【さいきっくふぉーす とぅうぇんてぃとぅうぇるぶ】
ジャンル | 対戦格闘 |
対応機種 | アーケード(WOLFシステム、NESiCA×Live) |
販売・開発元 | タイトー |
稼働開始日 |
1998年6月(WOLFシステム) 2012年12月20日(NESiCA×Live) |
判定 | 良作 |
サイキックフォースシリーズ 1/EX / 2012 / COMPLETE |
1996年に稼働開始し、そのキャラクター性で多くのファンを取り込み、また確かな品質のゲーム性でゲーマー達からも一定の支持を集めたタイトーの対戦格闘ゲーム『サイキックフォース』(以下PF)。本作はそれから2年後に、新たなキャラクターや改良されたシステムを引っ提げて稼働開始した直接の続編となる。
しかし、前作から問題となっていた「ゲームのストーリーやキャラのファンではあるが、実際のゲームはプレイしないファンの増加」が頂点に達している中で発表された本作はその完成度の高さに反して、格闘ゲームの第2作に求められる「シリーズの定着」という役割を果たすことが出来なかった。格闘ゲームとしての完成度を更に高めることになった調整は、同時に何よりも取り込んでおきたかった「非格ゲー層」の新規参入への壁を大きくすることにもつながっていたのだ。
結果、本作を最後として『PF』は永遠にも思える長い沈黙期を迎えることになる。
+ | 長いので収納 |
「360度の範囲を移動できる結界の中で体力ゲージを削り合う」基本システムに関しては一切変化がないため、前作の記事を参照していただきたい。本項では前作からの変更点についてのみ言及する。
+ | 無所属 |
+ | 新生ノア |
+ | 軍サイキッカー部隊 |
『2012』は全体としては良好なゲームバランスを持った作品である。しかし、真に「バランスの良い」格闘ゲームと言うものは存在しえない。
本作でも(長期にわたる研究の結果という形ではあるが)幾つか大きく差をつける要素が発見されている。
他の格ゲーではあまり重視されなかったストーリー・キャラクターを前面に押し出し、今で言う「腐女(男)子」や普段ゲームセンターを訪れない人からの高い人気を集めた『サイキックフォース』。
しかし、「キャラに興味はあるが、格ゲー自体には手を出さない」ファンの比率が増加し、公式ファンイベントもかえって客層のミスマッチを煽ることになり、当時はまだ敬遠されがちだったアニメテイストを、それまでのゲーセンに馴染んでいたゲーマー達が敬遠したこと等、様々な要因が足を引っ張った。
そのような状況の中で本作『2012』がリリースされることになるのだが、ロケテストでインカム高がそこまで上がらず(*12)に導入を見送ったり(*13)、導入後も早々に撤去してしまう店舗が多く発生し、結果として商業的には完全に失敗してしまうことになった。
まさに「解る人だけに解る」作品となってしまった感が強い作品。リリースがもう少し遅ければ、本作、ひいてはシリーズを待ち受ける運命も少しは変わったものになったかもしれない。
しかしその出来は間違いなく本物で、対戦が盛んな一部の店舗では(続編が出ないこともあっただろうが)約3年の長きにわたって研究が続けられたタイトルでもある。
+ | 貴重な高レベルプレイヤーによる高画質対戦動画。駆け引きの内容について、コメントも参考になる。 |
CS版全般に言えることであるが、一部のキャラクターは最初は使用不可能。解禁方法は以下の通り。
難易度設定は不問であるが、ラウンド数は2本以上に設定しないと解禁されない。
+ | DC版の隠し要素(PS2版『COMPLETE』でも同様の方法で解禁可能) |
+ | PS版『2』の隠し要素 |
一部のバグ技が使用不可となった以外、ほぼ完全な移植を実現している。対戦派のプレイヤーならばこれかWindows版で決まり。
ストーリーモードのテキストがフルボイス化。この点はPS版『2』にも引き継がれた。
アレンジBGMが追加され、特定の条件を満たせばAC版ではストーリー限定だったエミリオの金の翼バージョンと闇バージョンが別カラーとして選択可能になった(一部の台詞が変化する。性能は通常時と同じ)。
ただしPS版『2』と比べると、本作ならではのオリジナル要素が特に存在しない、CPUが強すぎるといった短所がある。
アーケードからの移植と言うよりは、DC版の『2012』をベースに独自要素を加えたアレンジ移植。前作PS版の続編的な立ち位置と言ってもいい。
グラフィックはPS作品としては高水準であるものの、当然アーケード版には及ばない。フレームレートも30fpsに引き下げられている。
しかし出力はまだしも、入力までもが30fpsになったため、アーケード版と同じ感覚でコマンドを入力するとなかなか受け付けないという大きな問題が出てしまった。(*18)
業務用より性能が低いハードへの移植に無理があるのか、ロードがネオジオCDみたいに長く、1試合ごとに20秒ぐらいかかる。PS2本体で高速読み込み機能をONにしてプレイすると半分程度に短縮される。
説明書にも各キャラのコマンドが記載されておらず(テストモードで見なければならない)、テストモードでも細かい調整が効かないなど、ユーザーに不親切な部分も目立つ。
対戦・練習ツールとしてはお世辞にも褒められたものではない。
代わりに『2』独自のオリジナル追加要素が充実している。
PSY-EXPANDモード
対戦ツールとしての出来は劣化したが、単体の品質はそこまで悪くない。
現在ではゲームアーカイブスでも配信されているので、『サイキックフォース』という作品の雰囲気を味わうために購入するのも一考。
Glide対応版(*19)とDirectX対応版のプログラムが同梱されていて、環境に合わせていずれかをインストールする方式が取られている。
業務用のベタ移植としてリリースされ、DC版と共に移植版の双璧として挙げられる。
一方、コンフィグが貧弱でグラフィック関係の設定が全く出来ず、要求スペックも当時としてはかなり高いという欠点もあった。
(なおGlide版の方が要求CPUが低く、DirectX版がPentiumIIIを要求するのに対し、Glide版はCeleron300Aで640x480 60fpsを実現していた)
2001年にはXP以降のOSに対応し(設定にもよるがVista及び7 32ビット版でも動作が確認されている)価格を下げた「復刻版」が発売された。
設定資料集が同梱され、グラフィック関係の設定が出来る様になったが、その代わりGlide非対応となった。
なお、一部不具合があり修正アップデートプログラムが配布されている。
*1 前作までは両方とも0%で開始だった。
*2 初代の声優を務めた白石文子氏が、短期間で引退してしまったのも理由。
*3 エミリオに限らず、ストーリー上因縁のある相手との対戦時は、勝敗後の台詞が変化する。
*4 単純なフレーム数だけでいえば、下記の刹那よりも遅い。
*5 バリアブレイクをしても、バリアガードに弾かれてしまう。
*6 ソニアとマイト、玄真と玄信、ブラドとガデス。見た目が同じ技を持っていても、性能的にはかなり違っている。
*7 同年代には格闘ゲームというジャンルのみに絞って見ても、『KOF98』『ストリートファイターZERO3』『ソウルキャリバー』など強力なライバルがいた。『月華の剣士第二幕』『ジョジョの奇妙な冒険』は稼働日が年末に近かったため除外したとしても、である。
*8 ウォンもやっている事は近いのだが、悲願だった野望の達成感という点で大きな違いがある。ガデスには本当に何も無い。
*9 超能力技をバリアガードさせた瞬間にバリアブレイクを重ね、ガード不能の連携とするテクニック。有名な連携はエミリオの「シーカーレイ」からのブレイク、通称『レイブレイク』など。
*10 通常移動やノーマルダッシュはそれほどでもないのだが、相手を捉えるのに重要なクイックダッシュの性能はトップクラス。
*11 最も当たり判定の小さいキャラと比較すると、2倍近く大きい。
*12 ロケテスト中に配布された小冊子は明らかに非プレイヤー向けの情報まで盛り込むなど、迷走気味だったことも原因だろう。
*13 実際、大阪でロケテストを実施した店舗はタイトーのフランチャイズチェーン店だったのだが、本稼働時には導入見送りとなっている。
*14 下記の理由から基板が非常に故障しやすい。そのためか、使用されたのは後にも先にも本作だけ。
*15 PCゲームの世界では有名な3D描画専用グラフィックプロセッサで、ACでも後継チップを含めアタリやコナミなどのメーカーが採用していた。
*16 よく『バトルギア』などで使われた「Type-Zero基板」が名前が似ているからという理由で「Type-Xの前身」という勘違いも時折見られるが、「Type-Zero基板」は基板のスペック等からセガのMODEL3に近似した独自アーキテクチャーであり、Windows PCベースの「Type-X」とは全く異なるものである。
*17 当時のオタク女性の空気の読めなさは「その場に迷惑をかける」問題行動が多く、サイキックフォース以外でも小学生対象のミニ四駆大会にそのアニメのコスプレをする等、今で言う所の「やらかし」をしてしまう悪質な者が多い時期でもあった。
*18 60fpsの感覚で←→を2Fで入力すると、『2』では1Fになることで最初の←が上書きされ、→だけの入力になってしまう。『2』の方をやりこんでいる場合は違和感を感じにくいのはそのため。
*19 3dfx製のグラフィックプロセッサ「VooDoo」シリーズで使われる描画プログラム。国内PCゲームでは実質唯一の採用例でもある。