アリス マッドネス リターンズ
【ありす まっどねす りたーんず】
ジャンル
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ホラーアクションアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション3 Xbox 360 Windows XP~7
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発売元
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エレクトロニック・アーツ
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開発元
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Spicy Horse
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発売日
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2011年7月21日
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定価
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【PS3/360】7,665円 【Win】オープン価格
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レーティング
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CERO:Z(18才以上のみ対象)
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判定
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なし
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ポイント
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10年ぶりの続編 冗長で単調なゲーム展開 高画質で描かれる世界観は好評 ただし猟奇性もアップ
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概要
『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』の後日譚として製作されたアクションゲーム『アリス・イン・ナイトメア』の10年ぶりとなる続編であり、主人公アリスを襲った10年前の火事の真相に迫っていく。
ストーリーに沿ってステージを攻略していく3Dのホラーアクションアドベンチャーとなっている。
なお、開発を担当したSpicy Horseは前作のゲームデザイナーであるAmerican McGeeが中心となって立ち上げたデベロッパーである。
特徴
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今作ではワンダーランドと現実世界を行き来しながらゲームを進めていく。
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章の節目ごとに現実世界に戻り、現実とワンダーランドを行き来しながらアリス一家を襲った火事に隠された真実へ迫っていく。
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ストーリーが進むにつれ、現実世界にも悪夢じみた風景が入り込み、陰鬱さを増してゆく。
前作と比して猟奇的な表現や演出が多めで、極めて陰惨なシーンもあるためその手の表現が苦手な方は要注意。
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アリスのアクションに2段ジャンプ、ゆっくり落下、回避、小さくなるが加わった。
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特に重要なのが「小さくなる」で、ボタンを押している間はアリスが小人化して普段は見えないヒントや隠し通路を見つけられるようになる。また、敵に掴まれた際にはこのアクションか回避を使って振りほどく必要がある。
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落下中にジャンプすることで飛距離を伸ばすことができる。これを利用して進む場所も多い。
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特定の場所にある蒸気の上に乗るとそのまま左右へ向きを変えることができる。序盤から終盤まで登場する仕掛けとなっている。
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回避は任意の方向へ高速移動するもので、動作中は無敵。一瞬姿が消え、跡には蝶が舞う美麗なモーションになっている。敵をロックオンしていれば回り込む動きも可能で、特に回数制限などもなく、高性能。
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アリスには多彩な衣装(ドレス)が用意されており、各種ドレスには特殊能力が付加されている。
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一度入手したドレスはオプションから着替えることが可能。また、スペシャルドレスと特殊武器をセットにしたDLCも販売されている。
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前作の「怒りの箱」に変わる要素として「ヒステリーモード」が採用されている。
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これはライフが減った状態でLスティックを押し込むと発動出来るパワーアップモードで、攻撃力が大幅に上昇して暴れまわることができる。
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発動時は絶叫と共に髪が白く逆立ち、目からは血涙が流れるという狂気的な姿に変わる。
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武器は大幅に数が減ったが、その分それぞれに特徴のある武器種が揃っている。
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ダメージは低いが連続攻撃が可能なヴォーパルナイフ、ダメージは大きいが攻撃の遅いホビーホース、オート連射の射撃武器ペッパーミル、一定時間チャージが必要なティーポットキャノン、任意爆破も可能な時限爆弾、タイミングよく使えば敵の攻撃を跳ね返せるカサ。以上の6種類。
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それぞれのボタンに武器が割り振られ、切り替えなしで全ての武器を使用可能になった。このシステムを活かし、ヴォーパルナイフとホビーホースはタイミングよく使えばコンボも可能。
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敵を倒したり、オブジェクトを破壊すると出現する「歯」を集めることで各種武器をパワーアップ出来る。
評価点
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美しいグラフィックで描かれるワンダーランド。
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前作から10年が経過したため、今作ではUnreal Engine 3が使われており、グラフィックも大幅にパワーアップ。前作の登場人物たちも不気味かつコミカルな見た目はそのまま美麗になって登場する。
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不気味な世界観と美しい風景を両立させており、訪れる各地の雰囲気も抜群に良くなっている。
例えば、ハートの女王の城は序盤は空中に架かるトランプの橋を渡る幻想的な世界だが、後半は何かの生き物の内部のようなおどろおどろしい場所が舞台となる。
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2段ジャンプや浮遊中の蝶や葉っぱが舞う幻想的なエフェクトも美しい。アリスの黒髪の表現にも力が入っており、液体を思わせる艶や重たげな靡き方は一見の価値あり。
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コレクション要素の多さ。
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各地に隠されたアリスの記憶集め、ビン集め、ブタ鼻撃ち、課題をクリアしていくラデュラルーム、とやりこみ要素が豊富に用意されている。
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実績/トロフィーの達成以外にはあまり意味はないが、数が非常に多いので自力で全て探し出すのはかなりの難易度。
賛否両論点
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売りである狂気の表現は、前作と比べてグロテスク成分が多めでやや猟奇的な表現に傾いており、ところどころ人を選ぶレベルに達している。
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拘束衣を着せられ頭髪を剃られたアリスが頭蓋切開を受けそうになるなどの物理的・視覚的にキツいシーンや、刃物に貫かれたベビードールが無数に浮かぶステージの幼児虐待や性的暴力を暗に匂わせる表現等、極めて陰惨な表現が数多い。
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ラスボスの造形も、一言で言えば「ヤバイ」である。強大さではなく、邪悪さと淫靡さを前面に出したデザインになっている。
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このため、そうした表現が苦手な人(苦手でも前作の表現が大丈夫だった人含む)にはやや勧めにくい。
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回避やロックオンの追加、エフェクトの強化によって、戦闘の雰囲気が変わった。
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華麗な回避移動で一瞬にして避け、回り込み、青い軌跡を描く斬撃で敵を切り刻むアリスの姿には「らしくない」という声も上がった。
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ネット上のレビューには、高速でスタイリッシュに戦う本作のアリスは『デビルメイクライ』シリーズのダンテのようだという感想も見られる。
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実際、本作のアリスは、並の敵なら近接武器だけで翻弄してしまえる戦闘力を持っている。
問題点
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冗長かつ単調なゲーム展開。
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本作のストーリーは全部で6章だが、個々の章のステージは非常に長くギミックも似たり寄ったりのため飽きやすい。各所で挟まれるミニゲームもあまり評判は良くない。
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ほとんどのステージの仕掛けがレバー、蒸気、スイッチで昇降する足場、小さくなって入る穴くらいしかない。
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ラスボスをのぞいてボス戦もないため、より単調なゲーム展開に感じやすい。ザコ敵の種類も少ない。
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ストーリーデモの字幕が長いうえに消えるのも早く、読みきれないのに勝手に進んでしまう。
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翻訳もあまり上手いとは言えない。前作のローカライズが完璧すぎたのも不評に拍車をかけている。字幕が妙な場所で切れている箇所も。
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武器が大幅に削除された点、チェシャ猫のアドバイスが特定の地点のみになった点などは不評。
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武器の強化もすぐMAXになってしまうため、後半は歯が余りまくる。
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オートセーブのみで任意セーブがなくなった点も不評。前作もオートセーブだったが、任意セーブと各ステージ冒頭のデータが自動で作られるため遊びやすかった。
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あるステージが東洋風の雰囲気になっており、世界観にそぐわないと不評。
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新品購入特典として、前作の家庭用移植版を無料ダウンロードできるプロダクトコードが付属した。
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しかし、プレイできるのは英語音声に英語字幕の北米版となっており、日本のプレイヤーには不評だった。
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特にWin版をプレイ済みだったプレイヤーからはローカライズが絶賛されていたため残念がられた。せめて字幕だけでも収録されていれば…という声は多い。
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なお、当初は上述のように特典扱いでDLコードが必要だったが後に通常DLCとして購入可能になりさらに現在は無料で配信されているので、中古購入の場合でもプレイは可能である。実績も用意されている。
総評
ファンが待ち望んだ10年ぶりの続編ということで情報が公開された当時は歓喜を持って迎えられた。
しかし、相変わらずの不気味な世界観やキャラクター造形は評価されたが、ゲームデザインの面では劣化した部分が目立ってしまった。
シリーズファンからもあまり評判は良くなく、凡作の域を出ないゲームとなってしまったことが非常に惜しまれる。
余談
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2017年に最新作となる『Alice: Asylum』の開発計画の話しが作者のアメリカン・マギー氏から公に発表され、400P近くにも及ぶ膨大な資料がEAに提出されたが、開発資金の提供は見送られることとなった(参照1)。
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そして、5年後の2023年4月8日にマギー氏は自身のTwitterにて、『Alice: Asylum』開発中止の告知と共に、ゲーム開発から完全引退することを表明している。
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氏は開発が実現できなかったことがかなりショックだったようで、「もうアリスの話はしないで欲しい」「私の決断も尊重してほしい」と周囲やファンに懇願しているという(参照2)。
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ちなみに、『Alice: Asylum』は第1作の前日談となる予定だったが、マギー氏は本作発売時のインタビューで「続編を作るとしたら、自分の心の傷を癒しトラウマを乗り越えたアリスが他人の心の傷を癒す物語となるだろう」と言いう趣旨の発言を残している。
最終更新:2023年12月08日 15:00