Iconoclasts

【あいこのくらすつ】

ジャンル 探索型2Dアクション
対応機種 PlayStation Vita
PlayStation4
Windows/macOS/Linux(Steam)
Nintendo Switch
Xbox One
発売元 DANGEN ENTERTAINMENT
開発元 Joakim Sandberg
発売日 【Win/Mac/Linux/PS4】2018年1月23日
【Switch】2018年8月2日
【One】2020年1月23日
定価 【PS4/Switch/One】2,200円
【Win/Mac/Linux】2,000円
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント 良好な操作性のメトロイドヴァニア
コミカルでありつつ骨太なシナリオ展開

概要とあらすじ

  • スウェーデンの開発者、ヨアキム・サンドバーグ氏ただ1人によって7年の歳月をかけて作られた力作アクションゲーム。
  • 舞台は資源の枯渇しかけているとある星。人々は「マザー」により生活資源「アイボリー」を配給され、その支配と圧政下の中で暮らしていた。
    • 人助けをしたいと願う少女・ロビンは、無資格のメカニックとして密かにレンチを振るい人々の暮らしを支えていたが、彼女を罰則の対象としたマザーの実行組織「ワン・コンサーン」によって家族や周囲の親しい人たちに危害が及んでいく。
    • ワン・コンサーンに捕まったロビンは、海賊の民と呼ばれる少女・ミナや、マザーに属しながらつまはじき者となっている能力者・ロイヤルとの出会いを経て、徐々に自身の周囲やアイボリー争いに留まらない巨大な事件の気配を感じていく。
    • 果たして無資格メカニックはスタンガンとレンチを手に、星をまるごと巻き込んだ危機から世界を救えるだろうか?

特徴

  • 全マップが地続きに繋がったメトロイドヴァニア式システム
    • マザー支配下の人々が住む「ブロックロック」や海を越えた砂漠地帯「シャード・ウェイストランド」などエリアは、マップ表示こそ独立しているものの、ストーリーの都合の無い限り地続きで巡ることができる。
    • 探索を進めるごとにロビンの武器やレンチ性能が拡張されていき、それによって進行不可能だった場所を突破していく。
  • 3種類の武器
    • スタンガン:初期武器。画面半分ほどの短い射程しかないが、連射が効くため最後までメイン武器となる。
      • 溜め攻撃も放つことができるが、発射後は全く攻撃不能となるクールタイムを要する。
    • ローラーボム:球状のボムを発射する銃。ボムは射出後すぐに地面に落ち、一定秒数後に爆発する。
      • 一度に2個までしか撃つことはできない。溜め攻撃は小型ミサイルを水平方向に発射する。
      • 特に序盤から中盤にかけて仕掛けの起動に多用する。
    • ユザーパーショット:棒状のレーザーを射出する。
      • 攻撃力が高く硬い敵にも効きやすいが、通常ショットですら回数制限があり、何発か撃つとクールタイムを要する。
      • 溜め攻撃を敵や特定オブジェクトに当てると、当たった対象とロビンの位置が入れ替わる。これによって通常では到達できない場所にワープしたり、道を塞ぐ厄介な敵の後ろに回ったりできる。
  • レンチの拡張
    • 初期状態で行えるのは「マップ上のボルトを回す」「その場でレンチを回転させる」「敵を殴る」の3種。
      • ボルトを回すのは主に仕掛けを起動させるためとなるが、それだけではなく空中をボルトを掴みながら飛び伝っていくアスレチックゾーンもある。
    • ストーリーを進めると帯電することが可能となる。マップ上に配置された電磁レールで自動移動できるほか、更に進めると前述のボムにも帯電できるようになり、謎解きに関わってくる。
    • レンチをその場で回転させることで、歯車を作動できるほか、敵が飛ばしてきた一部の弾を跳ね返すことができる。特に後者は終盤でも必要になるテクニック。
    • 敵を直接殴った際の攻撃力はなかなかバカにならない。超近距離攻撃のため狙ってやるものでもないが、知っておくとピンチを切り抜けられる場面も。
      • また、レンチで殴るとひるんで行動停止する敵がいる。
  • クラフトによるロビンの能力強化
    • 道中拾える素材を消費して、ロビン用の強化パーツをクラフトできるようになる。
    • 1回だけダメージを無効化してくれる「アイアンハート」、水中での息継ぎ時間が長くなる「ロングブレス」、移動速度を増加する「ランニングアップ」あたりがスタメンになりやすい。
    • クラフトしたパーツはセーブポイントで付け替えできる。一度に装着できるのは3個まで。
    • パーツは敵からダメージを受けると1つずつ無効になるが、敵の撃破などで得られるアイボリーを一定量溜めると復活する。

評価点

  • コミカルで生き生きとしたアニメーション
    • 2Dキャラクターのモーションはこだわり抜かれた出来。特に主人公のロビンは操作時の走る姿からして可愛らしく、しゃがみ移動の愛らしさや、踏みつけ攻撃時のカッコつけた着地ポーズなど、動かしているだけで楽しくなる。
      • 他にもボスと対峙した時の得意げに胸を張るポーズ、ボス戦時の格闘のような構えなど、一体何パターンのドットが描かれたのか恐ろしくなる程。
    • イベント時は他キャラの力のいれようもかなりのもの。ワン・コンサーンのエージェント・ホワイトのオーバーアクションは敵キャラながら笑いを誘うし、銀髪イケメンなのに妙に三枚目的なロイヤルの驚きポーズはゲーム中何度か見ることも含め印象に残りやすい。
      • ボス戦時にNPCが居合わせることもあり、しゃがんだりジャンプしたりと豊富なアクションを披露してくれるが、よく見るとボスの攻撃を避けるためのヒントになっていることがある。
    • 雑魚キャラの動きも凝っている。一部の敵はロビンを見失った際に「?」とフキダシを出してきょろきょろと辺りを見回す。ゴツめのアーマーを着た敵でこれをやられるとそのギャップが愛らしい。
      • ロビンに向かって突進し壁に激突して気絶する鹿など、ひとつひとつの敵キャラに意匠が見てとれる*1
    • 氷の通路をなぜか座ったまま滑って追いかけてくるミナ*2や、ボス戦での共闘中なのに超リラックスするロビンとミナ*3といったツッコミどころな一発ネタもしばしば含まれているなど、芸の細かい場面も多い。
  • 爽快な操作性
    • ロビンの操作性は良レスポンスであり、移動、ジャンプ、攻撃といった基本操作は快適。更にレンチ操作が複数のボタンに割り当てられているなど、かゆい所に手の届く良設計である。
    • ジャンプも飛距離長めで軌道にクセがないため、2Dアクションとしてストレスフリー。
    • 後半に登場する、レンチ操作、ジャンプ操作、攻撃操作をすべて駆使した仕掛けでは若干混乱するが、それでも基本操作が良いため順応しやすい。
  • 趣向の凝らされた各ボス戦
    • 20種以上存在するボス戦はシチュエーションや攻撃パターン、攻略方法のコンセプトが差別化されており、最終盤でもダレずに初見の驚きと上達の喜びを感じられる。
  • 複雑な人間模様を絡めた骨太なストーリーと、日本語ローカライズの質の高さ
    • 無資格メカニックとしてワン・コンサーンに目をつけられたロビンは、最終的に自身の住む星の危機に立ち向かっていく中で、民衆を教義で支配する「マザー」やその信奉者、或いは反発者と出会うことになる。それぞれには思惑があり、またそれゆえに野望や欺瞞など人間らしい嫌な一面を見せてくる。
    • 「マザー」とは別の宗教を持ち、冒険好きが昂じてロビンと共に危険に巻き込まれる少女・ミナ。ロビンに対して庇護すべき対象という以上の見方ができず事態をややこしくする兄・エルロ。ワン・コンサーンに属しながら自身が民衆の指導者となることを望む幹部・クローム……などなど、脇を固めるキャラクター達がいずれもバックボーンを持って物語を構成しており、アクションゲームながらシナリオも飽きさせない。
    • キャラごとに性格も大きく異なるうえ、「聖罰」のようなゲーム内専門用語や聖典の引用めいた言い回しを含みながら全く違和感やブレを感じさせない日本語訳も高ポイント。
  • ボリュームのあるやりこみ要素
    • ロビンのパワーアップ要素であるクラフトの素材やその設計図は、マップ上のあらゆるところにちりばめられている。クリアするうえで全て集める必要はないが、隠されたクラフトパーツには便利なものもあり、収集要素となっている。
      • それらのあるエリアはマップ上で印がつく。また、ごく一部意地悪な隠し方があるものの、多くは「よく見ると一部だけ草が生えていない」「不自然な位置にボルトがある」などヒントの提示がかなりフェアである。
    • クリアするとクラフトパーツ引継ぎ可能な「はじめから+」と、チャレンジモード、ボスラッシュが開放される。
      • チャレンジモードは難易度のひとつで一発死モード。「はじめから+」の恩恵こそ受けられるが、ほぼアイアンハート必須の鬼畜難度となる*4
    • ラストダンジョン突入直前に攻略可能なサブイベントがあり、達成によって新たなパーツのクラフトが可能となる。

賛否両論

  • 初見殺しの死に覚えゲーとしての側面
    • 前述の通り各ボスはいずれも個性的であり、ボスの攻撃手段どころか「ボスへのダメージの与え方」が全く異なる。
      • 「仲間が示すポイントにボスを誘導する」「居合に対してレンチを振り回して迎撃する」「ボムで仕掛けを動かし針山に落とす」「ユザーパーショットを使って乗り物から引きずり下ろす」……などなど身につけた各アクションを最大限活用することになる。
    • それゆえにエンディングまで飽きが来ないという良い面はあるが、あまりに違い過ぎるためボス戦ごとに「戦いながらルールを把握していく」作業が必要になり、初見では一方的に攻撃を食らう流れになりがち。
      • 中には「敵に見つからないよう隠れる方法を探す」「敵自体は動かず、攻撃手段を見切って適切なアクションでかわす」といったミニゲーム的バトルもあり、一層対応力を求められる。
    • 一方で人間ボスとの小細工なしの真剣勝負もあるが、こちらはボスがめちゃくちゃに素早く、各攻撃のごく短い予備動作を覚えないとやはり勝つことは難しい。
  • 考察しがいはあるが消化不良なシナリオ
    • 世界観が確立されている分、提示されていながらも真実までは明かされていない意味深な要素が多い。
    • 例えばNPC「地図を作る男」の目的や、ロイヤルがワン・コンサーン内で冷遇されている理由、ロビンの父親の死に関する詳細などは、表面的には触れられているがよく考えるとほぼ明らかになっていない。
    • 勿論「そこは謎のままでもいい」という捉え方もできる。
  • クセのある人物たち
    • 「骨太なストーリー」という評価点を支えるに不可欠な登場人物たちだが、かなり人間的な欠点が多い。
    • 特にロビンにとって仲間であるミナやエルロが最終盤まで自己中心的であり、ごく狭い親しい間柄以外の人物には口調、行動ともに排他的な態度を見せる。
    • それゆえにリアルであるという評価もできるが、エルロについては利己的な行動が作中様々な重要事件において間接的・直接的な原因になっているため、人によっては少々受け入れにくいかもしれない。
    • また、キャラクターが感情的に、攻撃的に叫ぶシーンも多い*5

問題点

  • ロビン以外の使いにくさ
    • 一部のシーンではミナやエルロを操作することになるが、ロビンと比較して操作性に難あり。
    • ミナは銃撃の後の硬直が長く、特に雑魚兵士の猛攻をかわしながら基地を通り抜けていく場面や、終盤の長いギミックエリアが難関になっている。
    • エルロについては状況的にかなり仕方ない面があるものの、異常に歩くのが遅く、それでいてボス戦があるため再プレイがストレスになりがち。
    • また、彼らのプレイ時はロビンのクラフトパーツは適用されない。当然といえば当然だが、これのためにチャレンジモード中のミナ・エルロパートは救済措置の一切無い、完全な一発死モードになってしまっている。
      • ミナパートを越えられるかがチャレンジモード達成の鍵と言っても過言ではない。
  • 好感度システムの解りにくさ
    • アクションゲームでは珍しく、NPC対象の好感度システムが存在している。
    • それ自体は良いのだが、この好感度がラスボス前哨戦の難度に直結している*6
      • 好感度は道中の会話パートにおける選択肢で変動するが、上がったかどうかその場では判らず、十分な好感度を得られたかはラスボス戦になるまでわからない*7
      • 更にほとんどの選択肢はスキップ可能なイベントに潜んでいるため、周回プレイ時ほど上げにくい。
  • シーケンスブレイクのしにくさ
    • メトロイドヴァニア的な構造で、2周目のクラフトパーツ持ち越しもある本作だが、シーケンスブレイクによるプレイ短縮の余地がかなり少ない。というより、無い。これは全マップの決められたルートを辿らないとシナリオが崩壊するためと思われる。
    • 例えばゲーム中に明示されていない隠しアクションとして、溜め攻撃をジャンプ中に下方向に放つと2段ジャンプ相当の高度に到達できるが、そうして突破できた先ではシナリオ上の必須イベントを完了しないと通れないようブロックされている。
      • 何もシーケンスブレイクがメトロイドヴァニアの必須事項というわけでもないのだが、「2周目」「アイテム引継ぎ」「ゲームクリア時にクリアタイム表示」とお膳立てをされた上だと勿体ないという印象になってしまう*8
    • 一応、様々なアクションを応用して一部の謎解きを短縮する(想定された仕掛けを動かさずに直接目的のアイテムの位置に行ける)、というケースはある。

総評

  • アクション面、シナリオ面ともに頭からラストまで推進力と新鮮な驚きを失わずのめりこめる2Dアクション作品。
    • 事件に次ぐ事件によるスラップスティック的展開ながらどんどんコトが大きくなっていき、やがて星の危機に立ち向かう様は多くのゲーム好きの心を沸き立たせるだろう。
      • 特にインディー2Dアクションに興味のあるプレイヤーには強くおすすめできる。
    • そして勿論、それを完成させた作者の情熱とこだわりにも驚かされる良作である。
    • シナリオだけ気になるという人も、難易度設定でリラックスモードがあるのでカジュアルにプレイが可能。腕に覚えのある人はハードモードやチャレンジモードでやり応えを体感してほしい。

余談

  • プレイ時間はノーマル難度の場合で初回 10~12 時間、アイテムコンプも目指すなら攻略情報なしで 15 時間前後。2回目以降で慣れれば 3~5 時間程度とそこそこのボリューム(一応ネタバレ防止につきクリア時間目安はドラッグで表示)。
    • 勿論どの程度アイテムを収集していくかによってやや変わる。
    • ちなみにエンディング後に一枚絵つきのリザルト画面となるが、短時間クリアをすると 脱ぎはしないが イラストが変化する*9 *10
最終更新:2024年06月13日 03:24

*1 更にこの鹿、なぜかエンディングでどのキャラクターよりも優遇されたいいシーンで出てくる。「なぜお前が!?」となること請け合い。

*2 ロビンがエージェントに追われる場面であり、もうすぐ画面端に到達する……という緊張の瞬間にとつぜんツーッと無表情で滑ってくるため不意打ちで笑わされがち。

*3 ロビンとミナを交互に切り替えつつボスに挑む緊迫した場面なのだが、一方の操作中、無操作側はなぜか他人事のように壁にもたれかかって休む専用ポーズを取る。

*4 しかも敵キャラの配置も増える

*5 ボイスの無い作品だが、セリフのフォントが4倍角になったり文字自体が震えたりと非常に感情の伝わりやすい演出がなされている。

*6 ラスボスが見せる幻影と思わしき影の集団と連戦することになり、NPC3名の好感度が影の攻撃頻度に影響する

*7 会話している相手に対し肯定的な態度を取るのが正解だが、攻略情報なしでそんな八方美人プレイをするかというと……

*8 RTAではバグ技を駆使することで必須イベントを飛ばすルートもあるのだが、マップやストーリーのつながりが滅茶苦茶になってしまっているため、やはり公式に想定はされていないようである。

*9 といってもロビンのイラストではない

*10 カスタムパーツコンプでもまた別のイラストに変化する