マインドシーカー
【まいんどしーかー】
ジャンル
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エスパー養成アドベンチャー
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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2Mbit+64kRAMROMカートリッジ
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発売元
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ナムコ
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発売日
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1989年4月18日
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定価
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6,500円(税別)
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判定
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クソゲー
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怪作
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ポイント
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運ゲーの極み 超能力を体現しすぎた内容 現代では確実に販売できない代物 一応だがセーブは可能
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概要
70年代~80年代に、ユリ・ゲラーなどが注目されることで起きた「超能力ブーム」を受け、超能力少年→青年としてメディアで知られていた「エスパー清田(本作中では「エスパーキヨタ」表記)」こと清田益章氏監修で作られた超能力開発ソフト。
「このゲームは たのしみながら ちょうのうりょくがかいはつされるように シミュレートされています」というのが売り文句であった。
特徴
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基本操作はAボタンだけとシンプルだが、念じながらボタンを押して画面内の物体を動かすなど、ファミコンには出来ない力を使用しなければならない。
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実態は、運だけが頼りで本当に予知能力者でもなければクリアできない理不尽仕様である。
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ゲーム内では「サイポイント」というものがあり、集めてレベルを上げることによりストーリーが展開していく。
問題点
超能力開発センター
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ゲーム開始直後にプレイヤーが目覚める場所で、最初のステージ。名前通り超能力の開発と称して複数のトレーニングをこなし、卒業試験を突破するのが目的。
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念力のトレーニング:Aボタンに念を込めて押して画面上のランプを点灯させる。実際はボタンを押した時にランダムでランプが点くかどうかが決まる。
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予知のトレーニング:ランプが5つ並べられ、次に何が点灯するかを答える。これはまあ予知というものを考えればこれで当然か。
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透視のトレーニング:伏せられたカードのマークを5択から答える。レイヤー構造を使い、正解の図柄に裏面デザインを重ねて表示することで伏せを表現している。
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なお予知と透視は内部的には予知はボタンを押した時にランダムでどこのランプが光るか決まり、透視はボタンを押す前に正解が決まるという違いがある。しかしプレイヤーにとってはどちらも5択なのでやることは同じ。つまり実質2種類しかトレーニングがないことになる。
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これらのトレーニング3種類をこなし、卒業試験までに当てた回数を増やして卒業試験に合格しなければ、サイCityへ出ることができない。この卒業試験も合格条件がなかなか厳しい。
サイCity
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晴れて卒業試験に受かるとセンター外へ放り出され、公園やサロンなどを巡りながらサイレベルを高める作業が始まる。
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その都合上、主に街の人々は「あなたのサイパワーを見せてください」とか「あなたのバイブレーションを見せてください」としか言わない。
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そして「噴水を出して下さい」とか「ここにある5つの品物の中から、私が次に出す品物を予知してください」と言った後に上記にあるようなトレーニングの延長線上のものをさせられる。見た目だけは多少バリエーションに富んでいるがやる事は同じ。
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公園やサロンの中でのイベントも念力・予知・透視の3種類。予知と透視はただの5択なのでどこでやっても変わらないが、念力は「何回中何回成功すればOK」と言うノルマが人と場所によって異なる。1回あたり1/2のランダムなので10回中5回が期待値であるが、たまに10回中8回がノルマ等無茶を要求される事がある。ただし、基本的に失敗してもポイントは減らない。
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移動中に不意に呼び止められ半強制的にサイパワーの披露をさせられる事がある。これも予知の5択を2回以内に当てろとか念力を10回中7回成功させろとか無茶がしばしば混じっているが、失敗するとサイポイントを下げられてしまう。拒否権は無い。
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しかも、とある老人に至ってはやたらと成功率が厳しい要求を突き付けてくる上、失敗すると「開発センターから出直せ」みたいなことを言われる。
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カジノ的位置づけの「サイランド」というのもある。サイポイントを一定量賭けて、ゲームに勝つとそれが倍(ゲームの内容によっては最大3倍)になって帰ってくる。
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そのミニゲームでも結果を予知せよと言われるもののやっぱり運ゲー。
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透視は1~5のカードをお互いに持ち、1枚ずつ提示して数の大きい方が勝ち(ただし5は1に負ける)、先に3勝した方の勝利というもの。カードは相手が先に提示するが、あいこはこちらが負けになる。
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念力はウサギとカメのキャラクターをお互いに使用し、自分の手番でボタンを押すたびに小さく進むか大きく進むかのどちらかになる。より多く「大きく進む」を出して相手より先にゴールできれば勝利。手番は相手からスタートするが、先攻がゴールしたら後攻の手番を待たずに先攻の勝ちになる。
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予知は将棋盤のようにマス目で区切られたステージに操作キャラクターが置かれており、周囲が0~3の数字のパネルで囲まれている。十字ボタンで操作キャラを操作して0~3のいずれかのパネルにたどり着かせるのだが、十字ボタン入力と進行方向が全く連動していないため、何を押したらどの方向に進むかを予知する必要がある。
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透視と念力は「勝ったら賭けポイント2倍で払い戻し」、予知は「ステージクリアしたら賭けポイントにたどり着いた数字をかけて払い戻し」というレート。
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全てのゲームが期待値1以下。透視と予知はレートこそ2倍だが、そもそものゲームがこちらに不利であり勝率が0.5を下回る。予知は唯一3倍まであり得るが、その倍率を決めるパネルの数が偏っており、例えば5×7マスの外周24マス中、3倍はたったの2枚。そして2倍マスが4枚、1倍マスが6枚、残りの12枚は全て0倍と偏っており、期待値は0.8333倍。
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こんな儲けにくいゲームであるにもかかわらず、賭けるポイントの額は固定であり、ゲームが終盤になっても一切変えられない。サイレベルによって段階的にプレイできるゲームが増える仕組みであり、後に解禁されるゲームの方が賭けるポイント量が多い傾向にあるが、それでも終盤でやり取りするポイントの桁に比べたら些細なもの。1回のプレイに時間がかかる事も合わせ、仮に100%勝てるのだとしても普通の課題をやってた方がいいので、終盤は完全に存在意義を失う。
パワースポット
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これらの苦行に耐え、サイレベルを最高まで上げると最終試練として行く場所。
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今までと比べ物にならないくらい極悪難易度で、念力で開ける扉(開ける確率は約13.3%(1/7.5))が3つ有る上、3つ目の扉は5つの内から本物を透視して見つけなければならない。
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最後の扉の前で失敗しても透視の前の扉(2番目の扉)から再開されるのがせめてもの救いか。
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最終試練をノーミスでクリアできる確率は約0.047%(1/2109.375)
ノーミスクリア出来た人は本当に自慢してもいいだろう。
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ちなみに2番目の扉から挑戦しても、最終試練をクリアできる確率は約0.35%(1/281.25)。
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挑戦し直す(パワースポットに向かう)たびにテレポートの演出が入る。これが地味に長く、やる気を削ぐ。
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ここ(ニコニコ大百科内)で詳しく言及されているので興味があるなら見てみよう。
常人には理解不可能な超能力談義
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ゲームの随所で、プレイヤーのナビゲート役として登場する「エスパーキヨタ」からの超能力談義を聞ける。
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さすがに超能力者だけあって常人にはとても理解できないような世界が広がっており、EDに近づけば近づくほど、それはより途方も無い領域へと踏み込んでいく。
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作中の予言によれば「1993年に大量のエスパーが出現し、2013年には超能力と科学が一体化する」らしいが、結局2013年どころか2020年代になってもそんな時代は来ていない。
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なお「2080年ごろには宇宙人と交流が出来る(意訳)」とのこと。
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ちなみに、これがEDでのコメント。(原文ママ)
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うちゅう は バランス のみだ。
そこに ふかさとして の リズム がある。
くうかん が そくど を もつのであって
ひかり が そくど を もつのではない。
ぶっしつ は ひかり を めざし
ひかり は ぶっしつ を うみつづける。
せいめい も うちゅう も
ぜんたいとして じぞくしている。
そんざいとは ちょっかん の だいめいしである。
げんご は はどう の ていちゃくである。
END
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評価点
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一応、バッテリーバックアップのセーブ方式を採っており、完全に詰んでしまい、最初からやり直しという最悪の事態に陥ることはない。
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しかもこのセーブ機能がかなり強力。普通にプレイしている限りでは、セーブデータが消失する場面に遭遇する事はほぼあり得ない。
ちなみに、FCのバッテリーバックアップ機能付きソフトの多くが「リセットボタンを押しながら電源を切る」よう指示してくるところ、このソフトは「リセットボタンを
押さずに
電源を切る」ように指示してくる。記述ミスとかではなく実際このゲームにおいてはそうした方がデータが消えにくいようにプログラムが組まれているからなのだが、これも珍しい。
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ナビゲート役を務める「エスパーキヨタ」が現物よりもかなりカッコよく描かれている。
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台詞は静止画が多用されているが、台詞に応じて口パクと瞬きをするのが細かい。
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バグは特にない。
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強いて言えば、「開発センターで卒業検定を受ける前のトレーニング段階であまりにも良すぎる成績を出してしまうと、エスパー度がオーバーフローを起こして極端に低い値になってしまって卒業試験が受けられなくなる」と言うバグはあるにはある。しかし狙わないとできない…どころか
狙ってもまずできない
のでほとんどお目にかかる事はないレベル。
総評
色々な意味で当時でなければ許されないゲームだろう。
そんな問題作がまかり通っていた事も、ある意味、まだまだおおらかな時代だった故なのかもしれない…。
開発秘話等
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制作スタッフは2004の問答にて真面目に作っていた旨を語っている。
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解析されたプログラム内容と合致する証言をしており、当人たちは超能力ブームに乗って大真面目に作っていたことが窺える。
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理不尽な成功判定は「超能力者ならコンピューターの吐く乱数を偏らせることができるはず」という当時の学説に従っていた模様。
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各地の大学や研究所の「超心理学」では人間の意識と乱数の関係を研究し、乱数発生器を用いた実験も行われた。超能力者でなくても大人数で念じればそこそこ効果がある…らしい。
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つまりは大勢でファミコンを取り囲んで一斉に念じながらプレイすれば、エスパーではない一般人でもクリアしやすくなる…かもしれない。
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デバッグ作業に本物のエスパーを集めたかは永遠の謎。エスパーでなければまともなデバッグなど不可能なはずだが。
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前述のエスパー度オーバーフローバグの存在を考えると、本物のエスパーによるデバッグは行われていないものと思われる。
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当時のスタッフも「もちろん清田にも事前にプレイしてもらったが、怪現象が起きるので通常のチューニングはしてもらっていない」と語っている。
余談
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本作監修の清田氏は少年時代(ちょうどユリ・ゲラーが話題になった頃)から超能力者として有名になっていた人物。
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その後2003年に脱超能力者宣言をし、2006年には大麻取締法違反で有罪になったものの、現在は断食や瞑想などストイックなシャーマン修行に専念しているようだ。
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現在でも氏のTwitterでは本作でおなじみのシンボルマークがアイコンとして使われている。
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ファミコンにまつわる思い出のエピソードを募集している投稿型サイト『思い出のファミコン』の当該作品のページにて、本作を所有するプレイヤーがソフトを持って実際に清田氏本人にサインをもらいに行ったエピソードが掲載されている。
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本作はエンディングを迎えてもスタッフロールは表示されない。しかしデータ内にはスタッフクレジット用だったと思われる画像が残っている。(参考リンク)
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本作は乱数系の調整が甘いようで、徹底的にやりこむと、ある程度までは無意識にでも結果を調整できるようになってくるという報告がある。
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これはいわゆる「乱数調整」であり、遊びこみすぎて無意識にそれができるようになるだとか、どう考えてもガセネタのようなオカルトめいた手順の裏ワザが実際に成立するだとかいった話は、本作に限らなくとも存在する。
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普通のソフトならそこまで問題視するような要素でもないが、本作の場合、これをサイパワーに目覚めた成果と誤認してしまう恐れがあるため悪質といえる。
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かつてナムコが直営店のゲームセンターで配布していた季刊広報誌「ナムコグラフィティ」にて、1984年に発行された第7号で超能力技術者を募集するという記事を出していたりする(参考リンク)。
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もちろん完全なジョーク記事ではあるのだが、実は第7号~11号で割と力の入った超能力特集を載せていたりもする(参考リンク)。
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そういった前歴を考えると、ある意味本ソフトの企画が出てくる素地は既にあったともいえるかもしれない...
最終更新:2022年07月21日 23:25