サイバーナイト
【さいばーないと】
ジャンル
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ロールプレイング
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対応機種
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PCエンジン
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メディア
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4MbitHuカード
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発売元
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トンキンハウス
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開発元
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コンパイル
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発売日
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1990年10月12日
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定価
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6, 800円(税別)
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プレイ人数
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1人
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判定
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なし
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ポイント
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全体的に独特なシステム ゲームバランスはもう一歩
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概要
『ソード・ワールド』や『ロードス島戦記』などのテーブルトークRPGで知られる「グループSNE」が企画・シナリオに参加した、未来の宇宙を舞台にしたロールプレイングゲーム。
メカニックデザインには『機動戦士ガンダム』で有名な大河原邦夫氏が携わっている。
プレイヤーは宇宙戦艦「ソードフィッシュ」のコマンダー(指揮官)となり、戦闘時のトラブルにより宇宙のはるか彼方へとワープしてしまった戦艦を、生き残ったクルーたちと共に地球へ帰還させるのが目的となる。
ストーリー
A.D.2352年。傭兵部隊の宇宙戦艦ソードフィッシュは、任務中に宇宙海賊からの奇襲攻撃を受けた。
激しい戦闘により機体は損傷し、キャプテンを始めとしたクルーにも多数の死者が出てしまった状況で、主人公であるコマンダーは、危険を承知の上で、空間を飛び越えるジャンプ・ドライブの使用を命じた。
機体の損傷により座標が定まらないままジャンプした戦艦は、地球から約28,000光年離れた銀河系の中心へと移動してしまう。
わずかに残された6名の戦闘員を含む23名のクルーは、果たして生存する事は出来るのか、地球へと帰還することは出来るのだろうか……。
システム
SFを軸としたRPGだが、その多くが独特のシステムを擁しているため、具体的に説明していく。
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ゲームの進行
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基本的には戦艦で恒星・惑星を移動→惑星を調査し着陸→「モジュール(いわゆるパワードスーツ)」を装着しての惑星内の探索・情報収集、あるいは敵の殱滅、重要アイテムの獲得→シナリオの進展により恒星・惑星を移動の繰り返しとなる。
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戦艦(ソードフィッシュ)での行動
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戦艦ではコマンド選択式の行動となる。戦艦内は5つのブースに分かれており、各所で様々な行動を行える。
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ブリッジ
恒星・惑星間の移動や惑星の調査、着陸を行う。ストーリーが進むにつれて戦艦の性能が上がり、移動範囲は広がっていく。
恒星は7×7マスの地図上に散らばっており、計26の恒星内には、さらに複数の惑星が存在する。惑星は様々な要素で出来ており、生命体が確認できて着陸可能なものはごく僅かである。
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ラウンジ
戦闘員のデータ閲覧や、出撃するメンバーの入れ替えができる。5名の戦闘員キャラクターから1~3名を選んで出撃チームを編成するのだが、その際に必ず主人公1名が含まれていなくてはならない。
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なお、シナリオの進行状況によっては、必ず連れて行かなければならないメンバーも存在する(後述)。
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ラボ
敵との戦闘により手に入る「トレジャー」を解析することで、新型武器の開発やモジュールの強化ができる。
作品中は金銭の概念が存在しないため、装備品やモジュールの強化は、このラボが中心となる。
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メディカル
戦闘員の負傷の治療、死亡した戦闘員をクローン技術で再生するほか、パスワードの表示やバックアップユニットによるセーブもできる。
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「出撃前に保存しておいた記録データを基にクローンを作る」という設定のため、クローン再生した際は経験値が出撃前の状態に戻ってしまう。
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なお、物語冒頭の宇宙海賊の奇襲を受けた際に記録データを破損してしまったため、この時に死亡したキャプテン達のクローン再生はできない。
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また小説版によると同一人物を複数作ると発狂してしまうため有能なキャラを量産することも不可能。
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ハンガー
モジュールの修理、武器・オプション・フィールド(防御用アイテム)の装備、修理・治療用キットの補充、戦闘員が装着するモジュールの選択、モジュールおよび装備のデータ閲覧ができる。
モジュールは用途別に5タイプがあり、3人がそれぞれ別のタイプのモジュールを装着することになる。
武器は遠距離攻撃用と近距離攻撃用に大別され、さらに両手持ちと片手持ちがある。
オプションは通常武器に比べ強力な攻撃が可能で、すべて遠距離攻撃用に分別される。各オプションごとに弾数制限がある。
フィールドは戦闘終了時まで有効な防御用アイテムである。1個使うと消費する。
各装備品には3種類のサイズと5種類の属性があり、モジュールによって装備できる条件が異なる。敵に特定の防御属性がある場合、全くダメージが入らないこともある。同様にフィールドを利用することで特定の攻撃属性から全くダメージを受けなくすることもできる。
また惑星着陸時は、ここから出撃をする。戦艦への帰還時もハンガーが到着先となる。
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惑星での行動
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惑星内はいわゆるフィールド型RPGの要領で行動する。
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街や集落では住民から情報を得ることができる。シナリオ進行において重要な情報を持つ住民は、その場を動かず微動だにしない場合がほとんどである。
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「どんな有害物質や病原菌があるか判らない」と言う理由で、主人公達は街中でもモジュール姿である。まぁメタ的には容量節約が理由だろうが(ソードフィッシュ内はテキスト表示)。
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屋外フィールドでは、ランダムエンカウントによる敵との戦闘が発生する。重要アイテムの探索、ダンジョンへの移動が主目的となる。
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ダンジョンでは、屋外フィールド同様に敵との戦闘が発生する場合が多い。重要アイテムの探索のほか、敵ボスの殱滅などが主目的となる。目的を果たすと「ミッション完了」のメッセージが表示され、自動的にダンジョンの外に出ることもある。
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メニュー画面では、キットを使用しての戦闘員の治療やモジュールの修理が出来る。キットは治療用・修理用それぞれ最大10個まで持つことができる。
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敵との戦闘
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戦闘時は6×6マスの戦闘フィールド画面へと移行する。戦闘はコマンド選択型のターン制となっており、味方の初期配置は戦艦内のラウンジでの選択順によって固定されている。
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ターンの最初に「戦闘」と「逃亡」が選択可能。逃亡に失敗すると、そのターンは敵のみが行動可能となる。
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3人の味方は、それぞれフィールド内の移動設定をした後、「攻撃」「オプション」「防御」「装備」の各コマンドを選択する。
「攻撃」は弾数制限なしの通常攻撃。「オプション」は弾数制限のあるオプションによる攻撃。所持数内であれば、複数個を同時に使用することで、敵に個数分のダメージを与えることもできる。「装備」はさらに「武器」と「フィールド」が選択でき、「武器」では使用武器の変更が可能。「フィールド」では戦闘終了まで有効な防御アイテムを使用する。武器変更以外のコマンドは1ターンを消費する。
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移動範囲はモジュールの性能により変化する。基本的に装甲値の低いモジュールほど移動範囲は広い。
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攻撃には近距離攻撃と遠距離攻撃がある。
縦・横もしくは斜めに敵が隣接すると強制的に近距離攻撃となる。この場合、コマンド選択時に攻撃目標を遠距離の敵にしていたり、遠距離型の武器やオプションを使おうとしていたりすると、そのターンは攻撃不可となる。
逆に敵との間に距離があると強制的に遠距離攻撃となり、コマンド選択時に攻撃対象を隣接する敵にしていたり、近距離型の武器しか装備していない場合はそのターンが攻撃不可となる。
また複数の味方が同じ敵を攻撃目標として、先に敵を倒してしまった場合、後から攻撃する味方はそのターンが攻撃不可となる。
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敵にも同じことが言える。近距離攻撃しかできない敵は、距離を離すことで攻撃不可となり、逆に遠距離攻撃しかできない敵は、隣接することで攻撃ができなくなる。
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移動順および攻撃順は、各キャラクターの素早さに応じて決まる。なおモジュールによる素早さの影響はない。
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戦闘員には「LP(ライフポイント)」が、モジュールには「EP(エネルギーポイント)」がそれぞれ設定されており、敵からの攻撃によって各ポイントが減少する。
LPが0になると戦闘員は死亡し、戦艦のメディカルで治療するまで行動不能となる。EPが0になるとモジュールが破壊され行動不能となるが、戦闘終了後にリペアキットを使用することで修復が可能となっている。
戦闘中に味方全員のLPもしくはEPが0になるとゲームオーバーとなり、タイトル画面へと戻される。
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前述のとおり、各装備品には、5つの属性が存在しており、敵の防御属性によっては、まったくダメージを与えられない場合もある。戦闘中に戦艦の人工知能から、敵の防御属性情報が送られてくるため、これを参考にした上で武器の装備変更を行うこともある。
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敵をすべて倒すと戦闘終了となる。各戦闘員は経験値を獲得し、一定量で各スキルがレベルアップする。また、敵の残骸から「トレジャー」を発見することがある。トレジャーは前述の戦艦のラボにて、新武器の開発やモジュールの性能強化に使用する。
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成長要素
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戦闘員には「コンバット」「メカニック」「サイエンス」「メディック」の各種スキルが設定されており、経験値を貯めることで、各種スキルランクがアップする。
「コンバット」は通常戦闘能力、「メカニック」はモジュールの修理能力、「サイエンス」は敵残骸からのトレジャーの発見能力、「メディック」は戦闘員の治療能力にそれぞれ反映される。
すべてのスキルを持つのは主人公のみで、他の戦闘員はそれぞれのクラス(職業)に応じて高く成長するスキルもあれば、まったく成長しないスキルもある。
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経験値は敵との戦闘以外に、フィールド上での治療や修理、トレジャーの発見、ミッションを完了しての戦艦への帰還時にも獲得できる。特にミッション完了時の経験値は敵との戦闘よりも遥かに高い経験値を獲得できる。
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このあたりは、テーブルトークRPGを得意とする製作陣ならではの手法といえる。
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主要キャラ紹介
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苗字は小説版で追加されたもの。小説版では他にも名前付きのクルーが登場している。
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主人公(ネームエントリー可能):コマンダー
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戦艦ソードフィッシュ戦闘指揮官。キャプテン(船長)の死亡・再生不可により、キャプテン代理となる。ゲーム開始時にパロメーターを振り分けることで、独自の性能となる。すべてのスキルを満遍なく覚えることができる。パーティーから外すことはできない。
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クレイン・キューバート:ソルジャー
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血気盛んな男性。戦闘能力の中でも、体力に長けていて重量級のモジュールも装着可能。コンバットスキルは高く伸びるが、サイエンススキルとメディックスキルは成長しない。
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キリ・ザンジヌ:ソルジャー
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短髪で褐色の女性。戦闘能力の中でも、素早さに長けている。スキルの成長値はクレインと同じである。
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シャイン・リー:サイエンティスト
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理系で爽やかな優男。戦闘能力は低い。サイエンススキルは高く伸びるが、メカニックスキルとメディックスキルは成長しない。シナリオ上、理系の知識を活かすためにパーティーに組み入れなければならない場面がある。
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ヴィンド・ベルク:メカニック
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サングラスをかけた大柄の男性。戦闘能力はそこそこ。メカニックスキルは高く伸びるが、サイエンススキルとメディックスキルは成長しない。シナリオ上、メカの知識を活かすためにパーティーに組み入れなければならない場面がある。
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二ジーナ・バリスコフ:ドクター
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知的で温和な女性。戦闘能力は低い。メディックスキルは高く伸びるが、メカニックスキルとサイエンススキルは成長しない。
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MICA
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ソードフッシュのメインコンピューターで女性人格のAI。敵である「バーサーカー」へのネーミングは彼女がおこなっている。『II』では本作以上に重要キャラ。
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モジュール紹介
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レックス
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各能力、装備品の最大所持数ともに平均的な万能型モジュール。インパクト、レーザー、ビーム系武器を装備できる。カタログ上の格闘能力は高くないが、移動力がそれなりにありレイブレードとの相性が良いため目立った欠点が無い。
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ウィナー
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基本能力はレックスとさほど変わらない汎用型だが、EPが低くオプションの最大所持数が少ない。インパクト、レーザー、ヒート系武器を装備できる。専売特許のヒート系武器は一部環境から悪影響を受けるが、防御手段が存在しないため敵は選ばないのが利点。
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シェリフ
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移動と回避に特化しており、EPと装甲は最も薄い。Lサイズのオプションを運用できるものの最大所持数はウィナー以上に少ない。インパクト武器のみ装備できる。被弾=即死に近い状況では回避能力が光る一方、汎用性は低い。
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タイタン
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装甲と防御に特化した射撃戦用の重量級。EPと装甲は高めだが移動と回避能力に劣る。武器とオプションの最大所持数が多く、装備可能な武器も豊富。インパクト、レーザー、ビーム武器を装備できる。
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サウルス
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最高の格闘能力と装甲、EPを誇る格闘戦用重量級モジュール。スペシャル系格闘武器はゲーム中最強の破壊力を誇るが移動能力が低いため接近に苦労する。武器とオプションの最大所持数は少ない。インパクト、スペシャル系武器を装備できる(スペシャル武器の属性はインパクト扱い)。
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評価点
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他に類を見ない独特なシステム
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それまでのRPGと比較して、移動方法から戦闘方法、強化や成長に至るまで、非常に独特のシステムを搭載しており、それらがゲームそのものを破綻させることなくパッケージングされている。オリジナリティの高さという点で大いに評価できる。
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フィールド上の移動や、マス目を利用した戦闘システムは従来のRPGでも存在したが、近距離と遠距離の攻撃を使い分けたり、基本的な移動自体は戦艦でのコマンド選択で行なったりするなどのシステムを採り入れることで、独自性を高めている。
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特に恒星間を移動することにより、金銭的価値を無い物とする世界観であることから、武器やモジュールの強化を敵の部品から分析して開発するというシステムは、ドラクエライクなRPGに慣れ親しんだ当時のゲームプレイヤーからすれば、非常に斬新かつ世界観を損ねないシステムとして評価できる。
(「出撃して中身不明のトレジャーを拾い集めて帰還、拠点で中身を解析するとたまに強力武器や重要アイテムが出てくる」というシステムは『Wizardry』からの影響を感じさせるが、元ネタ同様のくじ引き感を醸し出しており、本作の熱中度をいっそう高めている)
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「規定の種類・数の素材を集めて消費することで武器やモジュール(キャラ)を強化できる」というシステムは今はごくありふれているが、この時代においてはMMORPGに特有のものと考えられており、ソロプレイRPGでの採用は先例が少なく新鮮であった。
素材集めの為に戦闘を繰り返す、今で言う「トレハンゲー」の先駆者であると言っても過言ではないだろう。
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実績に裏付けされた世界観の構築
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数々のテーブルトークRPGを手掛けてきたグループSNEの面々が携わっているだけあって、ゲーム内の世界観や「モジュール」などの高度な技術、各惑星の文明などの設定がしっかりと構築されており完成度が高い。
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戦艦の人工知能である「MICA」から発信される各種の情報や、戦闘員をはじめとしたクルーたちの会話には、「モノポール・コイル」や「ジャンプ・ドライブ」といったオリジナルの設定が備わった用語や、「クローン」や「ジェネレーター」などのSFならではの高度な技術様式を踏まえた内容が散見され、ゲームの雰囲気作りに効果を発揮している。
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「モジュール」の魅力
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5名の戦闘員キャラクターは、それぞれタイプの異なる「モジュール」(いわゆるパワードスーツ)を装着して出撃する。
これには複数箇所の武装取り付けポイントがあり、入手した武装を自分で装備してカスタマイズしていく楽しさがある。
武装には格闘、射撃の大別の他、インパクト(マシンガンなどの実弾武器)、レーザー、ヒート(火炎放射等)といった属性があり、敵によって有効な武器は異なる。またモジュールごとに装備可能な武器にも差異があるので、武装カスタマイズとパーティ編成を工夫しなくてはならない。これが非常に楽しく、熱中している間にけっこうな時間が過ぎてしまう。
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モジュールのデザインも、先述の通り全盛期の大河原邦男氏が手掛けており、とてもかっこいい(等身大らしさに乏しく巨大ロボットに見えてしまう機体が多いのはご愛嬌だが)。
ゲーム内の戦闘シーンでも、簡易ではあるがアニメーションで交戦の様子が描かれ、モジュールの個性と魅力が表現されている。
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レベルアップ作業が簡易的
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戦闘員のレベルアップ要素は「ミッションの完了」が大半と言うグループSNE作品らしいTRPG的バランスなので、一般的なCRPGにありがちな敵を倒してレベルを上げる「作業」がシステム上ほぼ存在しない。
モジュールや装備品の強化も、お金を貯めて購入するわけではなく、せいぜい目的の敵を倒してトレジャーを発見するという範疇に収まっている(発見率もそれなりに高い)ので、ダラダラとプレイ時間を浪費することなく、ストーリー進行に注力できる点は評価できる。
(先述の通り「トレハンゲー」の先駆的な作品ではあるが、重要アイテムや強力武器のドロップ率は高めに設定されており、要求プレイ時間は現代のトレハンゲーよりもかなり控えめである)
賛否両論点
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敵を倒した時のダメージ表示
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一般的なRPGでは、敵を倒す際のダメージ量は、通常のダメージ量とほぼ同じ量だが、本作では、敵を倒した際のダメージ量は、その時点の敵の残り体力値が反映される。
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敵の正確な体力値が判るのはいいのだが、一定量のダメージを与えた後に、武器を変更して敵を倒してしまうと、その武器が敵に対して有効なのかどうかが不明瞭になるという点においてはデメリットともいえる。
問題点
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やや大味な戦闘バランス
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序盤は味方のコンバットスキルが低いため、敵への命中率が低く攻撃が当たりにくい。ただし、敵側の命中率もさほど高くないため、お互いに攻撃が当たらないままターン消費されるという状況になりがちである。
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ゲームが終盤に差しかかってくると、今度はコンバットスキルが上がっているために回避率が高くなり、敵からの攻撃はかなりの確率で回避もしくはダメージ無しという傾向にある。
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ある意味これもTRPG的バランスといえる。
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オプションの威力が非常に強く、複数弾を同時に使用すれば、敵ボスであっても一撃で倒すことが出来てしまう。弾数には制限があり、敵との近接状態では使用できないという条件はあるものの、戦闘バランスとしてはかなり偏ってしまっている。
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オプションは敵にも使用するキャラがおり、命中率は低いもののほぼ一撃で味方がやられてしまうという状況もしばしばある。ダンジョンからの脱出手段がないため、ダンジョンの深い場所での一撃死はプレイする上でかなり厳しい。
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途中のイベントで入手するスペシャル武器が非常に強力で、通常の敵であればインパクト耐性がない限りほぼ一撃で倒せてしまう(耐性があるとダメージ0)というバランスブレイカーである。
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システムで説明したとおり、ターン中に予期せぬ形で攻撃不可となる条件がいくつかあるため、慣れないうちはなかなか攻撃自体ができないことがあり、やや敷居が高く感じられる。
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上記のように全体的に戦闘バランスのチューニングが甘く、せっかくの独特な戦闘システムを活かしきれていないため、大味な展開になりがちである。
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惑星の探索が不便
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住民の情報で、目的地の名称を惑星の固有名詞で呼ぶ場合があるのだが、戦艦での惑星移動時の表記がすべて「恒星名・第○惑星」となっているため、いちいち恒星・惑星を移動して調査を繰り返した上で、目的の惑星を探し出さなくてはいけないのが不便である。
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ストーリーの進行上、一度訪れた惑星に再度訪れる機会も多いが、その都度「恒星名・第○惑星」という表記となるため、惑星名と恒星名・数値をきちんと紐づけた上で記憶するかメモを取っておかないと、いくつもある恒星間を虱潰しに探索しなければならなくなる。
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また、重要な情報をくれる住民のセリフが一度しか聞けない場合も多く(次に話しかけると別のセリフに切り替わってしまう)、情報をしっかり覚えておかないと次なる目的地が分からなくなり、やはり恒星間を虱潰しに探索しなくてはならなくなってしまう。
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せっかくの独自性の高い移動システムが、シナリオとの不一致により、不便を来してしまっているのは大きな問題点といえる。
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登場人物の個性が凡庸
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戦闘員のほか、戦艦内の各クルーにはそれぞれ独自のキャラクター設定がされているが、ゲーム内においてはそれらの設定がさほど活かしきれておらず、凡庸なキャラクターに納まってしまっているのが惜しい。
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戦闘員が固有のセリフを話す際に、戦艦のラウンジで表示される顔イラストが表示されるとか、戦艦内の各ブースのクルーに独特のセリフ回しをつけるとか、やりようは色々あったかと思うが……。
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世界観やSFの設定自体は申し分ない上に、小説では各キャラクターの掘り下げも出来ている。それだけに、ゲーム内で主要な登場人物の個性が活かされておらず、作品そのものが地味な印象となってしまっているのは、たいへん残念な要素である。
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各惑星の住民の中には、商売を生業として関西弁を話すエイリアンや、文明が拓かれていない原始人、歌を歌うクジラの民族、九州弁を話す血気盛んなレジスタンス、シリコン生命体など、それなりに個性豊かな面々も存在する。
総評
従来のドラクエライクなRPGとは全く異なる独自性の高い様々なシステムが、ゲーム内にうまくパッケージングされてはいるが、ゲーム全体のバランスや情報の収集要素がかなり荒削りなため、せっかくの独自のシステムを活かしきれていない。
せめて主要な登場人物に、より内面的な個性が演出されていれば際立つ面もあったのだが、キャラクター性も凡庸なものに終始しており、もう一歩で名作と呼べる誠に惜しい作品である。
SFの世界観に抵抗がなく、一風変わったRPGをプレイしてみたいという方にはおすすめである。
移植・その他の展開
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1992年にSFCに移植されている。
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1994年には同じくSFCにて『サイバーナイトII 地球帝国の逆襲』がリリースされている。前作同様にグループSNEが製作に携わっている。
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一方で元祖のはずのPCエンジンで『II』が発売されることは最後までなかった。
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ゲームのリリース前後には、シナリオ担当の山本弘氏による、本編の前日譚といえる内容の小説が『マル勝PCエンジン』誌上にて連載された。後に角川スニーカー文庫より『サイバーナイト 戦士たちの肖像』として書籍化されている。
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その後、ゲーム本編の内容を綴った小説が、前作同様に山本氏の執筆にて角川スニーカー文庫より上下巻で刊行された。また『II』の小説版も山本氏によって書かれ出版されている。
最終更新:2020年12月23日 11:00