とんでもクライシス!
【とんでもくらいしす!】
ジャンル
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アクションバラエティ
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対応機種
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プレイステーション アーケード(TPSシステム)
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発売元
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徳間書店
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開発元
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ポリゴンマジック、ラブデリック
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発売日
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1999年6月24日
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定価
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5,800円
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判定
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バカゲー
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ポイント
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帰宅ゲー どうでもいい所に力入ってる 映画パロ満載 関係者が無駄に豪華
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とんクラジュテェ~ム…
概要
本作は所謂ミニゲーム集である。
プレイヤーは棚祭家の面々を操り、襲い掛かる様々なアクシデントを切り抜けさせて無事に帰宅させることになる。全4章構成。
ちなみに発売元の徳間書店は発売の翌年、ゲーム事業から撤退したため本作は同社が最後に送り出したゲームである。
あらすじ
あの丘の向こうには何がある。
そんな野望も忘れかけた、ごく普通すぎる日常に暮らす5人と一匹の家族に、ある日、災難はうっかりと降り注いだのであります。
主人公は、父の種男、母の悦子、長女のリリカ、長男のツヨシの4人。
各キャラクターは、それぞれのいる場所から、おばあちゃんの誕生会に間に合うように自宅を目指します。
それは、息もつかせぬほどの破壊力溢るる魅惑の危機の連発。
血圧が上下するほどのスケールの大きさと、異質な濃度で繰り広げられるストーリー。
冷や汗タラリンの帰宅アクションというオール・ザット・エンターテイメントゲーム。
さあ、危機連発の非情の幕が今開く。「ただいまー」の声は、果たして…。
(取説より)
登場人物
無駄に色々作られているが長いので少しだけ。
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棚祭種男
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47歳の会社員、人生にストレスを感じ始めたのは小1の時。座右の銘は「逃げるが勝ち」「負けるが勝ち」「あきらめるが勝ち」。
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棚祭悦子
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40歳の主婦「人生はまきぞえ」と彼女は語る。種男との再婚もそう。
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棚祭ハツ、ペス
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今年で80歳になるおばあちゃん(ある意味元凶)と(たぶん)頭のいい犬。
ゲーム内容
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大まかな話(ゲーム)の流れ
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各キャラクターに襲い掛かるミニゲーム形式の様々なアクシデントをクリアする事で、ストーリーを進めていく。
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具体的には、終業の体操でフィーバーしていたら突如大玉に襲撃され、やっとこさエレベーターに逃げ込んだら急降下を始め、何故か降り注いでくる金ダライをかわしつつ何とかエレベーターを停止させたと思ったら今度は大爆発して…。(種男の場合)と、まぁこんな感じ。
どの章も終始、勢いでギャグを繰り出すスラップスティックコメディ漫画的なノリで進行していく。
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一部の章をプレイしただけでは理解不能な展開になっている部分もあるが、各主人公のストーリーは時間軸が並行していて互いに絡みあっており、全員のストーリーをプレイする事で初めてストーリーの全容が分かるようになっている。
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システム
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所謂ライフゲージにあたる「メーター」があり、ダメージを食らったり、答えを間違えるといったそれぞれのゲームにおけるミスをするとメーターを消耗してしまう。メーターをいっぱいまで消耗すると残機が減り、残機がゼロになるとゲームオーバー。セーブポイントからのやり直しとなる。よりメーターを消耗せずクリアしていくほど評価が高く、残機アップなどを得られる。
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リザルト画面や決めポーズは各キャラ評価によって違っているのもミソ。高評価を得るとなぜか歓声が上がる。
ミニゲーム
本作は前述したようにミニゲーム集である。内容はタイミングゲー、音ゲー、連打ゲー、クイズなど様々。
ミニゲームのタイトルは、どれも有名映画、アニメ、漫画、ゲームのタイトルのパロディ。しかも一つ一つパロディロゴまで作っている凝り様である。ジ○リとかも混ざっているのだが色々大丈夫だったのだろうか。
以下に一例を挙げる。何れも種男編より抜粋。
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「死刑台の高層エレベーター」
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エレベーターが落下、なぜか連打しないと機能しない停止ボタンを連打でひたすら押して止めねばならない。時々落ちてくる落下物に当たるとしばらく動けなくなるので、避ける必要がある。難易度は低い。
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元ネタは1958年に公開されたフランス映画『死刑台のエレベーター』。
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「めま~い」
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ビルの外のポールを伝ってビルの中に入らねばならないタイミングゲー。ボタンを少し押し続けてメーターを伸ばし、真ん中を狙って止める必要がある。真ん中に近ければ距離を稼げるが真ん中から離れるとバランスを崩し、風速40mだか60mだかの横風にあおられる中復帰しなければならずタイムロスになる。時間以内にゴールできなければ失敗。風速60mとか普通に家がぶっ飛ぶレベルだが気にしてはいけない。
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アーケード版では超序盤で登場し、かつ難易度が高い為、大抵の人はここで脱落していく。
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元ネタはアルフレッド・ヒッチコック監督の映画『めまい』。
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「救命野郎Aチーム」
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救急車に搬送された種男だが、救急隊員は意識を確認しようと何故か○×クイズを繰り出してくる。一問につき三秒以内に答えなければならず、10問正解でクリア。7問分不正解だと手遅れと判断されて失敗。
連続で不正解となると心肺停止しかけていると思われ、電気ショックを浴びて更にダメージを受ける。
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意識レベルが低下しているのにそんな問題に即座に答えられるかとか、寧ろ殺しに掛かっているのではないかとかツッこんだら(ry
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元ネタは海外ドラマの『特攻野郎Aチーム』。
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「担架でGO!」
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意識を取り戻したはいいものの、何故か担架ごと救急車から放り出され、自走する担架に乗ったままゴールを目指す運転ゲーもどき。担架はブレーキが利かず車線変更しかできない。右に左に切り返しつつバリケード(ダメージにはならないが一定時間操作不能になる)やバイクや車をひたすら避けねばならない。何故かどの車線も正面から車両が突っ込んでくるが気にしない。
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そもそも体重移動で機敏に方向転換出来る担架って何だとか救急車の後部ロックどうなってんだとか色々あるがきに(ry
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元ネタは『電車でGO!』。
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「いまさらタイタニック」
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海に投げ出された所を助けてもらったはいいが、不慮の事故により乗せてもらった舟が浸水開始。徐々に沈んでいく舟の中、ボタン連打で排水を行い沈没を阻止せねばならない。また、時折頭上に降りかかる落下物は傘で防御する必要がある。一定距離を進めばクリア。
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元ネタは言うまでも無く『タイタニック』。失敗すると、沈む寸前に「例のポーズ」が見られる。
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しかもこのゲームは種男・リリカ・ツヨシのそれぞれのストーリーで同内容のものがある。ツヨシ編ではゲーム名に「続」、リリカ編では「最後の」が付く。『猿の惑星』シリーズのパロディだと思われる。
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「暴走通勤快速」
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電車に乗ったはいいが、そこには峰子の仕掛けた爆弾が!種男と爆弾を乗せて走り出した電車の窓から見えるホーム内の駅員のプラカードの指示に従い、爆弾の解除を行う。
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なんで一人一文字ずつなんだとか、指示が「太陽系の惑星の数」だの計算問題だの回りくどいとか突っ込んではいけない。いや、そもそもなんで解除法知っt(ry
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一文字一文字を瞬時に読み取る動体視力、文章を覚える記憶力、文章から答えとなるコマンドを割り出す判断力、さらには素早く正確にコマンドを入力する集中力が大きく問われるゲームである。
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元ネタは『暴走特急』か。
クリアしたミニゲームは各章後クリア後に単体プレイ可能。ミニゲームの選択画面はレンタルビデオ屋風になっている。
バカなところ
特徴
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取扱説明書
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大体の物には大抵付いてくる、ある物事に対応した手順・方法を教えるための文書であるが、表紙を開くといきなり異国のオジサンの絶叫顔が出迎えてくれるが気にせず読み進めよう。
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目次、(前述の)ストーリーときて無駄に長い人物紹介(自己紹介)を挟んでようやく操作法、画面説明とセーブ/ロードが入り、世界のとんでもコントローラ、とんでもな人達の紹介、本作の効能「使用前・使用後」と来てスタッフが明記され読了。ゲームの説明が21ページ中4ページしかないとか気にしない。
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パロディ満載のミニゲーム
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上述の説明を読んでいただけたならお分かりかとは思うが、どれも多種多様なパロディにまみれたおバカなノリで突っ走っている。
どうしても人を選ぶ面は否定できないが、この手のノリが好きな人ならば珠玉の逸品となる事は間違いない。
評価点
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無駄に豪華なBGM
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作曲・演奏は東京スカパラダイスオーケストラが担当。
何やってんの
サントラも発売。さすがの軽快なスカは本作の魅力。
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サントラのジャケットはスカパラのメンバーの顔をデザインしたもので一見本作のサントラに見えない。しかし冊子の中を見れば本作のスクリーンショットがあるし、ジャケット裏面のスカパラの写真は本作の発売元・徳間書店が背景。
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テレビ番組において、本作の楽曲が頻繁に使用されていた時期がある(現在でも偶に使用される)。本作メインテーマを聴けば「あの番組で流れていた!」と思い出す方も多いのではと思われる。
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スタッフも無駄に豪華
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声の出演に俳優の吹越満(種男)、女優・歌手の夏木マリ(不二峰子)、特別出演に笑福亭鶴光と微妙に豪華。ただしボイスは笑い声や叫び声等の簡単なもののみで、フルボイスではない点が惜しまれる。
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何故か『moon』などで有名なラブデリックが開発に関わっている。
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意外にも伏線の張られたストーリー
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無関係に思える事象同士が後になって繋がったり、謎の演出の意味が後から判明したりと、
おバカなノリだがストーリーの骨組みはしっかりしており、オムニバス形式のシナリオならではのカタルシスが味わえる事も。クリア後に再度プレイすると新たな発見があるかもしれない。
問題点
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前半と後半の温度差。
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前半は正に息つく暇も無い「とんでもクライシス!」な超展開の連続だが、そこで飛ばし過ぎたのか、後半はやや尻すぼみor控えめな印象を受ける。
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最初から最後まで全力疾走の種男編に続いて始まる悦子編は、銀行強盗に遭遇したりその銀行強盗と雪山でチェイスしたり、最終的には家に帰るべく戦闘機に乗り込み、成り行きで巨大生物と戦う事になる。おそらくここがヤマ場で、続くツヨシ編とリリカ編は後述する理由からパンチに欠けたものになってしまっている。
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ツヨシ編はミニゲームの殆どが種男編のものの使いまわしであり、新鮮味が薄い。ステージ数も何故か少なく、あっと言う間に終わってしまう。
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展開自体は「縮小化したツヨシが蟻地獄や蜘蛛から逃げ回る」と言う、
ぶっちゃけ『ミクロキッズ』のパロディの十分新鮮な内容で、リリカ編に比べればまだタイトルに適ったシナリオである。
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最後のリリカ編は他の三人に比べるとかなり控えめのシナリオであり、最終章だからと言ってそれまで以上のとんでもない展開を期待すると間違いなく拍子抜けする。
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具体的なリリカ編の内容。一応ネタバレ注意
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授業を抜け出して買い物を楽しんでいたら迷子の円盤の子供(!?)と出会い、お母さん円盤の元へ届ける為に奔走する、と言うもの。
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身も蓋も無い事を言ってしまえば、本作で起こる超展開の大半はこの円盤の子供(と、各ステージで暗躍する不二峰子)のせいである。
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十分おかしいと思うかもしれないが、パニックアクションばりの超展開が息つく間も無く続く他のシナリオに比べると何だか大人し過ぎるという印象が否めない。
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後半こそぶっ飛んでいるが、それ以前は「見つからないように授業を抜け出す」「お得品を見つけ出して買う」「カラオケで上手く歌う」と言ったような、タイトルとは裏腹に至って日常的かつ平凡なミニゲームばかり。他3人は程度の差こそあれど、命からがらの死ぬ思いをしていると言うのに…。
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また、第三章の一つ目のミニゲームは種男、ツヨシでもやった「いまさらタイタニック」の三回目なので、リリカ編ならではのぶっ飛びミニゲームは最後の最後しか無い。
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むしろ平穏なリリカ編が導入部で、残りの3編が本編とした方が構成としては自然だが、リリカ編の一部が「他3人のシナリオで発生した超展開についての真相解明編」的な位置づけを兼ねている以上、仕方ない部分もある。
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とはいえ、リリカ編前半は平穏が過ぎるのも否めないところである。
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ミニゲームの数は種男が10に対し、悦子とリリカが6、ツヨシに至っては4しか無い。また全員が家に帰宅(リリカの章終了)の時点でエンディングであり、最終章があるだろうと期待していた者は肩すかしをくらう。この辺りも後半が薄く感じる要因だろう。
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謎の美女不二峰子は各シナリオに暗躍し、妨害をしてくるが、結局何も語られず謎のまま終わるため、彼女の行動も目的も何だったのかよくわからない、意味不明なキャラになってしまっている。
まあ本作そのものが意味不明であるが。
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ゲームとしての完成度それ自体はお世辞にも褒められたものではない。
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絶妙な操作性の悪さもあって、ミニゲームの難易度はかなり高い。ミニゲームの項目でも説明した通り、序盤の「めま~い」で脱落したプレイヤーは数知れず。
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ミニゲームの操作説明は開始前に文章で行われるが、かなりざっくりした内容となっている。
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「ボタンを押してゲージを上げろ」「方向キーで障害物を避けろ」などと説明されるが、「どこに表示されているゲージを上げるべきなのか」「どんな障害物が出てきて、どの方向キーで避けるのか」などの具体的な解説がなされない。基本的には「ぶっつけ本番でとりあえずやってみて、何度もやり直して覚えろ」というスタンスである。
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特に問題視されているミニゲームは悦子編の「目方でポン!」と、リリカ編の「クレーンシャー・クレーンシャー」。
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前者はそれぞれに重さが設定されたスーパーの食材(らしきもの)を、指定された重さと同じ値になるように選択し、買い物カゴからスーパー袋の中に移していくもの…なのだが、手持ちの食材をどう組み合わせても指定された値にならないケースが存在している。ミニゲーム開始時に表示された食材のうち、左側2つが「大根」だった場合は詰み、問答無用のゲームオーバーと考えて差し支えない。
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後者の内容は〇・×ボタンを交互に連打してゴールまで進みつつ、敵からの攻撃を方向キーで避けるというもの。連打とタイミングに合わせた操作を同時に求められる為、この手のマルチタスクが苦手であれば苦戦は必至。しかも敵の攻撃間隔はプレイヤーの連打速度が速いほど短くなる。最後のミニゲームという事もあって難易度が高いのは妥当ではあるが、それにしても厳しすぎる。
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他に制限時間が異様に長かったり、逆にキー入力受け付け時間が短かくギリギリだったり、何問も続けてクリアしなければいけないのにたった一ミスでアウトだったりと、問題のあるミニゲームも多く、練り込み不足でいたずらに難易度が上がってしまってる感がある。
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連打系の操作が要求されるミニゲームがやたら多い。誇張抜きに滅茶苦茶体力を消耗する為、体力に自信の無いプレイヤーだと泣きを見る。
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幸いにして連射コントローラー非対応ではないので、使ってしまえば一部ミニゲームの難易度が劇的に低下する。
総評
東京スカパラダイスオーケストラの音楽にのせて繰り広げられる、パロディ満載の荒唐無稽なミニゲームの数々。
ストーリー自体もタイトルに偽りの無い怒涛のとんでも展開の連続。それでいて、ただ勢いとノリに任せてバカをやっているだけと思いきや徐々に伏線を回収するしっかりした物語構成となっており、決して侮れない。
ミニゲームの難易度にばらつきが見られる点や中盤以降の展開の息切れ感が残念な所ではあるが、全体的には「ただの変なミニゲーム集」では終わらないスペックを秘めた作品と評せるだろう。
現在のゲーム市場では考えられない程、実験的かつアイデアに富んだバラエティ豊かな作品を送り出してきた初代プレイステーション。
本作はその末期に登場した、ひと際輝く家族のドラマを描いたバカゲーとしてプレイヤー達に記憶されている……多分。
余談
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フジ系の番組「SMAP×SMAP」にスカパラが出演した際、本作が紹介された。
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後にテクモよりアーケード版が発売されている。使用基板は『Dead Or Alive++』でも使われていたテクモ製PS互換基板であるTPSシステム。
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エンディング後、一家に更なる危機が訪れることを暗示した意味深(?)なムービーと共に「to be CONTINUED」と表示されるが、発売から20年以上が経過した現在も本作ストーリーの続きは語られていない。
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これ自体が作劇手法としてのクリフハンガーを皮肉った、或いはプレイヤーからの「続編マダー?」という反応を狙った、一種のネタなのかもしれないが…。
最終更新:2023年01月08日 04:30