この記事では、『Dungeon Master(PC版)』と、その移植である『Dungeon Master(スーパーファミコン版)』を扱う。判定はともに「良作」。
【だんじょんますたー】
ジャンル | 3DダンジョンRPG |
対応機種 |
原語版:IBM PC、Amiga、Apple II、ATARI ST 日本語版:PC-9801、X68000、FM TOWNS |
発売・開発元 |
Software Heaven / FTL Games (日本語版はビクター音楽産業が主に担当、TOWNS版は富士通) |
発売日 |
1987年 【FM-TOWNS】1989年11月 【X68000】1990年1月 【PC-9801】1990年2月 |
定価 |
【FM-TOWNS】8,800円 【X68000/PC-9801】9,800円 |
判定 | 良作 |
ゲーム開発部門「FTL(Faster Than Light) Games」を擁するSoftware Heavenを経営していたウェイン・ホルダーの元に1986年、ダグ・ベルとアンディ・ジャノスという二人の若者があるシステムプログラムを売り込みにやってきた。それを簡潔に表すならば、「時間と物体が現実そのままに存在する箱庭空間を作り上げるプログラム」となる。
ウェインは二人を開発スタッフに迎え、二人のプログラムを見て即座に閃いた「3Dダンジョンの中を勇者がリアルタイムに冒険するRPG」であるこのゲームを製作した。
そうして1987年に発売したFTLのゲーム3作目であるこの『Dungeon Master』(以下「ダンマス」と略す)は、その斬新なゲームシステムが受けて世界中で大ヒット、数々の賞を受賞している。
大魔道士グレイロードは聖なるアナイアス山麓のダンジョン内で、その山の地中深くに眠るとされる「パワー・ジェム」について生命の目的と起源の研究を進めていた。「パワージェム」とは、かつて創造主が氷の中に人間・ハイロード・小人・妖精などを創造した際、氷を溶かして生命をこの世へと生まれさせた生命の源とされる伝説の至宝である。
そしてある日ついにを地中深くの炎の中にある「パワー・ジェム」の在処を感知する。そのことを弟子のセロンに告げると危険だと引き止められるが、セロンの記憶の一部を封印して麓の町ヴィボルグに送り出し、グレイロードは「パワー・ジェム」を手に入れる。ところが「パワージェム」の力を引き出すため炎の杖と融合させる呪文に失敗し、パワージェムの力が暴走、グレイロードは絶対的な正義を掲げる「ロード・リブラスルス(秩序)」と絶対的な悪の権化「ロード・カオス(混沌)」に分裂してしまう。
ロード・カオスは炎の杖を支配してダンジョンを要塞に改造、ダンジョンから出られない制約を受けてはいたがそこを拠点に世界に混乱を振りまき破滅をたくらむ。それを阻止すべくリブラスルスは1年の間に数百人の勇者をダンジョンに送り込んだが、一人残らず返り討ちにあい、一部は見せしめとして入口の広間に飾られた24枚の鏡の中に閉じ込められてしまった。
グレイロードの弟子である見習い魔道士セロン。彼は麓の町ヴィボルグで恋人ヴェイラと話が噛み合わないことに疑念を抱き、師とのやり取りを思い出そうとしていた。その瞬間なにかが起こり、気が付くと彼は霊体になり、世界は戦乱や飢餓などの厄災に包まれていた。彼もまたグレイロードの実験失敗の余波により師とはまた違った形で2つに引き裂かれ、その片側である霊体は1年間意識を失っていたのだった。
そんな彼の前にロード・リブラスルスが出現、師は異次元の存在となり物質世界では半存在となりロードカオスとは逆に炎の杖なしにはダンジョンに入れなくなってしまっているという。ロード・カオスが炎の杖とパワー・ジェムをいずれ融合させて力を得る危険もあるため、炎の杖の奪還を要請される。
セロンはカオスのダンジョンに乗り込み、鏡に閉じ込められた勇者たちを解放。彼らと共に炎の杖奪還を目指してダンジョン下層を目指すのであった。
時間の概念
空間、物体の概念
+ | 主なクリーチャー達 |
その他
+ | 入口まで持ち帰った場合(ネタバレ注意) |
絶妙なゲームバランス。
ダンマスの長所にして今でも名作であり続ける最大の理由。
製作スタッフは上記のシステムをフル活用して、トラップ満載の一大ダンジョンを構築。プレイヤーに挑戦状を叩きつけたのである。
ボリュームと比較して非常に少ないディスク枚数(PC版)
とにかく地味
時間と空間の概念のリアリティをゲームの面白さを損なわない程度に追求しつつ、「3Dダンジョンに仕掛けられたトラップを解く」ことに重点を置いたRPG。斬新なゲームシステムと、それに頼りっ切りになることなく入念なバランス調整を施した本作は、シリーズ第一作目から非常に高い完成度を誇り、後発のRPGにも多大な影響を与えた。
【だんじょんますたー】
ジャンル | 3DダンジョンRPG | ![]() |
対応機種 | スーパーファミコン | |
メディア | 8MbitROMカートリッジ | |
発売・開発元 | ビクター音楽産業 | |
発売日 | 1991年12月20日 | |
定価 | 9,800円 | |
セーブデータ | 1個(バッテリーバックアップ) | |
判定 | 良作 |
ビクター音楽産業(現:ビクターエンタテインメント。現在はゲーム事業より撤退)によって移植されたSFC版ダンマス。
移植にあたり、大筋はそのままながら原作の雰囲気を崩さない程度の細かい変更が幾つもなされている。
変更点のほとんどは、そのまま評価点と言って差し支えない。
+ | トラップ解法に触れるため折りたたみ |
ゲームスピードや処理落ちという問題こそあれど、初めて「ダンマス」に触れるプレイヤーにも遊びやすい調整がされており、総じて良移植と言える。
しかし現在では入手困難であり、更に著作権の帰属が不明確な関係上、VCやリメイク等にも期待できない事が非常に惜しまれる作品である。