本項ではアーケード用ゲーム『平安京エイリアン』と、そのゲームボーイ移植版の紹介をしています。 ---- #contents ---- *平安京エイリアン 【へいあんきょうえいりあん】 |ジャンル|アクション| |対応機種|アーケード| |販売元|電気音響| |開発元|東京大学理論科学グループ| |稼働開始日|1980年| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''| ---- **概要 週刊朝日の人気コラム「デキゴトロジー」では、大学で開発したビデオゲームを紹介していた。~ ある時編集部は「東大マイコンクラブ」に取材を申し込んだが、ゲームが期待したレベルの出来ではなく、東大もう1つの電子工作サークル「東京大学理論化学グループ」を取材する事にした。だがこちらはビデオゲーム開発に取り組んでおらず、急遽会議を行いアイデアを出して生み出されたのが本作である。 厳密にはこの時生み出されたのは本作の原型。当時映画『エイリアン』が流行していた事。~ ゲームデザイン上碁盤目のフィールドと、攻撃方法に合理性を生み出す処置として平安京を舞台にしたために、平安京とエイリアンというB級映画のような組み合わせが完成した。~ ストーリーとしては平安京に来襲したエイリアンに検非違使が穴掘りだけで立ち向かう、という設定。 ---- **システム -各ステージ開始時にフィールド上へ、敵であるエイリアン数体と、プレイヤーキャラクターである検非違使(けびいし)((平安京に実在した今で言う警察官。))が配置される。プレイヤーは4方向レバーで検非違使を操作する。 --検非違使はエイリアンと接触するとミスになり残機を1失う。 --エイリアンを全て倒すとステージクリアになる。 -攻撃方法は「穴を掘る」と「穴を埋める」。エイリアンを掘った穴に落し、落ちたエイリアンを埋めると倒した事になる。 --穴は5段階掘る事でエイリアンを落せるようになる。ボタンを押したままで自動で掘っていくが、深さに応じて時間がかかる。 --穴を埋めるのも5段階。完全に埋めきった時点でエイリアンは消滅する。埋める時間は穴にエイリアンが居ても居なくても同じ。 --穴はどの段階でも掘ったまま置いておくことができる。掘りきれていない穴の上をエイリアンが通過するとエイリアンは穴に落ちず、穴も消滅してしまう。検非違使は少しでも穴があると通る事が出来ない。 --穴に落ちたエイリアンは一定時間放置すると這い上がってくる。這い上がった際穴は埋められてしまう。 ---そのため埋めるのが間に合わないと思ったら、その先に穴を掘り再び埋めるというテクニックがある。 --エイリアンが落ちた穴に別のエイリアンが接触すると一瞬で穴から這い上がり、穴は埋まってしまう。エイリアンは基本ランダムで動き回るが、埋まっているエイリアンを率先して助けようとする傾向にある。 ---安直に埋めに行くとピンチになったりと油断ならないが、別に穴をしかけておき引っ掛けて連続で埋めたりなども狙える。 --同一面で一定時間以上経つと画面上にエイリアンが大量に増殖し、平安京がエイリアンで埋め尽くされ実質クリア不可能状態になる。そのため極端な待ちプレイ((自分の前後に穴を掘ってエイリアンが落ちるまでひたすら待つ等。))が通用しない。 ---上記の特徴から、ある程度能動的に動かなければクリアは難しい。 ---一応クリア不可能ではない。ちなみに、フリーウェア版では埋めると同時にエイリアンが補充されるようになるので完全にクリア不可能。 --穴に落ちたエイリアンは早く埋めるとそれだけスコアが高く得る事ができる。 --エイリアンは最後の一体になると高速移動するようになる。 ---- **評価点 -ゲームバランス --安直に掘りまくると、エイリアンが引っかかっても埋めに行けないというオチに。~ またエイリアンの近くで掘ろうとしても、そのまま穴を踏み越えられてミスする危険性がある。これらのバランス具合が絶妙。 ---- **賛否両論点・問題点 -ミス時に、粗いドットながらもエイリアンが巨大な口で検非違使を齧っているのが表示される。 --さらにその後「ア゙ァ゙ーッ」という悲鳴とともに、%%キリスト教伝来前なのに%%天使の輪っかがついた検非違使のグラフィックが画面上方に飛んでいく。なかなかシュール。人によっては怖いかもしれない。 ---- **総評 非常にシンプルなルールでありながら、穴を掘っておくという「待ち」が重要な戦略性の高いゲームである。~ 一方で埋めに行く必要性や時間制限もあり、アクション性や能動性とのバランスも良い。~ ---- **余談 #region(ゲーム画像) |#ref(alien1.png)|#ref(alien2.png)| #endregion -現在''フリーウェアで公開されている''。 -東京大学には一番最初に登場した本作のアーケード筐体が現在も保管されている。 -ナムコのアーケードゲーム『[[源平討魔伝]]』の平面モードにおける迷路ステージで、本作のエイリアンをオマージュした敵キャラが登場する(こちらは主人公の攻撃で普通に倒せる)。 --実は音楽担当の中潟憲雄氏の奥さんの身内が本作の開発に関わっていたといい、恐らくその縁からと思われる。 -スーパーファミコンの『ニチブツアーケードクラシック2』でも本作およびリメイク版がプレイできる。 当時は、「スペースインベーダー」のようなシューティングや「ヘッドオン」などのドットイートタイプのゲームが多くを占める中、敵を穴に落として埋めていくという独特のゲーム性は非常に評価され、後のユニバーサル社『[[スペースパニック]]』に受け継がれた。~ その胡散臭いB級映画のようなタイトルからは想像つかない高いゲーム性は、30年の時を経た今も色褪せていない。 ---- ---- *平安京エイリアン (GB) 【へいあんきょうえいりあん】 |ジャンル|アクション|CENTER:&image(heiankyo.jpg,http://www.amazon.co.jp/dp/B000069TSJ,height=160)[[高解像度で見る>http://www26.atwiki.jp/gcmatome?cmd=upload&act=open&pageid=3221&file=heiankyo.jpg]]| |対応機種|ゲームボーイ|~| |発売元|メルダック|~| |開発元|KAZe|~| |発売日|1990年1月14日|~| |定価|3,000円(税抜)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| **概要(GB) 『平安京エイリアン』のライセンスを得たメルダックが制作したゲームボーイリメイク版。旧平安京エイリアンとリメイク平安京エイリアンを同時収録している。 ---- **原作との違い(GB) -基本システムはリメイク元の平安京エイリアンを継承している。以下は相違点。 --フィールドが大幅に縮小。横10マス縦9マスのマス式に変更。 --障害物が登場。一定時間ごとに通れるようになる紋章。穴を掘る事が出来ない固い床。乗ると穴は掘れないがエイリアンは進入できず、一定時間で定位置に移動する船。 --検非違使を発見すると接近してくる新種エイリアンが登場。 --効果音やBGMが追加され、グラフィックも新調された。作曲は中潟憲雄と大久保高嶺との共同だとされている。彼らは同社シューティングゲーム『[[暴れん坊天狗]]』のBGMも手がけている。 --対戦モードが追加された。対戦中のBGMは互いのGBでそれそれ別の矩形波が鳴り、さながらセッションするようになっている。 --NEWモードは全12面。全てクリアするとエンディングに突入する。 ---面構成は4種類。それぞれ3つのステージに分かれており、敵の配置や種類・数が異なる。 --穴の段階が3段階に変化。掘るにも埋めるにも手早く済むようになった。 ---- **総評(GB) 古臭さが否めなかった元の作品のグラフィック・サウンドを強化するため、ゲームボーイというハードの解像度の関係からフィールドを狭くしたのだと考えられる。が、それでゲームバランスに支障が出ないよう配慮するでも、オリジナルを過剰に尊重するでもなく、穴段階の短縮・様々なギミックを搭載する事で、オリジナルの要素を色濃く継承した続編的なリメイクになっている。~ ゲームスピードや難易度の関係から、新たに平安京エイリアンを始める場合はこちらからプレイしてみるといいだろう。 ---- **余談(GB) -ソフトに貼られたシール(パッケージ)には穴に埋まったエイリアンが描かれているのだが、これがまた綿密で非常に気持ち悪い。 ----