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X-MEN CHILDREN OF THE ATOM - (2014/05/14 (水) 18:00:21) のソース

*X-MEN CHILDREN OF THE ATOM
【えっくすめん ちるどれん・おぶ・じ・あとむ】
|ジャンル|対戦格闘アクション|~|
|対応機種|アーケード(CPシステムII)|~|
|発売・開発元|カプコン|~|
|稼働開始日|1994年12月|~|
|分類|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''[[CAPCOMクロスオーバー関連作品シリーズリンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/1084.html]]''|
|>|>|CENTER:''[[Marvel Comics関連作品シリーズ>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/1082.html]]''|
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#contents(fromhere)
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**概要
 アメリカのマーベル・コミック社の人気漫画『X-MEN』を原作に作られた対戦格闘ゲーム。本作発売の時期はアメコミが非常にプッシュされており、X-MENを含むアメコミの翻訳版の販売や、ゴールデンタイムにX-MENのTVアニメ版が放映されていた。それらとの相乗効果もあり、日本国内でのアメコミの知名度を飛躍的に上げた作品といえる。
--日本では過去にコナミによりベルトスクロールアクションとしてアーケード化されており(こちらも6人用筐体とハイクオリティな音楽が特徴の佳作)、そちらと区別するため「COTA」という略称が使われることも。
--メイン開発者は『[[ストリートファイターII]]』の生みの親である西谷亮氏。当時氏は2D格ゲーの進化について行き詰まりを感じていたが、上司から「『X-MEN』のゲーム化の権利を獲得したんだが、これで何かゲームを作ってみないか?」と持ちかけられ、面白そうだと感じた氏がこの企画に乗った。X-MENのキャラを使う前の段階での仮タイトルは『ストリートファイターIII』だったらしく、その名に恥じない斬新な試みがいくつも行われている。

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**システム
このゲームの大きな特徴、それは「それまでの格闘ゲームの常識を吹き飛ばすほどの圧倒的な自由度の高さ」である。
-スーパージャンプ
--このゲームを象徴するアクション。レバーを下に入れてからレバーを上に倒す(またはキックボタン3つ同時押し)と、数画面を軽く飛び越えるほどの跳躍力でジャンプする。スーパージャンプ中は前後への制御も可能。
--このゲームではほとんどの必殺技を空中で出すことができるし、どのキャラも何らかの空中制御方法を持っている。空中技の回数制限などもなく、一部を除いて技や食らいのけぞりの硬直が解けたら次の技を出せるなど、地上と比べても全く遜色ない動きができる。
--浮いた相手をスーパージャンプで追いかけて空中戦を繰り広げる、地上から空中にいる敵に向かって、またはその逆で必殺技の飛び道具を撃つなどの全画面を使った対戦が展開され、派手極まりない。

-Xパワーゲージ
--体力下にあるパワーゲージ。攻撃をすることで溜まっていく。レベル1・レベル2・レベルMAXの三段階あり、レベル2になると各キャラごとに用意されている特殊能力「Xパワー」や近づいての投げに対して防御できる「投げ抜け」を、レベルMAXになるといわゆる超必殺技である「ハイパーX」を、ゲージを消費して発動できる(消費量は異なる)。この「ハイパーX」のみ「ガードキャンセル」で出すことができる(ただし「ヴァンパイアハンター」の様な「ガードキャンセル恩恵」は一切ない)。
--Xパワーは、ウルヴァリンを例に挙げれば、「一定時間さらなるスピードを得る」「体力を回復する」といったものがある。サイクロプスとオメガレッドを除く全キャラに様々なXパワーが用意されている。
--投げ抜けはゲージ半分程度使用。各キャラごとに「投げ抜け」と「投げ返し」のどちらかが設定されている。「投げ返し」は相手の「投げ返し」をさらに返すことまで可能だが、「投げ抜け」に比べるとゲージ消費量が多めに設定されている。
---今作の仕様として、投げられた後のダウンで更に追加ダメージが入る(投げられた瞬間にダメージを受け、更に地面に叩き付けられた所でほぼ同程度のダメージを受ける。勿論このダメージでもKOできる)ため、受け身もまた重要なアクションとなっている。
-連携・連続技の自由度
--どんな通常技でも、ヒットしていてもしていなくても、ほぼ任意のタイミングで必殺技でキャンセル可能。キャラによって異なるルートで通常技→通常技という繋ぎもでき、そこから必殺技にキャンセルできる。
--吹き飛び中だろうがダウン中だろうが攻撃を普通に当てられる。ただ起き上がりモーション中はノックバックがなく、相手がダウンしない。
--技ごとに吹き飛ぶ方向、力が設定されている。吹き飛ぶ距離はキャラごとに設定された体重も計算に加えられる。また、ダッシュやジャンプ中に技を振れば、その移動時の慣性を保ったまま攻撃ができる。
---さらに、通常技はスーパージャンプでキャンセル可能。吹き飛ばした相手をスーパージャンプで追いかけて追撃という連続技もでき、後のシリーズのエリアルレイヴの原型となった。
--ただしコンボによるダメージ補正のかかり方が激しく、また強攻撃や必殺技・投げを単発で当てるだけでもそれなりのダメージを叩き出せる上、かなり気絶しやすい。普通に駆け引きする分には連続技にはそれほど偏重していない。
---もっともあまりにコンボ補正が酷すぎて、連続攻撃能力(いわゆるチェーンコンボ)を駆使して華麗なコンボを決めても、「J強K→屈強Kの2ヒット、下手をすれば単発の強攻撃以下のダメージにしかならない」というのはさすがに問題と考えたのか、次回作以降は極端すぎるコンボ補正はやわらげられている。なお通常投げもコンボになるが「投げは1コンボ2回まで」となっている((スパイラルのシックスハンドグラップとメタモルフォーゼの「掴みモーション」も「投げ」とカウントされている。))。
--先述のとおり、2D格闘ゲームでは「おそらく初」となる「重さ」の概念がある。この設定の影響は大きく、「~専用コンボ」「キャラによってコンボ使い分け」の必要を産み出している。
--対戦ステージも一癖ある仕様が多い。中には時間が経ったり、地面に衝撃を与えていくと床が崩落するステージまである。このため、ピヨりすらステージ効果によって消されてしまうこともあるし、ステージ専用コンボが産み出されもした。この難しさがコンボゲーになるのを防いだともいえる。
-その他画期的なシステム
--体力ゲージ横に表示されているキャラの顔グラフィックは、技を受けると顔が痛々しくなっていき、背景も青→黄→赤と変わる(一定時間攻撃を受けなければ青へと戻る)。これは気絶値の溜まり具合を表しており、体感だけでなく視覚的にも気絶値の溜まり具合を認識できる。
--初心者補助のオートモード。キャラを選択した後にマニュアルとオートマチックの選択ができ、オートモードにすると自動でガードするようになる。ただし通常技でも体力を削られる、必殺技の弱中強の撃ち分けが出来ないなどの制限がかかり、対戦で一勝するとマニュアルに戻される。
--ラウンドが始まる前から左右への移動が可能(攻撃は出来ない)。さらに、勝利ポーズ中でもスタートボタンを押せば対戦に勝った後でも敵を攻撃できる(当時の公式ガイドブックの用語辞典によればこれは「WINキャンセル」もしくは「勝利ポーズキャンセルボコボコ」という名で呼ばれる)。追い打ちを入れたところで何のメリットもないのだが、((ただし、初期バージョンには「死体殴りでの攻撃でも気絶値・ゲージが貯まり、次のラウンドに持ち越される」という仕様があった。))「死人に鞭打つ」行為となるためトラブルの元になりやすかった。
//その本の説明では「攻撃『も』できる」ってより、どっちかと言えば「攻撃『が』できる」といった感じ。
---本作で出来るのは通常攻撃だけだが、以降の作品でもこの仕様は継続され、勝利後に出来る行動がどんどん増えていき、『X-MEN vs. STREET FIGHTER』以降ではハイパーコンボ(超必殺技)ですらゲージが残っていれば出せるようになった。

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**キャラクター
-キャラはX-MEN(正義側)・ヴィラン(悪側)が各6人と隠しキャラクターが1人の全13人。うちヴィラン2人はCPU専用のボスキャラであり、使用可能キャラは全11人。
--キャラは人気よりも個性重視の選抜をされているようで、アニメ版でレギュラーだったキャラを差し置いて、サイロック、コロッサス、アイスマンといったマイナーどころが出演している。ヴィランもシルバーサムライやスパイラルなどお世辞にもメジャーとは言えないキャラが登場している(この流れは続編の「マーヴルスーパーヒーローズ」でも続き、原作「インフィニティガントレット」の及び今作に登場したキャラ以外でブラックハートやシュマゴラスなどがいる。特にシュマゴラスは1970年代に2回マーヴルに出ただけの超ドマイナーで、マーヴルを翻訳した小学館のマーヴルXの読者コーナー「教えてウォッチャー」で「よくこんなマイナーなキャラを見つけてきた」とまでいわれた)。
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#region(キャラクター一覧)
-X-MENサイド
--サイクロップス(X-MENのリーダー。破壊光線「オプティックブラスト」を照射できる)
---通常技(強P)がビーム、投げもビーム、必殺技は当然ビーム、ハイパーXはビームが二種類とビーム三昧のキング・オブ・飛び道具キャラ。主人公キャラらしく扱いやすい性能に見えるが、その実はかなり癖のある性能。
---性能のいい通常技と2段ジャンプを生かした空中戦が得意。しかし飛び道具はこのゲームでは「お世辞にも優秀とはいえない」レベル。コンボの威力も低く、ハイパーXのガードキャンセルとの相性も最悪。対戦では苦戦を強いられる。

--ストーム(X-MENの副リーダー。天候を自在に操る)
---空中の落下の軌跡を変える、飛行能力、空中ダッシュなど、このゲームの中でも随一の移動能力を持つ。通常技、必殺技も「天候を操る」能力を再現しており、ハイパーXの「ライトニングストーム」「アイスストーム」は広範囲を攻撃可能な強力な技。
---元祖8方向空中ダッシュキャラ。通常技は速いがコンボルートはサイロックや後の作品のストームの様に優遇されてないため、一工夫必要。相手を引き寄せるor引き離す「風起こし」という画期的な技(Xパワー)まであった(今作のみ)。強力な飛び道具と非力虚弱っぷりが目立つが、使いこなせば強力。しかし極めて操作難易度が高く、本作の稼働中には強さを引き出されなかった無念なキャラともいえる。

--ウルヴァリン(アダマンチウム製の豪爪と驚異的な回復能力を持つ)
---原作でも人気のあるキャラクター。初心者でも画面を縦横無尽に動き回れるため、このゲームを最も体現しているキャラクターといえる。完成度は高く、「強いて不満点を挙げるなら、飛び道具が無い事ぐらいである」とまで言われた。
---ゲーメストの最初の対戦ダイヤグラムで1位につけられたため強力キャラに思われがちだが、チェーンコンボの流れは少なく、コンボ力や機動性は並で、原作ばりのタフネスさは「Xパワー」の「ヒーリングファクター」で再現のため防御は並以下と、実はそこまで強力ではない(強いて長所を挙げるならばハイパーXがガードキャンセルにやや向いてる)。「強すぎない」ところもある意味完成度が高い?

--コロッサス(全身を鋼鉄の鎧で覆えるパワーキャラ)
---原作から「高火力」「高耐久」をイメージして作られている。Xパワー「スーパーアーマー」を使えば相手の攻撃を受けてものけぞらずにそのまま攻撃を繰り出せるようになる。格闘ゲームにおける「スーパーアーマー」状態はおそらくこのキャラが初。
---高威力の通常技と投げ技を有しており、見た目によらずダッシュやジャンプは速く、必殺技は速くスキがなく万能、通常投げは鬼間合いor投げ返しからお手軽強力コンボ、ハイパーXがガードキャンセルに向いた性能も兼ね備えてる、と攻守に隙がない強力なキャラ。操作難易度も高くない。重量キャラが弱いor難しいゲームが多かった時代ゆえ、その凶悪具合は意外に気付かれない。

--サイロック(精神エネルギーを刃に変える能力を持ち、忍術に似た体術の達人)
---素早い動きと高い連続技能力による怒涛のラッシュを仕掛けられるキャラ。ただし、前述のコンボ補正と連続攻撃能力の相性が悪く、適切なコンボを知らないと「押しているのに体力負け」という事が往々にしてある。
---使いこなせば相当強いが、ある程度セオリーを知ってる相手を打ち砕く強さをキープするには相当な腕がいる。反面、J強P→J強Kの流れが強力なため慣れていない相手にはかなりの強さを誇る。必殺技のサイブレイドスピンはコマンド入力後に弱中強の「入力してないKボタン」を追加で押すことで「追加モーション」になり、それぞれ1モーションにつきKボタン最大3回まで(受付は短い)の合計9入力という非常に忙しい(例:236中K×3→弱K×3→強K×3を速く入力、など)技だった。

--アイスマン(冷気を自在に操る。戦闘時は氷の彫像のような姿になる)
---氷を使った強力な技が特徴。相手を凍結して身動きをとれなくさせる中P投げ→ダッシュ強P→強K→アイスアバランチの気絶3段→体から雹を乱射するハイパーX「アークティックアタック」という流れを持ち、本作プレイヤーの間で流行。特にアークティックアタックは連打次第でコンボ数が伸びるため、頑張ったプレイヤーは多い。
---「ビーム耐性」という特殊能力を持ち、一部飛び道具の削りダメージを無効化できる(ビーム系に限らずサイロックの飛び道具なども持つ)。

-ヴィランサイド
--オメガレッド(標的のエネルギーを吸い取る鞭「カーボナディウムコイル」を持つソビエトの超人兵士)
---通常の動きこそ鈍重だが、「カーボナディウムコイル」で遠くの相手を掴んで任意の方向に投げ飛ばしたり、移動技としても使える「オメガストライク」や空中ダッシュなど、使いこなせば素早く多彩な動きができる。
---コイルが吹き飛びダウン(打撃投げ)で高く放り投げる追加コマンドまであったため、レバー入力で画面3箇所に出せる(事実上地上全てカバー)しゃがみ強Kのおかげで、初期にして相手を即死させられる永久コンボが発覚、しかもゲージを必要とせず、むしろ逆に相手のゲージを吸収できるため、容赦なく戦うと強すぎるキャラであった。

--センチネル(ミュータントを排除するために作られたロボット兵器)
---当時の格闘ゲームとしては屈指の巨体を持つ。機動力こそないが、体力ゲージの位置に及ぶほどの巨体と、そこから繰り出される判定、リーチとも強い通常技、さらにはビーム(立ち強P)やミサイル(しゃがみ強P)、必殺技のロケットパンチといった多彩な重火器での攻撃を持つ。技を出す時は体の一部が変形するのだが、そのギミックも非常に凝っている。
---意外に使いやすく、通常技で相手を削ることもできる上、簡単かつ強力なコンボもあったりする。

--スパイラル(異次元世界「モジョー・バース」の支配者モジョーに作られた人工生命体)
---多彩な撃ち方のできる飛び道具「ダンシングソード」や多彩な効果を持ったXパワー「ダンス」、ワープや急降下などをもつ非常にトリッキーキャラ。Xパワーには「相手キャラと自キャラの位置入れ替え」など、他作品に見られない特異な技まである。
---その分、攻撃力・防御力は低めであるため、相手を翻弄していかなければ勝ちは覚束ない。独特の癖がありすぎる動きを制御できるか否かが鍵。

--シルバーサムライ(刀に闘気を込め、あらゆる物を一刀両断する%%ヤクザ%%サムライ)
---下段技を一切持たない代わりに削り性能が非常に高いというピーキーな性能。通常技はリーチが長く威力も高い。Xパワーが非常に豊富で、一瞬隠れたり(無敵)、分身の術、炎(攻撃力アップ)・氷(追加効果が凍結になる)・雷(通常技の跡に当たり判定が残る)の3つの闘気など、ゲージの使い道に迷うキャラでもある。
---極め付けにハイパーXの雷鳴剣は連打次第で一撃必殺の破壊力を持っており、当たり方によっては「超連打し良い当たり方をすれば雷鳴剣のみで即死(稀だが)」という現象まで起こるくらい。削りダメージも大きくコンボにも組み込める為、シルバーサムライを象徴する技の一つ。弱点はガードキャンセルに不向きという程度でしかなかったためか、唯一「追加入力や連打の有無を問わず全ゲージを消費」という措置が取られている(他キャラは追加入力や連打をしない場合、大小はあるもののハイパーXを使ってもゲージは残る)。

--ジャガーノート(X-MENの創始者プロフェッサーXの義兄。秘石の力で超怪力を得た)
---CPU専用キャラ。センチネルに匹敵する巨体で異常に高い攻撃力と防御力に加え、どのキャラよりも重い。パンチを一発食らっただけで体力ゲージが吹き飛び、こちらの攻撃を当ててもなかなかのけぞらない。しかし動きが遅く、アルゴリズムも強力なものが組まれておらず、続編の様な強力な技やハイパーXもないため対応はしやすかった。ロケテストでは使用可能であった。移植作のサターン版で使用可能になるが「隠しキャラの豪鬼をショートカットモード以外の対戦で使う」という非常に面倒な作業が必要であった。

--マグニートー(磁力や重力を自在に操る「磁界王」。X-MEN最大のライバルの一人)
---CPU専用キャラにしてラスボス。高機動力と繰り出される多彩な飛び道具(高速かつ当たると痛いマグネティックブラスト、スーパージャンプしても振り切れない3WAYホーミングしておまけに超連射可能なEMパルス、高威力で画面中カバーし本キャラと独立して動くマグネティックテンペスト、など)や、こちらの攻撃を完全にシャットアウトするXパワーのフォースフィールド、圧倒的な破壊力と全画面カバーするハイパーX「マグネティックショックウェーブ」など、極めて強力な技の数々を持つ。実はロケテストで使用可能だったから驚きである。
---現在でこそ『カイザーナックル』のジェネラルや『すっごい!アルカナハート2』のパラセ・ルシアが有名だが、それ以前は「彼こそが格ゲー最強のボスキャラである」と言われていたほどである。CPUアルゴリズムで開発者による救済と見られるものが多かったため当時としてはクリア自体はそれほど難しいわけでもなく(EMパルスは3連続まで、体力がある程度減るまでフォースフィールドとEMパルスはうたない、最初はひたすら飛行マグネティックブラストで隙を作るなど)、当時倒していた人も多かった。

-隠しキャラ
--豪鬼(『スーパーストリートファイターIIX』以降登場する、「殺意の波動」を極めし格闘家)
---隠しコマンドを入力すると選べるようになる。スパIIXではぶっちぎりで最強キャラだったが、ミュータント達に対抗するためさらにパワーアップした。スパIIXそのままのグラフィックや必殺技の多さなど、あらゆる意味で他のキャラとは一線を画す。
---ただし「パワーアップした」のはスパIIXと比較しての話。竜巻斬空脚を絡めた気絶コンボが強力なものの、「あまりに普通の人間」でしかない通常技や必殺技など、ミュータント達の中にあっては「中堅レベル」のキャラに落ち着いている(ゲーメストで豪鬼込みの最初の対戦ダイヤグラムで中堅程度の評価であった)。
---その出現コマンドは難解であり、豪鬼出現コマンドで失敗するとシルバーサムライが選ばれるため(ver.2.00以降。2P側はスパイラル)、彼を変な意味で有名にさせた。同時押しがやりにくい配置な上(弱K+強P+強K)判定が微妙にシビア。アーケード専門誌であるゲーメストで、失敗したときのためのシルバーサムライ攻略が組まれたほどである。
---しかも、1P側と2P側で異なるコマンドを入力しなければならない上、バージョンによってコマンドが違っているというややこしさ。ゲーメスト誌上で公開されたコマンドはver2.00以降のもののみであったため、当時商店やスーパーなどのゲームコーナーではver.1.00のまま稼動し続けていたことも多く、シルバーサムライプレイの犠牲者が絶えなかった。
---隠しキャラとして出現コマンドだけでなく、敵として出てくる条件が非常に厳しく条件も多かったため覚えにくく、撃破特典もなかったため「CPU豪鬼」はまずゲームセンターでお目にかかることができなかった。敵として出てくるときもマグニートの様な凶悪さがあったわけでもなく、上級者などが「豪鬼撃破称号を狙う」というのも少なかった。
---なお豪鬼の登場は本作が「2作目」であり、スパIIX同様名前がない。顔パネルもシルエットのままである(「豪鬼」という名前がゲーム上現れたのは3作目の登場ストリートファイターZERO以降である)。

#endregion

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**評価点
-駆け引きだけでなくキャラを格好よく動かすのも格ゲーの醍醐味だが、以下の特徴により、特に難しい操作を要さずともゲーム性やキャラの個性を生かしたド派手な動きができる。
--ボタン一つで通常技も必殺技と見紛うような派手なモーションのものが多く、中には通常技で普通に飛び道具を発射するというものも。当然飛び道具を撃ってから必殺技でキャンセル可能。
--当時から格ゲーは進化するにつれ必殺技の数を増やしがちな傾向にあったが、本作では各キャラは必殺技は基本的に2つ。全画面を使った対戦を意識してかどのキャラも飛び道具か突進技を持っているが、使うだけでキャラの個性を発揮できる個性的なものが多い。
--必殺技コマンドも簡単。XパワーやハイパーXのコマンドも波動か竜巻コマンド+ボタン同時押しとすぐ出せる(ウルヴァリンとサイクロップスのみ昇龍拳コマンドの必殺技がある)。

-グラフィックは全体的にハイレベル。
--アメコミらしいマッチョなキャラが、ヴァンパイア同様滑らかにかつ生き生きと動く。特に女性キャラ3人の肉感的な艶やかさや、センチネルの重量感のあふれる動きは必見。
--キャラだけでなく背景やエフェクトも秀逸。ステージ背景はラウンドが終わったり次のラウンドが始まるときなどに様々な演出が入る、ステージによっては床が壊れて別のステージに降下するなど、見ていて飽きさせない。

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**問題点、賛否両論点
-操作の爽快感や見た目の派手さは特筆できるが、その駆け引きにストIIやヴァンパイアのような緻密さを感じることのできないプレイヤーから不満が挙がりやすい。
--当時はゲーセンでの対戦では「スパIIX」の流行が凄まじく、「(初代)ヴァンパイアは複雑過ぎてプレイヤーがついていけなかった(ゲーム批評より)」とまでいわれる様な「シンプルさ」が好まれる時代であり、本作のゲーム性や緻密さは厳密に図られたとは言い難い。
-「コンボ補正が強すぎる」とは言ったものの、一方でかなりの個数で永久コンボが存在する。中には「ダッシュ通常技を当て続けるだけ」というものもあったりするが、バージョンアップで永久コンボの削除は試みられていったものの、それでも数はとても多い。しかし局面が限られてたり、人間の手で対戦バランスを壊すのに使用できる永久コンボは少ない。
-バグフィックスやバランス調整を行ったバージョンアップ版が、Ver1.00→Ver2.00→Ver2.01→Ver3.00と多数登場し、それに伴い対戦バランスの修正や技性能変更といった調整がなされていった((例えばアイスマンの必殺技「アイスビーム」の硬直など。これは極端な例ではあるが、Ver3.00以降のアイスビームはあまりの隙の大きさから「出したら負け」レベルの地雷技と化した。))。そのため、同じゲームでありながら仕様が大きく変化しており、バージョンごとの違いを把握する必要があった。
//普通にやってるだけでプレイに支障を来たすようなバグは起こらなかったと思いますが

-ガンビットやセイバートゥースなど、原作での人気キャラを登場させていないキャラチョイスには不満の声も上がった。その不満を受けてか、後にこの2キャラは『X-MEN VS. ストリートファイター』で晴れて参戦を果たした。

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**総評
 ストIIの登場以降ほとんどの格闘ゲームがそれに準じたシステムを有してきた中、「ストIIの制限を全く取っ払う」という発想を高い技術とアイデアで完成させた、当時としては全く新しい格闘ゲーム。~
 自由度が高すぎる故の弊害は勿論出たが、本作の要素の数々は後のいわゆる「コンボゲー」のプロトタイプとなったものと思われ、後の作品に与えた影響はかなり大きい。~
 もちろんキャラゲーとしても非常に優秀。日本に馴染みの薄いアメコミ作品を認知させることに成功したばかりでなく、後に綿々と続く『VS.シリーズ』の礎となった点も評価されるべきである。
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**余談
-豪鬼の登場についてはいろいろと問題が起きたようだ。
--豪鬼登場はマーベル社に完全に無断で行ったため、カプコンはマーベル社からかなり怒られたらしい。後のシリーズ(MSHのアニタ、MSH VS SFのりまろ)でも同じような事を繰り返しているのは凝りないというか……。
--豪鬼に関する開発作業は極秘裏に行われていたらしく、「あるスタッフが『CPU戦で条件を満たすとラストで豪鬼が出てきてマグニートー様をボッコボコにするんだよ』と冗談で言っていたらマジでしばかれました」という微笑ましい?エピソードがある。
-前述の通り本作のキャラゲーとしての完成度は高いのだが、一方で「マーベル社にシラを切ったり、ゴリ押しした部分もいっぱいあるんだよなあ」と西谷氏は述懐している((例えば「ジャガーノートは鈍重であるためジャンプできません(=させる必要もない、ていうかジャンプさせんな)」という指示をマーベル社の担当から受けたがガン無視した。))。
-もっとも「VSシリーズ」の最初である「X-MEN VS SF」がマーベル側とカプコン側の会話中、カプコン側の人間の冗談で言ったつもりがマーベル側は本気にしていて後日「まだ?」と催促してきて作られた作品ということから(同作品ゲーメストムックより)、開発にあたってのマーベル側がどれほど細かい要求をしていて、どこまでが無視して良い範囲だったかは謎である(同誌でX-MEN VS SFの開発者は技にまで要求が来るとは言っていたが)。
-先述のバグフィックスの多さから、開発者への負担が大きかったようだ。それは本作製作後、メイン企画やプログラマーなど主力開発者がカプコンを退社しアリカを結成したことからも伺える。そのため本作生みの親である西谷氏は『VS.シリーズ』には関わっていない。そういう背景もあってか、「本作以降のVS.シリーズよりも本作の方が面白い」と推す声も多い。
-TVアニメの関連書籍を出版していた関係からか、ゲームの攻略本を滅多に出さない竹書房から本作の公式ムックが発売された。ゲーム攻略の部分は微妙だが、おまけの部分が充実しており、西谷氏による開発秘話が聞けたりする。その本の価値の9割はそこにあると言っても過言ではない。
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**その後の展開
-次回作としてスパイダーマンやハルク、アベンジャーズの面々を登場させた『MARVEL SUPER HEROES』、ストリートファイターシリーズのキャラと競演させた『X-MEN VS. ストリートファイター』などがある。
--どちらかと言うと本作の個性は主にその派手さが継承されており、空中戦や個性的なキャラ性能などの独自の個性は薄れた感じのゲームとなっている。この路線はVS.シリーズ以降も受け継がれている。
-セガサターンで家庭用移植版が発売されている。キャラのアニメーションは削減されているが、それでも移植度は良好。裏技でジャガーノートがVSモードでのみ使える(マグニートーは不可)。また、アニメパターン削減の影響でかAC版ではつながらなかったコンボが繋がるようになったりするが、この程度の差はサターン以後のハードでも見られる。基本的にVer.3.00が近い。
-プレイステーション版も発売予定がアナウンスはされていたが、日本では発売には至らなかった。海外では発売されたものの、アニメパターンが大幅に削減されており、移植度は低い。