本稿では、ファンディスク『君が望む永遠~special FanDisk~』についても扱っています。



君が望む永遠

【きみがのぞむえいえん】

ジャンル 多重恋愛アドベンチャー

対応機種 【無印(CD版)】Windows 95/98/2000/Me
【DVD版】Windows 98/2000/Me/XP
【Latest Edition】Windows 2000/XP/Vista
ドリームキャスト
プレイステーション2
発売・開発元 âge
発売日 【無印(CD版)】2001年8月3日
【DC】2002年9月26日
【PS2】2003年5月1日
【DVD版】2003年7月25日
【Latest Edition】2008年3月28日
レーティング アダルトゲーム
判定 良作
ポイント 三角関係をテーマにした重苦しいシナリオ
感情移入度を高める秀逸な演出とテキスト
プレイヤーに苦渋の決断を迫る

概要

株式会社アシッドのアダルトゲームブランド「âge(アージュ)」が送り出す第3弾。
衝撃的なストーリー展開と、ダブルヒロインによるドロドロした三角関係が話題を呼び、âgeの名を知らしめた出世作。
その人気を受けて多方面にメディアミックス展開され、数度に渡り移植もされた。


あらすじ

受験を控えながらも自堕落に毎日を過ごす主人公:孝之は、隣のクラスの涼宮遙に告白され、流されるままに付き合い始める。
紆余曲折あったが、2人はやがて心から愛し合うようになる。
しかしある日、遙は交通事故に遭い植物状態となる。
絶望に打ちひしがれた孝之を支えてくれたのは、遙を紹介してくれた遙の親友:水月だった。
それから3年。遙がついに目を覚ます。
だが遙は3年経ったことに気付いておらず、自分達はまだ学生で、孝之も自分の恋人のままと信じている。
遙と水月、2人の間で孝之の心は揺れ動く…


特徴

選択肢でEDが分岐するADV。EDは全部で17種類。
オーソドックスな学園モノの雰囲気を醸し出す学生編「第1章」と物語が大きく動き、複雑な人間関係が織り成す鬱々とした展開が続く社会人編「第2章」に分かれている。
涼宮遙のEDを一度見れば、直接第2章からスタートすることが可能になる。


キャラクター

第1章から登場

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  • 鳴海孝之(なるみ たかゆき)
    • 主人公。夢も目標もなくダラダラと日々を過ごしていたが、遙との出会いをきっかけに変わっていく。
    • 口調はやや乱暴だが大切な仲間の為に奔走する様や、人の気持ちと真摯に向き合おうとする姿勢が人を惹きつける。
    • 周りから「優しい」とよく評されるが、優し過ぎて言うべきことを言えず、結果的に悪い方向へ事態が動いていくことがままある。また悩みすぎて優柔不断になってしまったり、自分一人で責任を抱えこみすぎたりする一面がある。
    • 性欲が絡むと暴走することがある。
    • 第2章ではファミレスで働くフリーター。
  • 涼宮遙(すずみや はるか)
    • メインヒロインその1。孝之に片思いしていたが、親友:水月の後押しもあって告白し、恋人同士になる。
    • 大人しく引っ込み思案な性格だが芯は強く、観察眼も意外に鋭い。絵本が好きで、将来は絵本作家になるのが夢。
    • いもきんつばやヘビ花火が好き等、少々ズレた感性の持ち主。またかなりの天然で、その言動はしばしば「遙伝説」と呼ばれるトンデモエピソードを生み出す。
    • 第1章の最後で、孝之とデートの待ち合わせ中に交通事故に遭い、昏睡状態となる。3年経ち、彼女が目覚める所から第2章が始まる。
  • 速瀬水月(はやせ みつき)
    • メインヒロインその2。孝之・慎二と仲が良く、よく3人でつるんでいる。親友の遙の片思いを成就させる為、何かと世話を焼く。
    • 活発でサバサバした性格で、男女分け隔てなく接することから人気が高い。異性から告白されることも多いが全て振っている。
    • 水泳部に所属しており、将来はオリンピックを視野に入れる程の実力を誇る。
    • 第2章では水泳を止め、OLとして働いている。また孝之のアパートに通う恋人となっている。
  • 平慎二(たいら しんじ)
    • 孝之の無二の親友。孝之と一緒になってバカをやる傍ら、しっかり将来を考えて勉学にも身を入れている。
    • サラリと周りに気を遣えるナイスガイ。孝之・水月・遙の良き仲介役となっている。
    • 第2章では大学生。4人組の中で唯一進学した。
  • 涼宮茜(すずみや あかね)
    • 遙の妹。姉とは正反対の活発でわがままな性格。孝之を気に入って懐き、「お兄ちゃん」と呼ぶようになる。
    • 水月に憧れて水泳を始めた。水月のことを誰よりも尊敬し、慕っている。
    • 第2章では姉と同じ学校に進学。水泳の実力は水月以上と言われるまでに成長している。孝之と水月が遙を裏切ったと思っており、2人に攻撃的な態度を取る。
  • 穂村愛美(ほむら まなみ)
    • 落ち着いた印象の緑髪メガネっ娘。孝之の後輩だったが1年で退学し、看護学校に進んだ。献身的で、包容力のある性格。
    • 第2章では、遙の入院する病院の准看護師として登場。看護師の仕事に誇りを持っている。

第2章から登場

+ クリックで開閉
  • 大空寺あゆ(だいくうじ あゆ)
    • 孝之のバイト先のファミレス「すかいてんぷる」で働くウェイトレス。
    • 金髪ツインテで幼児体型。非常に毒舌で、態度の悪い客などにも容赦が無い。
    • 孝之とは犬猿の中で、ちょっとしたことでしょっちゅう小競り合いになる。口癖は「あんですと~!」「お前なんか猫のウンコ踏めっ!」
  • 玉野まゆ(たまの まゆ)
    • 「すかいてんぷる」に新しく入ってきた新人ウェイトレス。
    • 大空寺以上の幼児体型。素直で明るい性格だが、かなりのドジっ子で頻繁に食器を割っている。
    • 祖父母と同居している影響で時代劇が好きで、「まことか!?」「御意!」などの時代がかった台詞が度々飛び出す。
  • 天川蛍(あまかわ ほたる)
    • 遙の病院の看護師。ある事情で子どもにしか見えない体型をしているが、れっきとした成人女性。
    • 常に笑顔を絶やさない仕事ぶりから、患者に慕われている。しかしやや常識にかけ、突拍子もない発言をすることがある。
  • 星乃文緒(ほしの ふみお)
    • 遙の病院の看護師。非常にグラマーでスタイル抜群。蛍とは親友で仲が良い。
    • 私服が派手で、男遊びの激しいチャラチャラした女性だが、情に熱く涙もろい一面も。
  • 香月モトコ(こうづき もとこ)
    • 非攻略キャラ。遙を担当する女医。服装はだらしないが腕は確か。またスタイルもかなり良い。
    • 非常に鋭く、三角関係をはじめとする孝之達が抱える問題もほぼ見抜いている。豊富な人生経験を活かしてそんな孝之達に度々的確な助言をする。
    • 3年間遙と遙を取り巻く人間関係を見守ってきたことから、半ば保護者のような立場。

評価点

作り込まれた良質なストーリー

  • 昏睡状態・3年という時間経過・遙の認識障害などを組み合わせた舞台設定が非常に上手い。
    • 簡単に「二股」と一蹴することが出来ず、また容易に問題解決も出来ない状況を作り上げている。
  • 遙が事故に遭った原因には孝之・水月の行動も関わっているが、根本的には「誰も悪くない」と言えるストーリー。それだけに理不尽な運命に翻弄されていく彼らの姿が非常にやるせなく、涙を誘う。
  • 前座であるはずの第1章の時点でボリュームがかなりある上に人間関係も作り込まれており、これだけでも相当に読み応えのある内容。勿論、第2章に繋がる伏線もちりばめられている。
    • この時点で遙・水月双方に好感が持てるような工夫が凝らされており、2章で2人の板挟みになる展開への没入感が増している。
  • サブヒロインのシナリオでも孝之・遙・水月の三角関係はしっかり関わってくる。彼ら三人の関係がブレない本筋として常に存在し、そこにサブヒロインが入り込むことで運命が変わっていくという構成。
  • バッドエンドにも力が入っている。唐突に話が終わる所謂「ゲームオーバーエンド」はほとんど無く、バッドも一つの物語として完結している。キャラの掘り下げにも寄与しており、バッドエンドでしか見れない一面があるキャラもいる。

秀逸なテキスト

  • 主人公:孝之の心情がかなり細かく書かれており、「3年越しで目覚めた恋人」と「3年間自分を支えてくれた恋人」の間で揺れ動く彼の苦悩が手に取るようにわかる。どっぷりと感情移入できること請け合い。
  • フルコンプを目指す場合ボリュームがかなりあるが、状況が二転三転し、予想もつかない出来事が次々に起こるので長さを感じずについつい先が気になって読み進めてしまう。第2章に入ってからは所謂「日常シーン」と呼べるようなものもファミレスのバイト程度でかなり少なく、中だるみとは全くの無縁。

本気で悩ませる選択肢

  • 「2人のどちらを優先するのか」「真実を告げるのか否か」といった重要な選択肢が度々プレイヤーに委ねられる。徹底的に主人公に感情移入させる作りになっているので、まるでプレイヤーが孝之自身になったかのような感覚を味わえる。

非常に凝った演出

  • よく話題に上るのが遙の事故のシーン。BGM・SE・無音演出を巧みに使っており、「エロゲー史上に残る名シーン」と評する声もある。ここで流れるOP曲「Rumbling hearts」を聴くだけで胸が苦しくなる、という声すらある。
  • その他にも、各種トゥルーエンド・3年振りの孝之と遙の再会シーンなども工夫を凝らした演出。スローモーション・強制テキスト自動送り・ホワイトアウトなどを効果的に使い、印象に残るシーンを作り出すことに成功している。
  • キャラの表情が変わる際、数秒の間に4~5段階で表情が変わる場面が度々あり、微妙な心情の変化を的確に表現している。
  • BGM変更の使い方も秀逸で、変更タイミング・無音になるタイミングも上手い。BGMそのものも良曲揃い。

賛否両論点

主人公の性格

  • 決断力がなく、せっかく心を決めても状況に流されてまたフラフラしてしまう場面が多いので、孝之にイライラすることがある。
    • もっとも彼の優柔不断さは、大切な2人に真摯に向き合いたいという誠実さや、誰も傷つけたくないという優しさの裏返し。彼の置かれた状況を考えても、一概に責められるものでもない。
    • また生活に支障が出る程に悩み苦しむ様にリアリティがあると評価する声もある。

問題点

終始重苦しい雰囲気

  • 三角関係や植物状態といったテーマを扱っている都合上、第2章はほぼ全ての展開が暗い。バイト中だけは明るい雰囲気になるが、遙や水月が関わった途端にまたシリアスモードになり、気が休まるタイミングがほとんど無い。そういうゲームなので仕方ないのだが、明るい作風やハッピーエンドを好む人には合わない。
    • 完全な大団円となるEDは存在しない。トゥルーエンド系で該当ヒロインが幸せになった裏で、最低誰か1名は不幸になってしまう。

選択肢に従わない主人公

  • 例えば「病室に入る」「ここから逃げ出す」という2択で逃げる方を選んでも「逃げ出すなんて許されない」と言って結局病室に入ってしまう。フラグ立てとテキストの僅かな差のみで、結局展開が変わらないということが度々起きる。
    • 全ての選択肢がこうなっているわけではないが、無視できるほど少ない数でもない。

一部シナリオで雰囲気が大きく変わる

  • 遙ルートから派生する水月のバッドエンド3種は、急に孝之が鬼畜凌辱系作品の主人公のような言動をし始める。
    • 孝之の豹変の原因は描かれており理解も出来るのだが、いかんせんそれ以前の彼とのギャップが大き過ぎる。
    • この3つのルートは最終的に誰も幸せになれないことが予想される結末であり、テキストの文章量もそれなりにあるので鬱度が高め。
  • それ以上に物議を醸したのが、穂村愛美エンド。
    + ネタバレのため折り畳み
    • 愛美が孝之に対して傷害・監禁といった違法行為を突然始め、最終的に孝之の心は壊れてしまう*1
    • 孝之の周囲の人物も、事情を知る由もなく愛美の根回しもあったとはいえ突然失踪した孝之に愛想をつかし、孝之の言い分を聞くことなく一方的に絶縁を宣言するなど、若干強引な展開が見られる。
    • メインヒロイン2人の出番がほとんどなくなり、遙に至っては後半全く出てこないのも相まって、ここだけ完全に別ゲーのような空気。

その他・システム面など

  • ロード時、ロード地点より前のバックログは閲覧できない。
  • キャラクターボイスを個別でオフに出来る機能があるが、ゲームを終了するとデフォルトに戻ってしまう。
  • 既読スキップ・オートモードの実行に2クリック必要で、やや使いにくい。スキップ速度は非常に速いのだが。
  • 誤字脱字は多め。パッチも出ているが修正しきれていない。

総評

王道学園モノの第1章から一転、ドロドロの愛憎劇が始まる第2章でプレイヤーに大きな衝撃を与えた。
しかしそのインパクトだけで終わらず、質の高いシナリオと演出を擁する完成度の高い大作。
運命に振り回された主人公・ヒロインの苦悩を徹底して描いた本作は「感動」を主軸にした葉鍵系の「泣きゲー」とは趣を異にし、「痛み」「切なさ」にスポットを当てた別の方向性の「泣きゲー」の金字塔と言える。
未だに語り草になる作品であり、重く暗い話に抵抗がなければ触れてみて欲しい逸品。


移植・メディアミックス等

  • 2002年9月26日、アルケミストからドリームキャスト移植版が発売。さらに2003年5月1日、プリンセスソフトからPS2移植版が発売。どちらもCS機向けに一部シーンの削除/修正がされたのみで追加要素などは無いが、主題歌はそれぞれ書き下ろされている。
    • CS版発売元会社はどちらも現在消滅している。DC版発売元のアルケミストは2016年に破産手続開始され、2017年に消滅した。
    • PS2版発売元のプリンセスソフトは2009年発売の『キラ☆キラ』を最後に新作ソフトを発売しておらず、それから公式サイトの更新が途絶え、2020年頃にサイトが閉鎖されたため、現在は消息不明。
      • 同社から派生した姉妹ブランドである「Nine's fox」、「Primavera」、「Maid meets Cat」も同様に公式サイトが閉鎖されており、いずれも消滅したと思われる。
  • 2003年7月5日、『君が望む永遠 ~DVD specification~』(通称DVD版)が発売。新OP曲・新シナリオ・新CG等が追加された。
  • 2004年6月25日、ファンディスクとして『君が望む永遠~special FanDisk~』が発売。詳細は後述。「もし遙が事故に遭わなかったら」等のifシナリオが展開される「君が望む第一章」が目玉。
  • 2008年3月28日、『君が望む永遠~Latest Edition~』が発売。ゲームエンジンを『マブラヴ オルタネイティヴ』等で使用した「AGES」に更新しており、まばたきや口パクが追加された他、立ち絵やCGも大幅に描き直されている。
    • さらに遙・水月・茜に後日談エピソードとして「第三章」が追加。後述するファンディスクの内容も一部収録されている。*2
    • 立ち絵の雰囲気が変わっているので好みはあるだろうが、今から本作に触れるなら基本はこちらで良いだろう。
  • 2020年3月27日に発売された『âge アーカイブス ~20thBOX Edition~』に『Latest Edition』と『special FanDisk』が収録。
    • 2023年10月13日、『Latest Edition』をベースとした全年齢版開発のため、クラウドファンディングが行われ、2024年10月30日に『君が望む永遠 ~Enhanced Edition~』がSteamで配信された。
  • 2003年10月から12月にかけて、TVアニメ版が放映。全14話。
    • 原作スタッフも多数関わっており、彼らの要望により水月EDを元にしたストーリーとなった。
    • 原作の内容を上手く取捨選択して再構成しており、原作を補完するオリジナルエピソードも秀逸なので、エロゲーのアニメ化としてはかなり好評。アニメから君望ファンになったという人も少なくない。また性行為をぼかさず直接描写した点でも話題になった。
  • 2007年から2008年にかけて、OVA「君が望む永遠~Next Season~」が発売。全4話。
    • こちらは遙をメインにし、上記『Latest Edition』の後日談エピソードを元にした内容。

余談

  • 体験版に第1章を丸ごと収録するという大胆な販売戦略を取った。遙の事故のシーンで終わることから大きく話題となり、発売までの1ヶ月は匿名掲示板等で「遙はどうなったんだ!?」と半ば祭りのような状態となった。
  • Windows版の初期版ではヒロインとの濡れ場のシーンでモザイクの掛け方が薄すぎて 「見えてはいけないもの」 の一部が露わになってしまい、回収騒ぎが起きてしまっている。
  • 大空寺あゆは「ツンデレ」の語源となったキャラクター。あるプレイヤーが彼女のシナリオを「ツンツンデレデレ」と評したことからこの単語が生まれた*3
  • 穂村愛美は個別ルート終盤の衝撃的な展開から「緑の悪魔」と称されヤンデレの代表格のような扱いを受けている。動画サイトなどで彼女の姿が映るだけで、トラウマを発症したプレイヤーが悲鳴を書き込むのはお約束。
  • 本作はâgeの過去作品『君がいた季節』や次回作『マブラヴ』等とも世界観を共有していることを匂わせている。ただしプレイはしなくとも、この作品の理解に支障が出ることはない。
    • 舞台となる学園が共通の「白陵大付属柊学園」であることや、一部登場人物に姓が共通する者がいたりする程度。

君が望む永遠~special FanDisk~

【きみがのぞむえいえん すぺしゃる ふぁんでぃすく】

ジャンル ファンディスク
対応機種 Windows 98/2000/Me/XP
メディア DVD-ROM
発売・開発元 âge
発売日 2004年6月25日
定価 5,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
判定 良作

概要(FD)

原作のifストーリーが展開される「君が望む第一章」を中心に、ラジオやミニゲームなどが詰め込まれたファンディスク。


特徴(FD)

君が望む第一章

  • メインコンテンツ。原作の第一章を元に、幾つかの選択肢を追加。「もし遙が事故に遭わなかったら」「もし遙の告白を断っていたら」などのif展開を楽しめる。
  • 遙・水月・茜・愛美に1つずつEDが用意されている他、オールクリア後におまけシナリオが解放される。
  • EDを迎えると、ヒロイン4人&孝之の声優のインタビューが聞けるようになる。
  • 原作通りの行動を取り続けた場合、原作同様事故が起こった後にタイトルに戻る。

君が望む永遠~another episode collection~

  • 各キャラにスポットを当てた「アナザーエピソード*4」に、ボイスやCG等を加えたショートストーリー。

君のぞらじお出張版

  • ラジオ番組「君のぞらじお」のファンディスク版。孝之・遙・水月・茜の声優が出演。

マリーのおかたづけ2 あゆまゆ奮闘編

  • 大空寺あゆを操作するパズルゲーム。反射神経は不要だが、かなり頭を使う。難易度はやや高め。

評価点(FD)

ファン待望の夢の展開

  • 「事故に遭わなかった遙」「実業団に入った水月」「3年後も仲良くし続けている4人組」「3年前の時点で孝之と付き合い始める水月・茜・愛美」など、ファンの見たかったであろう展開が目白押し。
    • どれも原作ではあり得ない展開であり、原作の重く暗い内容を知っていれば知っている程、幸せになった彼らの姿に胸が熱くなる。
    • if展開に入っていく流れも、違和感をなくすようシナリオに気を遣っている。「あり得たかもしれない別の未来」を無理なく見せてくれる。
  • 原作を意識した台詞・イベント・新CGなども多数あり、ファンサービス精神旺盛。原作をやっていれば思わずニヤリとさせられたり、グッと来たりする場面が多い。アニメ版からもネタを拾ってきている。

良質なビジュアル面

  • 原作発売から3年経っているが、新規CGはキャラのイメージを保っており可愛らしく仕上げてある。
  • 新規追加の立ち絵もいくつかある。「髪型が変わらなかった3年後の遙」は必見。
  • 絵本作家展会場・水泳大会会場など、追加された背景もあり、世界観を広げている。

相変わらず高い文章力/演出力

  • 孝之の綿密な心理描写などは原作さながら。原作に比べると深刻な状況は少ないが、君望らしい「ヒロインの為に悩み苦しむ主人公」はしっかり描かれている。
  • 演出面では原作ほどの派手さは無いものの、随所に工夫が凝らされている。
  • 愛美以外の3名には、各ヒロインが歌う書き下ろしのED曲がある。どれもキャラのイメージに合っており好評。
    • その愛美にも、原作での印象を払拭するかのような王道で感動的なストーリーが用意されている。

another episode collection

  • 全てヒロインやサブキャラ目線で展開される。原作は一貫して孝之の一人称視点で進んでいたので、これまで語られなかった各キャラの心情を垣間見ることが出来、原作の補完になっている。
  • サクッと読める短さではあるが、こちらもしっかり「読ませる文章」になっている。ここでしか見られないイベントCGもある。

賛否両論点(FD)

ビジュアルが明確になった主人公

  • 一部CGで、主人公:孝之の顔がはっきりと描写される。さらにボイスも付き、孝之の立ち絵も作られている。
    • 原作では多くのエロゲ主人公同様、目元が隠れた状態のCGのみで明確なビジュアルの描写はなかった。自分の中で既に孝之のイメージが出来ていた人や、孝之に自己投影していた人には違和感がある。ボイスは個別でオフに出来るが、CGや立ち絵は回避手段がない。

一部のシナリオのノリ

  • オールクリア後に解放される「EXTRA」は、原作や本作のノリを一切無視したギャグシナリオ。
    • セルフパロディや自虐ネタのオンパレード。キャラ設定を完全に無視したり、原作の名言をふざけたシーンで使ったりとやりたい放題。
    • 遙の事故や昏睡状態まで笑いのネタにしている。このシナリオの為だけに用意されたCGや立ち絵もあり、かなり本気度の高いふざけ方。これを見て爆笑できるか、不謹慎と感じて怒るかは完全に人による。
  • another episodeの一つである「TRUE LIES」は、ゲーム雑誌の付録として製作された「ラジオスペシャル TRUE LIES」の再録。âgeの次回作「マブラヴ」や、âgeのファンクラブ会員に配布された「アカネマニアックス~流れ星伝説剛田~*5」と関連性の深い内容になっている。
    • こちらも原作とはかけ離れたギャグ的なオリジナル設定や、アカネマニアックスの流れを汲むコミカルなノリが冒頭から連発される。マブラヴ・アカネマニアックスのキャラも多数登場し、両作品を知らない人は置いてけぼりを食らう。
    • another episodeの中でこれだけ文章量が段違いに多いので、ついていけなかった場合は意味不明な内容を長時間見せつけられることになる。

問題点(FD)

  • 原作のUIを流用している為、UIの問題点などもそのまま。
  • ヒロインによってシナリオ量に差がある。
    • 遙EDのみ突出して短い。もっとも遙は原作の第一章で描くべき部分は全て描いている為、仕方ないといえば仕方ないのだが。
  • 構成上当然ではあるが、二章キャラ(ファミレス組・病院組)の出番はかなり少ない。
    • 一応another episodeも含めれば、全員に見せ場はある。

総評(FD)

原作の鬱展開とはうってかわって「爽やかな学園青春ドラマ」を全面に押し出した本作。
180度違う明るい雰囲気でありながら、原作のリスペクト/オマージュ的な展開が多く、キャラクターの掘り下げにも貢献している。
ファンディスクとしては理想に近い内容。君望ファンであればやっておいて損は無いだろう。

最終更新:2024年10月31日 00:58

*1 擁護しておくと、愛美は最初からこういった猟奇的なキャラだったわけではなく、過去のトラウマとある出来事をきっかけに狂ってしまった。実際、DVD版で追加された愛美のもう一つのEDでは幸せな結末を迎える。

*2 ifシナリオである「君が望む第一章」部分のみ

*3 ただし、ツンデレの語源に関しては今でも論議の対象となっており、今は亡き小池一夫先生は「遥か昔に自著の作品で表現している」と主張している

*4 元々は公式サイトのキャラクター紹介ページに掲載されていたもの。

*5 後にOVAとして一般販売された。