ウィザーズハーモニー
【うぃざーずはーもにー】
| ジャンル | そだベンチャー (アドベンチャー+育成シミュレーション)
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| 対応機種 | プレイステーション セガサターン
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| 発売元 | アークシステムワークス | 
| 発売日 | 1995年12月29日 | 
| 定価 | 4,900円(税別) | 
| 配信 | ゲームアーカイブス:2008年4月30日/600円(税別) | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 声優への評価だけでクソゲー扱いされた悲劇のタイトル | 
 
概要
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プレイヤーは主人公ルーファス・クローウンとして、天才だが大問題児のデイル・マース先輩のせいで廃部寸前になった冒険者養成学校「スキル・アンド・ウィズタム」の名門魔法クラブ「ウィザーズアカデミー」を立て直すことになる。
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学年男女を問わず新部員を集めて鍛え上げ、テストに合格することが目的。
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『ときめきメモリアル』の大ヒットを受け、当時のパソコン通信内ではポスト『ときメモ』として期待されていた。が、実際のゲームシステムは『卒業』に近く、似て非なるゲームである。
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発売当時のプレイステーションでは、数少ないギャルゲーであり定価も安めであったため、それなりに注目を集めた。
ゲームシステム
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基本的にはオーソドックスな育成SLG。1回のクリアまでは4~5時間程度。
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育成対象が主人公+5人の部員というユニークな構成になっている。
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勧誘という形で、育成する対象をプレイヤーが自由に選べたのも大きな特徴。
 
 
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ゲーム期間は4月から年明けの3月までの1年間。
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ゲーム開始時にまず、育成するキャラクターを5人勧誘する。
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平日には主人公自身と部員を育成する。
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平日では部室で噂を聞くと発生する「自発イベント」と、該当キャラが所属していて特定の日付を迎えると発生する「突発イベント」が発生する。
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週末は自由行動。
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学期ごとに期末テストがあり、合格しないとゲームオーバーになる。
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4教科×部員6人の計24のうち、12合格すればクリアとなる。
 
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基本的には仲良くなった部員(もしくは特定の条件を満たした相手)とエンディングを迎える。
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ルーファスと男性部員とのエンディングもある。
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誰ともくっつかなかった場合のルーファスと、ルーファスとくっつかなかった3年生達は、パラメーターに応じてエンディングが分岐する。
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また、ルーファスとくっつかなかった1・2年生の中で最もパラメータが高かったキャラが次期部長となり、普通と違ったエンディングとなる。
 
 
特徴
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主人公(プレイヤー)が育成の指揮を取って第三者達を育成するというのは、実は『卒業』や『メルティランサー』が最も近い。
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本作でも、1年生達など初期能力が低いキャラクターが結構いるので、主人公以外のキャラクターの育成がゲームの鍵を握る。
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またルーファスを含む3年生達の、パラメーターによるエンディング分岐も『卒業』的な要素である。
 
 
評価点
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テンポの良さ。
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育成シーンのアニメスキップをしていくと、2周目以降もテンポよく遊ぶ事ができる。
 
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ただ、操作性に関しては後で述べるが、とても褒められた代物ではない。
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よくイベントが起きる。
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「自発イベント」と「突発イベント」の配置が絶妙で、頻繁(約2週間に一回ペース)にサークル全体を巻き込むイベントがおこるので飽きさせない。体感としては次のイベントがすぐに発生するゲームである。
 
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イベント時の作り込み。
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自発イベントや突発イベントでは展開が選択肢で大きく分岐する。何周遊んでいても、こんな展開あったんだ!と驚かされることがある。もちろん成功選択肢も複数。
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また同じイベントでも、キャラクター毎に展開が根本的に違うことも多い。
 
 
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独特の雰囲気。
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イベントの頻繁さと様々な展開に支えられ、唯我独尊のデイルの造詣やそれに翻弄されるルーファスをはじめ、アカデミーの部員達の一体感をよく表現できている。
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さらに清潔感・清涼感が加わった、本作独特の雰囲気を愛するファンは多い。
 
 
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女性キャラとのエンディングも、男性キャラとのエンディングも用意されている。
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これも本作独特の、主人公を中心としたアカデミーの一体感の表現に少なからず貢献している。
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この時代、乙女ゲー自体が稀だった為か、女性ファンの獲得にも成功している。
 
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浅乃一氏による音楽も、世界観によくマッチしていると好評で、サントラも発売された。
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OPムービーで流れる歌は独特の世界観を持った良曲であり、また本作の雰囲気にもよくあっている。
問題点
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「声優」これに尽きる。ファンの間ですら総じて評価が悪かったほどのヘタクソさ加減。
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ゲーム中ずっと聞かされ悪目立ちが過ぎることもあり、この点でもってクソゲー扱いされる事すらある。
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メーカーも問題点と自覚していたのか、スタートボタン一つで音声のON/OFF切り替えが可能。システムメニューを介することなく変更可能というのは、当時どころか現在ですら珍しい。
 
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そもそも声を担当した人物が、本当にプロであったかどうかすら当時から疑惑が持たれており、社員やその関係者、専門学校生などの噂があったが、事実そうであった。
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スタッフロールや取説でも記載されている通り、専門学校が絡んでおり、デイル先輩役に至っては社員である。
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アリシア役の高瀬麻里子氏だけは劇団四季出身のれっきとした役者であり、1人だけ浮いているレベルでまともな演技をしている。
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『ストリートファイターII』シリーズなど、当時のゲーム作品ではそのような事例は普通に多かったので、珍しくは無かったものの、この手の台詞が長いタイプの作品では露骨に違和感を醸し出してしまう為、否定的な印象を与えてしまった。
 
 
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ゲームを始めた直後の勧誘イベントが、いきなり極めて不親切。
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誰がいつどこにいるのか、そもそもどんなキャラクター達がいるかも不明なまま、複数のポイントの中から「誰かがいる場所」を探さなければいけない。
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キャラクター一覧そのものは説明書で確認できるが、ヒントとしては不十分。また特定の誰かをピンポイントで勧誘したいと思った場合、難易度が更に跳ね上がる。
 
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当たり前のように時間(移動回数)制限が課せられており、なおかつ時間と場所の組み合わせ次第では「誰にも出会えなかった」としてチャンスが空費されることも多々ある。
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誰かに出会えたとしても、ノーヒントに近い会話三択で正しい返答をしないと機嫌を損ね、あっさり勧誘失敗となる。期間内にもう一度出会えれば再び勧誘できるが、その際もやはり会話三択が要求され、更に初期好感度も下がる。
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既定の期間内に人数が揃わなかった場合、救済処置として教官が足りない分のメンバーをランダムに集めてくる。
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要するにここの一連のイベント、本作に熟練しない限りはほぼ完全な運任せである。その運任せによる結果で1年間付き合うメンバーが選ばれる。
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誰が選ばれようと実際のところプレイしているうちに愛着が湧いてくるため問題はないのだが、よりによって冒頭がこの不親切なイベントでかつメンバーも強制に近い形となり、初見における印象は大変に悪い。
 
 
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不親切な部分がちらほらある。
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休日イベントや冬祭り等は雑な作り。
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とあるイベントで地下迷宮に行く際に「魔法で明かりを灯す」「松明を灯す」「松明を灯さない」の三択が出るが、この中で揚げ足取り紛いな「松明を灯さない」を選ばないと成功しない等の常識的に考えたら負け的な選択肢を強いられるイベントがかなりある。
 
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操作性が極めて悪い
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初期のPS及びSS作品にありがちな入力時の反応の遅延及び無反応が慢性的に発生している。
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勿論、続編では解決されたが。後述の同じスタッフが開発した『エターナルメロディ』ではPS版のみ改善されず、SS版及びPS版揃って操作性が改善されたのは『悠久幻想曲』まで待つ事になる。
 
賛否両論点
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グラフィックの質があまり褒められたものではない。
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村瀬将人(後のmoo)氏の絵は後の作品でもデッサンがおかしいと言われる事も多く、絵柄にも癖があって好き嫌いの出やすい物だが、本作時点では後作と比べてもはっきり分かるくらい下手である。特にOPムービー。
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さらにCGに起こす上での塗装技術不足も合わさって余計に酷く見えてしまっている。
 
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とはいえ多彩なキャラクターの描き分けや、服装の描き込み等はしっかりしており、センスそのものは決して悪くない。本作の時点でも氏のデザインを評価する声も少なからずあった。
 
総評
こういったゲームでは大事な「絵と声」に大きな問題を抱えており、その点でクソゲー扱いされることも多い。
特に声に関しては素人起用で話題になるゲームにすら遠く及ばない下手さで筆舌に尽くしがたい。
またゲームを始めてすぐの段階で稚拙な要素、不親切な仕様ばかりが一気に突きつけられるため、冒頭だけでプレイ意欲を失い離れてしまったプレイヤーも少なくない。
とはいえ、ゲーム自体の雰囲気やイベントの多彩さ等、優れた要素もあって熱烈なファンも生み出しており、最初を我慢して続ければそれほど悪いゲームでもない。
その後の展開
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後にWindows 95にも移植された。
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声優は大幅に変更されて改善されたものの、一部のキャラに至っては変更が災いして改悪になってしまっている。
 
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1999年2月25日にPSで『ウィザーズハーモニー復刻版』が発売されている。価格は2,800円(税抜)。旧版のセーブデータの流用も可能。
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OP・EDの変更、ミニゲームの追加、サウンドやエンディングCGの閲覧が可能になっている。
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シスコンエンタテインメントの『なつコレシリーズ』vol.4(2002年8月8日発売、税抜1,800円)、サクセスの『SuperLite1500シリーズ』(2002年12月12日発売、税抜1,500円)と2度にわたって再販が行われた。
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ゲームアーカイブス版は旧版を基にしているため、復刻版の追加要素は含まれていない。
 
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直接の続編として『2』と『R』がある。
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『2』や『R』でキャラデザが変更されたのは不評だったが、声優に有名声優や劇団員を起用したのは好意的に評価された。また初代から続投した声優も成長して演技が上手くなったのか、聞くに堪えうるレベルになっている。
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2018年4月1日にアークシステムワークス公式生放送「あーくなま24時間SP“THE WORLD~世界~”」にて続編の『ウィザーズ シンフォニー』の制作が発表された。プラットフォームはPS4/Nintendo Switchで2019年2月28日に発売された。キャラデザはmoo氏。
 
 
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この作品のスタッフは独立し、シグナルライトやスターライトマリーを設立。『悠久』シリーズがヒットするがその後経営破綻。
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そういう事情も相まってか、本作とウィザーズハーモニーシリーズは後々ゲームアーカイブスで配信されたのだが、悠久シリーズはゲームアーカイブスでの配信の見込みすら難しくスターライトマリーのファンを落胆させている。
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ちなみにスターライトマリーのスタッフは後にブリッジを設立、『此花』シリーズや『らき☆すた ~陵桜学園 桜藤祭~』の下請けに関わりギャルゲー業界で生き残っていくこととなる。
 
 
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攻略本が発売されたのは本作の2年後となる1997年の10月、しかも『公認攻略本 ウィザーズハーモニー1&2 卒業白書』というタイトルで『2』の攻略との同時掲載という珍しい形になった。
最終更新:2025年02月17日 09:31