探偵 神宮寺三郎 夢の終わりに
【たんてい じんぐうじさぶろう ゆめのおわりに】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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PlayStation セガサターン
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発売元
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【PS/SS】データイースト 【PS普及版】メディアリンク 【GA】ワークジャム
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開発元
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データイースト
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発売日
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【PS/SS】1998年4月23日
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定価
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【PS/SS】6,090円
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廉価版
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【PS普及版】2000年10月19日/1,500円
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配信
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ゲームアーカイブス:2007年10月24日/600円
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レーティング
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【PS】CERO:C(15歳以上対象) 【SS】セガ審査:推奨年齢18歳以上
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判定
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良作
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探偵 神宮寺三郎シリーズ
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概要
イラストレーター寺田克也の絵が特徴的なハードボイルドADV『神宮寺三郎』シリーズ6作目。
本作ではゲーム内のキャラ立ち絵やムービーシーンにも寺田克也の原画が使用されている。シリーズ中で同氏の関わった部分が最も多い作品。
現代日本の東京都新宿区歌舞伎町に探偵事務所を構える神宮寺三郎が、助手の御苑洋子とともに、様々な事件の調査を行う…というのがシリーズ共通のストーリー。システムも全シリーズ共通でコマンド選択方式である。
主人公がヘビースモーカーであり、攻略に必須のコマンドに「タバコを吸う」というものがあるのも『神宮寺』シリーズの特徴。
通常版はシリーズ10周年記念特典としてドラマCDが付属された。
ストーリー
近ごろ神宮寺は、自分が過去にニューヨークにいた頃の悪夢を見る。
それは決して忘れる事のできない、神宮寺と洋子が初めて出会った時の事件の夢だった。
今日もまた朝がやってくる。
その日、助手である洋子の古い友人から神宮寺の所に舞い込んだ依頼は、よくあるストーカー調査。調査は順調に進み、ほどなくして事件は無事に解決したものと思われた。
しかしそれを切っ掛けに、神宮寺と洋子は「終わらない悪夢」を思わせる新たな事件に巻き込まれていく。
特徴
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ザッピングシステムを採用。一定の節ごとにプレイヤーキャラを任意で選択し、複数の登場人物の視点でストーリーを進められる。
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選択できるキャラクターは、主人公である神宮寺三郎、助手の御苑洋子、友人であり所轄署警部でもある熊野参造、事件の依頼人の妹永田美貴の4人。
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同システムは、5作目『未完のルポ』でも採用されていたが、ザッピングといってもパラレルワールド的なものであり、整合性の部分に問題があった。本作では、あるキャラクターのシナリオで起こる出来事は別のキャラクターのシナリオでも同様に発生する。また、チャートマップが追加されてルートを把握しやすくなった。
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本作で追加された各システムは、後のシリーズ作品のベースとなった。
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D-MODE(推理モード)
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調査の節目を迎えたところで、情報を整理して一つの推理を導き出すモード。神宮寺が順を追って疑問点をピックアップするので、プレイヤーは正しい選択肢を選んでいく。
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S-MODE(捜索モード)
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家宅捜索などは、前後左右が3DCGで立体的に描かれた室内マップを直接調べていく(ブラウザゲーによくある脱出ゲームのような感じ)。
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PASS WORD
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ゲーム中に4文字のアルファベットの文字列を発見する事がある。これをパスワード入力画面で入力すると、人物紹介などのおまけ要素が解放される。
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パスワードの入手方法は、調査中に事件とは関係のないところを調べる、ミニゲームに勝利する、謎の事件簿を解決するなど様々。デフォルトである「AAAA」にもメッセージが用意してある。
評価点
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新システムが概ね成功している。
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D-MODEの存在は、キャラクターが勝手に推理を進めてプレイヤーを置き去りにしてしまいがちなコマンド選択式推理ADVの弱点をうまくフォローしている。
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S-MODEによる調査はコマンド選択式と比べてグラフィカルなので、重要な証拠物件などを発見した時のインパクトが大きい。
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ゲーム部分の基礎は前作から引き継いでいて、テンポの良さも前作ゆずり。ストーリーの流れは手帳に記録されていくので日を置いても進捗がわかりやすい。
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シリーズの人気の秘訣でもあった、寺田克也の描く作品世界の再現性は過去最高。
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本編キャラが可愛くデフォルメされたミニキャラとして登場するミニ推理ADV「謎の事件簿」も、前作に引き続き実装されている。
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神宮寺編・洋子編のほか、熊野編も追加された。
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これは前作『未完のルポ』の頃は、本編がいわゆるアニメ調のグラフィックだった事と併せて「神宮寺らしさが損なわれている」と受け取られる事もあった。しかし本作の本編作画は原画に忠実であったためか、完全に別物の息抜き要素として好意的に受け入れられた。
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ジャズ調やピアノ曲など、操作キャラクター4人それぞれのイメージにあった、それでいて操作の邪魔にならずいい具合にBGMに徹する音楽も好評。
問題点
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ザッピングシナリオは異なる視点から新事実を得るというよりは、各操作キャラクターの心情面をより詳しく描いたもの。事件解決という観点からすると、どのシナリオの内容も大差がないと言える。
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特に、洋子と美貴は共同で捜査をすることが多く、捜査手順から会話内容までほとんど同じでダルい。
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どのキャラクターで捜査しても他のキャラクターの捜査内容は最後に知らされるため、パートが終わった時点の情報量は全く同じで、捜査の方法が違うのみ。これは、一つ前のパートまでしか遡れない仕様からも明らかで、1つのキャラクターだけを追っても最後までたどり着けるということ。ザッピングの利点をほとんど利用できていないと言える。
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シナリオチェックの不備
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熊野視点では新種の麻薬「PCD」の製造方法や製造元を探る、という所から始まりやがて神宮寺たちを巻き込んだ大事件に発展するのだが、序盤から犯人が口を滑らせる部分があるため勘のいい人は三日目の冒頭で犯人がわかってしまう。
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人物Aのセリフから判明した新事実を人物Bはその場にいなかったにもかかわらず知っている、という単純なミスだが、それが「犯人ならば知りうる情報」でもあり、困ったことにその人物BがPCD製造の犯人である。しかし神宮寺をはじめプレイヤーキャラがそれを指摘、あるいはその発言から疑いを向ける、といったシーンは無いためシナリオチェックミスの可能性が高い。
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D-MODE以外の無意味な選択肢
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D-MODE以外でも選択肢があるものの、相手の反応が多少変わったり自身が普段と違う気分でこの選択したで片付けられて特にストーリーに影響を与えるものではない死にシステムとなっている。
総評
登場人物同士が複雑に絡み合った深みのあるシナリオと、それを彩る高品質なグラフィックやBGMが高い評価を得ている。ADVとしては申し分のない出来であり、作品の雰囲気を楽しむのを阻害する目立った問題点もない。
シリーズのウリであるハードボイルドADVのひとつの完成形として、後継作品と比較しても引けをとらない会心の一作である。
余談
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現在はゲームアーカイブス購入で簡単に遊ぶことが可能。レーティングはCERO:C(15歳以上対象)となっている。
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サターン版には推奨年齢18才以上該当の表記があった。麻薬関連の描写があるため、全年齢ソフトとしては不適当だとされたらしい。
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ポニーキャニオンからサウンドトラックが出ていたが廃盤になった。現在は中古ですらオークションで1万円超えするくらいの高価格が付いている。
最終更新:2023年06月26日 00:57