Zill O'll ~infinite Plus~
【じるおーるいんふぃにっとぷらす】
ジャンル
|
RPG
|

|
対応機種
|
プレイステーション・ポータブル
|
発売・開発元
|
コーエー
|
発売日
|
2009年1月22日
|
定価
|
5,040円
|
レーティング
|
CERO:B(12才以上対象)
|
廉価版
|
コーエーテクモ the Best パッケージ:2010年8月5日/2,940円 ダウンロード:2010年11月18日/2,200円 コーエーテクモ定番シリーズ:2012年8月2日 パッケージ:1,890円 / ダウンロード:1,600円
|
判定(UM
|
劣化ゲー
|
判定(DL)
|
良作
|
ポイント
|
PS2版にイベントやキャラを追加 シナリオ追加部分に設定の齟齬有 深刻な処理落ちとロード地獄(UMD版) 2周目以降に便利機能の追加
|
Zill O'llシリーズ Zill O'll / infinit / inifinit Plus / TRINITY Zill O'll Zero
|
概要
1999年にPSで発売されたRPG『Zill O'll』をPS2でリメイクした作品である『Zill O'll ~infinite~』をさらにPSPへ移植した作品。
初代 →『inifinit』の際も没キャラや没シナリオ、新規イベントがかなり追加されたが、PSP移植に当たりさらに追加されている。以下、本作の特徴。
-
仲間キャラは以前から人気のあったキャラが3人、更に完全新規キャラが2人の合計5人が追加された。
+
|
新規仲間キャラ
|
-
フレア
-
ウルカーンの神殿を守る火の巫女。無印では必ず死亡し、PS2版では条件を満たせば生存&EDが迎えられるようになったが、今回は更に仲間として連れだせるようになった。
-
PS2版におけるED条件を満たす事が仲間にする条件なので、今回のED条件として更に別のイベントが用意された(ED自体はPS2版と同じ)。
-
フェルム
-
ロストールの酒場の看板娘。PS2版までは男主人公のチュートリアルとガルドラン関連のイベント程度しか出番が無かったキャラだが、晴れてパーティ入りを果たし、EDも追加された。
-
エルファス
-
世界各地で奇跡を起こし、救世主と崇められる少年。本来なら物語の最終局面で主人公と対峙する存在だが…。
-
元々EDは存在したキャラだが、今回は仲間になった場合の新規EDが追加されている。
-
ジリオン
-
新キャラクター。かつて無限のソウルの持ち主だった青年。現在はある理由でアルノートゥンのクリスタルの中に封じられている。
-
イーシャ
-
新キャラクター。ジリオンを探す女冒険者。かつて円卓騎士ラハブと同化して魔人となっていた過去を持つ。
|
-
新規スタート地点「闇に閉ざされた塔」追加。
-
ダンジョンの一つである「魔道の塔」から物語が始まり、無印から登場しているベルゼーヴァやシャロームがキーパーソンとなる。最初のパートナーは新キャラのイーシャ。
-
装備が大幅に変更され、仲間キャラの多くが個別の武器を持つようになった(同系統の武器なら変更可能)。
問題点
システム面
-
ロード、処理落ち
-
PSP移植でよくある事だが、UMD版は初代やインフィニット以上にロード時間が長くなり、さらに処理落ちという新たな問題まで生まれてしまった。
-
例としては、マップの切り替えで5秒程度、ダンジョン移動中の魔法でしばらくフリーズするなど。
-
キャラが複数登場する場面では当然のように処理落ちする。ダンジョンでは3体ほどの敵が同時表示されるだけで処理落ちする。
-
イベントシーンも同様なので、キャラが多く登場したりエフェクトが多用されるイベントはとにかく時間が掛かる。
-
特にギルドの仕事では、移動中の魔法が必須ともいえる為、魔法フリーズで焦ったプレイヤーは多いだろう。
-
一応、メディアインストール機能はあるが、それでも遅い。しかもPSP-2000の場合、この機能を使用すると逆に遅くなるという報告がある。
-
一方、DL版ではロード時間はそれほど気にならないほど短い。
-
元々、キャラクターの動きや町移動の手間など、決してテンポの良いゲームではないが、上記の点によってますますテンポを損なってしまっている。
-
更にキーレスポンスも悪く、全ての操作がワンテンポ遅れる。
-
ギルド仕事の一覧表示の仕様悪化
-
ギルドでの仕事を請け負う際に表示上限があるようで、実際は仕事が発生しているのに表示されないという事態が発生している。
-
現在表示されている物を受けるとリストからはその依頼が消える為、それにより隠れていた依頼が表示されるようになる。表示は難易度の低いものから上に表示される為、高難易度の仕事を請けるには一旦低い難易度の仕事を引き受けないといけない。場合によってはわざわざ受けてから解約する必要がある。
-
便利な追加機能が2周目限定
-
あくまで既存の仕様が基本で、クリア後の周回要素としての追加という事なのかもしれないが、移植前のゲームをプレイしている人にとっては既存の面倒な仕様で一周はやらないといけないのがやはり少々面倒。
シナリオ面
-
セリフの設定ミス
-
主に新規加入キャラで頻発しており、イベント時に異なるキャラクターの口調で話し始めることがあり、キャラクターによってはプレイヤーにかなりの精神的ダメージを与える。
-
例えばフェティがユーリス口調になる…なんて例もある。参考までに、フェティは文句ばかりのわがまま娘。ユーリスはぶりっ子気味のバカ女(作中キャラの弁)。これらの口調が入れ替わった日には…。
-
「イーシャ」と「ジリオン」の設定の矛盾
-
発売前にコーエーの公式サイトで公開された小説より、「イーシャ」と「ジリオン」が新規追加キャラとして登場するが、その二人の設定に旧作からの矛盾が発生している。
-
特に時系列については、ゲーム内で語られる内容と明らかに矛盾する点が見受けられる為、ファンから相次いで指摘を受ける事態となった。
+
|
新規追加キャラの不評点
|
-
イベントにおいても、新規追加キャラの設定、イベントはお世辞にも出来が良いとは言えず、2人の恋愛関係をひたすら見せつけられる展開になる為、この二人に感情移入出来ないプレイヤーはかなり厳しい。
-
しかも追加されたエンディング5つのうち、3つがこの2人に関連するものであり、そのうちの1つは2人の結婚式という、プレイヤーが完全に蚊帳の外に置かれてしまうものである。
-
他の二つはそれぞれの単独エンドで、ジリオンなら女主人公と、イーシャなら男主人公とペアになるもの。ただし、そのルートに行くにはジリオンEDならイーシャを、イーシャEDならジリオンを仲間に出来なくなってしまう。また、何故かイーシャの単独エンドは2周目以降限定である。
-
実は新規PT加入キャラのイベントについても、一部で不満の声が上がっているのだが、前述した二人のシナリオがあまりも酷い出来だった為、それほど目立ってはいない。
|
+
|
シナリオの矛盾点
|
-
ゲーム内で語られているロストールのクーデター「テジャワの変」の発生時期がおかしい。
-
ロストール王妃エリスのセリフによれば、テジャワの変は娘であるティアナが生まれるころに発生したとのことだが、小説では既に会話が出来る年齢に成長しているティアナが登場している。
-
ジリオンは前述したテジャワの変で活躍し、その後はイーシャの為にアルノートゥンという町のクリスタルに封じられる。だが、同時にネメアが達成した偉業の一つ、28騎で大量の敵兵撃退にも参加していたという記述もある。ネメアは公式設定で26歳。…あれ?
|
-
ベストエンドへの追加キャラの対応が雑すぎる
-
PT加入キャラを全員仲間にするとベストエンディングを迎えられるのはインフィニットと同様で、新規加入キャラもその条件に含まれるのだが、なんとこの5人はそのエンディングにおいてその場に居るだけで、一言も台詞を発しない。インフィニットのベストエンディングに、ただ新キャラを配置しただけである。
-
フェルムとフレアは酒場のシーンにて無言で棒立ち。エルファス、ジリオン、イーシャはラストシーンに申し訳程度に現れるだけ。特に前者二人は、皆が大いに盛り上がっている中で蚊帳の外に置かれており、なんとも不憫である。一言、二言程度の台詞を挟む位は出来たのでは…?
評価点
-
2周目から新アイテム「通信機」が登場する。これにより、従来は猫屋敷でしか出来なかった仲間の入れ替えがどこでも出来るようになった。
-
手間が減ったのは勿論、メンバー入れ替える為に猫屋敷に向かう途中で歴史が進行してしまう…と言った事態を防げるようになり、イベント回収にも余裕が出来た。
-
従来は一部のキャラクター以外、店売りの汎用装備だったが、本作では仲間になるキャラクター全員に固有の装備が設定されている。
-
従来は鍛えられなかった固有装備も(コストは高いが)鍛冶屋で鍛えられるようになった。アイテム係と揶揄されていたキャラクターも活躍のチャンスが!
-
しかしながら固定武器属性の関係上、結局はラスト付近からアイテム係になるキャラが何人かいる。素直に好感度がMAXで装備変更可能にすればよかったのに…。
-
2周目からは複数条件を満たしている場合、どのキャラクターとのエンディングを迎えるかを選択可能になった。
-
これにより特定キャラのエンディングしか見られない!という事態がかなり改善された。一部キャラは呪いと呼ばれるほどエンディングの優先順位が高かった為、これについては嬉しい限りである。
-
しかも選択肢に入ったエンディング全てがその時点で達成扱いになるので、同時に条件を満たしたものを確認する為に何度もラスボスを倒す必要は無い。
-
さらに「PT内で最も好感度が高い」という条件があるキャラも、PT内にさえいれば順位に関係なく選択肢に追加されるのでED回収が一層楽になった。
-
スタート時に誕生日として設定した日に宿屋に泊まると、仲間達から祝ってもらえるイベントが追加。
-
ささやかなイベントだが、個々のメンバーに、その好感度に応じた台詞が2つずつ用意されている凝りようである。好感度が一定以下の場合は軽く祝ってもらう程度だが、一定以上になるとどのキャラも思わず笑みがこぼれるほどの嬉しい言葉を掛けてくれる。
-
ただし、「闇に閉ざされた塔」でスタートした場合は、ある理由によってイベントが発生しない。
-
フィールドや戦闘時のモーションが多少ながら修正されており、本作特有のぎこちなさが、気持ち程度だが改善された。
-
例えばルルアンタの勝利ポーズは、PS2版だとかなり不気味だったが、今作では普通に可愛らしくなっている。
総評
歴史物が得意なコーエーの送り出した中世ファンタジー風RPGということで評価の高いゲームの移植作。
だが、元々が詳細な歴史が設定されている物に雑な追加を行ってしまった為、設定の矛盾が発生してしまっており、その点では原作プレイヤーから評価は低い。
とはいえ、あくまで追加イベント、本編の一部のエピソードに過ぎず、本来の『Zill O'll』の良さはそのまま引き継がれている。
システム面でも2周目以降限定とはいえどこでも仲間を入れ替え可能になったりと、周回プレイをする上で不便だった点がかなり遊びやすくなっている。
持ち運び可能という携帯機ならではの利点もあり、今から『Zill O'll』を始めるなら、本作を選ぶのも悪くないだろう。
ただし、上記の評価はあくまでDL版の話であり、UMDは間違ってもお勧めしない。
PSP移植で多く発生していたハードスペックとUMDの読み込み機能の問題を本作も抱えており、UMD版は処理落ちにロード時間の長さと快適性を大きく損なった移植になってしまっている。
インストールによる多少の改善はあるが、それでもやはり厳しい。
余談
-
本作はPSVでプレイすると、上記の処理落ちが大幅に改善される。
-
PSPとのスペックの差故だが、ここまで露骨に違いが現れるケースも珍しい。PSVでプレイという事は必然的にDL版という事になるのでロード問題も解消する。
-
新規追加キャラ2人についてだが、ゲーム発売前に公式サイトでは彼等を主人公にした小説が連載されていた。
-
後日、書籍版の発売も発表されたが、発売日は延期を繰り返し、ゲーム発売から10年以上が経過した2019年現在も未だ発売されていない。
最終更新:2024年05月25日 10:20