イノセントガール
【いのせんとがーる】
| ジャンル | “芸術”な女の子たちと暮らすドキドキハーレムADV |  
 | 
| 対応機種 | Windows Vista~8 | 
| 発売・開発元 | FrontWing | 
| 発売日 | 2014年2月28日 | 
| 定価 | 8,800円(税別) | 
| レーティング | アダルトゲーム | 
| 配信 | 2015年2月20日/6,995円 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 『ピュアガール』の後継作品 ただし、独自要素もある
 どっかで見たような…
 とあるキャラルートが賛否あり
 | 
| FrontWing作品リンク | 
 
概要
老舗メーカー「FrontWing」による2014年最初の作品。前作の『ピュアガール』が好評だったのか、その流れを組むコンセプトとして制作され、ちょうど1年5ヶ月後に発売された。
基本的なキャラ付けは前作に通ずるものがあるが、今回は「芸術属性のある、一風変わった少女との恋愛劇」をテーマとしている。
そのため、本作には前作に類似した点(原画、声優、内容等)が多く存在しているため、ある程度比較対象として『ピュアガール』の内容を引用していることをご了承願う。
シナリオ
「芸術家には2種類のタイプがいる。表現したい者と、伝えたい者だ」
―そのどちらも、俺は捨てた。
俺、『七海 航』は一切の過去を隠し、芸術とは無関係の学園生活を送っていた。
―だというのに、家庭の事情で芸術学園に転校することになってしまった。
全寮制の学園で俺が入ることになった寮―『ドリーム荘』
そこには知人他人含めて、4人の同居人がいた。
同級生で何を考えてるのか分からない水彩画家『綾代 かがり』
3年ぶりに再会した義妹、声楽を専攻している『七海 雛子』
ほんわか系幼馴染み、立体造形を専攻している『御堂 このか』
半分商業プロ作家(エロ含む)、文芸学科の『逢坂 鼎』
芸術家ってヤツは(その卵も含め)かなり変わってるヤツばっかりで、
一癖も二癖もある彼女たちと、ひとつ屋根の下での生活が始まった。
まぁ、大丈夫。
俺の過去は守られるはず―
―って、駄目だったよ! 初日からバレたよ!
俺の最大の秘密―あんなコトが周知の事実になってしまい、
ある意味お先真っ暗な学園生活のスタートである。
ああもう、どうなるんだよこの先!
俺はもう、芸術なんてやる気はないんだよ!!
(公式サイトより引用
登場キャラクター
    
    
        | + | クリックで開閉。 | 
七海航(ななみわたる)
主人公。目つきが非常に悪く、ひと睨みしただけで男女問わず震え上がらせるほどの眼力がある。実はとあるジャンルで隆盛を極めたのだが、「恥ずかしい」というなんともシンプルな理由で足を洗った。
 世渡り上手な面があるが、同時に優柔不断な部分も散見される。
 
綾代かがり(あやしろ-)
銀髪で寡黙な少女。待望(?)の貧乳キャラ。無類のグミ好き。オノマトペを多用するため、ある程度彼女と交流がないと会話するのも困難。
 直感で動く天才肌の画家であり、航とはシンクロニシティを感じ取っている模様。
 
七海雛子(ななみひなこ)
航の義妹。どうでもいいが、ヒロインでは唯一『名前がカ行』ではない。本作きっての暴走キャラ。義兄に抱かれたいという一心が、常に彼女を突き動かす。声楽部。
 たまに黒のアンダーウェアを着込んだりする。(立ち絵で差分あり)。今回の絵師の愛されキャラ。
 
御堂このか(みどう-)
前作の都と類似点が多い(尽くし系、髪の色、声)。だが、それに今回は料理上手、幼馴染という属性が付与された。自身のルート以外では甲斐性のある良キャラなのだが、それ以外では…(後述)。
 立体造形物を専攻。ちなみに、彼女の両親はどちらも茶髪なのに、このかだけピンク髪である。
 
逢阪鼎(おうさかかなえ)
現役のプロ作家。ただし18禁の。巨乳、姉属性、先輩、とどこぞの葉作品に出てきそうなキャラである。わざとなのか偶然なのか不明だが、このかは彼女を「かなねぇ」と呼ぶ。
 「取材」と称して男女問わずセクハラに及ぶ。実際、その経験は作品に受け継がれている…らしい。仕事中はよくメガネをかける。
 
下記、非攻略キャラ
 
天衣いちご(あまい-)
甘いイチゴではない。本作で最も乙女変態なキャラだが、生物学上、
男
。前作のれもんとほぼ同じだが、今回は立場は理事長なので、圭に近い部分もある。
 完全に余談だが、かがりの中の人と名前が同じ。
 
御堂莉乃
このかの実母。RINOという名義で、現代アートの鬼才と呼ばれている。しかし、仕事はあまりしないで、半裸でこたつに引きこもるダメな大人である。
 いちごとは旧友。年齢不詳コンビと呼ばれている。
 
 | 
前作から変わった点
- 
エフェクトの変更
- 
これまでは『グリザイア』シリーズのものを流用していたが、ほとんどが刷新された。
 
- 
主人公の設定、それによるシナリオのメリハリ
- 
主人公に設定が課され、ヤるだけいるだけ主人公ではなくなった。
 また、その要素はシナリオに大きく関わるため、前作よりもシナリオを読む楽しみが生まれた。しかし…(後述)。
 
- 
貧乳ヒロインの実装
- 
前作では居なかったが、今作では貧乳キャラが登場し、その手の趣向のプレイヤーには好感を得られた。
 
- 
キャラ付けの軟化
- 
きつい性格のヒロインがいなくなり、前作よりもある程度一般向けな仕上がりとなっている。ただ、それは個性的という言葉を否定するわけではない。
 
- 
芸術要素
- 
ヒロインにはそれぞれ専攻している芸術属性がついており、シナリオ個別ルートではそれが題材として活きる。
 これは主人公も同様だが、キャラ紹介の通り専攻しているわけではない。
 
- 
シナリオ分岐
- 
特徴というほどでもないが、今回は共通ルート踏破後は、各ヒロインが受けている専攻科目を選択することでルート確定となる。
 前作も分岐は早く容易だったが、今作では更に簡略化された。
 
前作との類似点(評価点含)
- 
ピュアガールで登場したもの
- 
大人の玩具屋「エムズ」(ただし店ではなく『用途箱』として)、「チュッパチョプス」等など。特に「エムズ」は今回も大きくシナリオに関わる。
 
- 
ある種のフェティシズム
- 
内容が内容なのではっきりとは書かないが、原画担当の大好きなフェチの一つが本作でも健在(それどころか悪化した)。
 
- 
ドリーム荘
- 
前作の「ドリームハウス」の寮版。というが、ほとんどそれと同じと言ってよい。
 
- 
季節感
- 
今回も舞台は「夏」である。確かに夏のほうが(色々なものの)開放感を描きやすいが、
 そういったコンセプトであると気づきにくい。
 
- 
淫語要素
- 
攻略が進んでいくと、ヒロインの口から(良い意味で)下品な淫語がどんどん連発される。
 ただし、あまりに狙い過ぎで興奮よりも笑いがこみ上げる可能性もある。
 
評価点
- 
かがりルート
- 
メインヒロインということで、非常に力の入ったシナリオとなっている。かがり自身にはあまり悲壮な過去や設定などはないのだが、
 かがりの持つ「芸術観」と航の捨てたはずの「芸術観」が噛み合い、それが二人の絆となっていくのがよくわかる。
 かがりの表現はキャラ紹介で挙げた通り抽象的でわかりにくいのだが、それが逆に航の過去の芸術性にうまく嵌っている。
 また、ミステリアスなかがりの心象、それに部屋にあるバスタブと(よく舞台となる)水族館の幻想的な風景がマッチしており、幻想的かつ芸術的な雰囲気に惚れ込むプレイヤーは多い。
 正に本作のテーマを兼ね揃えたクオリティであると言える。
 
- 
なお面白い共通ルート
- 
キャラの癖が若干一般化したため、アクの強いシナリオ進行は鳴りを潜め、誰でも楽しめるように改善されている。
 それでいてギャグ描写は前作同様になかなか笑えるので、個別ルートまでの繋ぎとしては非常に優秀。
 
賛否両論点
- 
キャラの使い回し
- 
登場人物が、どれも同社作品で見たことがあるようなキャラに特徴が似通っている。
 
    
    
        | + | 表まとめ | 
| 本作 | 類似元 | 類似点 |  
| このか | 都(ピュアガール) | ビジュアル、声、性格 |  
| 雛子 | そら(ピュアガール) | 妹、非背徳シナリオ |  
| いちご | れもん(ピュアガール) | ビジュアル、声、性格 |  
| かがり | 一姫(グリザイア) | ビジュアル、天才肌 |  
| 鼎 | 天音(グリザイア) | ビジュアル、ビッチ |  
| 莉乃 | そら(ピュアガール) | ビジュアル、声、性格 |  
ただ、よくあるキャラ付けという見方もあり、前作も似たようなキャラがいたため、制作側のお遊びとも取れる。気になるかは人によるだろう。
 | 
- 
個別ルートについて
- 
前作同様、ルートに入ると他キャラとの関わりが減り、2人だけの世界を見せつけられる点がやはり残っている。
 イチャラブゲーなので邪魔が入らないという意見もあるが、やはり共通ルートの馬鹿騒ぎがもっと見たい、いう意見もある。
 ただ、今回は共通ルートが長めにあるため、一応改善点として見ることも可能。
 
- 
シナリオについて
- 
今回は個別シナリオに深みをもたろそうとした設計だが、全体的な質は良く言えば無難、悪く言えば陳腐である。
 評価の良いものもあるが、逆にそうでもないのもあり、シナリオの格差が存在する。
 
    
    
        | + | 詳細、ネタバレ | 
このかルート
このか
簡単に言えば、「昔の家族の思い出の作品を再現する」ために奮闘するのだが…。それ以前にこのかと結ばれる馴れ初めが『
ヤンデレ化したこのかによる脅迫
』となっている。
 個別ルートでのキャラ違いは、複数ライター体制環境ではよくある話だが、
 このかの場合はギャップが酷く、別人と言われても仕方がないくらい性格が前述のヤンデレ以外でも大きく変貌する。
 また、最初のお楽しみシーン(回想)の立ち絵によるテキストが異様に長い。
莉乃
実母である莉乃は、冒頭のこのかの気持ちに応えるどころか「
才能がない
」と一蹴して無下に扱う。一応この態度にも理由はあるのだが、端的に言えば
娘の意志を自分なりに曲解して創作活動を妨げている。
 このかを守る、泣かせないと願っているが、このかを悲しませているのは
莉乃の方である
。
ツギハギすぎるストーリー
…と、割と深刻だったり鬱な展開もあるのだが、その余韻をぶち壊すように途中にギャグパートやエロパートが何度も何度も挿入される。そのため、シナリオに没頭しようとしても毛色の違うパートを見せつけられて、シナリオの本質がどんどん乖離していってしまい、集中できない。
 せめて、エロパートとシリアスパートは完全に分けるべきだったのではないだろうか…?
また、このか以外のルートも首を捻りたくなる展開も少々目につく。
鼎ルートでは恋をすることで作品の質向上を目指すのだが、別に鼎はスランプになってるほど人気が低迷してるわけでもない。その部分をある程度許容したにしても、結局鼎との交流が鼎のためになったかしっかりと形になっていないため、鼎が航と関係を持つきっかけとその産物がどうにも弱く噛み合わない。
雛子ルートは何の変哲も無い近親ルートだが、最終盤で
唐突に留学するため
に航と離れ離れになる。ブラコンで兄依存症の雛子が離れ離れになってまで声楽に力を入れてたかと思うとかなり微妙なので、無理やり悲壮感を出そうとした結果なのかもしれない。
 | 
- 
エンディングについて
- 
どのキャラで攻略しても、エンディングでは全キャラのネタバレCGが表示される。
 攻略したヒロインだけ表示することは出来なかったのだろうか。
 
- 
場の雰囲気に合わないBGM
- 
性的シーンでは普通、バラード風だったりピアノ主体による落ち着いた曲がありがちだが、
 なぜか
のどか
なものが頻繁に流れる。ヒロインのテーマ曲などならまだ違和感がないのだが。
 
- 
ポエム要素
- 
イベントの重要なシーンでは、あるキャラによるポエムがボイス付きで再生される。
 ただ、声のイメージが合ってなかったり、単純に臭すぎたりして賛否ある。
 
問題点
- 
言葉の誤用
- 
「煮詰まる」という言葉を正しく使っていない。本来は「まとまりを見せる」なのだが、ゲームでは「詰まっていて先に進まない」という用途となっている。
 この業界ではよくある誤用ではあるが、使用者が
鼎(現役プロ作家)
なのが問題。せめてそれをネタにすればまだ良かったのだが。
 
- 
一部リソースが少ない差分絵
- 
例えば鼎は仕事中はしばしばメガネをかけるのだが、立ち絵に反映されないため、場のシチュエーションにあってない。。
 その他ヒロインの一枚CGでもやはり差分が少なめになっていて、テキストと整合が合わないものが多い。
 
- 
お楽しみシーン減少
- 
前作では1キャラあたり8~10以上ほど性的シーンがあったのが、本作では1キャラ7シーンと減ってしまった。
 
総評
前作の抜き要素の高いゲームから、一般向きにシフトした作品となっている。それによるシナリオの粗は少ないといえないため、
それを気にする人には少々不満な出来かもしれない。そうでない人には、ピュアガール同様楽しめる。
余談
イノセントガールの舞台は、ピュアガールの隣町という設定とのこと。
初回特典では、声優である成瀬未亜氏が応援部部長として、本作のヒロイン及び歌手のKOTOKO氏にインタビューを実施している小冊子がついている。
その縁なのか、急遽モブキャラの声優として抜擢された。次回作があれば、成瀬氏もヒロインを担当するのではないかとファンが期待している。
新作である『ゆきこいめると』ではサブキャラではあるものの、成瀬氏の出演した。
公式HPでは、原画担当のななかまい氏による本編のCGのクロスレビューが拝聴できる。イラストレーター志望は参考になるかもしれない。
最終更新:2023年03月21日 18:26