逆転裁判3
【ぎゃくてんさいばんすりー】
| ジャンル | 法廷バトル |  
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| 対応機種 | ゲームボーイアドバンス | 
| 発売・開発元 | カプコン | 
| 発売日 | 2004年1月23日 | 
| 定価 | 5,040円 | 
| 廉価版 | Best Price! 2004年10月1日/3,129円
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| 配信【WiiU】 | バーチャルコンソール 2016年3月2日/702円
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| レーティング | CERO:12歳以上対象 | 
| 判定 | 良作 | 
| ポイント | 成歩堂3部作の完結作 | 
| 逆転裁判シリーズ | 
 
概要
シリーズ初の5話構成。成歩堂に敵愾心を抱く謎の検事「ゴドー」との戦いが繰り広げられる。
「成歩堂の初恋」や「成歩堂のニセモノ」など前作から一転してコミカルなエピソードが多く、成歩堂の弁護士としての師匠である「綾里千尋(あやさと ちひろ)」の若き日の事件など過去のエピソードも明らかにされる。
最終話ではこれまでの出来事が複雑に絡み合い、シリーズ完結を飾るにふさわしい展開を見せる。
    
    
        | + | 『3』シナリオ面での特徴(ネタバレ含む) | 
『3』のシナリオは全体を通して共通するキーワードが存在する。それに応じたトリックも多用されている。
 
第4話は千尋が初めて法廷に立った時の話で、その時の相手は当時就任したばかりの『1』のライバル検事・御剣である。
この2人はどちらも「『1』の時点まで無敗」という設定であり、シナリオを担当した巧氏は公式サイトでこの対決の実現にかなり悩んだことを語っている。
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評価点
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シリーズ完結作に相応しいストーリー展開。
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謎の検事「ゴドー」と成歩堂と千尋を中心としたメインのシナリオは、今まで明かされなかった成歩堂と千尋の過去話が描かれており、シリーズファンを非常に満足させてくれた。
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『1』で終わったはずの事件が遺恨を残していた事が解り、『2』で残った伏線と共に全ての因縁に決着を付けていく。
 最終局面で流れ出す『1』の追及BGMのアレンジも多くの人に感動をもたらした。
 
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総決算にふさわしいキャラ陣営。
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お馴染みにメンバーから狩魔冥や須々木マコなども登場し、オールスター感は出している。
 
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推理ものとしても完成度が高い
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怒涛の展開や事件の伏線や推理など一般的な推理ものとしても非常によく出来ている。
 
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「サイコ・ロック」を解除するタイミングが分かりやすくなった。
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前作から登場した「証拠品を突きつけることで、相手の隠し事を暴いて証言を得るシステム」であるが、当時はサイコ・ロックを解除するのに必要な証拠品が揃っているかどうかを判別する方法が無く、証拠品が揃わないまま解除に挑んでしまう事態に陥りやすく、捜査パートの難易度を上げてしまっていた。
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対し本作では、証拠品が揃うとプレイヤーキャラがサイコ・ロックを解除できることを教えてくれるようになったので、捜査パートの煩雑性は改善された。
 
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成歩堂以外のキャラを操作できる。
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チュートリアルに当る1話で操作するのは若き日の千尋。そして彼女が弁護するのは何を隠そう、学生時代の成歩堂なのである。
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また、物語後半にはとある人物を弁護士として操作することも。
 
    
    
        | + | ネタバレ注意 | 
とある一件に巻き込まれ捜査が困難に成った成歩堂に代わり、なんと御剣怜侍が弁護士として代役を務める(ちなみに依頼したのは矢張)。そのときの対戦相手は『2』の検事狩魔冥ということもあり、皮肉にも「御剣の少年時代の夢が叶う(父のような立派な弁護士になる)」「狩魔の兄弟弟子対決」が同時に実現するエピソードとなる。
 
現実世界では「ヤメ検の弁護士」という法律家もいるが、逆転裁判世界での司法制度がどうなっているかは作中で語られていないので、これが法的に許されているかどうかは不明。
 
弁護士バッジはなんと成歩堂が貸し与えた。矢張は「段ボールで作った弁護士バッジで誤魔化せたくらいだから大丈夫だろ」と言い切っており、御剣も「大丈夫か、この国の司法は!?」と突っ込んでいた。
 
とは言うものの現実の日本の裁判でも弁護を行う「弁護人」は弁護士資格が必須なわけではない。簡易裁判において依頼人が望むのであれば法律に詳しい一般人を「弁護人」とするのは自由であり、
そのような弁護士資格を持たず弁護を行う者を「特別弁護人」と呼ぶ。
あの時点の成歩堂の立場としては能力的に、そして心情的に自分の弁護を頼める人間が他にいなかったのは明白であり、
 そしてよく見ると作中で「御剣は特別弁護人としてこの法廷に立つ」と明記されているため
おそらく作中の法制度や手続上もそれに即していると思われる。
 問題があるとすれば弁護士資格が無くても弁護人にはなれるのに、
弁護士の身分を示す証明であり、権利のない者が付けると罰せられる成歩堂の弁護士バッジを御剣が着用して法廷に立つことと
 (成歩堂が御剣を信頼して弁護士としての立場を一時預けた証明という表現なのは理解できるし、酷い風邪で言葉を発することも筆談もできない状態で意思を伝える方法というのもあるのだろうが)
 いくらなんでも敵側である検事と同じオフィスに出入りしており情報を知り得る現職検事がいきなり弁護席に立つという点だろう。
 
実際イトノコ刑事が「検事としてではなくて弁護側に立つ人間にはこの情報を出せない」という正当な主張をするのだが御剣弁護人はいつもの職権による圧をかけて情報を出させている。ギャグのように扱われているがかなりの問題行為で、
 他にも「検事としての自分を知ってる裁判官だとやりにくい」という理由で自分を知らない裁判官が担当になるように工作している。
 検事だとしても自分に都合のいい裁判官を選んで担当させるというのは論外な行為である。
 作劇の面で必要なのはわかるが、後の『5』における「検事も弁護士も不正をしまくる法の暗黒時代」の先鞭を切っていると言われても仕方がない。
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賛否両論点
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システム面に目新しいものはない。
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裏を返せばシステムの完成度が高く、これ以上改変を加える必要が無いともとれる。
 
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「霊媒」の取り扱いの変化(悪化?)
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今シリーズの醍醐味である「殺人事件の謎解きや法廷での証拠を使った論戦」と言った要素に「心霊や霊媒などの超自然的な要素を組み込むのはどうなのか?」という不満の声は以前からあった。それでも『1』『2』では「世界観の描写の範疇」と言えるレベルだったのに対して今作ではさらに一歩踏み込んで裁判の論証の中に霊媒というものがある前提で行われるものが出てくるようになった。
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現在は作品リリースをさらに重ねて霊媒や超自然的なものを使わずに話を作った作品や、逆に霊媒についてもっと踏み込んだ作品も出たことで相対的に目立たなくなったが当時はそれなりに賛否両論となった。
 
 
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コミカルゆえにシナリオとキャラが軽薄
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前述の通り、『2』に比べると(また『1』と比べても)コミカルな面が多く、関係者にもオトボケなキャラクターが多い。
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シリーズ準レギュラーの「オバちゃん」のような証人枠ならまだしも、当事者や被告人までギャグキャラの性質を持っているので、事件にシリアスさを感じにくくなっている。
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またそれゆえに「この人が一般人程度にしっかりしていればもう少し楽に解決できたのに」という局面が多い。
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要は、関係者が幼稚なせいで事件が複雑化したというプロットになっているので、ギャグとして受け止められるかストレス源になるかが大きく分かれることになる。
 
 
問題点
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『2』に比べると緩和されたが、本作でも難しい選択肢は存在する。
    
    
        | + | 『3』の難易度の高い選択肢の一例 | 
第2話の最終局面の尋問。証言自体に証拠品との矛盾はなく、特定のポイントをゆさぶることでクリアになるのだが、それ以外をゆさぶると即ゲームオーバー。
『2』のバッドエンド同様、これまでのストーリー内容を把握していれば突破できるが、プレイに間が空いてしまって細かい部分を忘れてしまった場合などは総当たりとなる。「ゆさぶる」だけなので『2』のそれよりは選択肢は少ないが。
「証言自体がそれまでで最長クラス(=ゆさぶるポイントが多いため選択肢も増える)」「正解を選んでも最初の部分は失敗と同じテキストが流れる」と、仕様も微妙に嫌らしい。
その正解のポイントが何故正解なのかという論理的な理由はそこまで難しいものではないのだが、この事件の審議は全体的に情報が二転三転するややこしい内容になっているため、心理的な面でも正答を見失い易い。
 
第4話の終盤。犯行現場である壊れた吊橋周辺の上面図を突き付けて「証人が容疑者に突き落とされたというのはウソだ」と指摘するのが正解なのだが、根拠に違和感が強い。
まず、「上面図で見ると、奥方向に突き落とされた場合、落下先が岩場なので、川に落ちたという事実と矛盾する」というのが正解の推理なのだが、その上面図では、証人が立っていたという地点のすぐ後ろに、吊橋の板が抜けて水面が見えている箇所が有るため、「この証言はこの隙間から落ちたということだろうから、特に矛盾していないな」と勘違いし得る。
また、「橋の両脇はワイヤーで保護されていたので、左右に落ちるのはもっと不可能」というのだが、簡単に人が通れそうな隙間は十分空いており、「突き飛ばされて落ちたというのは記憶違いでした。突き飛ばされて転倒したところを蹴り落とされたんです。現場は雨だったので橋も滑り易くなっていましたし」などと言い直せば容易に逃げられるはずなのだが、検事含めてそういう反論はせず、かなり狡猾な人物であるはずの証人が勝手にボロを重ねてくれるのである。
 
第5話ではゆさぶることで証人自身が自分の証言に矛盾がありすぎることを自問するが、その矛盾を裏付ける証拠品が正解にならない。
ここ以外にも、ゆさぶることで得られる「この証言、気になるな」といった独白が特に正解に関与していない場面が複数あり、ミスリードという問題でなく単に理不尽である。
 
また『2』でもあったような、プレイヤーが先回りして真相にたどり着き得る局面で「やや間接的ではあるが、真相を踏まえれば関係大ありな証拠品」が失敗扱いになることも少なくない。
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その他シナリオ関連
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『3』でも、トリックや場面設定に荒唐無稽なところや致命的な欠陥があるエピソードが存在する。特にラスボス関連はかなり怪しい、無理のある部分もある。許容できるかはプレイヤー次第か。
 
    
    
        | + | 第3話の殺人計画はいくら何でも無理がありすぎる。(トリックのネタバレを含みます) | 
その内容は「飲食店内で殺人を行った約30分後、常連客が来店したタイミングで犯人と協力者が変装してその事件を再演し、そちらを目撃させる」というもの。これにより、本来の事件の目撃時に気絶したウェイトレスの証言と食い違いを生じさせ、犯人に仕立て上げるという筋書きである。
元々毒薬を持参していたことからある程度の考えはあっただろうが、いつ常連客が来るか、突発的に知らない客が来ないか、被告人であるウェイトレスが途中で気絶から目覚めないか、そもそも気絶しなかったらどうするのかといった偶然の要素が多すぎる。
一応「かなり頻繁に通い詰めていた常連である」「普段お客が立ち寄らないほど廃れた店だと明示されている」「仮に気絶から目覚めても店側にも協力者がいるので何とかできた」「そもそも気絶しなければ一緒に殺してしまえばよかった」といった擁護は可能だが、それでもかなり粗が目立つ。
そもそも真犯人が最終的に殺人実行を決意したのは現地で被害者の行動を見てからなので、どのタイミングで殺すかですら偶然だった。
また常連客がウェイトレスの入れ替わりに気付かなかったのは「制服マニアで服しか見ていなかった」という理由。体型は多少近いものの髪型や髪色、更にメガネの有無まで違うので、さすがにこれで殺人計画を成立させるのは無理だろう。せめてカツラくらい用意されていれば…
しかも入れ替えた人物はかなりの反社会的な権力者の娘であり、常連客がもしも顔を覚えてしまえば真犯人を含めて全員処刑されるかもしれない状況でもあった。
重ねてダメ押しで被告人に罪を被せるために真犯人が行ったのが、成歩堂のフリをして裁判に現れ有罪に持ち込むという行動。
顔見知りである被告はもちろん、検事や裁判長もいつも通りなのに気付かないというのは当然異常事態であり、ここまで来ると雰囲気がコミカルとかという問題ではなく、この話そのものが低質なギャグである。
なお、この時の真犯人と成歩堂の共通点は「髪型が尖がっており、青いスーツを着ている」のみである。一応段ボール製の弁護士バッヂも付けてはいたが、『HITMAN』シリーズならいざ知らず、一応推理ゲームの側面を持つ本作ではやってはいけない部類のトリックだろう。
極論のそもそも論を言ってしまえばこんな手の込んだことをしなくても、その店自体が協力者である以上、普通に死体を処理して全員で知らぬ存ぜぬで通せばよかった話である。
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        | + | 第4話のシナリオ。(ネタバレを含みます) | 
トランクのカギがこじ開けられていたことが議論の論点となるのだが、死体を発見した当時と犯行当時に鍵がかかっていたのかは一切議論されていない。もしも鍵が最初から開いていたらだれでも入れられたという事なので、そこを明らかにしない限り議論自体に意味がない。そもそも犯行の凶器であるナイフの出所が明らかになっていない。弁護側としては潔白を証明するためにもナイフの出所は重要な筈である。
被告人は過去の殺人の罪で死刑判決を受けているのだが、実はその時の被害者は生きていて御剣はそれを開廷前から知っているのだがその事について言い始めるのは千尋に追及されてから。さすがに酷くないか?
被告人も被告人で過去の事件が狂言だったことを理由もなしにずっと隠していた、彼が最初に話していれば被害者や真犯人に捜査が及んで死刑判決にまではなることはなかったはず。
そもそも被害者が現場に来る必要はどこにもない、被告人から殺されても同情できない行為を行っている、自分の過ちを謝りたいというのであれば公表してからでもいいはず。
真犯人のトリックの中に被害者に変装をするというのがあるのだが、上記と同じ理由で真犯人が被害者に変装するというのもむしろ危険な行為であるはず。その場で問答無用で殺されかねないトリックでもある。
被告人は成年しているにもかかわらず14歳の少女の真犯人の事を「天使」と呼ぶなどロリコン疑惑があり、何回か真犯人の目の前で殺害をほのめかす発言をして、最後は弁護士を裏切っている。同情に値するか疑問が残る。
真犯人に動機がない、過去の事件の真相が明らかになっても問題になるのは被害者と被告人だけである。当時14歳の真犯人の責任になるはずがない。
過去の犯行の協力者である真犯人の妹について、この時点で言及がない。真犯人はともかく被告人が言わないのは不自然である。
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        | + | 第5話のシナリオ。(ネタバレを含みます) | 
この話の殺人計画には協力者がいるが、実行犯は協力者が非協力的であることを知っていたはずなのに、そこについては何の対策もしていない。
とある人物の計画を阻止しようとするのが被害者と協力者の思惑だったのだが、住職に相談をしていれば回避できていたのにそれをしなかった
真犯人の妹が閉じ込められるシーンがあるのだが、その時何故か救助を求めなかった。
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        | + | ラスボス関連(重大なネタバレを含みます) | 
ラスボスに関しては動機とトリックも無理がありすぎる。
すべての事件でラスボスにとって突発的な出来事であったはずなのに準備がよすぎる。
犯行のトリックに対して常に命がけであり、川に落ちてそのまま死亡、4話の被告人に遭った瞬間に殺される、ペンダントの処理ができずに逮捕される、きれた電線を凶器に使おうと近づいて感電して死亡、など自らの身の危険を顧みない危険なトリックばかりである。
そもそも彼女の生前の犯行動機は「殺人の罪を隠すために殺人を犯す」であり、本末転倒でもある。毒薬を使わなくても睡眠薬や警察に通報などで十分な場面がいくつもあった。
作中のラスボスの犯行について弁護士ユーチューバーのこたけ氏が弁護を検討したところ殺人について「殺人について証拠不十分による不起訴、公訴棄却」という結論になっている。
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本シリーズのお約束として「主人公が弁護する被告人は100%無実」というのが定番なのだが、本作ではとある話の被告人が実は本当に(殺人とは別件で)犯罪者である。
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しかも、裁判の制度上の都合による偶然だが、殺人の濡れ衣だけでなくその罪もチャラになってしまう。殺人のような凶悪犯ではないが、行っている犯罪がとある人物の浪費を支えるためという自己中心的な理由であるため少し釈然としない。
 
総評
続編が作られたことでより深く掘り下げられた物語は、『1』~『3』の初期シリーズが一区切りついた後も長く愛され続けている。
単体でもそれなりに楽しめる『1』『2』と違い、本作は前2作既プレイ者向けの面が強いのでそれらを遊んだあと結末を見てほしい。
余談
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移植
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『1』『2』『3』がそれぞれDS/Wiiウェア/Win/携帯アプリ/iOS/Android/3DSに移植されている。
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詳細はこちら
 
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続編の『逆転裁判4』では「新章開廷」として主人公を交代しメインキャラが一新された。
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2021年5月に大手ニュースサイト『ねとらぼ調査隊』で行われた「あなたが好きな逆転裁判シリーズのゲームタイトルは?」というアンケートにおいて『3』が1位に選ばれた。
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作中でその実態が明らかにならないまま終了する謎の証拠品が存在する。
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『2』には思わせぶりな情報を記載したブラフの証拠品が登場したが、本作のそれはそういった機能もなく、作中で推理の材料として提供される機会やムジュンの指摘に使用されることもないので、結局その証拠品が何を示していたのかが明かされないまま終わっている。
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一応、話の本筋に影響しないので、ストーリーの破綻などの影響は及ぼしていない。
 
    
    
        | + | その証拠品の詳細 | 
その証拠品は、第2話で入手できる「毒島のリスト」というファイル。作中で怪盗が狙った美術品と併記して謎の金額が記載されている、というもの。
留置場で被告人につきつけると「美術品の額としては安すぎる。闇取引でももっと高額のはず」という情報を得られるのだが、ストーリーの進行には無関係で、それ以上の情報を得られないまま話が終了する。
劇中描写からその正体を憶測するファンもいるが、公式から回答されたことはない。アニメ版でも存在がカットされている。
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最終更新:2024年08月01日 20:20