Banished

【ばにっしゅっど】

ジャンル SLG
対応機種 Windows
メディア ダウンロード専売ソフト
発売・開発元 Shining Rock Software
発売日 2014年12月18日
定価 Steam:1,980円
公式サイト直売:19.99$
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント シンプルなゲーム性
優れたゲームバランス
時間を忘れる

概要

 作品名の「Banished」は「追放者」の意。わずかな食糧を持って何もない原野に放り出された彼らを導き、開拓して食料を手に入れ、家を作り、町を作って繁栄を目指す。
 独立系開発会社によるいわゆる「インディーゲーム」の一つであり、開発はLuke HodorowiczとJoseph Hodorowiczという兄弟2名だけで行われている。
 現在はWindowsのみの配信であるが、Linux版やMac版は検討中とされている。言語は英語のみであるがMODという形で各国語に翻訳されている。ただし英語自体も平易な言葉づかいになっているため、ある程度の英語力があればそれほど不自由なくプレイ可能である。

特徴

  • シミュレーションゲームとしてはシンプルな作りになっており、自由に町を作っていく。
    • 「四季を生き延びて生命をつなぐ」ことが重要な要素になっており、家が無ければ冬を越せずに凍死し、食料が無ければ当然餓死し、工具が無くなれば著しく生産性が下がる。
      • スタート時は文字通り「当座」の分しか保有しておらず、このわずかな物資を糧に、自給自足体制を整えて行く必要がある。
  • マーケットや貿易港を作ることができるが、貨幣概念は無い。住民は資材を倉庫やマーケットに集め、必要なものはそこから必要なだけ家に持って行く形で、原始共産主義的な経済となっている。貿易もできるが物々交換となる。
  • 時代設定は日本では(西洋の)中世と言われることが多いが、「ジャガイモ等新大陸由来の作物がある」「港にクレーンがある」等からどちらかと言えば近世に近い。ただし特に公式設定は無い。

ゲームシステムについて

  • 多くのまちづくり系ゲーム同様、最初にマップや難易度等を決めてスタートとなる。
    • マップは番号制の半ランダム生成になっている。マップの大きさは3段階、種類は「渓谷(Valleys)」「山脈(Mountain)」の2種類。
    • 「渓谷」は川や湖が多めで平野も山脈に比べれば多い。「山脈」は渓谷に比べると山が多く平野は少なく全体的に有効利用できる土地が少ない。
      • どちらのマップでも大きな川が必ず流れている。交易所はこの外界につながっていてかつ船が通れるルート上に置かないと商人がやってこない。
    • 気候・難易度も三段階。気候は厳しくなるほど作物が育つ期間が短く、また凍死しやすくなる。難易度は初期の持ち物等に影響し、難易度低だとある程度潤沢な物資や作物の種を持ってスタートするが、難易度高では作物の種は無く資源も乏しく、初手を誤ると最初の冬を越せずに全員凍死する可能性がある。
    • 災害の有無は難易度に大きくかかわる要素であり、onにすると火災や竜巻が発生するようになる。これらは運が悪いとコミュニティ崩壊レベルの災害になることがあり、全体的な難易度が上がる。
  • 資源は、食料や薪・衣類といった生活資源、石や鉄・木材・黒炭といった材料資源、酒やハーブ*1、工具といった具合で、シンプルにまとめられている。
    • 食料は内部的にタンパク質、穀類、果物類、野菜と4種類に大別され、これらが偏ると住民の健康が下がっていく。
    • 石や鉄、丸太は家の材料であったり工具の材料であったり、複数の役割がある。また冬を越すのに必須な薪は丸太を加工して自給する形になる。革や羊毛は衣類になり、酒は住民の幸福度を高めてくれる。
      • 当然ながらこれらはすべて自給する必要があり、石や鉄はマップに最初から落ちている物を拾ったり、木は森を伐採したりして入手することになる。
  • 施設は資源を使って建造する。多くの施設はそこに住民を割り振って働かせることで初めて機能するようになる。
    • 居住に関係する家、釣り小屋、畑、採集小屋といった食料資源を生産する施設、木こり小屋や採石場のように原料資源を生産する施設、倉庫やマーケットといった資源循環にかかわる施設、病院や学校などその他の施設に大別される。
      • 家は基本的に一戸建てのみになる。集合住宅はあるものの住民はこの施設に住むのを嫌うため*2、普通の家が空くとすぐに出て行ってしまう。
      • 資源施設は釣り小屋や採集小屋など「生産に自然が必要なもの」や畑や牧場のように「土地そのものが必要な物」等ある。
      • 上記以外には幸福度を高めてくれる教会や墓地といった宗教施設や井戸等がある。
    • 道路は土の道路と石畳があり、作ると住民の移動速度が上昇する。
    • 「交易所(Trading Post)」をつくると商人と取引ができるようになる。
      • 商人は複数種類いてそれぞれ扱っている物が異なる。また訪れるタイミングは不定期な上、ほしいものを必ず持ってくるとは限らない(注文することはできるが値段が割り増しになる)。扱っている物はゲーム内の物資すべてで食料から工具、種や家畜まで多岐にわたる。
      • 非常に強力な施設であり、特に難易度ハードでは初期に種や家畜を一切保有していないためここから調達しないかぎり畑や牧場をつくることが出来ない。
  • 住民は家庭を作り、子供を産んでいく。
    • 新しい家や空き家が出ると結婚適齢期の男女が夫婦になり新たな家庭ができる。
    • ゲームシステムとして徹底的な核家族社会となっている。そのため家が増えるか空き家が出来ない限り新しい家族にならず、また子供も生まれない。なお、1年で4歳年を取る設定になっている。
    • 住民は各種の施設に割り振って仕事をさせる形になる。割り振っていない住民も「労働者」として資源の回収等に従事することになる。
    • 住民は「子供」「学生」「大人」の段階があり、仕事をさせられるのは大人のみ。子供はある程度の年齢になると就学するが、学校が無い、先生がいない、もしくは生徒が上限に達していてあぶれたといった場合にはそのまま大人になる。
      • 学校を出ていない住民は「教育を受けていない」住民となっており、「教育を受けた」住民にくらべて労働生産性が下がる。
    • 住民には健康度、幸福度というパラメーターがあり、食料事情の悪化や、生活環境の悪化、精神的不満等によって低下する、健康度が下がると疫病が蔓延したりして動けなくなり、幸福度が著しく下がるとうつ病を発症してやはり動けなくなる。
      • ゲームのマニュアルでも解説されているがこのゲームの住民は労働ロボットではなく、仕事以上に必要なこと(たとえば暖をとったり食料を家に入れたり等)は優先的におこなうルーチンになっている。そのため住民が快適に過ごせる環境を整えることは生産効率を上げるためにも重要となる。墓も教会も無く死体は野に打ち捨てられ、服はぼろぼろで食料は肉ばっかりという町を作ることもできるが、多くの場合待っているのはコミュニティの崩壊によるゲームオーバーである。
    • 「町役場(Town Hall)」を建てている場合、「放浪民(Nomads)」がやってくることがある。受け入れると即座に住民となるため手っ取り早く人口を増やすことができるが、「教育されていない(=生産性が低い)」「一足飛びに人口が増えるため食料バランスが崩壊する危険がある」「疫病が発生する可能性が高い」といったデメリットもある。

評価点

  • シンプルながら良く練り込まれたゲーム性。
    • 資源等はかなり簡潔にまとまっているが、その全ての要素が複雑に組み合わさっており、バランスよく発展させていくことが求められる。施設を作るには材料資源を入手しなければならず、入手するには人手が必要で、人手を確保するには彼らを賄えるだけの食料がなければならず、食料をまかなうには…という具合につながっている。
      • ゲームとして不要な要素はほとんど無く、全てのシステムが何らかの意味を持っている。もちろん優先度の高低はあるため、プレイヤーは必要な施設を優先度を考えつつバランス良く作っていく必要がある。
  • 全体として良く練り込まれた難易度。バランスは割とシビアで、資源のバランスが崩れると即座にコミュニティの崩壊の危機に直面する。
    • 特に食料や薪は即座に生命の危険に直結する。食料自体を増産するのも重要であるが、人口をうまくコントロールするのも重要で、無秩序な民家建造は人口爆発を引き起こし即座にコミュニティ崩壊につながる危険性が高い。
      • 「人口爆発を起こして一気に町を開発する」という手段もかなりシビア。そうすると今度は材料資源の枯渇*3や工具類の増産が追い付かずに崩壊する危険があり、成長期ほどプレイヤーは全方位に丁寧な発展を求められる。
    • 人口増加はコミュニティ崩壊に直結する危険があるが、かといって一切家を作らずに人口を抑制すると、今度は人口減少による働き手不足とそれによる産業崩壊を引き起こす可能性がある。
      • 前述したようにこのゲームは徹底した核家族社会になっており、新しい家をまったく作らないと「60歳の老夫婦と40歳35歳30歳の子供が同居している」というような家庭だらけになる危険がある。さらには親世代が亡くなったとしても次世代の生殖可能年齢はほとんど残っていない高齢化社会になってしまい、長い期間人口減少が続くという難しい状況に陥ってしまう。
      • 移民を入れるという選択肢もあるものの、彼らは生産性が低いため、ぎりぎりの資源バランスで運営していた場合にはやはり崩壊する危険がある。やはりここでもプレイヤーは丁寧なプレイを求められる。
    • シミュレーションにありがちな中弛みはほとんど無い。というよりも町が大きくなればなるほど、コミュニティを維持するための安定性を保つのが難しくなっていき難易度が上がる。
  • グラフィックはインディーゲームとしてはかなり優れている。建物の雰囲気も良く、グラフィックデザインも視覚的にわかりやすくまとまっている。

問題点

  • いわゆるゲームの目的が存在せず、やりこみ要素は実績解除のみとなっている。その実績も決して多くはない。そのため自分なりに目標を立てて町をつくるというのを好まないプレイヤーにとっては割と早くやることがなくなってしまう。
    • バニラでないと実績解除されないため、実績解除の際には日本語化MODなどもNG。
  • 時折指摘されることであるがこのゲームの住人はとにかく肉を食べない。食糧でも肉やタンパク質は一番入手しやすいのだが一番食べてくれない。そのため食糧はたくさんあるのに気付くとタンパク質系食糧が山積みでほかの食料が枯渇しており、健康を害しているということも。
  • 採石場(Quarry)と鉱山(Mine)の仕様とそれに起因する自給自足プレイの困難さ。
    • 前者は石材を産出し後者は鉄か黒炭を産出するのだが、一度作ると完全には撤去できずしかもある程度掘ると枯渇するため、マップ自体を食いつぶしてしまう。
      • 鉱山(Mine)はまだマップの縁に作れるのでいいのだが*4、採石場はかなりまとまった平野を必要とする。大きなマップであればそこまで問題でないのだが、小さいマップの山脈でプレイする場合にはただでさえ貴重な平野を使う必要がある。
      • 基本的には「採石場を作るくらいなら交易所をつくればいい」のだが、自給自足プレイ(=交易所縛り)の場合はそうもいかない。工具を作るのに鉄は必須であるため、エンドレスで年を重ねることを目標したプレイの場合には、最終的に極めて困難な工具縛りにまで発展することになる*5。石材は受動的に減っていく使い道はないものの、災害ONの場合は将来的には災害復旧が出来なくなる。
  • 黒炭(Coal)はこのゲームでも数少ない「使い道はあるのだが(価値の割に)有用ではない」資源。鋼鉄の工具*6をつくるのに必要であるほか調理燃料や暖をとるためにもつかわれるのだが、前者は鉄の工具とそこまで劇的な差があるわけでもなく後者は薪で完全に代用できる。加えて入手は鉱山で掘るか、交易商と交換するしかない。そうやって入手しても薪の代わりに使われてしまい、工具になかなか回らない。
    • MODによっては薪とひとまとめにして「燃料(Fuel)」にしてしまっているケースもある。
  • しっかり作りこまれていることの裏返しとして、町づくりに柔軟性があまりない。
    • ほぼすべての要素がまるでウロボロスの輪のごとくつながっているため、どれか一つを欠いただけでコミュニティが破綻する危険が激増する。
    • 満遍なく必要な施設を作っていく必要に迫られるため、プレイヤーの癖によってはだいたい似たような町になってしまいやすい。特定の施設を作らないようにする縛りプレイの難易度はかなり高く、物によってはほぼ不可能。
      • たとえば工具無しだと生産効率が半分どころか3割近くまで落ち込んでしまう。そのため一人の食いぶちを確保するのさえ厳しく、ましてやその状態で子供の食いぶちも確保しなければならない*7。待っているのは餓死である。
      • 交易所を縛ると難易度によっては畑や牧場が作れなくなるため、大量の釣り小屋や広範な森を確保して食料を採集する必要に迫られる。さらにこのプレイでは栄養バランスの偏り、石、鉄(そしてそれに起因する工具)の確保も大きな問題となる。
  • 住民は定期的に家に帰るため、働いている施設が遠すぎると働ける時間が短くなり生産性が下がる。そのため必然的に住職一体の町づくりを求められるため、一か所に住居を固めるような町づくりは難しい。
    • 二次生産系の仕事はこのゲームでは少ないため*8、大きな工業都市や商業都市も作りにくい。作ったら作ったで人が多ければ「住民は仕事についてない労働者だらけ」になり、人が少なければ遠くの農地に働きに行かざるを得ず「長時間通勤で著しく生産性が低い人だらけ」という状況に陥りやすい。
  • 一施設一役一種類という物が大半のため、町並に変化をつけるのは難しい。
    • 逆に家等複数のグラフィックからランダムに選ばれるものもあるため、ニュータウン的な統一感のある町も作りにくい。
  • 人口が増えるとかなり重くなる。
    • 住民の動作処理にかなりの処理能力を必要としており、ある程度の性能があるPCでも500人を超えたあたりからかなり重くなる。
    • そのため継続的に快適なプレイをするにはある程度で人口を抑える必要がある。
    • 人口を増やす場合、人口を抑えておき最後の仕上げとして人口を上げないと、処理落ちの中での遅々としたゲームプレイやハングアップなど、ひどいプレイ環境になる。
      • 一応、倍速を落とすことである程度緩和することが可能である(ただし時間の進みが遅くなってしまうが…)。

以上の問題点は、マニアックに遊び倒した際に出てくるようなものが多く、ゲーム自体はインディーゲームであることを抜きにしても極めて高水準にある。施設の種類やグラフィックバリエーションはインディーゲームにそこまで求めるのは酷というもの(初めからMODの導入が前提となっており、より深い街づくり等はそちらに任せた感がある)。

総評

 小粒ではあるものの非常に優れた作りこみをしているシミュレーションゲームである。特に決まった目標はない典型的な砂場系ゲームであるが、この手のゲームを好む人にはまさに時間を忘れて街作りに没頭することが可能。
 インディーゲームが持っているような粗もほとんどなく、バグについても現在ではほぼ解消されている。2,000円のゲームとしてはかなり満足感は高いゲームであるといえる。

余談

  • 公式にMODが導入可能となっている。細かいバランス調整のようなものからもはや別ゲームレベルにまで拡張したものもある。
    • 有名なのは「Colonial Charter」で、アメリカの開拓時代から独立ごろまでをモデルにしたMODとなっている。バニラ版に比べて桁違いに建築や職業が増加しており、きわめて大規模なMODである。
      • 鉱工業系もそろっており現実世界と同じような施設が立ち並ぶ近世後期の都市を作ることができるMODであるが、「コロニアル時代を再現する」という目的を優先している結果、オリジナル版が持っている各施設間の繊細なバランスはかなり失われている。また最新版はあまりにも建築物や資材が増えているためきわめて複雑な生産ルートをとるようになっていて、慣れるまではかなりとっつきにくい物になってしまっている。
  • Banishedは本来「バニッシュ」と最後を清音で発音する。しかしながら日本では発売当初からなぜか濁音で定着している。このことを鑑みてこのページにおいても濁音にて記事を制作している。
  • 日本では「一人で作成したゲーム」と紹介されることがあるが上述の通り兄弟2人での製作である。法人格を持っている企業で本当に一人で作っているケースとしては日本の「びんぼうソフト」がある。