてくる。 --要するにここの一連のイベント、本作に熟練しない限りはほぼ完全な運任せである。その運任せによる結果で1年間付き合うメンバーが選ばれる。 ---誰が選ばれようと実際のところプレイしているうちに愛着が湧いてくるため問題はないのだが、よりによって冒頭がこの不親切なイベントでかつメンバーも強制されたに近い形となり、初見における印象は大変に悪い。 -グラフィックの質があまり褒められたものではない。 --村瀬将人(後のmoo)氏の絵はこの当時は未熟であり、それがそのまま反映されている。 --後には人気デザイナーとなることから分かるように、基本的なセンスそのものは決して悪くない。多彩なキャラクターの描き分けや、服装の描き込み等はしっかりしている。本作の時点でも氏のデザインを評価する声は少なからずあった。 --ただしオープニングムービーや立ち絵から受ける第一印象は、ほぼ間違いなく「下手」。 --同氏が人気を博するようになる後発の作品でも、絵のタッチそのものはそこまで大きく変わらない。本作におけるグラフィックの問題点は、下絵の画力が低かったというより、CGに起こす上での塗装技術が不足していたことに起因しているのだろう。 ---実際、第一印象こそ悪くても、プレイしているうちに絵が稚拙という印象は薄れ気にならなくなっていく。 --前述の通り声の演技が壊滅的であるため、相乗効果でより心証が悪くなったという側面もある。 ---ことに各人との初対面となる勧誘イベントでは、イベント自体の理不尽さも相まって悪印象を深めやすい。しかも勧誘できず終わったキャラについては、次周以降のプレイで仲間にしない限りフォローすらない。 **総評 声優以外では優れた要素も多いゲームで、熱烈なファンを生むだけのパワーを持っている。~ そのパワーが、本作を起点に「復刻版」を始めとした『ウィザーズハーモニー』シリーズと、『[[エターナルメロディ]]』『[[悠久幻想曲]]』という二つの流れを作る原動力になった。~ ただし最大の問題点が、絵と声というすぐに分かる部分の欠点なので、そこをさして「クソゲーだ」という評価は早い段階からあった。~ 声に関しては『ときメモ』も「素人を起用して成功を収めた」と曲解されているが、そのレベルにすら遠く及ばない下手さで筆舌に尽くしがたい(実際は『ときメモ』同様、開発費の問題に因るものだろうが……)。~ そもそも声を担当した人物が、本当にプロであったかどうかすら疑惑がもたれていた。社員やその関係者、専門学校生などの噂があった。~ 実際『[[ストリートファイターII]]』シリーズなど、そのような例は多いので十分ありえる話だとされていた。~ またゲームを始めてすぐの段階で稚拙な要素、不親切な仕様ばかりが一気に突きつけられるため、冒頭だけでプレイ意欲を失い離れてしまったプレイヤーも少なくない。~ ほんの少しだけ我慢して遊び続ければ、不満点の多くはさほど気にならなくなり、本作独自の魅力へ浸れるようになるのだが……何しろ声の演技が露骨に素人、絵も一見するとかなり下手、冒頭のイベント処理は極めて理不尽な上にこの時点だと安い作りのテキストアドベンチャーに見えるとあって、「商品レベルに達していない駄作」と認識されてしまっても仕方のない作りなのである。~ 冒頭だけでゲームの真価は判断できないという好例なのだが、それにしたって不幸な要素が頭に集中し過ぎていた。 **その後の展開 -直接の続編として『2』と『R』がある。 --『2』や『R』でキャラデザが変更されたのは不評だったが、声優に有名声優や劇団員を起用したのは好意的に評価された。 -この作品のスタッフは独立しスターライトマリーを設立。[[『悠久』シリーズ>悠久幻想曲シリーズ]]がヒットするがその後経営破綻。 --そういう事情も相まってか、本作とウィザーズハーモニーシリーズは後々ゲームアーカイブスで配信されたのだが、悠久シリーズはゲームアーカイブスでの配信の見込みすら難しくスターライトマリーのファンを落胆させている。 ---ちなみにスターライトマリーのスタッフは後にブリッジを設立、『此花』シリーズや『[[らき☆すた ~陵桜学園 桜藤祭~]]』の下請けに関わりギャルゲー業界で生き残っていくこととなる。そのしぶとさは『ウィザーズハーモニー』時代からの、ネットのクソゲー評を気にもしないパワフルな支持者がいるためか。