本稿は同人ゲームが原作のゲームを扱っています。
本Wikiは同人ゲームの執筆が認められていないため、3DS版について記載しています。



ファタモルガーナの館

【ふぁたもるがーなのやかた】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 ニンテンドー3DS
メディア ダウンロード専売
発売元 フリュー
開発元 Novectacle
発売日 2016年7月27日
定価 950円
レーティング CERO:D(17歳以上対象)
判定 良作
ポイント 呪われた館の悲劇と魂の救済

「その館に住む者は、必ず不幸になる」


概要

  • 『ファタモルガーナの館』は同人サークル「Novectacle」から2012年12月31日に発売されたWindows用同人ソフト。
    • 2016年7月27日にフリューよりニンテンドー3DS版が配信された。このページでは3DS版を基準として紹介する。
    • インディーズADVシリーズ「カタルヒト」の一作でもある。

システム

  • オーソドックスなノベルタイプADV。
    • 記憶を失った「あなた」が謎めいた「館の女中」に昔話を語られ、呪われた館の謎の真相に迫るのが大筋の物語。全八章構成。前半はオムニバス形式で物語が進んでいく。
    • 選択肢によってアイテムを入手したり、正規ルートに行ける。
    • 本編にはボイスはついていない。

ストーリー

「その館に住む者は、必ず不幸になる」

呪われた館で目覚めた「あなた」は、自分自身を失っていた。記憶はおろか、生きているのかどうかも分からない。

そんな「あなた」を、館の主だと告げて慕う女中がいる。彼女に導かれて、館の様々な時代で起きた悲劇を「あなた」は目撃していく。

なぜ館は存在し続けるのか。なぜ「あなた」は館にいるのか。すべてを解き明かすために、「あなた」は扉を開く。

これは、人の業と、絶望と、狂気の物語だ。

※公式サイトより引用


特徴・評価点

呪われた館の繰り返される悲劇と非常に綿密なシナリオ
  • 館の女中」が語る「呪われた館の住人について過去の話」と「記憶を失った『あなた』の今の話」が交差して語られる。
  • 過去の住人達の話は必ず名前が不明な「白い髪の娘」と「館の女中」が登場して、甘く切ない恋愛劇から、悲劇的な結末となる。その為この館は「魔女モルガナ」によって呪われていると人々に語られる。
  • 過去の住人達はどうして悲劇的な末路を辿るのか? 何故、この館は呪われているのか? 断片的に語られた内容が伏線となり、呪いの原因となった一つの過去へと繋がっている。そこで判明する登場人物達の絶望にプレイヤーの多くはドン底まで落とされ欝となる。だが、そこから立ち直り、這い上がる描写は非常に丁寧。
  • 最終的に伏線を回収して、館の呪いと運命から解放される描写がプレイヤーの心を爽快なエンディングへと昇華させている。
館の真相と二転三転する構成力
  • 元凶となる過去編は想像以上の悲劇と陰湿な物語が用意されており、真相や伏線も何重にも張られており、濃いシナリオへと昇華させている。とあるキャラクターの嫌いな食べ物は白人参という何気無い物まで伏線なのは驚愕である。
  • 内容は濃いが吸引力のあるシナリオでぐいぐいと引っ張り、作品の魅力で飽きさせない。巧みなシナリオ構成はプレイヤーを満足させてくれる。
  • 推理小説のような巧みな叙述トリックも隠されており、プレイヤーを驚かせてくれる。
キャラクター&イラスト
  • 写実的でかなり独特。一般的なアニメ調とは一線を画すキャラクターデザインである。
  • このデザインが一瞬童話や絵画の世界を思わせ、中世ヨーロッパの独特な世界観とマッチしている。
  • 背景も独特であり抽象画のような不安定な絵がバックに表示される。
  • 余談だが女性キャラクターに巨乳が多く、イラストレーターもネタにしている。
世界観
  • 11世紀の中世ヨーロッパの暗黒時代と比較的豊かになっていった15世紀~17世紀近世ヨーロッパが舞台である。
  • 特に中世ヨーロッパ編では貧困にあえぐ民衆・家系や規律に縛られた貴族・余所者を虐げる村社会・盲信的な宗教観・迷信に暴走する者……目を背けたくなる中世の暗黒期の過酷な生活が丁寧に描写されている。
演出
  • ある章では魔女モルガナはバックログで本編には無い言葉を語る。■■■で読めなくなるなどADVの特性を活かした演出がある。
BGM
  • 一章では童話調のBGMが流れ、二章ではサスペンス調のBGM、三章ではジャズ風のBGMとそれぞれの時代や背景、キャラに沿ったBGMで物語の相性と抜群。
  • 四章以降は賛美歌のような宗教的かつ神秘的なテーマソングでこれまた、中世ヨーロッパ的なBGMになっており評価が高い。特にEDは評価が高い。

賛否両論点

残酷で悲惨なシーンが多い
  • 中世ヨーロッパの魔女狩りや村社会から起こる余所者の迫害・奴隷への虐待・迷信から起こる拷問や陵辱といった残酷で悲惨なシーンが非常に長時間続く。グロ描写や欝描写がこれでもかと出てくる。
  • シナリオ上必要なシーンであり、こういったシーンが多いからこそ、悲惨な呪いから解き放つ開放感は強い。
ボリュームが多い
  • ボリュームが多いのは良いことだが、上記の通り陰湿で悲惨なシーンが多く気が滅入る。
    • また、一つの事件を別の人物から見て、今度はその当事者からその事件について聞くという構成。人によっては同じような話を何度も読むのが億劫という声も。
時折挟まれるポップな会話
  • 真面目なキャラ・悲惨な過去を持つキャラの会話中に、面白い雑談や冗談が挟まれる。また、「スルー」や「イケメン」などの現代語がどんどん出てくる。
  • 本編の良い塩梅となる一方で、中世ヨーロッパの会話としては違和感を覚える。後日談の現代編での会話と変わらないという声も。

問題点

+ ネタバレ
  • エメ
    • ミシェルの兄の嫁であるが、登場人物の中でも一番の腹黒で、悪人。
    • にもかからわらず、彼女の罪に何もお咎めがないので、プレイヤーからはすっきりしないという意見も多い。

総評

  • 中世ヨーロッパの館を舞台にした、ADVサスペンス。呪いと運命からなる館の悲惨な物語からのどんでん返しと魂の救済のストーリー。
  • 目を背けたくなる悲惨な描写が長く続き、プレイヤーの心をえぐるいわゆる欝ゲー。だが、呪いから解き放たれた魂の救済は、プレイヤーをこの上ない感動へと導いてくれる。丁寧に作られた伏線と綿密な構成は、良質な秀作と言っても差し支えない。

ファタモルガーナの館 -COLLECTED EDITION-

ファタモルガーナの館 -DREAMS OF THE REVENANTS EDITION-

【ふぁたもるがーなのやかた これくてっどえでぃしょん】 【ふぁたもるがーなのやかた どりーむずおぶざればなんつえでぃしょん】

ジャンル 悲劇と絶望の西洋浪漫サスペンスホラーノベル

対応機種 プレイステーション・ヴィータ
プレイステーション4
発売元 dramatic create
開発元 Novectacle
発売日 【PSV】2017年3月16日
【PS4】2019年10月24日
定価 【PSV/PS4パッケージ】6,980円
【PSV DL】5,900円
【PS4 DL】6,400円
レーティング CERO:D(17歳以上対象)
判定 良作

概要(PSV/PS4)

  • 本編『ファタモルガーナの館』+ファンディスク『ファタモルガーナの館 -AnotherEpisodes-』+新規アフターストーリー『現代編』のセット版。
    • 『ファタモルガーナの館 -AnotherEpisodes-』は同人ソフトとして2015年8月31日に発売されていた公式ファンディスクである。

特徴

  • ファンディスクはオムニバス形式
    • 「Requiem for The Innocence」は奴隷の青年と聖女の過去。
    • 「アセントデリ」は本編で示唆されていた人物のエピソード。
    • 「After Happy End」はタイトル通りハッピーエンドの後日談。
    • 「Fragment」は本編で人気のあったモルガーナとヤコボの誓いのエピソード。
  • 現代編はコンシューマー版限定の新規要素
    • ハッピーエンドの続きが描かれる。

「Requiem for The Innocence」

聖女と呼ばれた少女モルガナと成り上がりを夢見る貧しい青年ヤコポ
二人は不幸な生い立ちから、出会い、愛を育んでいく…。
だが、運命の因果は不幸へと続く…。

「現代編」ストーリー

前世の業から解放された登場人物達の現代の話。
運命の因果か、再び出会う前世からの登場人物達に降りかかる不幸の影。彼らは本当に呪いから解放されたのか……?


評価点(PSV/PS4)

  • 補完ストーリー
    • 本編で示唆されていた部分の補完や既存キャラのバックボーンの掘り下げにより、本編への理解が深まる内容となっている。
    • キャラクター人気もあったシリーズのため、別の側面が見られるのもファンには嬉しい要素。
    • 本編では少なかった糖分強めのエピソードもある。

賛否両論点(PSV/PS4)

  • ボイスの追加
    • 現代編から声優が付いた。が、配役については賛否両輪になりがちである。

問題点(PSV/PS4)

「Requiem for The Innocence」

  • 『Requiem for The Innocence』『Fragment』は本編と内容が被っており、せいぜい内面描写が増えた程度である。
    • また『現代編』とも被っている。
  • 物語の流れが少々ご都合主義。
+ ネタバレ
  • 奴隷のヤコボは革命前に領主を襲撃する。その後は顔が割れているのに3年以上捕縛されないばかりか、指名手配にもなっていない。
  • ヤコボは革命成功後に革命に貢献したグラシアンや仲間には何も報酬や地位を与えない。その後に貧民街の人間やグラシアンから不満を言われ、暗殺されかかるが、当然と言えば当然である。

『現代編』

  • 『現代編』のイラストの変更
    • イラストが写実的なキャラデザではなく、アニメ調のイラストに変更されている。特徴的なキャラデザインから、有象無象のデザインに変更されてしまった。と嘆く人も多い。
    • また、独特なキャラデザのまま立ち絵が描き下ろされた後日談「After Happy End」もあるだけに、余計に違和感が増す。
  • 本編はボイスがなく、現代編からいきなりボイスが追加されるので、今までプレイしていたユーザーにとって唐突感が強い。
  • ジョルジュとディディエの未登場
    • 現代編では重要な二人の兄が、登場していない。前世の因果で感動的な結末を決めたのにもかかわらずこの対応に疑問符がつく。

総評(PSV/PS4)

本編に加え、外伝と「現代編」が追加された。こちらの購入をお勧めする。


余談

  • FLASHゲーム時代には同じくFLASHゲームである「薔薇と椿」とのコラボ「薔薇と椿とファタモルガーナ」も配信されていた。
    • 現在では「薔薇と椿」のサイト側では遊べなくなっており、そちらのswitch移植版でも版権の都合か未収録となっているが、代わりにNovectのBoothから購入できる。
  • Novectacleの公式サイトでは本作関連のノベルゲームやショートストーリー等が公開されている。
    • 『ファタモルガーナの館』と同じキャラクターを使ったスピンオフゲーム『霧上のエラスムス』『セブンスコート』などは無料配信されているため、パソコンを持っているならプレイしてみても良いだろう。
    • 『セブンスコート』は2023年2月9日にNintendo Switchでもダウンロード専売で配信された。
  • Steamでも配信されている。
  • 2021年3月25日にSwitch版が発売された。PSV/PS4版と同様に外伝と現代編も収録されている。
最終更新:2024年08月24日 14:41