ハイドライドII

【はいどらいどつー】

ジャンル アクティブロールプレイングゲーム
写真はWindows版
1・2・3セット
対応機種 PC-8801
X1
FM-7
MZ-2000/2200/2500
MSX
Nintendo Switch
発売・開発元 T&E SOFT
(MZ版のみ開発はキャリーラボ)
発売日 【PC88】1985年12月13日
【X1/FM7】1986年2月
【MZ】1986年9月
【MSX】1986年11月
定価 FD版:6,800円
テープ版:4,800円
ROMカートリッジ版:6800円
配信 プロジェクトEGG
MSX:2003年1月31日/600円
PC88:2013年7月2日/400円
FM7:2015年9月29日/300円(全て税抜)
Switch:2024年4月18日/880円(税10%込)
判定 なし
備考 Switch版のタイトルは『EGGコンソール ハイドライド2 PC-8801』
ハイドライドシリーズ


概要

アクションRPG初期の名作『ハイドライド』の第2弾。シリーズで唯一家庭用ハードへ移植されていなかったためPCゲーマー以外にはマイナーな存在である。
タイトル画面では『SHINE OF DARKNESS』という本作のストーリー・システムを象徴するサブタイトルが用意されている。
前作から様々な新要素を取り入れて完成度を上げているが、謎解きの難しさやラスボスの倒し方などの方が話題となった。

ストーリー

勇者ジムが魔王バラリスを倒し、平和な時代が訪れたフェアリーランド。
しかし、地の底深くでは邪悪な「意識」が覚醒し、魔物たちを率いて地下帝国を作り上げていた。
修行僧たちは異変に気付き、人々に危機を説いたが、平和に慣れ切った人々には聞き入れてもらえなかった。
修行僧たちの願いに心打たれた神は、時空を捻じ曲げ人間たちの世界から清らかな心を持つ一人の男の子を選んだ…。


特徴

  • 基本的なシステムは前作を受け継いでおり、ATTACKとDEFENDの2つのモードを切り替えながら戦う体当たり戦闘や半キャラずらし、立ち止まるとHP自動回復など、基本は同じ。そこに新たなシステムを多数取り入れている。
  • キャラクターメイキング
    • 今作では決められた主人公は存在せず、ゲーム開始前にプレイヤーの分身となるキャラクターを作る必要がある。
    • キャラクターは名前を決めたあと、HP、STR、MAGICのステータスに30ポイントを好きに割り振ることで作成できる。作成後、わずかながらボーナスポイントが加算される。
    • レベルアップしても上昇するのは最大HPだけで、STRは寺院で金を払って修行しなければ上げられなくなった。
      • 修行は昔流行した電卓ゲームのボクシング風のアクションゲーム。勝利すれば続けて修行を続けられるが、途中で負けると1/4しか上昇できないため引き際も肝心。
      • MAGICは「魔導士の館」で金を引き換えに上げてもらえる。ただし、MAGICが高くなるほど必要な金額が増え、利用するたびに金額が変動する。
  • 装備品、回復アイテム、会話、買い物の概念の追加
    • 前作では取得したアイテムを自動的に装備したり使っていたが、今作では町にあるショップや宝箱から入手した武器防具を任意に装備する一般的なRPG形式になった。
    • 前作の回復アイテムは自動で使用される「不死の薬」だけだったが、今作では一般的な任意使用の回復アイテムが追加。これに伴い毒の状態異常が登場。
    • 地上世界ではNPCが歩き回っており、テンキーの0で「TALKモード」にした状態で体当たりすると会話出来るようになった。今作はこれで買い物したり情報収集することが重要になっている。
  • 魔法の登場
    • 今作最大の売りのひとつが魔法の実装で、レベルアップで習得し、MAGICを消費して使用する。
    • 攻撃魔法と補助魔法が存在し、攻撃魔法はATTACKモードで、補助魔法はDEFENDモードの時にファンクションキーを押すと該当する魔法が発動する。回復魔法など後述のマルチ・ウィンドウから使用できる魔法も存在する。
    • 特に重要なのが「SEARCH」の魔法で、周囲にある見えない宝箱や階段の場所が光る。本作ではそれらの多くが隠されているため様々な場所でSEARCHを使用しないと進められない。
    • なお、消費したMAGICは時間経過で回復し、HPと違って移動中も回復する。
  • 重要ステータス「FORTH」
    • 新たに実装されたステータスで、非常に重要なのがFORTH。他ゲームで言うところのカルマにあたり、悪の人間やモンスターを倒せば増加し、逆に善の人間やモンスターを倒すと減少する。
    • FORTHの値に応じて属性が「 JUSTICE 」「NORMAL」「 EVIL 」に変化し、会話内容やショップ利用可否に影響する。特に有用な情報はJUSTICEの状態でないと教えてもらえない。
    • プロジェクトEGGの商品紹介では「街での売買・自分の善悪を判断するFORCEの導入(一般市民を倒すと、下がる)」と紹介されており、パラメータ名は誤植だった可能性がある。
  • マルチ・ウィンドウ
    • リターンキーから開ける各種オプションメニューが追加された。
    • 魔法の使用やオプションをまとめた「CAMP」、アイテムの装備・使用・破棄ができる「ITEM DISPLAY」、ステータスの詳細が確認できる「STATUS DISPLAY」が用意されている。
      • セーブ/ロードもCAMPにまとめられている。

評価点

  • 前作から順調に進化を遂げたゲーム面
    • 前作の約6倍という広さのマップに地上と地下帝国という2つの世界を舞台にしたシナリオ展開は壮大さが増している。
      終盤には前作経験者にとって悪夢のような展開が待ち受けており、さらにラスボスの倒し方は様々な解釈を生み出す事となった。当時のアクションRPGとしては奥深い展開だったと言える。
    • システム面では装備品の売買・変更や魔法の要素が加わったことでRPG色が増している。
      ゲームを進めるために必要なアイテムを売っても「掘り出し物」として買い戻すことが出来るので、あえて重要アイテムを売って序盤の資金にしてしまうといった攻略も可能。
    • ゲームスピードを調整できるようになったので、特にPC88版などはスピードが速すぎるという問題も解消され、遊びやすくなった。
  • グラフィック
    • こちらも前作から順当に進化。特に主人公のグラフィックは装備品に応じて細かく変動するようになっており、臨場感のある作りになっている*1
      モンスターも墓の下から這い出てくるアニメーションが用意されていたり、背景もグラデーションが付けられて美麗になっている。
    • X1版やMSX版限定だがPCG書き換えにより川やマグマが流れるアニメーションも用意されるなど、着実に進化を感じさせてくれる。
  • BGM
    • PC88版は全機種対応のためFM音源に対応せず、前作同様ゲーム中はBGMが存在しない。タイトル画面などでBEEP音によるメロディーが流れるが、前作に比べて曲らしく聴こえるよう改善されている。このタイトル画面の曲は後に『ハイドライド・スペシャル』のBGMとして採用された。
    • X1版などでは前作よりも曲数が増え、FM7版では一部のみだがFM音源にも対応。
  • セーブ&ロード
    • MSX版はROMカートリッジにS-RAM(バッテリーバックアップ)を内蔵し、外部メディアを必要としないセーブ&ロードを実現した。

賛否両論点

  • 一部の高難度な謎解き
    • 前作にも増して謎解きの難度が上がっている本作だが、その中でも終盤となる地下4階のダンジョンとそこに隠されたレッドクリスタルの入手方法は屈指の難関。
      見えない階段や宝箱はSEARCHの魔法をくまなく使えば見つけられるし、地上の謎解きは前作同様に木や墓などに体当たりし続ければ何とかノーヒントでもいけるが、ここだけは完全ノーヒントの上、前作の知識だけでは絶対に解けないので異なる発想が必要になる。
      これは開発自体がかなり切迫していたらしく、開発者である内藤時浩氏いわく「時間がなかったため必要なヒントを入れ忘れた」との事。このため、後述するWin版の説明書には答えそのものが掲載されている。
  • 逆に言えば、ある程度のヒントがあれば攻略不可能というほど理不尽ではない。戦闘のバランス自体は前作からあまり変わっていないため、当時の雑誌に掲載された程度の攻略情報*2さえあれば問題なくクリア可能なゲームバランスではあった。

問題点

  • 会話が非常にやりにくい
    • NPCと会話するためには正面から話しかけなければならないというシステムになっており、横や背後からでは絶対に話しかけられない。
      ショップなどを除いてほとんどのNPCはランダムに歩き回っているので、普通に話しかけるのも一苦労。このせいで情報収集をやりにくくしてしまっている。
    • 一応、身動きできない場所に追い込んで正面を向くまで押し続けるという強引な方法があるが、「はまち!!!」*3などの特に意味のない台詞がランダムに出るので骨が折れる。
  • 魔法の使い勝手
    • 前述の通り本作では重要なものは見えないようになっているためSEARCHの魔法が重要になるが、消費がかなり高いので普通にプレイしているとこれと回復魔法一辺倒になりがちで攻撃魔法を使っている余裕がなくなってしまう。また、攻撃魔法はそもそもの威力が低いため、有用性が見いだせない場合は無用の長物と化してしまいやすい。
    • 本作の戦闘はHPが減ると補正が働いて耐久するようになっており、どんなに強化しても撃破に時間がかかるようになっているが、攻撃魔法はこの補正を無視できる特性があるので、トドメ専用として使えば有用ではある。…が、そんな事をしなくても2、3発追加で攻撃すればよいので、タイムアタックでもなければ使い勝手は悪く感じやすい。
  • ラスボスの倒し方に一捻り必要なのは前述の通りだが、撃破の演出やエンディングがあっさりしすぎていて何が起こったのか理解できないプレイヤーも見られた。
+ ネタバレ
  • その倒し方とは「ミスティックドラッグ」というアイテムで幽体化した主人公がラスボスの「エビルクリスタル」に重なり、そのまま薬の時間切れまで待つと突然周囲が爆発して勝利…というもの。この後は「あなたの名前は代々受け継がれていくでしょう」という文面が表示されて終わり。
    • 解説すると、エビルクリスタルは邪悪な「意思」そのもので物理的な攻撃・魔法を一切受け付けないのだが、清らかな心を持つ主人公が内部に入り込んだことで、その意思の力に耐えきれず砕け散った(主人公が内部で自爆したようなもの)ということらしい。
  • 公式で頒布されたヒントブックでこのあたりの設定も解説されていたのだが、このヒントブックは終了認定証と排他でしか入手できなかったため、全てのプレイヤーに説明が行き渡らなかったのも理解を妨げる要因だった。
    • PC88版では「FORTH」がJUSTICEの状態でなければ、この通りにやっても死亡してしまうため察することは可能だったが、他機種では「FORTH」の状態に関係なく倒せてしまい、余計理解を妨げる結果となってしまった*4

総評

前作から様々な要素が追加されたことでパワーアップを果たし、ゲームとしての面白さも増している。
しかし、前作経験者でも手こずる高難度の謎解きからクリアは容易ではなく、攻略情報を見ずにプレイした場合のバランスは正直言って悪い。
新システムも何かしら使い勝手が悪いため、全体的な出来は良作には今一歩及ばないのが実情であろう。
ただ、当時は『XANADU』から雑誌ランキング1位をもぎ取った事もあるなど、人気が高かったのは間違いなく、古き名作のひとつである事は間違いない。


余談

  • 他2作と違ってWindowsへの単独移植はされておらず、家庭用ハードでもプレイできなかった。
    • ハイドライド3 Gold Pack』のおまけとしてPC88版が収録されている。しかし、あくまでおまけのため、一応オーバードライブモードはあるが『1』『3』のようなアレンジモードは収録されなかった。
    • 後に発売された3作入りパッケージも内容は全く同じで一作だけアレンジモードがない。現在はこの3作入りパッケージもプロジェクトEGGで配信されている。
    • 2022年4月に発売されたプロジェクトEGGパッケージ『ザ・トリロジーズ -T&E SOFT / XTAL SOFT COLLECTION-』に1、3と共に収録された。
      • 特典PDFとして現在ではプレミアになっているヒントブック(公式解答本)も収録されており、前述の謎解きもしっかり掲載されている。
    • 2024年4月18日には、PC88版をベースとした『EGGコンソール ハイドライド2 PC-8801』がSwitchで発売。オリジナル発売から約40年弱経って初の家庭用ハード移植となる。
  • 本作の開発にはキャリーラボ製の『BASE-8』が使用されており、そのキャリーラボは前作同様にMZ-2000/2200/2500版の開発を手掛けた。
  • タイトル画面の音楽が某冒険映画風なのは、内藤氏がどういう曲がいいか聞かれた際に「イン〇ィーぽいので」と言ったらほぼそのままな曲が作られたとのこと。
  • 内藤氏本人は本作について「(会社命令で)やる気最低で作ったため、自分としては黒歴史で好きな人に申し訳ない」と語っている。参考
+ タグ編集
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  • ARPG
  • T&Eソフト
  • ハイドライド

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最終更新:2024年04月19日 15:27

*1 一部機種のカセットテープ版では割愛されている。

*2 終盤の敵が弱体化魔法を連発してくる場面があるが、とある武器を装備していれば無効化できるので問題にならないなど。

*3 当時のプレイヤーでも意味がわからない人が多かったが、当時発行されていた会誌T&EマガジンによればT&E SOFTのメンバーが会社に泊まり込みをする際に使用される通称「ハマチ部屋」の事だったらしい。

*4 機種によってプログラマーが異なるため、このようになったらしい。