トルネコの大冒険 不思議のダンジョン

【とるねこのだいぼうけん ふしぎのだんじょん】

対応機種 スーパーファミコン
メディア 12MbitROMカートリッジ
発売・開発元 チュンソフト
発売日 1993年9月19日
定価 9,600円
判定 良作
ドラゴンクエストシリーズ関連作品リンク
不思議のダンジョンシリーズリンク


概要

『不思議のダンジョン』初のシリーズ。
ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』のキャラ・トルネコが主人公であり、幻の宝物「幸せの箱」を求めて不思議のダンジョンに挑戦する。

入る度にダンジョンの構造が変わるユニークなシステムを持つダンジョン探索RPG『ローグ』をベースとした作品で、日本国内における『ローグライクゲーム』の普及に貢献し、本作と同様のシステムを「不思議のダンジョン系」と統括的に呼称させるほどの知名度の高さを持つ作品となった*1


特徴

不思議のダンジョンシリーズは、主人公がアイテムを駆使してダンジョンを攻略するという部分に特化した、1人用の俯瞰視点2Dダンジョンゲームである。

  • 本作に登場する敵の特徴は、DQ本編での設定に基づいたものが殆ど。
    • 見た目通りのパワーキャラ「ギガンテス」、ダメージの与え方がまずいと爆発して甚大な被害を与えてくる「爆弾岩」、多くの経験値と幸せの種(飲むとレベルアップ)を落としレベルアップに最適だがマップ上を逃げ回って倒しにくい「はぐれメタル」など、各モンスターの特性が敵側の行動パターンとして上手く取り入れられている。
    • DQ本編には無い「お金やアイテムを盗む」といった行動は、「わらいぶくろ」「ベビーサタン」といった愛嬌のあるモンスターに割り振っている。
    • 弓矢で遠距離攻撃を仕掛けてくる「リリパット」、普段は石像の振りをしているが近づくと高い攻撃力で殴ってくる「うごくせきぞう」のように、本編ではシステム的に表現しきれなかった個性を発揮しているモンスターも多い。
    • 本作の本家ともいえる『ローグ』での敵の出現テーブルへのオマージュ成分もかなり強いためか、宝箱ではなくアイテムそのものに化ける「ミミック」、仲間は呼ばずにトルネコの足を掴んで動きを封じてくる「マドハンド」、トルネコを睨みつけて混乱状態にしてくる「おおめだま」など、本編と全く異なる能力を持つ敵も存在するが、どれもモンスターの特徴を生かしており違和感は感じさせない。

ランダム生成ダンジョン

  • メインゲームの舞台となるダンジョンの構造や落ちているアイテムは、ダンジョンに入るたびにランダムで変わる
    • 基本構成要素として、一定の広さがある四角い「部屋」、1キャラ分の幅の「通路」、入り組んだ形をした通路の「迷路」がある。見通しが明るいのは部屋だけで、それ以外の場所ではトルネコの周囲1キャラ分より先は敵やアイテムの姿が見えない。
      • フロア内のどこかに、下の階へ下りる「階段」がある。そのダンジョンの目的を達成するまで登り階段は現れず、基本的に後戻りはできない。
      • 床には時折、落とし穴などの罠が設置されている。実際に踏むか、罠のあるマスに攻撃を振るまでは見えない。
    • 一定階進むと、部屋の中に大量のモンスターがひしめく「モンスターハウス」がフロアに登場し始める。非常に危険な一方でアイテムも大量に落ちているという、ダンジョンのハイリスク・ハイリターンの象徴である。
  • フロアごとに出現する敵の種類は決まっており(数は決まっていない)、当然下層に行くほど強力な敵が現れる。
    • 通常のダンジョンゲームと異なり、レベル上げよりも強力な武器やアイテムをいかに集めておくかの重要性の方が大きいが、キャラクター自身のレベルを上げてHPや攻撃力をしっかり底上げし、強敵に備えておくことももちろん重要である。
    • なお、同じフロアにずっと留まっていると地震が発生し、すべての床が抜けて強制的に1階下に落とされる。

食料の概念

  • プレイヤーはHPの他に食料にも気を配る必要がある。食事を摂らずにいると「満腹度」が減少していき、最終的には餓死してしまう。
    • 本作では満腹度0の時は1ターンごとにHPが減り、最後は力尽きて冒険失敗となる。
    • ゲーム開始時、トルネコの満腹度は100。標準では10ターンで1ずつ減る計算となっていて、1000ターン(およそ2~3フロア分)動ける。
    • パン類を食べると多くの満腹度が回復する他、草類を食べてもほんの少しだけ回復する。アイテムがランダム配置の本作では冒険全体を通じてパンが安定供給されるなどという保障はなく、草類も馬鹿にできない存在となる。

ターン制

  • 本作は一見すると自分と敵が同時に動いているアクションRPGのようだが、完全なるターン制RPGである。「1マス分歩く」「攻撃する」「アイテムを使う」などで1回分の行動とみなされ、「プレイヤーフェイズ→敵フェイズ」でローテーションする。
    • 何らかの方法で2回行動する場合も各自のフェイズ内で処理され、割り込んだり割り込まれたりする事は絶対にない。

アイテムが重要
普通に敵に近付いて考えなしに殴りあう感覚でプレイすると、すぐやられてしまうバランスになっている。
そこで生死を分けるのが、ダンジョン内にランダムで落ちているアイテムである。

+ アイテム紹介
  • 剣と盾
    • 剣と盾は装備することで攻撃力や守備力が上がる他、特殊な効果が付随されているものもある。
    • 「修正値」と呼ばれる不可視の値*2が付加されており、この値が大きいものは装備本体の攻撃力・守備力に、付加された数値が加算される。つまり、たとえ同じ装備品であっても、数値が大きいほど装備した時の威力が変わってくるということである。
    • 修正値を1プラスする「バイキルトの巻物」「スカラの巻物」で鍛えることが可能で、武器防具の強化もやりこみ要素のひとつとなっている。その他にも、装備品の修正値が下がる罠や特殊攻撃を無効化する「メッキの巻物」も存在。
      • 逆に数値の表記が最初からマイナスであるものは呪われており、「シャナクの巻物」を使用するか、前述した3種類の強化アイテムを使用するか、いずれかの方法で呪いを解かない限り外せなくなる。
  • 指輪
    • ほとんどが特殊効果を持っており、装備中は効果が持続する。「ちからの値が+3上がる」「罠にかからなくなる」「お腹がへらなくなる」など嬉しい効果はもちろん、「倍の速度でお腹がへる」「室内の敵を強制的に起こす」などの純粋なマイナス効果を持つものもある。
    • また、剣と盾同様、使用回数や修正値は不可視で呪われている場合がある。
    • 指輪に強化アイテムは存在しないため、「シャナクの巻物」以外で呪いを解く方法は無い。
    • 遠距離攻撃用の武器。剣及び盾とは別枠で装備され、拾った矢の数分だけはなって攻撃する。
    • その場から動かずに遠距離攻撃でき、なおかつ状態異常「混乱」*3の影響を受けない武器。
    • ダンジョン内に落ちている草。主に「やくそう」「弟切草」などの回復系と、「ラリホー草」「目つぶし草」などのマイナス系の効果に分かれており、マイナス系の効果を持つ草は敵に対して投げることで有効活用できる。
    • また、いずれの草も飲むと満腹度がわずかだが回復する。食料事情によってはマイナスアイテムの草を飲むことも立派な戦略。
    • 魔法の効果が込められた杖。使用回数が設定されており、設定回数分だけ振ることで敵に対して様々な効果を発揮する。
    • 直接投げつけることでも効果が発揮されるが、この場合は使用回数0でも効果があるので、最後まで無駄なく使いきれる。
  • 巻物
    • 魔法をはじめとする様々な効果が書き記された巻物。基本的には読むことで発動し(一部例外あり)、1回使うとなくなる。
  • パン
    • 食料。減少した満腹度を回復させる。中には、満腹度は回復するもののマイナス効果を発生させるものもある。
  • ゴールド
    • 持ち帰って規定額に達するごとにトルネコの店が発展していく。
    • そのほか、スコアの役割も兼ねており、ランキングでは獲得ゴールドが多いほど上位にランキングする。
  • 杖と指輪は未識別状態で出現する。装備品は種類はわかるものの、前述のとおり修正値は不可視。
    • 「インパスの巻物」を使えば、即座に完全識別が可能。これ以外には、一度使ってみてプレイヤーが正体を推理した上でアイテムに名前をつけるというテクニックもある。
    • 一度識別されたことのあるアイテムは、同一の冒険中では種類が識別されたものとして出現する。ただし、指輪の呪いの有無や、杖の使用回数まではわからない。
    • 前述の通り、呪われたアイテムを装備すると「シャナクの巻物」や強化アイテムで解呪するまで外せなくなる。特に指輪は呪われている可能性が高い上に解呪手段が少ないため、うかつに装備するにはリスクが大きい。
      • これも前述の通りだが、呪われた剣と盾は修正値が最初から「-1」であり、「シャナクの巻物」の他、「バイキルトの巻物」「スカラの巻物」「メッキの巻物」でも解呪可能。
      • ダンジョンから出れば自動的に呪われた装備も全て外されるが、呪い自体は解呪するまではそのままであり、後述の倉庫から持ち込んでダンジョン内で装備すると再度呪われてしまう。

倒されたらやり直し

  • 不思議のダンジョンシリーズは「倒されたらやり直し」が基本である。本作でも1度ダンジョンから出ると冒険の大部分がリセットされ、再挑戦する際は初期状態の「レベル1、所持アイテムは大きなパン(満腹度を100回復)1個のみ」から始めることになる。
    • トルネコが倒されると、拾ったゴールドの半分と、持っていたアイテムの全てを失う。拾ったアイテム、外から持ち込んだアイテムの別なく全て剥奪された上でやり直しとなる。(持ち帰って事前に倉庫に預けていたアイテムはそのまま)
    • 但しDQ本編のような「死亡」扱いではなく、あくまで「力尽きて冒険失敗」とみなされてダンジョンから追い出されるだけである。
      • その際の「ももんじゃの群れに担ぎ上げられて運び出され、ダンジョンの外に蹴り出される」という演出がなんとも屈辱的。その後、自宅で無事目覚めて再び冒険へ……という流れとなる。
    • ダンジョンから中途脱出したい場合は、「リレミトの巻物」で戻ることも可能。この場合はお金もアイテムも全て持ち帰ることができる。
  • 本作は完全なオートセーブ。何か行動を取る度にセーブされ、リセットしてやり直した場合もその行動後から再開される。つまり、やられそうになったからといってリセットしても無駄。
    • 例えば、まどうしのラリホーで眠らされている最中にリセットしても、ラリホーの効果中の敵のターンが処理された状態から再開となる。もしこのターン処理中にHP0になると再開時に力尽きて冒険失敗になる。

店の拡張

  • トルネコの店はダンジョンから持ち帰ったゴールドで拡張することができる。『DQIV』でトルネコが主人公を務めた3章をモチーフにしたようなシステム。
    • 前述の通り、最悪力尽きてもゴールドの半分は持ち帰れる。何度力尽きてもその都度、少しずつでも店の発展が進行していくため、プレイヤーの挑戦意欲を維持してくれる。生還した時には持ち帰ったアイテムも換金され拡張資金となるため、もっとお得。
    • 更に、店が拡張されると、持ち帰ったアイテムの保管・持ち出しができるようになる「倉庫」が作られる。持ち出しの個数も、店の拡張に応じて増えていく。
    • また店の発展に応じて、さまざまな来客からゲームの攻略に役立つ情報を聞ける。
      • 「その場を動かずに体の向きを変える方法がある」「斜め移動は縦横移動と比べて省エネ」「真っ暗な通路では矢を撃って敵の存在を確かめると安全」「回数の切れた杖は投げ当てると同じ効果が出る」など、本作の攻略の上で基本的かつ必須事項ばかりである。
    • ちなみにこの要素が追加されたのは、堀井雄二氏の助言によるものだという(攻略本の談話より)。

ストイックなゲーム性
不思議のダンジョンのストイックさは、従来のDQシリーズとは一線を画す。このストイックさを越えてクリアを目指すことこそが本作の魅力。

  • 序盤から曲者の敵が続出。普段は眠ってるが起こすとラリホーでトルネコを眠らせハメ殺す「まどうし」、ダメージを与えると一定確率で分裂する「スモールグール」、トルネコの力を下げてジリ貧に陥らせる「おばけキノコ」などなど。これらのいやらしいモンスターの対処法を知ることがクリアするための近道である。
  • 中盤になると「キメラ」「さまようよろい」「ゴーレム」など、特殊能力はないが単純にパラメータが高いモンスターも出てくるので良い武器と盾がないと苦戦は免れない。後発の作品のような「武具の合成システム」など存在しないため、クリアにはプレイヤーの技量だけでなく有用な武具と強化アイテムを引く「運」も要求される。
  • 多くのモンスターとアイテムが出現するモンスターハウス。
    • 一度にたくさんのモンスターを一斉に相手にしなければいけないが、うまく突破すればアイテムと経験値を大量獲得できるチャンスでもある。
  • 加えてレベルを稼いで備えようにも、本作には「食料を落とすボーナス敵」がおらずパンの入手率も決して高くないため、運が悪いと飢えやすい。いかにプレイヤーが熟練していようと、飢える時は本当に飢えるのが本作である。
    • 草類のアイテムは飲むとわずかだが満腹度をあげられるため、空腹解消の手段としては馬鹿にできない存在である。
    • アイテムを「大きなパン」に変える「パンの巻物」がある「もっと~」が一番満腹度のやりくりをしやすいかもしれない。
  • 店までアイテムを持ち帰るための補助手段が存在しない
    • 冒険を切り上げる「リレミトの巻物」を手に入れるのがまず第一であるが、「リレミトの巻物」の入手率はやや低めで、ハマるとなかなか入手できない。必ず落ちているフロアもあるが20Fと後半の階層である。しかも「幸せの箱」を手にした状態では「リレミトの巻物」が使えず、来た時と逆に階段を上ってダンジョンの入り口まで戻らなくてはならない。
      • 後の作品の「飛脚」や「倉庫の壺」のような物は本作には存在しないため、クリアには常に全てを失う恐怖と隣り合わせの緊張感と共にプレイすることになる。

ダンジョン構成
本作では特殊なダンジョンは登場せず、基本的なダンジョン3つだけである。

  • ちょっと不思議のダンジョン」。
    • 全10Fの初心者向けダンジョン。ゲームを始めて最初に向かうダンジョンで、若かりし頃の王様の落とし物を持ち帰ることがクリア条件。
    • チュートリアルのテキストが頻繁に挿入される他、初期装備がやや充実しており「呪い」が存在しないなど、操作はもとよりゲームシステムやゲームバランスを理解しやすいよう工夫されている。
  • 不思議のダンジョン
    • 「ちょっと~」のクリア後に向かう、本作の冒険のメインとなるダンジョン。モンスター、アイテムの種類もより豊富になる。
    • 10Fにある「鉄の金庫」を持った状態だと、倒れてもゴールドが半減せずに済む。20Fには先述のリレミトの巻物が必ず落ちている。
    • 27Fにあるという「しあわせの箱」を持ち帰ればストーリーはエンディングを迎える。最下層は99Fだが、エンディングを目指す事が目的であればそこまで進む必要はない。
  • もっと不思議のダンジョン
    • エンディング到達後に向かうことができる上級者向けのエクストラダンジョン。倉庫からのアイテムの持込は禁止。
    • システムのベースとなった「ローグ」の特徴をおおむね受け継いでおり、ある意味「ここからが本番」と言える位置づけとなる。
    • 指輪と杖に加えて、新たに草と巻物が未識別状態で出現(「赤い草」「ウマの絵の巻物」といった不定名で手に入る)する。一度使う(飲む/読む)と確実に識別されるが、普通に使うとマイナス効果のものも少なくないので注意が必要。
    • アイテムの種類が更に増える他、「不思議のダンジョン」にあった強力なアイテムの一部は登場しなくなる。「リレミトの巻物」も出ない。
    • 一方で、「不思議のダンジョン」には無かった極めて有益なアイテムも多数登場する。「初期回数0固定で出現するが敵を一撃で倒す効果のある杖」や「透明な状態で落ちている巻物」など、非常に個性的。
    • 30Fには幸せの箱に負けないお宝がある他、更に下層には特別な巻物が落ちている。こちらも「不思議のダンジョン」同様に最下層は99F。

攻略本にある中村光一氏(チュンソフト社長)の談話によると、最初は「もっと~」1つだけを予定していたが、難易度が(当時では)高かったという見解から初心者向けに調整を加えた「不思議~」が作られ、さらに入門用として「ちょっと~」が作られたとのこと。


評価点

一般的なRPGに比べると高難度なバランスであるが、本作の発売時期を鑑みて特筆するべきはその取っ付きやすさ・遊びやすさへの配慮である。

設定・演出

  • DQシリーズの世界観・キャラの中でも、トルネコのキャラクター性は相性が良いものだった。
    • 世界中の珍しいお宝に目が無く、いつか自分の店を持つ事が夢の、家族を愛するちょっとおデブなヒゲオヤジ。魔王を倒すのではなくダンジョンで宝探しをするという(悪く言えば)俗物な冒険に対し、主人公としてのトルネコは極めて取っ付きやすく、既存キャラではこれ以上のなかなか見つからない逸材である…と本作の公式ガイドブックでも語られていた。
    • 電源を入れてしばらくしてから始まるプロローグ画面では、本家『DQIV』時代のドット絵を再現しており、本家をプレイした人にとっては懐かしさ溢れる演出となっている。たったこれだけのために、流用ではなく新規につくられている。
  • 見た目と特徴を一致させやすいDQシリーズお馴染みのモンスターたちを起用したことで、敵の特徴が非常に分かりやすくなっており、対処法の連想し易さなど、遊びやすさにも繋がっている。
    • 直接攻撃がとりえのモンスターは階層に応じてだんだんサイズが大きくなり、ゲームの進行度と初見でのインパクトがぴったりシンクロしている。
    • 上述の通りオリジナルとは異なる攻撃手段を持つモンスターもいるが、どれもモンスターの特徴を生かしており違和感は感じさせない。
    • 特殊な効果を持つアイテムなどもDQのアイテムや呪文の名前が流用されていて、本作に触れたプレイヤーの大半を占めるであろうDQシリーズ経験者には把握しやすい。本作オリジナルの名称も、(多少ダサかろうと)覚えやすく判りやすいネーミングばかり。
  • 全体的にルールの厳しいゲームだが、「太っちょの主人公が腹ペコで倒れる」や「身包みはがされてダンジョンから蹴り出される」といったコミカルな演出が、殺伐とした雰囲気を和らげている。
    • 家族や町の人達といったサブキャラクターたちの温かく微笑ましい様子やトルネコとの会話のやり取りなども、適度な息抜きになる。
      幸せの箱を手に入れることで見られるエンディングも、試練を乗り越えた達成感を十分に満たしてくれるだろう。
    • そもそも元ネタである『ローグ』は本作以上に厳しいゲームバランスである*4

グラフィック

  • オリジナル版のローグはテキスト表示しかできないパソコンで作られたため、全ての視覚情報を記号に置き換えて*5おり、以降に出たローグライクゲームもそれを踏襲した表現を用いていたが、本作では全てのキャラクターやダンジョンの外観などに明確なグラフィックが用意された。
    • 通常時は2~3コマでアニメーションする他、斜めも含めた8方向の絵が用意されていて、キャラクターの向き・状態といった大事な情報が一目で感覚的にわかる。
      • モンスターたちの個性的な攻撃・特殊行動も、すべてアニメーション付き。種類こそ限られているが、DQシリーズの人気モンスターたちが生き生きと動く様は、同シリーズファンを喜ばせた。
      • ちなみにDQ本編においてモンスターがアニメーションするのは本作より遅い『DQVI』から。後ろ姿などは本作で初めて見られたという例も多い。
    • 奥へ進むごとにダンジョンの外観が変わる。雰囲気作りに貢献している他、出現モンスターの種類が変わる際の判りやすい目安でもある。

中毒性の高いゲーム性

  • 本作のキャッチコピー「1000回遊べるRPG」の通り、ローグライクゲームの魅力であるリプレイ性をきちんと踏襲している。
    • 毎回ランダムでダンジョン構成が変わるためプレイする度に違う展開となり、思いも寄らないアクシデントが幾度となく起こる。
    • 気の緩みは後々まで長く尾を引き、1手のミスによる冒険失敗も珍しくない。これらが独特の緊張感を生み出している。
  • 単純に強い敵以外にも様々な特殊能力を持つ敵が階層ごとに配分されていて、臨機応変な対応が求められる。
    • モンスターハウス以外にも、「こちらのHPを1ケタにしてくる敵」と「姿の見えない敵」が同じ階層に出現するなど、いい意味での嫌らしさも満載で、プレイヤーの的確な判断力を試してくるので歯ごたえがある。
  • RPGで強力なアイテムを惜しんで死蔵させてしまうのは誰しも経験するところだが、本作の場合は「主人公がDQの戦士系キャラのような強靭な性能ではない」にもかかわらず「アイテム無しだと基本動作と通常攻撃以外行えない」ゲームバランスである為、アイテムは出し惜しみせずに使うべきもの(アイテムを活用しないと生き残れない)。このジャンル以外のRPGにはあまり見られない新鮮なプレイ感覚であり、ピンチをチャンスに変えて窮地を脱するスリルも本作の醍醐味である。

音楽

  • ダンジョン内のBGMは、トルネコのメインテーマである『DQIV』第3章のフィールド曲のアレンジとなっており、ダンジョンの下層部へ一定階層分、降りると共に異なるアレンジが施されていく。
    • 深部へ進むほど曲調も暗く緊張感が増して行くようになっており、効果的にダンジョンの冒険感を演出している。この演出は『DQI』以来。
    • また、ダンジョンだけでなく、タイトル画面のファンファーレや冒険の書選択画面時のBGMなども全て『DQIV』のトルネコのテーマのアレンジであり、統一感を出している。
      • 尚、メロディが似ているのでDQ本編をプレイしたことがない人にはよく勘違いされるが、ゲーム終了時のBGMはトルネコのテーマのアレンジではなく、DQ本編の教会でのセーブ時のBGMである。
  • 本作のBGMを担当するのはシリーズおなじみのすぎやまこういち氏。作曲者本人だけあってアレンジの質は折り紙付きである。
    • 今作だけでなく、のちのちのシリーズでも同じようにアレンジ曲が使用されており、すぎやまこういち氏の技法の職人技が伺える。

賛否両論点

  • リリース当時は特有のストイックかつシビアなバランスが賛否両論だった。
    • 1Fからいきなり倍速モンスター「ゴースト」が出てくる。アイテムが全く揃っていない1Fでは逃げる事もかなわず、囲まれると対処が難しい。
    • 「まどうし」のラリホーで起きた直後に再びラリホーをかけられると、トルネコが自由に行動できる隙が全くなく何もできずにハメられる*6
    • 1ターンで2体の「爆弾岩」から爆発をくらうとどんなに盾が強くても問答無用で即死する*7など、後の作品と比べて理不尽な点もある。
  • 「不思議のダンジョン」27Fにある「しあわせの箱」を持ち帰るとエンディングになるが、その際、トルネコの店は「不思議~」攻略中に到達する9つの成長段階をすっ飛ばし、一気に最終段階直前まで発展してしまう(最終段階の到達は「もっと」クリア達成時)。
    • ストーリー展開も盛大にぶっ飛ばしてしまい、見たことも無いキャラが親しげに話しかけて来たりする。
  • 足元に関するコマンドの仕様が不便
    • 本家ローグの仕様がほぼ踏襲されており、トルネコの足元に落ちているアイテムを直接使ったり、その場で手持ちのアイテムと入れ替える(「交換」コマンド)、といったことができない。分かりやすいといえば分かりやすいが、シンプルすぎて少々不便なきらいがある。
    • 例えば持ち物がいっぱいの状態で足元にあるアイテムを使いたければ、一旦隣の床に何かを置いてからそれを拾わなければならない。
      • 以降の不思議のダンジョンシリーズでは、「足元」コマンドが大幅に強化されて改善された。
  • トルネコの店が発展し終わると、お金と鉄の金庫のゲーム進行上の存在意義が無くなる。*8
    • 「わらいぶくろ」はゴールドを盗むと同時にワープして逃げる能力を持つが、所持金が0ゴールドであれば近寄ってくるだけで何もしなくなる。つまり、意図的にゴールドを拾うのを回避したほうが、若干ではあるが経験値効率が良くなる。
    • ゲーム的には通常のRPGのような経験値稼ぎはそこまで必要とされないが、高難易度の「もっと不思議のダンジョン」の攻略においては経験値稼ぎも重要な要素になるため、ゴールドの存在が無意味なばかりか邪魔な存在にもなってしまう。
    • 1つのフロアに初期配置されるアイテムの数には限りがあるため、ゴールドが多数出現した場合、その分他アイテムが割を食う形になり苦しいことになる。特に浅い階層では死活問題に。
    • 後の作品のお金は、ダンジョン探索中でもアイテムの売買に使えたり、所持金に加えず強烈な投擲武器として使えたりと、存在意義が大きく増した。
  • 後発シリーズの初心者向けダンジョンに比べると、「ちょっと~」のハードルがやや高い。10Fまでとはいえ登場するアイテムが少なくなってるのも一因。
    • 20回以上やられると、王様が強力な武器と盾を貸してくれる(ゲームシステム的にはそのまま貰える)救済措置はある。
    • 30回失敗すると、自動的にクリア扱いになるイベントが発生し、そのまま「不思議~」に進むことができる。
  • モンスターの種類が全32種と後発作品に比べて少なめであり、最後の敵「ドラゴン」が出てくる25F以降は、あまり変わり映えしない敵構成のまま99Fまで続く。
    • しあわせの箱などのクリアアイテムを持ち帰る分には、27F~30F前後で引き返すことになるので気にならないが、やりこみプレイで99Fを目指すとなると変わり映えの無さに飽きが来やすい。
    • ドラゴンは遠距離からトルネコに向かって高威力の火炎攻撃を繰り出す強敵だが、ドラゴンキラーとドラゴンシールドをしっかり鍛えておけば有利に戦える。
      むしろ同じ階層に出る、力の値や最大HPを減らす「ミステリードール」、同じ部屋に居ると離れていても混乱させられる「おおめだま」の方がはるかに手怖い。
    • その代わり以後のシリーズに出てくる、「フロアのどこへ居ても炎を吐いてくる鬼畜ドラゴン」のような敵も居ない。
  • 「時の砂の巻物」
    • この巻物を読むと、トルネコのステータスや所持アイテム、道具の識別状態を含めた全てがフロア開始時の状態に巻き戻る。(使った「時の砂の巻物」は無くなる)
    • 一つのフロアで長時間稼ぎ、階段の上でアイテムを使用識別している時に未識別の時の砂の巻物を読んでしまうと、そのフロアで重ねてきた苦労がなかったことになってしまうので、精神的に少々きつい。
    • しかし、この巻物を利用して未識別アイテムを最小限のコストで識別するといった使い道もあるので、純粋にマイナス点ばかりというわけでもない。
  • セーブデータが複製可能
    • コピー先のセーブデータは常にトルネコの自宅から再開となるため、「死亡してもコピー先のデータを利用してダンジョンの途中から再開する」ことは不可能になっている。
      • ただし、当然ながら倉庫の中身はそのままなので、貴重なアイテムを持ち帰った際に予めデータをコピーしておけば万が一の保険として利用でき、緊張感の減少につながってしまう。
  • 本家『ローグ』そのままな要素が非常に多い
    • 本作も本家側『ローグ』で多数存在するクローンゲームである『Rogue Clone』のひとつと考えると分かりやすくはあるのだが、本作公式ガイドブック等の公式媒体上ではそのあたりの事情に一切触れられていない。
      • 敵の出現テーブルや、階層による特殊能力の配分なども似通っている。序盤から「こちらから手を出さない限り眠っているが、主人公の動きを停止させる厄介な敵」がいる点も同じ。作中の最終的な敵出現テーブルが「プレイヤーの移動を封じる敵」「混乱能力を持った敵」「ステータスを下げる敵」「倍速行動の敵」「頑丈な直接攻撃系の敵」「飛び道具を持つ最強の敵である『ドラゴン』」の6種類で構成されている、という点も全く同じ。
      • 罠の構成、消耗品のアイテムの効果等についても共通点が無いものを探す方が難しい。特に「もっと不思議のダンジョン」が顕著。
    • ただし「本家の面白さを家庭用ゲームに浸透させること」を命題として開発されているため、本家の面白さが直に伝わるようにあえて多くの要素を踏襲したとも考えれば一概に悪い点とは言えない。また、本家と比べてゲームバランスが絶妙に整えられている点が大きなポイントである。

問題点

  • 本作の初期バージョンでは「ワナの巻物」を読んだ際、「フロアに新規に罠を設置できるスペースが29マス以下しかない」という特殊な条件で完全にフリーズしてしまうという致命的な不具合がある。
    • 通常フロアでは連続使用でもしない限りは滅多に起こらないが、罠が存在できない大迷路フロアで読むと確実にアウト。
      • 後期版では修正されている。
  • フロア内の長期滞在ペナルティがあまりにも軽すぎる。
    • 同じフロアに長くとどまると「地震」が発生し、トルネコは強制的に下の階に落ちてしまう。
      • ダンジョン内で突然地震が起き、やがて揺れが大きくなっていき、最終的にはトルネコが地割れに飲み込まれてしまう。演出だけ見るとなかなか怖いが、ゲーム的には「強制的に次のフロアに移動させられる」以外のペナルティは一切無い。落とし穴のようなダメージすら発生しない。
    • このため、満腹度が減らない「ハラヘラズの指輪」があれば、限界まで居座って経験値やアイテムを稼ぐことが可能になっている。(ただし、「もっと不思議のダンジョン」にはハラヘラズの指輪は出ない。)
    • 以降の不思議のダンジョンシリーズでは「突風」によりスタート地点に戻されるという、事実上のゲームオーバーが採用されている。
  • 初めて幸せの箱を持ち帰った後はエンディングとなるが、エンディング中に持ち帰ったアイテム(倉庫から持ち込んだアイテム含む)を倉庫に預ける事できないため、クリアの為に鍛えたアイテムを失ってしまう。
    • 次の目的地である「もっと不思議」では倉庫からの持ち込みが不可能なので、もうアイテムは不要という判断からと思われるが、「もっと」への挑戦はあくまで任意で通常の「不思議のダンジョン」をそのまま遊び続けることも可能であり、アイテムの収集や強化を楽しむプレイヤーも多いためやはりこの点は不親切である。
      • 後のシリーズでは(たとえクリア後に持ち込み可能ダンジョンが無くても)クリア時の所持品は失われなくなった。
  • 武器と盾を極端に鍛え過ぎると様々な不具合とぶつかる
    • 「バイキルトの巻物」や「スカラの巻物」で上げられる装備の修正値は+99が限界だが、「パルプンテの巻物」の効果の一つ「手持ちの武器・盾・ちからの指輪の修正値と杖の使用回数を+3」の効果が発動すると修正値がその仕様上の限界を超えてしまうバグがあり、それが原因で更なる重大なバグに遭遇する危険がある。
      • 修正値が+128を超えるとオーバーフローを起こして数値がマイナスとなり、呪われた装備と化してしまう(表記上がマイナスなだけで、内部データ上はそのまま数値が強さに反映されている)。
    • 「剣の強さ」と「ちから」の値の合計値がちょうど248になると、数値の桁落ちにより攻撃力が0になってしまう。
      • その上、単に攻撃してもダメージが与えられないのではなく、「トルネコは様子を見ている」と表示されるだけとなって攻撃そのものができなくなってしまう。
    • 「鍛えすぎて装備すると攻撃力が0になってしまう剣」と「鍛えすぎて敵から0ダメージしか受けない盾」が両方呪われて外せない状況になってしまった場合、敵に挟まれて身動きできない状況下では、相手を倒すことも倒されることもないままとなってしまう。
    • とはいえ、よっぽどゲームをやりこんで装備を集中的に鍛えまくらない限りは起こらないため、大きな問題にはなっていない。

総評

荒削りではあるものの、馴染み深い『ドラゴンクエスト』シリーズのキャラクターを使った世界観はローグライクゲームを一般に浸透させることに成功した。
ハードルの高いジャンルに遊びやすくなる様々な要素を盛り込み普及させたという点では、初心者に対する配慮を重視するドラクエシリーズらしいゲームともいえる。
後のシリーズに比べると、敵味方両面でバランスブレイカーが存在しないため、堅実に進めれば攻略は決して難しくはない。
純粋にプレイヤーの腕と多少の運が試される、『不思議のダンジョン』シリーズの原点である。


その後の展開

  • 続編は出ているが、本作そのものはニンテンドウパワーで書き換え可能となった(現在は終了)のみでその後は移植もリメイクもされず、デジタル配信も行われていない状態である。

余談

  • プロローグでは他の導かれし者達の絡みといった『DQIV』の根幹に関わる部分(第5章)の活躍は描かれてないものの、内容から考慮すると本作がIVより後の話という説が有力視されていたが、最終作『トルネコ3』のオープニングで明確にIVの後日談であることが明示された。
  • 回復アイテムの1つ「弟切草」。DQシリーズにも登場しないその風変わりな名称の由来は、本作開発元のチュンソフトが制作した同名のサウンドノベル作品である。
    • 古くから薬草の一種として知られている植物なので、回復アイテムとして登場するのは妥当でもある。
  • 発売当時、「幸せの箱」を獲得した証があるセーブデータの画面写真をチュンソフトに送ることで、順位ナンバーが刻印された認定証がもらえる「早解きキャンペーン」が行われていた。
    • さらにこれとは別に、「もっと不思議のダンジョン」に出現する「証明の巻物」を持ち帰った写真を撮ってチュンソフトに送るとプレゼントが贈られる、裏キャンペーンも行われていた。
    • 同様のキャンペーンは以降のシリーズでも見られるが、本作の場合は完全に非公開だった。
  • 当時少年ジャンプで連載されていた『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』で、不思議のダンジョンをモチーフとしたダンジョンに挑むエピソードが存在する。
    • あくまで「不思議のダンジョンをモチーフとした」止まりでありオリジナルのダンジョンだが、罠に注意、奥深くの階層に到達して新記録達成などといったゲーム本編の要素をさりげなく盛り込んでいる。
    • 上記の早解きキャンペーンで、原作者の三条陸氏が認定3000人中2742番に入賞している*9。週刊連載中にも関わらず、よくも入賞出来たものである。