F-ZERO GX / F-ZERO AX
【えふぜろ じーえっくす/えふぜろ えーえっくす】
ジャンル
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レース
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対応機種
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GX:ニンテンドーゲームキューブ AX:アーケード(GC互換基板トライフォース)
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発売元
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GX:任天堂 AX:セガ
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開発元
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アミューズメントビジョン
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発売日
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GX:2003年7月25日
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稼動開始日
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AX:2003年6月
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定価
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GX:5,800円
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判定
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賛否両論
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ポイント
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爽快感抜群、難易度は相応に高い 最速目指してバグ技連発
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F-ZEROシリーズ
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概要
スーパーファミコン最初期から続く任天堂のレースゲーム『F-ZERO』の一作品。任天堂とセガの初めてのコラボレーション作品。
アミューズメント事業を展開するセガとのコラボのため、家庭用版の『GX』とゲームセンター向けの業務用(専用大型筐体)の『AX』が同時に展開されたのが特徴。
開発担当は名越稔弘率いるセガ開発子会社のアミューズメントビジョン(現在はセガに吸収統合)。
『AX』で使用されている基板「トライフォース」は任天堂・セガ・ナムコの3社共同開発によるGC互換基板で、ナムコから発売された『マリオカート アーケードグランプリ』(及び続編の『~2』)やセガも本作以外に『バーチャストライカー2002』、『バーチャストライカー4』でこの基板が使用されている。
特徴
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前作と同じく全30台でのレースが行われる。登場マシンは前作に登場した30台に加え、AXで10台のマシンが新登場。
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AXからの新キャラはセガ側がデザインしたものと思われ、前作からのキャラとは毛色が異なる。
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前作では全てのマシンにパイロットの外見やレースに出場する背景などが詳しく設定されていたが、本作ではグランプリで優勝するとパイロットへのインタビューが始まり質問を選択できたり、マスタークラスで優勝するとスタッフロール時にそのパイロットが主役のCGムービーを見ることができたり、キャラ一人ひとりにテーマソングが用意されていたりと、パイロット一人ひとりのキャラクター性がより掘り下げられている。
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GXでは5コースで構成された「ルビー」「サファイア」「エメラルド」「ダイアモンド」の4カップ、AXではAX独自の6つのコースがあり、全26コース。
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プレイヤーだけのオリジナルマシンを作ることができる。
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ボディ・ブースト・コクピットの3パーツを選ぶことでマシンが作られ、当然パーツそれぞれで性能は変わる。マシンの色を変えたり、キャプテン・ファルコンなどのF-ZEROパイロットを乗せることができたり、自分で作ったエムブレムを貼ることも可能。一つのメモリーカードにつき4台作成可能。
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前述のオリジナルマシンで優勝すると結果画面でグランプリは終了する。選択したパイロットにかかわらず、インタビューやEDムービーは流れない。
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GXでは新モードとして「ストーリーモード」を搭載。シリーズの主人公キャプテン・ファルコンの前に立ちふさがる様々な困難を突破していく。全9話。
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ストーリー自体は特筆すべきものではなく、実際は通常と異なるレースが楽しめるミッションモード。前作でのデスレースのようなミッションも含まれている。しかし、ハイエンドCGで描かれたムービーシーンは映画を彷沸させるクォリティーで見応え十分。
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難易度はノーマル・ハード・ベリーハードと3種類あるが、ノーマルでも非常に難しく、ベリーハードともなるとクリアに極限のやり込みが必要とされているほど。
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AXではライセンスカードによるプレイの記録ができた。
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GXとAXの間には連動要素が存在し、GXのセーブデータが入ったメモリーカードを挿してAXを遊ぶことで、AXの要素をGX側に持ってくることができる。具体的には「マシン」「コース」「オリジナルマシン用のパーツ」。
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なお、GXとAXでは挙動が異なっている。一例で「ロケットスタート」「合力ドリフト」はAXだけ。
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ロジクールから発売されたGC専用ステアリングコントローラであるSPEED FORCEに対応(というか対応作品で唯一パッケージも記載)。
評価点
F-ZERO最大の魅力とも言えるスピード感は本作でも存分に押し出されている。
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グラフィックは非常に綺麗。ハード性能の限界で殺風景だったXとは違い、コース外の風景も非常によく作りこまれている。シリーズお馴染みの「ミュートシティ」「ビッグブルー」「ポートタウン」などに加え、サイバーパンク風の発電所地帯「ライトニング」、葉っぱが舞い散る緑豊かな「グリーンプラント」、隕石が降り注ぐ「アウタースペース」など本作新登場の惑星(背景)も魅力的。そんな魅力ある大胆な景色の中、高速でマシンをカッ飛ばすことの爽快感は今でも色あせない。
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コース設計は前作の路線を正統進化。起伏やひねりなどの立体的な構造が強化され、よりアクロバティックに。
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後述するような問題点をはらんでいるが、超高速度になるためのテクニックが多く、それらを使うことで3000kmオーバーの他のレースゲームでは味わえないようなスピードでコースを走ることができる。スピード狂には大好評。
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BGMは初代のフュージョン風、Xのギター全開のメタル系から、本作では一転してテクノ調のBGMとなっている。
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曲単体での評価は前2作より低く見られがちだが、ゲーム画面と非常によく合っておりサイバーな雰囲気や疾走感が強調されている。また最終ラップではBGMが転調して盛り上がるなど、ゲームとのシンクロを追求した作りになっている。
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特にブースト解禁の2周めに入る頃に曲が盛り上がるミュートシティBGMと、清涼感とサイバー感が絶妙にマッチしたエアロポリスBGM、夜の都会のイメージに合わせ上手くアレンジされたNight Of Big Blue(ストーリー幕間BGM)は特に評価が高い。
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なおミュートシティとビッグブルーについては、SFC・Xと使われてきたBGMのアレンジ版も流すことができる。かなり正統派なギターアレンジであり好評。
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ボリュームの多さ
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4つのクラスとカップに分かれるグランプリモードを始め、3つの難易度に分かれるストーリーモード、タイムアタックと各コースのスタッフゴースト、性能の異なる全41台のマシン、細かく組み合わせることのできるオリジナルマシンのカスタマイズパーツ、パイロット41人分の優勝インタビューやおまけムービーなど、やりこみ要素が非常に多い。
問題点
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本作最大の問題点とされているのが、スピードに関係したバグの存在である。
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AXでは、一部のカスタムマシン(ブレイブイーグル、ダークチェイサー、エウロス-01の組み合わせ「ダークコンドル」がよく用いられた)で加速重視設定にすることで、ドリフト中に曲がっている方向にパドルレバーを引くことで加速する「合力ドリフト」と呼ばれるテクニックが存在した。うまく使えば4000kmオーバーで走ることができる。公式でテクニックの存在が紹介されていた(現在はリンク切れ)。
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上手く扱うにはそれなりの技術を要するものの、真っ当に最高速重視で走るより圧倒的に速かったため、タイムアタックや大会の上位は「合力ドリフト」を用いたプレイヤーばかりになってしまった。
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GXでは「合力ドリフト」は使えないが、加速重視設定にしたうえで、ドリフトの繰り返しにより際限なく加速する(通称「ドリドリ」)が一部のマシンで使用可能。さらに一部のカスタムマシン(ボディEブーストEグリップA)においては、空中でドリドリを行うと機体の高度が上昇し、空を飛んでしまう。これを利用したバグショートカットも可能(通称「トビトビ」)。
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このせいで純粋なタイムアタックはかなり大味になってしまっており、公式タイムアタック大会も実際大混乱となった(参考)。
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また、開発者による最高タイム(いわゆる「スタッフゴースト」)もドリドリを利用している。すなわち、開発スタッフはこのバグを確認し残しているということになる。また、ファミ通の攻略ビデオでもこのテクニックが紹介されている。
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AXにおいても「ドリドリ」や「トビトビ」は使用可能。ただし「ドリドリ」より「合力ドリフト」の方が速いので、デフォルトマシン限定大会でもなければ「ドリドリ」を使用するプレイヤーはあまりいなかった。
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「トビトビ」についてはAX最終ステージのタイムアタックで用いられ、明らかに「トビトビ」を使用したタイムは殿堂入りとしてランキングから除外された。(なお、それでも上位タイムは明らかに「トビトビ」使用である。)
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ただしかなり特殊な操作をしなければこれらのバグ技は起こらず、使わずとも通常プレイには何ら支障はない。
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ドリフト系の他に、少しの段差で発動する浮上加速のバグがあり、こちらは偶発的に起こりやすく、初心者にとっては嫌なタイミングで自滅に追いやられやすい。狙って使える一部の熟練者にとっては有用だったりもするが。
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マシンの性能表示(ボディ・ブースト・グリップがA~Eの5段階)が実際の性能と全く違う。
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最たる例がグリップAなのに実際はE並に滑るブラックブル。こういうマシンがいくつもあるため、これからプレイする人は攻略サイトを参考にすべし。
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その原因はマシンやパーツの性能表示が重さを無視したものだからである。
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ブラックブルはグリップAとはいえ重さが2340kgあり、他のマシンと比べてかなり重いせいで上手く曲がらず、グリップAでも滑るように感じてしまう。
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スペースアングラーはブーストCとされているが、実際はE程度しかなく、他の本作最弱とされるマシン群についてもこの問題点が原因である。
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また、オリジナルマシンのパーツもこのような重量を無視した性能表示しかされないため、思ったような走り方をするようにマシンを作るには重量の事も頭に入れて作る必要がある。
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タイムアタックのスタッフゴースト関連
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初回でいきなりスタッフゴーストよりも速いタイムを出してもクリア扱いにならず、クリア判定を出すのに二度手間が発生する。
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各コースでスタッフゴーストのタイム+10%程度よりも速いタイムを出すと初回のみチケット入手、同時にショップで該当コースのスタッフゴーストデータのチケットが陳列され、それを購入するとコース選択にスタッフゴーストのON/OFF表示がされる。
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スタッフゴーストをONにした上で該当コースに再挑戦し、スタッフゴーストよりも速いタイムを叩き出せばクリアとなり、初回のみチケット入手。
OFFの状態だとクリア扱いにならない
点に注意。
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なお、『X』では初回でいきなりスタッフゴーストよりも速いタイムを叩き出せばその時点でクリア扱いだった。わざわざショップに戻ってスタッフゴーストデータを購入しなければなら無い点も合わせ、この仕様は劣化と言わざるを得ない。
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アーケードの『F-ZERO AX』との連動が可能だが、中途半端なタイミングで行うと連動が絡んだ隠し要素が出なくなることがある。
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連動で解禁される隠しコースもあるが、これは他の条件を満たすことで連動なしでも出現させることが可能。後述のようにAXが稼働しなくなった現在では解禁不能になっていた可能性があったので、妥当な処置だろう。
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…だが、『GX』のみで『AX』の要素を出す方法は非常に難しい。
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AXカップ(AXのコースによるグランプリ)を出す条件が「全カップをマスタークラスで優勝」はいいとしても、AXに登場するパーツを出現させるための「ストーリーモードのハードをクリア」、AXマシンの解禁方法の「ストーリーモードのベリーハードをクリア」はあまりにも難しい。本作が「難しい」と評されるのはここに集約される。
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難易度ノーマルでさえレースゲームに慣れたプレイヤーが何度も躓くレベルであり、
ハード以降はグランツーリスモシリーズのライセンス取得すらも生易しく感じられるほど難しい
、といえば分かりやすいだろうか。
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大型筐体の宿命で、AXの稼動店舗は現在では大きく限られている。
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1プレイの料金が標準設定で200円と比較的高価な一方で前述のようにゲーム内容自体もライトユーザーの間では褒められたものでは無かったため、稼働から数年程度で徐々に市場から姿を消していった。補修用部品の確保が困難になったという理由でメーカーの修理サポートは2017年3月をもって終了した。
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ライセンスカードは生産終了。『ダービーオーナーズクラブ』『アイドルマスター』で使用されているものと同じロイコ式磁気カードで流用は可能だが…
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またAX側では初回限定発売分に同梱されているライセンスカードに入っているものなど、オリジナルマシン用の限定エディットパーツが計5セット存在するが、現在それを入手する方法がない。
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グランプリをマスタークラスで優勝すると使用したパイロットのEDムービーが見られるが、たまにそのムービーデータだけ消える事がある。
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オリジナルマシンでグランプリを優勝するとムービーデータが消える、というケースもある。
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気に入ったEDムービーがあるならば、早めに録画しておいた方が良いだろう。
総評
ゲーム自体の完成度は高く、この作品を楽しむF-ZEROファンは非常に多い。
だが、バグや表記ミスなど粗のある出来で、BGMも前作とは違った雰囲気になったため、ファンの間でも若干好みが分かれる作品ではある。
ドリドリなどのバグはゲームに支障が出るわけではなく、タイムを縮めるテクニックとして紹介され、事実上の公式化されている。これらはグランプリやストーリー攻略でも必ず役に立つはず。
スピードを追い求めるユーザーにとっては最高の作品だが、その難易度の高さ故にライトユーザーには受け入れられにくい作品でもある。
とは言え他のレースゲームにはない過酷かつ個性的なコースの数々は走っているだけで楽しいし、それらのコースを反射神経の限界を超える超スピードで走り抜ける快感はこのゲームにしか無いものである。
また決して理不尽な難しさではない分、ストーリーモードをクリアした際の達成感や喜びも大きいものとなるだろう。
しかしながら同時期にナムコ(当時)とのコラボで登場し、今でもSC系店舗を含めて多くの店舗で最新バージョンの作品を遊べる『マリオカート アーケードグランプリ』と比較した場合、商材としての評価は明暗がハッキリ分かれていると評さざるを得ないのが残念な限りである。
シリーズ作品としてはともかく、ゲーム作品単体としては決して悪い内容ではない。
余談
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2012年末に、『GX』のディスクに『AX』のデータがまるまる入っている事が明らかになった。プレイするためには非公式の改造ツールを用いる必要がある。
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欠点問題点の部類に入るかもしれないが、AXの稼働筐体重量がなんと500kg超えにもかかわらず、何故か同時期に発売された他ゲームよりも小さいキャスターの為に、店舗のレイアウト変更や他店移設で移動した時にキャスターが壊れて動かせないというトラブルが多々発生した。
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多くの店舗にて、配線を床に這わせてカバーをしているが、そのカバーすら乗り越えるのが困難な程小さな車輪で、更にこの重量と大きさにもかかわらず、分割を考慮していない構造なのでちょっとした移動も大変だった。
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シートベルトのついたゲームは体感ゲームではいくつかあったが、AXはシートベルトが接続されていないと座席が動かない仕様になっている。
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F-ZERO AX MONSTER RIDEという更に上位の筐体が東京ジョイポリスに設置されていた事がある。ライセンスカード及びメモリーカード使用不可。油圧式稼働と大掛かりなもの。
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2025年6月5日にNintendo Switch 2本体が発売予定。同日配信予定の専用サービス『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』に『F-ZERO GX』が収録されている。
最終更新:2025年04月03日 11:27