逆転裁判2

【ぎゃくてんさいばんつー】

ジャンル 法廷バトル
対応機種 ゲームボーイアドバンス
発売・開発元 カプコン
発売日 2002年10月18日
定価 5,040円
レーティング CERO:A(全年齢対象)*1
廉価版 Best Price!: 2003年12月19日/3,129円
配信【WiiU】 バーチャルコンソール: 2015年12月2日/702円
判定 良作
ポイント 新要素「サイコ・ロック」始めシステム面が進化
逆転裁判シリーズ


概要

1作目の人気を受けて制作された『逆転裁判』シリーズ第2作。 前作で有能な弁護士として名が知られるようになった成歩堂龍一。そんな彼の前に、天才検事と呼ばれる「狩魔冥(かるま めい)」が、成歩堂の弁護する被告人を有罪にしようと挑んでくる。
なお、『2』には次作に続く伏線がうっすらと残されている。


特徴

  • 法廷パートのペナルティがポイント制からゲージ制へと変更、場面によって受けるペナルティの量が幅広くなった(時には全ゲージペナルティ=一撃死ということも)。重要な場面ほどゲージの減少量は上がるため、法廷パートの緊迫感が増した。
  • シリーズの中でもどこか影のあるエピソードが目立つ作品。登場人物はみな複雑な事情を抱えており、真犯人も一概に悪人とは言い切れない人が一人いる(1にも居たが…)。
    • この作風に合わせてか、BGMも「尋問~モデラート(アレグロ)」など全体的に重い曲調である。
  • 今まで情報としてのみ機能していた人物ファイルを「つきつける」ことができるようになった。
    • 証拠品の突きつけの際も選択肢に数えられるため、難易度が上昇している。
    • と同時に、探偵パートにおいて、他人に突きつけた時に専用のコメントが聞ける証拠品の数が増えた。また、相手から人物評が聞けるようになったことで、人間関係の描写に深みを与えている。
  • 新システム「サイコ・ロック」の登場。
    • 依頼人や関係者に隠しごとがある場合にあらわれる「錠」(が見える超能力のようなもの)で、相手の発言に適切な証拠品を突きつけていくことで解除され、すべてを解除するとその隠しごとを教えてもらうことができる。
    • サイコ・ロックでも「つきつける」ものを間違えるとゲージが減る。ロックをすべて解除すると最大値の半分まで回復するが、このゲージは法廷パートのゲージと共有しており、探偵パートを終えた時点での残量を引き継ぐ。
    • サイコ・ロックの開錠を失敗してもゲームオーバーにはならないが、ミスをすれば容赦なくゲージを削られるため、探偵パートでも決して気が抜けなくなった。
    • 証拠が揃っていなくても挑めてしまうケースが多いので、サイコ・ロック中に何をつきつけるかだけでなく、そもそもサイコ・ロックに挑めるだけの証拠が揃っているかも考えなければならない。このシステムを通じて法廷パートだけでなく探偵パートでも色々と考えさせられることになり、ゲーム性はかなり向上した。
    • ミニゲーム的な要素が強いものだが、話をシリアスな方向に掘り下げたり、「大人から見れば大したことはないが子どもにとっては大事なこと」や「物に釣られて錠を自ら壊してしまう」といったコミカルな演出に使ったりと、シナリオの中でも効果的に使われている。
    • その一方で、わずかだが「隠しごとのはずなのに、振り返ってみれば嘘だった」というケースもある。あくまでも隠しごとが存在する事実を可視化したものであり、バレる前提で建前が用意されていたり事実を誤認していることは有り得るので、解除されて手に入る情報の真偽は保証されないのである。
+ 『2』の特徴(ネタバレ含む)
  • 開発当初は全5話構成の予定だったが、容量の問題でやむなく1話削ることとなり、その名残が背景画像や登場人物に残っている。その削除エピソードは『3』に流用されている。
  • 最終話はシリーズのシナリオ上の大前提を覆す話になっており、それに衝撃を受けたファンも多い。
  • また、本作の最終話にはシリーズでは珍しいバッドエンドが存在する。
  • 新キャラクター
    • 成歩堂に「サイコ・ロック」の力を与えてくれる真宵の従妹・綾里春美が初登場。
      • シリーズ中でも珍しい10歳未満のキャラクターで、成歩堂と真宵を恋仲だと誤解していることから真宵たちとは別方向での笑いを添えることに。しかし真宵と同じく霊媒師であることからハードな設定を備えており、次作『3』と合わせて初期シリーズの核心を為す人物の一人となる。
    • 後の『逆転検事』シリーズにも出演する狩魔冥は、本作のライバルキャラクターとして初登場。
      • 御剣の師匠として前作に登場した検事・狩魔豪の娘で、10代(本作で18歳)にして検事となった天才という設定だが、父親譲りの貴族風の格好に水色のボブカットという派手な出で立ちと、法廷内で鞭を振るって証人や裁判長や成歩堂を攻撃するという描写でプレイヤーに衝撃を与えた。
      • 製作事情としては「前作ライバルの御剣の人気が出すぎたことから、仮にも天才設定である御剣を負け役に配置することが難しくなった*2」という経緯で誕生した。これは意地の悪い言い方をすれば「御剣の存在のために最初から噛ませ犬としての役割を背負う目的で設計されたキャラクター」ということであり、性格面も御剣らへのコンプレックスを明確に示し、過剰に攻撃的な性格の人物として描かれている。

評価点

  • 全体的なボリュームの向上と、仕様変更によるUIの改善。
  • 推理ゲームとしての難易度が上昇し、歯ごたえのある内容に。
    • 一撃死ポイントや人物ファイルの選択肢、サイコ・ロックによって法廷パート・探偵パート双方ともに難易度が上昇。
    • ゲームオーバーにこそならないものの、サイコ・ロックでダメージを受けすぎる*3と法廷パートに響くことになるため、探偵パートでも気が抜けない作りになった。
  • キャラクターのアニメーションパターンが増加。大きな動きを見せるキャラクターがかなり増えた。
    • 特に犯人が追い詰められ、罪を認めるシーンは前作では全体的に大人しいものだったのだが、本作からはその人物の特徴的なモーションを誇張したり小道具を派手に扱って自らを傷つけたりと、ネタにあふれたモーションと共に自供する展開が取られるように。
    • このモーションは「ブレイクモーション」と名付けられ、シリーズ定番となってナンバリングを重ねるごとにさらに派手さを増していくようになる。
  • ラスボス撃破時の爽快感が非常に強い
    + 重大なネタバレを含みます
    • 最終話の最終盤では、ラスボスとその協力者に仕組まれた結果「被告人が有罪判決だろうと無罪判決だろうと、罪のない人が犠牲になってしまう」という状況に追い詰められてしまう。
    • そんな中ちょうど届いた証拠品を利用することでラスボスと協力者の協力関係自体を壊し、犠牲者を救ったうえ、ラスボスに「有罪判決ならもちろん罪を償う。無罪判決だったとしても高確率で一生命を狙われ続け、しかも逃げる事はほぼ不可能かつ有罪判決でも逃げる事はできそうにない」という、まさに「大逆転」の言葉がふさわしい人生詰みの一手を叩きつけることに成功するのである。
    • ラスボスの悪辣さ・外道ぶりがシリーズ屈指であること、難易度の高さ(この時の選択を間違えると問答無用でゲームオーバー)、逆に追い詰められたラスボスの怯えぶり・ブレイクモーションの派手さ等々が重なり、大逆転を決めた時の安堵感、爽快さは得も言われぬものとなっている。

問題点

  • 評価点として挙げた内容でもあるのだが、本作の難易度の高さはシリーズでも最高クラスと称されるほどで、詰んでしまう人も少なくなかった。
    • 選択肢の多さ、間違えたときのダメージ量の上昇*4などが主な原因だが、選択肢自体もわかりにくいものが少なくない。
    • 探偵パートでは「特定人物のサイコ・ロックを解錠して話を聞くことで次の進行フラグが立つ」というケースも多いのだが、現在手元に有る証拠品だけでサイコ・ロックが解錠可能かどうかは不明だし、多くの場合発生時点では不可能なため、探偵パートの総当たりも困難となっている。
      • よりにもよって、チュートリアルを兼ねた最初のサイコ・ロックで、言われた通りに開錠を行おうとすると、証拠品が足りず途中でやめなければいけなくなる。「途中でやめることも重要」という事も兼ねたチュートリアルなのかもしれないが、不親切感は否めない。
      • また、サイコ・ロックを途中で止めるとそこで強制終了してしまい、ある程度進行した場合でも初めから聞き直す仕様になっている。中断を引き止める選択肢も出ないので、誤操作を起こすと面倒なことになってしまう。
+ 難易度の高い選択肢の一例(ネタバレを含みます)
  • 「ゆさぶる」の後に出てきた証言について、「重要ではない」を選ばなければ進まないポイントが存在する。
    • これまでのシリーズ全体のセオリーとして「重要である」を選ぶと証言に追加される ⇒ そこに証拠品をつきつける、というものが定着している中で、ここでは違う選択肢を要求されるため、微妙にわかりにくい。
      • 作中キャラの言動でも「真相が不明でも常に強気に出て、細かいことは後から考えろ」という態度が推奨されているので、余計心理的な罠になっている。
    • また、「重要ではない」を選ぶとその後のやり取りで証人がとある失言をしてくれるのだが、「ここでこの選択肢を選べばこういう失言が引き出せるはず」という因果関係が薄く、推理で気付くのは困難な内容である。

第2話

  • 証拠品として提出された綾里真宵の衣装について
    • 衣装について「問題がある」を選択し、問題のある箇所をポインターで指摘しなければいけないのだが、衣装が提出されてからこの指摘を行うまで、法廷記録から衣装の詳細図を見ることができない。
      そのため、提出された瞬間と、「問題がある」を選択し実際に指摘するシーンでしか詳細図を確認することができず、衣装について問題があることに気付くのが難しい。
    • その後、「衣装の穴に焦げ跡が無い」ことを根拠に衣装をつきつける必要があるのだが、本作の粗いグラフィックでは、穴に焦げ跡があるかどうかを判別するのは困難である。
      • そもそも「焦げ跡」というのが「至近距離で撃たれた銃弾は熱いので着弾点にそういう跡が付く」と劇中では説明されるものの、形状などを示す画像等は一切ないので、専門知識が無ければ判別しようがなく、矛盾の前提として与える情報には不十分と言える。
    • さらにその後、衣装の穴を基に綾里真宵の立ち位置をポインターで指摘するシーンがあるが、この正誤判定がややシビア。

最終話

  • 最終話のある一撃死ポイントは、写真の矛盾を指摘するものだが、指摘する内容自体が難しい*5上に、その指摘できるポイントのほとんどがメッセージウインドウで隠れてしまって選択できないようになっていて、正解になる選択ポイントが非常に狭い
    • DS版以降ではメッセージウインドウと指摘する写真が別の画面に映されるようになったため改善されている。
    • しかも『2』では写真指摘の画面ではメニューが呼び出せず、途中セーブが出来ない。その上先述のように一撃死なので、ここで失敗すると最悪裁判の最初まで戻されてしまう。
      • 一応、手持ちの証拠品がバッチリ手がかりになっているのでちゃんと見比べれば矛盾に気付けるのだが、結局メニューが呼び出せないため事前に記憶しておくほかなく、抜き打ちではまず正答不可能。
  • 最終話には一撃死ポイントがこの他に1つ、さらに間違うとバッドエンド直行になる選択肢が存在する。
    • 前者は証拠品の数が少ないうちに「まだ審理されていない証拠がある」という内容で証拠品をつきつけるものなのでまだ難易度は低いが、後者は最終盤で「誰に」「何を」突きつけるかを選ぶため選択肢が非常に多く、そこで正解の後も出てくる3つの選択肢を間違うとバッドエンド。
      • 最終話という都合からボリュームはそれまでで最長クラスの上、情報が二転三転して大量かつ複雑になっており、前述したようにプレイに間が空くと過去の会話などを忘れてしまうということも起きやすいこともあって心理的に正解を見出しにくい構造となっている。
      • また、証拠を突き付けられた人物が「それくらい別にいいよ」と言ってしまえば済んでしまう内容であったことも難易度を引き上げる原因となっている。*6
      • 提出する証拠品そのものは直前に登場する3つのうちの1つと考えれば選択肢は一気に狭まるのだが、2つは思わせぶりな説明がついたダミーであることや、それ以外にもシナリオ上最後まで説明がつかない謎を残した証拠品が存在すること、さらに逆転の糸口として直前に千尋が二つの攻略法を提示する*7ことなど、非常に混乱させられる要素が多くなっている。
    • 更に悪いことに誤答をした瞬間からメニュー呼び出しができなくなる。なので、セリフパターンから間違ったことには気づけるのにやり直すにはリセットしなくてはならず、非常にストレス。
  • 2日目の探偵パートにて、電波障害の原因となる装置を電波探知機を用いて探す場面があるのだが、画面二つ分と相当な広範囲から正解を見つけ出す必要があり、ハズレがやたら多い上に正解となる範囲も極めて狭い。また電波探知機のカーソル移動のレスポンスがやや悪く、移動速度も遅いためその正解部分に合わせるのにも苦労する。失敗してもペナルティはないが、ストレスが溜まりやすい上に難易度が高い。
    • 次作『3』では同じ仕様の金属探知を行う場面があるが、こちらは画面一つ分に範囲が狭められた上に正解範囲も広くなっており、非常に簡単になっている。
    • DS版以降では電波探知機のアイコンをタッチ操作で動かす形式になったため快適性が向上し、探知範囲もやや広がっているため多少難易度が下がった。
  • ディレクターである巧氏自身が、雑誌の連載企画『なるほど逆転裁判!』にて「個人的に大きな反省点」「これは"イジワル"だろう!」と本作の難易度の高さについて述べたこともある。
  • 本作においてもトリックや場面設定に荒唐無稽なエピソードが存在する。
    • 特に本作は、『3』までの中では一番シナリオとトリックの整合性に難がある(特に第2・3話は説明不足も粗も多い)ことを指摘される作品である。急な続編開発と容量の都合など、開発側の事情を汲む声もあるが、それでもやや厳しい評価を受けていると言えよう。
    • 第2話では成歩堂の語る説明ではどうしても辻褄が合わない部分があり、真犯人が犯行に及ぶことこそ可能ではあるものの「成歩堂の推理は間違っていた」としなければ話が成立しない。
+ その一例(ネタバレを含みます)
  • 御剣怜侍の扱いについて。
    • 前作終了後、突然遺書のような置手紙を残して失踪したという設定になり、最終話まで姿を見せないのだが、前作のEDがハッピーエンドで締められており、そのED内の後日談でもこれまで通り活動している様子などがあったことなどから、その変化にどうしても整合性が取れないことになっている。
      • これに対する成歩堂の態度にも疑問を浮かべるファンが多い。この御剣の行動を裏切りと認識し、第3話まで御剣の話を忌避しており、再会直後は御剣への恨み節のような言動が多い。前作で成歩堂は「御剣と矢張だけは何があっても絶対に信じる」と断言しており、前作最終話でもその言葉通り、殺人の疑惑に包まれた御剣を最後まで信じぬき見事に救い、和解している。そのため、失踪だけでこのように心境が変化しているのは不可解である。とはいえ、前作のラストで矢張に「裏切られていた」事が判明したため、それによって何かしらの心境の変化が生じた可能性はある。
      • これについて、DSの『蘇る逆転』で御剣が失踪するまでの空白の期間が補完される内容が描かれたのだが、後付ということもありやはり整合性には難がある。
      • 「御剣はいつでも全力でぼくをねじ伏せようとする。最後の最後までおぼろげに真相が見えたとしても」という成歩堂の台詞もあるのだが、確かに初対決の法廷ではそういう面があったもののその後の裁判ではことごとく共闘で真犯人を追い詰めているのでこれも違和感があるといえばある。
      • 御剣が検察に疑念を抱き、苦悩し、失踪するに至った経緯はこれでわかるのだが、それで成歩堂が恨む理由がわからない。というより、成歩堂は本作にて「負けたことで完璧主義を崩されたから失踪した」と指摘しており、『1』やリメイクでの御剣の受難がすっぽ抜けてる感がある。
  • 第1話のシナリオ。
    • 被害者の残したダイイングメッセージが犯人によるものだと暴くシーンがあるのだが、そこでの成歩堂の指摘は「被害者の同僚がプレゼントしてくれた野球のグローブが左利き用なのに、ダイイングメッセージが右手で書かれているのはおかしい」といった内容。動作によって利き手が異なる「クロスドミナンス」の存在や、野球をやっている人(特にピッチャー)の中には相手に有利を取るために右利き左投げが可能な人もいることを無視している。
      • 恐らくスタッフはこれらの野球の知識をよく知らなかったと思われる。
      • 「被告人が『被害者は左利き』と認識していたという事実があればいい」という擁護意見*8もあり、尋問を一周させればどの証拠品を突きつければいいのかわかりやすいヒント(というよりほぼ答えそのもの)がもらえるものの、上記の理由からここの答えで躓いたという人も少なからず存在した。
    • アニメ版第2期でこのエピソードが放送された際も、この点については一切変更が加えられていない。上記の擁護意見から、シナリオに対する致命的な矛盾はないと判断されたか。
  • 第2話のシナリオは、整合に関する不可解さとそれに合わせたような高い難易度で、当時からネット上で物議を醸していた。
    • 被告人・綾里真宵と被害者が霊媒のため内部から鍵をかける密室にいたところ、銃声を聞いて成歩堂たちが扉を破り侵入。中には被害者の銃殺死体(さらにナイフで刺されていた)と、霊媒で呼び出されたと思しき真宵と同じ服装の人間*9がおり、他には誰もいなかった…という状況。だが、その部屋の唯一の鍵が事件後に部屋の外の焼却炉から事件と無関係の少女・春美によって発見され、外部から人が入った可能性あるいは真宵が部屋から出た可能性が出される、という展開になる。
      • これについて、成歩堂は「部屋には真犯人が潜んでおり、真宵の意識を奪って被害者をナイフで刺し、鍵の入った真宵の装束を自分が着て出ていくことで真宵が殺人を犯したように見せかけようとした*10」「事件後、成歩堂が警察に通報するため外の公衆電話に向かっている間に焼却炉で処分したため、鍵が焼却炉に残った」と推理するが、真犯人にとってそのような着せ替え工作を行う意味がない。真犯人は真宵の装束と同じ衣装を予め用意すれば良いし、鍵も装束から取り出せば良いだけである。
    • さらに問題となるのが、この後の真犯人の行動と春美の動きの時間軸が合わないこと。真犯人は「事件当時は別室で寝ていた(実際、事件発生後もここにいた)」「そこに姉(霊媒中の真宵)がやってきた*11ので、説得して現場に一緒に戻った」「その間誰とも会わなかった」と主張する。それに対して成歩堂は「その時間帯に唯一の通路となる渡り廊下で春美がツボを割ってしまい、座り込んで直していたのだから会わないはずがない」とムジュンを指摘するのだが…。
      • 実際の真犯人の行動は「部屋の中に衣装箱と屏風の陰を利用して潜んでいた。被害者殺害後に共犯者が成歩堂たちを追い出し、その後真犯人は衣装箱を持って別室に戻って寝たふりをする。その間、共犯者が渡り廊下の焼却炉で衣装を処分」というもの。そして、春美の行動は「別室にあった衣装箱からマリを取り出して渡り廊下で遊んでいた(鍵はこのとき発見)が、その際にツボを割ってしまって修復、ちょうど直ったところで警察への通報を終えた成歩堂が来た」というもの。
      • これを合わせて考えると、春美がツボを割ったのは「事件当時」ではありえず*12、事件発生後ということになる。よって、成歩堂の主張する「現場に戻るときに春美と接触しないはずがない」は成立しなくなってしまう*13
    • 劇中では回想映像が断片的にしか存在せず、事件全体を通じての回想や人物の動きの解説図などは存在しない。回想シーンの一部は真犯人の虚言であり、共犯者の犯行に至っては一切映像がない。このことも、本エピソードの実態がつかみにくい・不可解であることの一因となっている。
    • アニメ版では現場となった屋敷の構造やトリックに用いられた小道具に変更が加えられ、着せ替えについては完全に抹消、春美と真犯人が接触しなかった理由も一応辻褄が合うようになった。事件全体の流れもきちんと映像化された上で解説がされている。
  • 第3話の「空飛ぶ人間」の真相は、シリーズでも随一のトンデモ展開としてよく名前が挙がる。
    • 雪の中で箱に突っ伏して死亡している被害者(死因は鈍器による頭への打撃)だが、犯人の足跡がない。その被害者の死亡している場所はピエロの控室の窓の眼の前であり、ピエロは「空を飛ぶマジック」で有名な被告人のマジシャンと同じシルクハットおよびマントの男が空を飛んで逃げた、と主張する(シルクハットは現場に落ちていた)。
    • 実際は、マントとシルクハットで被告人に扮した被害者が現場の箱を抱えようとしたところに、2階にいる真犯人がマジシャンの胸像を落としたというものだが、マジシャンの姿はその時の衝撃で被害者のマントが浮き上がって胸像に引っかかり、それを持ち上げたら空飛ぶマジシャンに見えてしまった、というのが真相である。そんなバカな*14
    • 推理小説のトリックには実際にやると物理的に不可能な例はいくつも存在するが、「衝撃でマントが浮き上がる」という物理的な無茶はそのシーンの映像もあってシリーズ中でも特にツッコミが入るポイントとされている。*15
      • むしろ本エピソードのこの真相を「『逆転裁判』シリーズはそういう作品なので仕方がない」とある程度の粗に目をつぶるファンも少なくはない。同社の『バイオハザード』シリーズの仕掛けに通じるものがあると言える。
    • また本件は事前に入念にトリックを考え、脅迫文でターゲットを呼び出すなど(脚本上の粗はともかく)綿密に計画を練っていたが、この「空飛ぶマジシャンの姿」を始めとしていくつも偶然が重なった結果全く違うものになってしまった*16という内容なのだが、振り返ると予定通りに計画が成功すれば、状況からして犯人は完全に特定され言い逃れできないという奇妙な状況になってしまっている*17
    • これ以外にも真犯人の状況とトリックの内容との妥当性や現場に存在するある証拠品の意味、犯行に及ぶまでの真犯人の心情と実践までにとった行動の疑問点など、大小さまざまな粗や説明不足が指摘されている。
    • エピソードの要素がサーカス・手品であった事、全ての真相が「偶然やすれ違いの果ての惨劇」といった点から、そもそもそういうテーマで作られたエピソードなのだろう(納得できるかは別として)。また、審理後に裁判長も「不思議な事件だった」と振り返っている。
    • なお『3』第5話でも「空飛ぶ人間」は使われており、こちらは犯人が意図した行為だが、空を飛ぶところを見せることは直接の目的ではなかった。
  • 3話探偵パートの会話シーンの中に、明らかに本来なら初日にすべき会話が2日目にされている箇所がある。*18
  • GBA版は誤植が多い(「もろちん」「わたしく」など)。DS版以降では修正されている。
  • 事件の関係者が、本筋とは異なるところで重大な犯罪を犯しながら裁かれていない。
    • 殺人事件の捜査中、あるキャラクターが失くし物をしたことがわかるが、後々他の人物が窃盗していたことが明らかになる。
    • その事実自体を証拠として突きつけることによってより真実へと近づいていくのだが、窃盗行為については開き直ったうえ、罰則を受けた様子もなく、その後持ち主に返却された様子もない。
    • 窃盗の実行者自体好みの分かれるキャラクターであることから、非常にモヤっとした展開となる。
    • さらに言えば前述の問題点の通り、ここでの証拠品の突きつけはやや難しい。突きつけた時点では決定的ではなく、カマをかけたらたまたま大当たりだったという必然性の薄いものとなっている。

賛否両論点

  • 上述したようにキャラクター描写については『1』からある程度の傾向は見えていたが、本作以降さらに強烈になっていくことに。
    • キャラクターデザイン担当の変更なども影響し、登場人物には奇抜な衣装や髪型の人物が増えた。
    • 前作から登場した人物でも、本作でデザインが変更されたことも。
      • 特に顕著なのが前作第3話に登場した警備員のオバチャン(大場カオル)で、前作では普通の警備会社の服装だったのだが、本作第4話で登場した時には全身タイツにテープレコーダーを胸に下げて金魚鉢を頭にかぶりおもちゃの光線銃を持つという、どう考えても不審者(マスコットキャラクターに扮しているにしては変化が中途半端気味。)としか言いようがない服装で登場する。*19しかも、このデザイン変更の理由は一切説明されない上、調書の写真でも金魚鉢を被った姿の写真が使われていたという。劇中の描写も前作ではシリアスな面があったのに対し、本作ではハタ迷惑な行動が多い上にギャグ一辺倒である。あまりに突き抜けているので却ってファンにはネタとして受け入れられた部分もあるのだが、幾らなんでも変化しすぎである。
  • 本作のライバルである新キャラクター・狩魔冥について、好みが分かれやすい
    • 前述の通り過剰に攻撃的な性格の人物として描かれているのだが、中でも特に非難されやすいのが、 裁判中にやたら鞭を振り回し、それを止める人がいるのが初登場時だけ という点。 単に心証が悪いだけでなく、法の番人たる裁判所で、裁判長や傍聴人、場合によっては警察官や係官が見ている中堂々と違法行為(違法以前に不必要に危なっかしい)を行い、それが当たり前に見過ごされる様子は、法治国家の前提を揺るがしかねない。
      • また、ムチをちらつかせて強引に意見を押し通すようなシーンもあり、「裁判は証拠が全て」とされるこの世界の原則に即していない印象を受ける。
    • 選択肢を間違えたときだけでなく、正しい選択肢を選んだ際にも鞭を振り回すため、正解時の爽快感が阻害されてしまう。
    • 以降のシリーズでは性格の変化などにより人気が上がったが、本作の時点では問題行動が目立ち、批判が多かった。
    • 言うまでもなく当然の話だが、現実の日本の裁判官は審議を円滑に進める責務とそれを阻害するものを排除する命令権がある。法廷内での撮影や私語禁止などはこれが根拠によるものでこんな行為は論外である。そもそも鞭は証拠品でもない限り持参は認められない。
      • もっとも、シリーズ通して裁判中の私語が多く、前作では法廷にカメラを持ち込む人物もいた逆転裁判シリーズの世界では、現実の決まり事と大きく違うようなのだが、前者はゲームの進行上致し方無い部分が大きく、後者はきちんと指摘された上で特別に許可を得ている。それらと比較して、本作における狩魔冥の行動は法廷以外でも普通に違法となる可能性が高く、必然性にも乏しい。さらに逆転裁判シリーズの世界には「法廷侮辱罪」という独自の法律*20があり、これにも違反している可能性が高いため、批判の声が大きい。
  • 前述した矢張が一切登場しない。
    • 前述した流れからすると主要人物の一人になると思った人が多いだろうが、理由は不明だが未登場だった。*21
      • 前作時点ではそもそもシリーズ化の予定がなかった事や本作の時点では「絶対に必要」「いないのはおかしい」というわけでもないが、御剣にイトノコや狩魔親子といった主要人物から、一回かぎりと思われたナツミや荷星、果てはオバチャンまでもが再登場をしてる中、いささか疑問ではある。ちなみに、主要人物だったのに本作で登場しないキャラでは星影先生もいる*22が、こちらはとくに問題にはなっていない。
      • アニメ版では如何なものかと思われたのか、最終エピソードにナツミと差し替えで登場した。

総評

重ね重ね述べるが、急遽作られた続編ということや、容量の都合で話数変更になった影響などもあって、主にシナリオ面で大小様々な問題点が見える作品であることは否定できない。
しかし、ゲージ制やサイコ・ロックなど、後のシリーズのフォーマットがほぼ完成形となった作品であり、後の作品の主要人物がほぼ出揃った作品でもある。
「次作への中継ぎ」のような印象で扱われていることも少なくないが、前述したどこか影のあるシナリオの雰囲気などからコアなファンも多い作品である。
決して前後の2作に劣らない良作と言えるのは間違いないだろう。


余談

  • 海外版では、ある場面の背景に小さく描かれたロブスターが卑猥なものに見える*23事を理由に描き直されている。
  • 最終話は犯人のある行動に関して不自然に残された謎があり、シナリオの都合上で出せなかったものではないか?と一部プレイヤーから考察がなされている。
    + 重大なネタバレを含みます
    • 残された謎というのは、犯人の行動が被害者のマネージャーだった天野由利恵を自殺させる原因になったという話についてである。
    • 本編の描写ではとある人物が犯人が由利恵を追い詰めて自殺させたという話をしており、被害者がそれを記す遺書を隠し持っていて犯人を糾弾しようとしたことが動機ではないかと目され、最終盤でそれが発見された上で犯人の卑劣な仕打ちが記されていた。しかし直後にこの遺書は被害者による偽造であると判明し、本来の内容には犯人について記載されていなかったのではないかと推測されるに至っている。
    • また由利恵はかつて犯人のマネージャーも務めており、上記のとある人物は「もてあそんで捨てた」と語っているが、その犯人の自室に由利恵のメッセージ付きの写真が今も保管されており、それに纏わる犯人の考えは特に示されていない。
    • なお、この犯人に由利恵に関する証拠品を突きつけると意味深な台詞を話すシーンを見ることが出来る。
    • これらの描写により本作に詳しい一部のプレイヤーからは、実は犯人は由利恵との関係は良好で、犯人が由利恵を追い詰めたという話はただの噂に過ぎないという考察がなされている。実際、犯人が由利恵を追い詰めたという情報を流した人物は過剰に由利恵に対して尊敬や愛情を持っていたため、彼女に近づく存在を否定的に見ていたらしき傾向はある。
    • この内容が真実だと犯人に対して同情できる要素が含まれてしまい、終盤に犯人を追い詰めるカタルシスが薄れることからあえてハッキリと描写しなかったのではないか、とも言われている。
    • 終盤で犯人に「有罪」か「無罪」を選択するシーンは、これらの情報を見てプレイヤーに判断して欲しいという意味合いも含まれているのかもしれない。
    • そもそも現実では「マネージャーが担当している芸能人に手を出す」というのはやってはいけない禁忌とされているので、由利恵に対してただの被害者と言えず同情しにくい、特に犯人は当時未成年であったことも考えると人によっては犯人の方に同情されてしまう内容でもあった。
    • 複雑だったためか、アニメ版では遺書は本物であると設定変更され、犯人への同情の余地が完全に無くなっている。
  • 移植
    • 『1』『2』『3』がそれぞれDS/Wiiウェア/Win/携帯アプリ/iOS/Android/3DSに移植されている。
    • 詳細はこちら
最終更新:2024年08月01日 20:20

*1 DS版で付与されたレーティングを記載。

*2 実際、本作以降『6』まで御剣が直接敗北する描写のあるエピソードは描かれていない。

*3 クリアによる回復が追い付かないダメージを受ける。

*4 最低ダメージは全体の6分の1なので、むしろ減少しているのだが、前作の1ポイント相当以上のダメージを受ける場所も多い。また、一撃死する箇所も若干だがある。

*5 要約すると「写真に写っている着ぐるみは裾を引きずっているので、中に入っているのは本来のスーツアクターより背が低い人物である」という、かなり回りくどい内容。

*6 心情的には許せなくとも一旦放置してから目的を果たそうとした方が簡単な筈である。

*7 攻略上はプレイヤーの意思では片方しか突破できないが、シナリオ上は両方達成される、という展開になる。

*8 被告人は「被害者が右手で字を書けるならグローブの準備に苦労しなかった」と発言しているので、被害者のペンでの利き手は左であることは確実である。ちなみに、被告人のキャラクター像と設定から「被害者は野球では右利きだったのでは」という説を挙げるファンもいるとか。

*9 作中の霊媒は体格や顔まで呼び出された人間の生前の姿に変化する。

*10 銃は被害者の所持品で、銃声で成歩堂が踏み込んだのは偶然。

*11 当初、共犯者が「霊媒中の真宵を押さえつけて除霊した」と主張していたが、その後撤回して霊媒中の真宵が逃げたと主張。

*12 廊下や部屋の構造から衣装の処分などを行っている犯人および共犯者と接触しないはずがないため。

*13 春美はツボを割った後、接着剤を取りに自室に戻っている。この空白の時間内に犯人が隠蔽工作を行った可能性もあるが、もちろん成歩堂の主張は完全破綻する。

*14 実際、相手検事も「いくらなんでもこれは無い」と突っ込み、法廷中の全員がドン引きしている描写からしても流石に無茶が過ぎることはスタッフも自覚している模様。

*15 映像については、元々旧シリーズのアニメーションは少ないコマ数で飛び飛びだったという側面もなくはないが…。

*16 被害者は本来のターゲットではなく、マントを着用してきたのも偶然で、凶器に胸像が使われたのも偶然。胸像にマントが引っ掛かったのも偶然であり、さらには「空飛ぶマジシャン」が目撃されたことまで偶然だった。

*17 犯人は刑務所に入るわけにはいかない事情を抱えている人間であり、それ故に被告人に罪を被せたと心情を吐露しているが、それなら当初の計画通りに犯行が完了していたらどうしていたのかという疑問が指摘されている。

*18 ショーで披露された空中浮遊マジックに関する内容。初日の時点で種は明かされているのだが、何故か2日目に秘密である風の会話になる。

*19 作中人物曰く「宇宙人」。次回作のスタッフロールでも自分で「どこからどう見ても宇宙人」とコメントしていた。

*20 現実世界の日本には「法廷等の秩序維持に関する法律」という類似例はあるものの、法廷侮辱罪という概念は無い

*21 なお、3で再登場した際になんとも彼らしい理由が明かされる。

*22 正確に言えば、3での登場は回想である為、時系列で言えば1での登場が最後と言える。

*23 ハサミを前方に出して海老ぞりした格好で料理皿の中に埋まっているのだが、胴体が直立した円筒、先端の隠れたハサミが2つの球体に見える構図となっている。しかもほんのり赤いため、どうにもそういう物体に見えがち