キミとボクとエデンの林檎
【きみとぼくとえでんのりんご】
ジャンル
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ADV
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対応機種
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Windows XP/Vista/7
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メディア
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DVD-ROM 1枚
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発売・開発元
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ALMA
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発売日
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2011年6月10日
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定価
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8,800円(税別)
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ディスクレス起動
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可能
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レーティング
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アダルトゲーム
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配信
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2012年03月16日/3,800円(税別) 現在は配信停止。新規購入は不可能
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判定
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なし
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ポイント
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エセ女装男子 シナリオが薄い 主人公が地味
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概要
ARIDESIGN株式会社の新ブランド「ALMA」のデビュー作。
2011年3月11日の東日本大震災で茨城県にある開発室が多大な被害を受けたため、同社は本作の発売をもってゲーム開発の無期限休止に追い込まれている(公式発表)。
そのため、ゲーム内容以外の部分で発売前から注目を浴びてしまった、ある意味では悲運の作品。
ゲーム内容としては、所謂「女装モノ」「女子学園潜入モノ」を組み合わせた作品で、当業界では『処女はお姉さまに恋してる』のヒットより注目されるようになったジャンルである。
あらすじ
剣道と料理が趣味で、苦労性な主人公「鏑木琉星」は、冬の日の放課後の帰り道、突然黒塗りの車に押し込められ、誰もが双子と見間違える程にそっくりな従姉「鏑木琉奈」と3年ぶりに再会する。
琉奈は資産家の鏑木本家の跡取り娘で、日本でも有数のお嬢様学校、「白妙女子学園」に通い、その中でも芸能部といわれる女優や歌手を志す美しく才能豊かな生徒を集めた特別クラスの首席。
舞台では男役を担当する女子学園の王子様となっていた。
琉星は、ある事情により舞台に立つと声が出なくなってしまった琉奈の身代わりを頼まれ、女装し全寮制の女子学園に通うことになってしまう。
禁断の園の中、琉星と少女達の間に実っていく秘密と誤解と恋ゴコロの果実。
キャラクター紹介
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クリックで展開
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鏑木琉星
本作の主人公。そこいらの女性よりも遥かに美しい容姿を持った男子学生。
とある事情により、従姉である琉奈の身代わりをすることになる。
内面描写がとても多く、発言してから「あれ?俺間違ったこと言ってないよな?」と自己保身に走る癖がある。
鏑木琉奈
琉星の従姉で、メインヒロイン。ある理由で歌うことができなくなってしまい、琉星に自分の身代わりを頼み込む。
表面上は学園の王子様のような立ち振る舞いだが、実際は歳相応の女の子である。
タイトルをなぞっているのか、林檎が大好き。
花京院琴音
琉星の許嫁で、良家の娘。やや引っ込み思案なところを除けば、和を重んじるパーフェクトなお嬢様。
許嫁といっても琉星とは一度だけしか会ったことがないため、実質他人同士の間柄。
しかし、女装した琉星の正体にいち早く気づき始める。
麻倉かれん
学園では猫をかぶっている、かなり危ない臭いのする少女。
実際はあるライブの信者であり、気性は結構激しい。
彼女のシナリオは非常に癖が強く、賛否(否がかなり多めだが)分かれるものになっている(後述)。
宝生雪乃
のほほ~んとしている天然少女。よく居眠りをしてしまう。
ピアノの腕前は確かであるが、それ以外の取り柄がほとんどない。一応料理もするが、味付けがなぜか甘味あふれている。
七海とは無二の親友である。デザート限定だが、七海と同様すごく食べる。
葉瀬七海
本作唯一の貧乳キャラ。初見の印象とは裏腹に、かなり人見知りする性格。
モモンガのたるるを学園に秘密裏に飼っている。
ちっこい見た目とは想像がつかないほどの大食漢。
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問題点
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タイトル画面
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タイトルおよびパッケージのCGはキャラの立ち絵を継ぎ接ぎしたもので、明らかな手抜きである。
公式HPには各ヒロインの紹介ページに右向きの画像が使われているのに、これらは本編で全くお目見えしない。
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グラフィックリソースの不足
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バリエーションはあるものの、立ち絵そのものは一種類しかなく、演出に関しては前世代レベルというしかない。
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一枚絵の差分もほとんどなく、文字通り紙芝居といえるクオリティ。
また、線がガクガクになっているものが多く、ちゃんとしているCGとの格差が激しい。
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シナリオ全般
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一部除いて、シナリオはどれもテンプレものばかり。特に山場が少なく、容易に先が読める上味気ないシナリオが多い。ネタバレという要素がほぼない。それだけ薄っぺらい。
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また、本作は琉奈・琴音|雪乃・七海|かれん と三分岐するのだが、途中の選択肢はブラフが多く、最後の重要な選択によって個別ルートが確定する。
例えば、七海の好感度を上げてたはずが、なぜか最後の選択肢によって雪乃ルートに入ってしまい、混乱することも。
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エピローグも一枚絵の後に数テキストが表示された後に速攻でEDに入る。打ち切りと言っても仕方ない唐突さである。
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シナリオ(個別)
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雪乃、七海ルートは単純に質が悪く、かつ話が中途半端。しかも雪乃の「キスは恥ずかしいからしたくない」という思わせぶりな設定も全力で放り投げている。
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一応、妥協して太腿にキスする事になるなど、まったく活かされていない訳ではないが。
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琉奈、琴音ルートは上記2名のシナリオよりも良いのだが、何故か全く必要のない別の女装男子「智」が出てくるため、それが全て台無し(後述)にしている。
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しかも、そのキャラは同ジャンルの作品『るいは智を呼ぶ』のあるキャラのパ○リと指摘されている。
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パ○リ疑惑まとめ
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主人公
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『処女はお姉さまに恋してる』の主人公「宮小路瑞穂」との類似性が指摘されている。どちらも鏑木姓で、生粋の名家。
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もう一人の女装男子「智」関連
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『るいは智を呼ぶ』の主人公「和久津智」との類似性が指摘されている。どちらも「女装ストーカー」という肩書きであり、発表当初から物議を醸した。
それだけでも問題だというのに、こちらの智は個別ルートにおいて、女装をして学園に忍び込み、暴行を働くという凶行をしでかし、裁きや報いを受ける事すら無くそのままフェードアウトする。 正に「どうして出した」と言わんばかりの胸糞キャラである。
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女装男子要素の薄さ
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そもそも女装対象の設定からして、「言葉遣いが男言葉の王子様キャラ」なので、主人公の普段の言動と女装時の性格はほとんど変わらないため、普段との変化に乏しい。
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このジャンルでは定番な「正体がばれて騒動となる」という展開がほとんどない。一応、個別ルートで一悶着あるものもあるが、それらは女装に関する問題ではない。
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というのも、琉奈は変装元なのでお互い最初から既知、琴音には早期にばれる、他のキャラは「男でも別に問題ない」という認識…と早い段階から相対的にすんなりと受け容れられてしまうのである。その為「女子校に性別を偽って潜入している」感も殆ど無い。かれんに至ってはばれた瞬間にかれんから告白するというよくわからない展開。
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また、役作りという免罪符がある補正か、主人公が冷静さを欠いて完全に男言葉になったとしても、誰一人不審がらない。典型的なご都合主義。
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一応かれんのシナリオでは、「女装男子」という題材をうまく利用してはいる。
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主人公について
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問題点かどうかは一概にいえないが、基本的に良くも悪くも性欲に忠実な性格なので、『処女はお姉さまに恋してる』の宮小路瑞穂のような奥手なキャラを予想すると裏切られる。
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剣道部という設定が全く活かされていない。序盤、気分で竹刀を振ったりする程度。
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ボイスがなく、性格も無難なだけでさして個性があるわけでもないので、物語の軸としてはどうにも印象が薄い。それでいて序盤に女学院で女装を解いたまま夜中の学園を徘徊するという問題行為をやらかすなど、印象の悪さや粗ばかりおのずと目についてしまう形に。
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内向的でネガティブな思考が多く、優柔不断な箇所が多い所謂ヘタレ主人公故、プレイしていてイライラする人も。また、その悩みが女装に関することではないのが問題。
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また、主人公故の弊害か、立ち絵はなくアイコンのみ表示される。これのどこが問題かといえば、琉星の差分アイコンはやけに豊富で、ヒロインの差分立ち絵よりも多い。
それがアイコンでしか確認できないため、是非立ち絵で見たいというプレイヤーも存在する。また、琉菜と同じでいいのでボイスも欲しかった、という意見も見られる。
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音声
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お風呂場のイベントにてボイスが反響しないなど、重大でこそないが手抜き感が否めない。もっとも、そこまでこだわっているゲームも多くはないので、本作に限った問題ではない。
賛否両論点
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かれんシナリオ
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基本的にはギャグありエンターテインメントありの秀逸なシナリオであるが、シナリオの終盤に予想だにしない超展開を繰り広げる。
せっかくの良シナリオも、この展開で一気に台無しとなった。それまでは比較的マシなシナリオなだけに勿体ない。
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本ルートでは主人公が「どうしてこうなった」と発言するが(終盤の超展開への突っ込みではない)、そう言いたいのはプレイヤーの方だろう。
評価点
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CGのクオリティ
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前述の通りリソース不足は否めないものの、CG自体のレベルは高く、非常に可愛らしい絵柄である。
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ゆえに、絵買いした購入者はかなり多い。VFBが発売されることから、その人気の高さが窺い知れる。
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主題歌
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榊原ゆい氏が歌う主題歌『秘密仕掛けのapple』は人気が高い。
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キャラクター
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シナリオは残念であるが、癖はそれほど強くなく、ほどよい個性を持ったヒロインは全体的にとっつきやすい(ただし七海は好みが分かれる)。
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特に琴音は、声も性格もシナリオ(あくまで全体と比べてである)もそれなりの評価を得ている。
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かれん役はOPも担当した榊原ゆい氏で、演技力と途中までのシナリオから人気は高い。
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ヒロインは七海を除いて全員豊胸キャラなので、おっぱい星人には結構な需要がある…かもしれない。
総評
CGや主題歌は評価できるが、シナリオ面では「女装男子」という題材を活かせず、個別ルートの作りこみも浅い。また、全体としてボリューム不足の感は否めない。しかし、KOTYeで言うところの「致命的な欠陥」はない。そのため、エロゲーにはよくあるとりあえず流行のジャンルに乗っかった凡作という評価となった。
余談
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擬似的な百合要素
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主人公がどこからどう見ても女子にしか見えないため、CG上では一応百合百合さは楽しめる。特に琴音とりんご飴を一緒にしゃぶるシーンは必見。
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琉菜との絡みCGもあるため、「どっちがどっちだよ」と突っ込みながら百合を楽しむこともできなくはない。
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震災の影響により、中途半端な出来で本作をマスターアップせざるを得なくなったのではないかとも言われている。
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本作の主要な問題点(シナリオの浅さ、CGの不完全さ、ボリューム不足等)が、当業界においては開発期間の短縮により生じやすい傾向があるとされるためである。
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ただし、一応これでもパッチでシナリオの修正はされている。
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パッケージ裏面には何やらハーレムルートを思わせるようなCGが大きく飾ってあるが、ゲーム上では使われていない。
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2012年1月27日にビジュアルファンブックが発売された。
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オービット関連ブランドのDL販売は終了しており、本作も新規でDL版を購入することは不可能。
最終更新:2025年03月26日 23:33