A Dark Room
【あ だーく るーむ】
| ジャンル | アドベンチャー |  | 
| 対応機種 | Nintendo Switch | 
| 発売元 | CIRCLE Entertainment | 
| 開発元 | Scratchwork Development LLC. | 
| 発売日 | 2020 年 5月 7日 | 
| 定価 | ダウンロード版 700円(税込) | 
| プレイ人数 | 1~2人 | 
| レーティング | CERO A(全年齢対象) | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 絵が一切表示されないゲーム 終始不気味だが淡々と進行する雰囲気に惹き込まれる
 ゲーム内容はシンプルかつ単調ながら中毒性がある
 内容が内容なのでかなり人を選ぶ
 ホラーゲームではない
 | 
 
目が覚めた。頭痛がし、
視界はぼやけている。
声がした。生き残れ、と。
概要が扉を入ってすぐそこに待ち構えていた。
元は2013年にカナダのDoublespeak Gamesが手掛けた
PCブラウザ用(http://adarkroom.doublespeakgames.com/?lang=ja)及びiOS/Androidでリリースされた
テキストアドベンチャーゲームである『A Dark Room』のリメイク版。
大まかなシステムとしては「テーブルトークRPG」と呼ばれるテーブルゲームや対話型テキストアドベンチャーゲームの先駆けである『ZORK』に近い。
主人公が始めにいる「暗い部屋」を拠点として探索・戦闘を経て物資を集め、
設備や装備を充実させて活動範囲を広げていくことが大まかな目的となる。
彼女がこのゲームの遊び方を聞きたい、と言う。
大きく「拠点内での活動」と「拠点外での活動」の2つに分類される。
拠点での物資の管理
- 
始めは「火を焚く」ことと木材を収集することしかできないが、
 やがて部屋に現れる建築家を名乗る女性の提案で罠を作って毛皮や肉を手に入れたり、
 小屋を作って労働者を住まわせることで素材の入手や加工などを自動で進めることが可能になる。
 
- 
更には素材を交換できる交易所や、旅の道具や武器を制作する工房などの建設も可能になっていく。
 
 
- 
拠点ではランダムで突発イベントが発生する。
 
- 
獣の襲撃を受けて労働者が減る代わりに素材を獲得したり、
 「素材をくれれば増やして返す」という怪しい訪問者が現れたり、
 いくらかの素材と引き換えに技能を授けてくれる旅人など内容は様々。
 
- 
なお、後述する戦闘は拠点では発生しない。
 
 
- 
これらのコマンドやイベントを利用してより貴重な素材を増やし、
 上等な道具や装備を整えて探索の準備をすることが拠点内での活動内容となる。
 
- 
この間にも「火を焚く」コマンドは常に使用可能となっており、
 これを一定時間怠ると画面が暗くなっていく。
 
 
拠点外の探索
シナリオが進むと主人公は拠点の外を探索できるようになる。
- 
探索には水と保存肉が必要で、どちらかが無くなると手持ちの荷物を全て失い拠点に戻される(拠点にある素材は失われない)。
 
- 
マップ上を移動するとランダムで獣や浮浪者などに襲撃されることがあり、戦闘が発生する(後述)。
 
- 
戦闘に敗北した場合も、手持ちの荷物を全て失い拠点に戻される。
 
 
 
- 
探索にあたり拠点で準備した保存肉や道具や装備品を持ち出すことができるが
 それらには重量が設定されており(水と鎧のみ重量0で扱われる)、装備や消耗品を
 充実させればさせるほど空き容量が少なくなり、探索で獲得した素材や道具を持ち帰れる数が減ってしまう。
 
- 
この積載量は建築家に荷車などを作らせることで増加させることが可能。
 
 
- 
マップはマス目で区切られており、数マス先まで見通すことができる。
 
- 
マップ上には「H」「O」といった、家屋や集落、採掘場などを表す記号が点在しており、
 侵入することで素材を獲得できたり、戦闘になったりする。
 
- 
一部のマスは制圧が完了すると安全な中継基地になり、水と少量の保存肉を補給できるようになる。
このように中継基地を増やし、素材を獲得し、装備を充実させながら活動範囲を広げていく。
 
 
 
- 
マップ上の施設の配置はニューゲームを開始するたびに毎回異なるが、
 詰むことがないように全くのランダムではなくある程度の法則性に則って配置される。
 
戦闘
大まかに言えばファイナルファンタジーシリーズで多く用いられている「アクティブタイムバトル」に近いシステム。
- 
戦闘が始まると、主人公を表す「@」マークと、敵を表すアルファベットにそれぞれHPが数字で表示される。
 その下には使用可能な武器や道具が表示され、それらを選択すると同じアイテムはゲージが最大になるまで使用不可能となる。
 敵は一定時間おきに攻撃してくるため、手持ちのアクションを駆使して敵のHPを先に0にすることで勝利となる。
 マップ移動で消費する保存肉は戦闘中にも利用してHPを回復できる。
 保存肉にもクールタイムがあり、連打でゴリ押しできないようになっている。
 
- 
同じ武器を2本以上持っていても武器のゲージは1本しか表示されないが、
 別の武器を2種類以上持っていた場合はそれぞれゲージが1本ずつ表示されるため、手数が増える。
 しかし武器を増やすほど戦利品の積載量が減ってしまうため、どの程度武装して探索するかの駆け引きが必要になる。
 
- 
マップ上でのランダム戦闘では1戦のみで終了し戦闘後はHPが回復するが、
 施設での戦闘は連戦となることがあり、この場合は全ての戦闘が終了するまでHPが引き継がれる。
 
評価点があれば、よりゲームを楽しむことができる。
- 
どこか不気味で緊張感を煽る描写で淡々と進行する雰囲気
- 
ゲーム中にイラスト等は一切用いられておらず、
今どのような状況なのかは
 「貯蔵庫から引っかく音が聞こえる。何かが、いる。」など必要最低限の
 短い文章でのみ描写され、その多くはユーザーの想像力に委ねられる。
- 
BGMやSEも「ざわざわざわ…」といった環境音のようなものが多く、主人公の不安感をプレーヤーも体感させられる。
 
 
- 
駆け引きが求められるゲームバランス
- 
労働者は上手に分配しないと特定の素材だけが余っていったり、逆に枯渇したりする。
- 
拠点外探索の準備を万全にすると荷物が多くなり、戦利品をほとんど諦めなければならない。
 最低限の荷物しか持たずに出ると、今度は脱水や飢餓、戦闘不能でアイテムロストするリスクが高くなる。
- 
施設内での連戦では保存肉でHPを回復しなければHPが尽きてしまう可能性があるが、
 保存肉の数が残り少ないのに多用すると勝てても帰路で飢え死にするリスクがある。
- 
欲しい素材や装備を速く手に入れるために工房で手持ちの素材を使い切ってしまうと
 お得な突発イベントでアイテムを要求されたときに渡すことができなくなるなど拠点内外を問わず駆け引きが存在する。
 
- 
Nintendo Switch向けに調整された操作方法
- 
タッチ操作だけでなくジョイコン片手持ちや2人プレイなど様々なプレイ方法に対応している。
 
- 
画面の色合いはゲームボーイ風の緑黄色になっており、当時プレーしていたユーザーには懐かしさを感じさせる。
- 
最速のクリアタイムが保存されるため、簡素ではあるがタイムアタックがやり込み要素として機能する。
- 
ただし「分」単位での保存なので秒単位でのタイムアタックには対応していない。
 
- 
シンプルなゲーム内容でありながらシナリオ分岐が存在する。
    
    
        | + | プレイ後の閲覧を強く推奨 | 
小屋を建て、多くの労働者を使役し、貿易や工業を発展させるとやがて銃器や車両まで作成可能となり軍国化していく。一方、建築家の女性はこれらの設備を渋々作らされ、銃を携え周辺住民から略奪を繰り返す主人公を見限って最後には失踪してしまう。
 こうなると拠点で火を焚いてもすぐに消えてしまい、拠点名が「暗い部屋」で固定される。
 
設備を拡張するたびに建築家の心象が悪化していく様子はプレイヤーにも分かるようになっており、小屋に住む住民の数は「奴隷」と表記され、交易所の名前も「軍国主義者」と変わるため
 建築家の態度の変化の理由も察することができるようになっている。
 しかしそれでも目的のためにより強くより豊かにならねばいけない、必要な行為なのだと言い聞かせながらゲームを進める悩ましさと、
 建築家の失踪後の「やはりこのやり方は間違っていたのか」という後悔は主人公の心情をプレイヤー自身が体感させられる秀逸な展開になっている。
 
上記のルートでエンディングを見ると、別ルートのエンディングを見る方法が表示される。
もう片方のルートでは、労働者を呼び込むことなく建築家の女性と2人きりでゲームを進行することが求められる。
当然難易度は高く、罠から得られるわずかな素材で探索を始めなければならず、探索もより慎重に進めなければならない。
 |  
 
賛否両論点が居間で突進してきた。
- 
とにかく地味な画面とゲーム内容
- 
美しいグラフィックと派手な演出がなければゲームとして問題であるというわけではないが、やはり人は選ぶ。
- 
ゲーム内容も同様、基本的にやることは最初から最後まで変わらない。
- 
しかし、落ち着いた雰囲気で淡々と結果を積み重ねていくようなゲームが好みであれば時間を忘れて遊べる中毒性もある。
 
- 
プレーヤーの想像に任せたエンディング
    
    
        | + | プレイ後の閲覧を強く推奨 | 
ゲーム終盤で自分が乗ってきた宇宙船を見つけた主人公は、それを改修して宇宙へ脱出する。
探索で手に入る「エイリアン合金」を使用してHPと移動性能を上げ、HPが無くならないように小惑星を回避する短い強制スクロールアクションパートが始まる。
ルート分岐によってこのとき表示される字幕が異なるのだが、いずれも「その後どうなったのか」は描写されない。
労働者を呼び込まないルートではグッドエンドになるかと思いきや、建築家は過労で序盤に倒れてしまう。エンディングまでには復活するのだが、宇宙船内で再び生死不明の状態に陥り、その後のことは何も語られない。
 |  
 
- 
ホラーゲームではない。
- 
恐怖を掻き立てるような演出こそ存在はするが、ホラーそのものが主軸の展開とはならない。
- 
タイトルが如何にもホラー作品を思わせることに加え、画面写真の雰囲気などからも、そちらの方面を期待したプレイヤーは少なくなかったと思われるが。
- 
良くも悪くも、本作はいわゆるホラー作品ではない。
 
- 
分岐エンディングを見ようとすると序盤の作業感が強くなりやすい
    
    
        | + | プレイ後の閲覧を推奨 | 
分岐エンディングでは労働者を雇わないプレーが求められる。
交易所で「コンパス」を入手するまでは外での狩りも不可能なので、クールタイムが長い罠から素材を獲得する作業がしばらく続くことになる。
素材獲得の効率化を図り罠を増やそうとすると今度は木材をこつこつ集めなければならなくなる。
建築家の女性が倒れた時点で罠は自動的に最大個数作成されるため、罠の個数はほどほどで施設の建設を優先すれば幾分早くなる。
その後の装備や資源集めも地道に進行しなければならず、余計な回り道を強要されているような気分になりがち。
要するに、いうなれば自主的な縛りプレイが求められる形式であるため、進行が煩わしく感じられやすい。その煩わしさに耐えて独力での脱出を果たせるか、あるいは効率主義に負けてしまうのか、という選択に意味があるのだろうが……
 |  
 
問題点が燃えあがっている。
- 
カーソルの動きに癖がある
- 
コントローラでカーソルを動かす際に思い通りの箇所へ動いてくれないことがある。
 一定の法則に従って正しく動作しておりバグが生じているわけではないのだが、直観に反した動きをする。
 
- 
物資の個数は1ずつしか操作できない
- 
多めに素材が手に入った時は20個前後の物資をボタン連打で回収したり交易・加工することがある。
 
- 
コントローラーによる入力は上記の通り独特の癖があって敬遠されやすいことに加え、ジョイコン操作であっても、数量を選択するだけのための単純作業で数十回の連続入力が求められるのは辛い。
 まして画面タッチで入力していると、指の負担がかなりしんどい領域になってくる。
- 
ボタンの長押しによる増減に対応して欲しかったところ。
 
- 
ごく一部ではあるが誤記が存在する(訪れた放浪者の性別が「彼」「彼女」でぶれるなど)。
- 
ゲーム進行に支障をきたすような大きな間違いはない。
 
- 
同じく稀にだが言語表示のミスも発生する。
- 
日本語設定で遊んでいても、英語のメッセージが表示されることがある。
- 
対訳は用意されているはずの、ある特定の文章が、時おり英語のまま表示されてしまう。
- 
さらにこれが発生すると以降しばらくの間、全ての表記が英語に変化してしまい、メニュー等まで英語に変わることがある。
 こうなると、英語に不慣れな人は間違いなく戸惑う。
- 
発生する条件は何となくなら察しが付くが確定はできず、日本語に戻る条件もよく分からない。
- 
たいていの場合、すぐまたは少しすれば日本語に戻るのが救いではあるが。
 
- 
実害こそさほど大きくないものの、不自然ではあるし、頻度こそ稀ではあるが序盤に高確率で発生する。
- 
幸いにして、日本語と英語でボタンの配置や機能は変化しない。このため位置さえ覚えていれば、なんとなくでもそのままゲームを続行できる。そして、しばらく遊び続けていれば勝手に元へ戻ってくれる。
- 
なお、英語に変わったままでも設定画面を開き言語設定を変更することはできるのだが、「Japanese(日本語)」へ変更しても表示は英語のままで、改善されることはない。
 
 
- 
交易・加工等で必要素材が4桁になると「k(キロ)」を使って表現されるが、
 小数点が「.(ピリオド)」ではなく「。(全角句点)」になっている。
- 
このため、木材1100個を消費する場合は「1。1k」と表示され読みにくい。
- 
そもそも所持素材は4桁を超えてもそのまま1100などと表示されるので、素材消費のときだけ単位を変える必要性がない。
 
 
- 
クリア後のオマケとして、解禁される要素があるのだが……。
    
    
        | + | クリア後のオマケの内容というのが | 
製作者によるオーディオコメンタリー。当然のことながら、英語。
日本語環境で遊んでいるプレイヤーの中に、英語の会話が聞き取れる者はあまり多くいないだろう。
厄介なことに、本作には隠しルートが存在することから、ここにも何かの隠し要素がないかと疑ってしまうプレイヤーもいる。
対訳を用意するのが現実的でないとしても、せめて日本語で書き起こした字幕くらいは追加してほしかったところである。
 | 
彼女が総評を見て、さようならを言った…
美しいグラフィックと派手な演出、大容量を追求し続けてきたゲームというコンテンツにおいて
ビジュアルに頼ることなくゲームを作ることはできるという1つの答えともいえる作品。
物語後半~エンディングの展開は焚火しかないみすぼらしい小屋から始まったとは思えないほど壮大なものになっており、
ここまでの展開を文字だけで、それも小説のような大ボリュームを使わずに描写しているのは特筆に値する。
ゲームとしても内容はシンプルでありながらあらゆる場面で駆け引きを要求されるシステムで十分に楽しめる。
人を選ぶ作品には違いないが、ハマれる人は時間を忘れてプレーしてしまう中毒性もある。
最終更新:2022年01月27日 08:22