ナイト トラップ

【ないと とらっぷ】

ジャンル バーチャルシネマ(インタラクティブ・ムービー)

対応機種 メガCD
3DO interactive multiplayer
発売元 【MCD】セガ・エンタープライゼス
【3DO】ヴァージンゲーム
開発元 デジタルピクチャーズ
発売日 【MCD】1993年11月19日
【3DO】1994年6月25日
定価 【MCD】9,680円
【3DO】10,780円
プレイ人数 1人
備考 英語圏のみスーパー32X版・PC版も販売
2017年からリマスター版を各機種で配信
判定 賛否両論
ポイント Sega CDのローンチを飾った実写ホラーゲーム
プレイヤーは、監視カメラを見守る特殊部隊
侵入した怪物を"トラップ"ですかさず仕留めよう
良くも悪くもB級全開すぎるホラー映像
表現が刺激的すぎてレーティング団体設立の引き金に
人によって名作ともクソゲーともバカゲーとも


概要

「メガCD」の目玉タイトルとして送り出されたインタラクティブ・ムービー。北米では同ハードのローンチを飾った。*1
今作は最新ハードの性能をアピールする役割を果たし、後年では「実写ゲーム」代表格の一つに数えられている。
後継機のスーパー32Xに移植された他、セガの手を離れて3DOやMS-DOSに移植された。このうちメガCD版と3DO版だけが日本でプレイ可能となっている。ただし、メガCD版と3DO版では日本語吹替の声優陣が一新されており、映像鑑賞がゲームの肝となる事もあり別物と把握した方がいい。
メガCD版が日本にローカライズされた際は、『夢見館の物語』と共に「バーチャル・シネマ」と銘打って送り出された。

プレイヤーは監視カメラの視点で家屋を見守り、劇中の怪物を次々と退治していく。
ゲームとホラーサスペンス映画の融合を目指した独特のシステムは、それまでにない斬新な作風として反響を呼んだ。

あらすじ

静かな湖のほとりで、5人の若者が行方不明になった。
若者たちはマーチン家の別荘に招待された後、消息を断っている。
不可解な事件に困惑した警察は、特別捜査機関S.C.A.T.*2に捜査を依頼した。
別荘を調査したS.C.A.T.は防犯カメラとトラップによる奇妙な防犯システムを発見し、極秘のうちにシステムを外部からコントロールできるように改造、マーチン一家を監視していた。また若者が別荘に招待される事を知ったS.C.A.T.は、招待客を装って女性隊員ケリーを潜入させる。そして、S.C.A.T.メンバーとなったキミに防犯システムを使って若者たちを守る任務が与えられた。

(3DO版説明書より引用)


特徴

  • 舞台設定
    • ゲームの舞台は、湖畔のほとりの大邸宅・マーチン家。
    • この家には6人の若者が招待される傍ら、その陰では謎の黒づくめ集団「オーガー」が次々と侵入している。
    • オーガーは隙あらば住人を襲撃するため、護衛を任されたプレイヤーはこれを討伐しなければならない。
    • このゲームは「マーチン家の監視映像」という形を取りながら、リアルタイムで進行する。
  • ゲームの目的
    • プレイヤーは監視カメラを通じてマーチン家を注視し、次々と現れるオーガーを討伐していく。攻撃手段は後述。
    • 若者の誰かがオーガーに捕まると、その場でゲームオーバーとなり、ムービーは強制終了。
      • 「若者のいる部屋にオーガーが入ったから終了」という細かい位置関係の管理がされている訳ではなく、前半のうちはオーガーを逃したからと言って即座に若者が危険に晒される訳ではない。
      • ゲーム中には3か所のチェックポイントがあり、その時点で規定数のオーガーを捕まえていないと、若者が捕まる(こちらは直接の描写は無し)仕組みとなっている。
      • 後半からはストーリー上でオーガーが直接若者を襲うようになり、上手くオーガーを捕獲し若者を守らねばならない。失敗した瞬間、即座に若者が捕まってしまうためミスは赦されない*3
    • うまくオーガーを捕らえ続け、計25分近く展開される物語を最後まで見届ければゲームクリアとなる(映像全体のボリュームは1時間半)。
      • クライマックスにはボス的存在としてマーチン一家が直接動き出し、オーガーと同じく対処しなければならない。
    • クリア時にオーガーを全て捕獲していれば「パーフェクトエンド」、1体でも逃すと「グッドエンド」となる。
    • 進行状況の中断は周辺機器を活用しない限り基本的に不可。ゲームオーバーになると最初からやり直しである。
  • 監視
    • 監視するエリアはリビング、キッチン、寝室など、全部で8つ。
    • 一度に見られる映像は一か所のみで、自由に切り替えができる。
  • プレイヤーの攻撃手段となるのが、タイトルにもあるトラップ。つまり罠である。
    • 家には大量のトラップが仕掛けてあり、プレイヤーの手によって起動することができる。
      • 画面下部にはレーダーが表示されており、トラップの近くにオーガーが近寄ると赤くなる。この間にボタンを押すと、トラップを発動させてオーガーを捕獲できる。
      • 捕獲が確定すると、その下に書かれた「Trap/Captured」*4の文字が点滅する。これを確認したらカメラを変更して問題ない。
      • 「Trap/Captured」の上には「Possible」という数字があり、これは侵入済のオーガーの中で捕獲可能な個体数を示す。例えば3体侵入したのに1しか増えない場合、その中の1体のみが捕獲可能を意味し、他の2体は演出に過ぎないと思っていい。しかし後になって捕獲可能になる(Possible値も増える)場合もあるので、「Possible」の数字には常に気を配る必要がある。
    • 場面によっては、オーガー以外の誰かを捕獲するのに使用されることも。
      • また、状況次第では罪のない人を捕獲してしまえる場合もあり、即ゲームオーバーにならない場合もあるが、物語は悪い方向へと分岐して最終的にはゲームオーバーになる。
    • トラップとその発動装置にはそれぞれカラーコードという物が設定されている。両者のコードを同じ色に設定していなければ、トラップを発動させることができない。
      • カラーコードは発生装置側の方のみ、ボタンを押すたびにいつでも順繰り変更可能。
      • ゲーム開始時は双方のカラーコードがBLUEとなっており、問題なくトラップを発動できる。しかし家の住民はトラップ側のカラーコードを次々と変えてしまうので、その度に発動装置側の設定も変える必要がある。
      • 変更後のカラーコードは、家のどこかで住民の会話を聞き取ることで確認できる。なお、プレイ毎に 変更されるカラーコードはランダムで変わる ため、「変更後を覚えておけば…」という先回りプレイはできない。カラーは6つもあるので当てずっぽうは難しく、会話を聞き逃すのはかなり痛手となる。
      • また、住民が地下室で操作するまで変わらないので、発言から変更まではタイムラグがある。
  • オーガーの捕獲
    • 出現タイミングと場所は固定。
      • 取り逃すとアラート音が鳴るが、その時の画面右下のタイマーを確認することで、周回プレイの際にタイミングを把握することができる。
    • 画面下には、「侵入したオーガーの数」と「捕獲したオーガーの数」が表示されている。
  • 機種ごとの違い
    • 3DO版はメガCD版からUIが洗練され、PC版と32X版にも同様の物が取り入れられた。
      • 部屋選択アイコンと捕獲人数表示の位置が逆になり、自然な視線誘導で遊べるようになった*5
      • 攻略に必要な情報が一箇所に固められ、家の上面図を一目で見られるようになっている。
    • 3DO版以降は問題視された場面が削除された代わりに、画質が向上した(後述)。

評価点

  • 監視カメラの視点で物語を楽しむ、スリリングなコンセプト
    • プレイヤーはカメラの映像を通じ、何も知らない住人たちをこっそり見守ることになる。
      • 背徳感と緊張感を味わいながら遊ぶ独特の雰囲気は、ホラーという題材に上手くマッチしている。
      • 若者が楽しんでいる裏で、得体のしれない化け物がこっそり裏から近づいてくるギャップも、ムードを盛り上げてくれる。
    • ゲームを進めると、カメラに気づいた登場人物がプレイヤーのことを意識し、声をかけてくる。この描写はちょっとした没入感があり、雰囲気作りに一役買っている。
  • 突破口を推理しつつ、物語の全貌を少しずつ紐解く楽しさ
    • 今作は、プレイヤーの努力に見合った報酬の設け方がユニークである。
    • このゲームでは、オーガーの出現タイミングやカラーコードの変更タイミングを把握するにつれ、最初は見えてこなかった物語の全貌が少しずつ深まる仕組みになっている。
    • 初見プレイ時、プレイヤーはとてもストーリーを理解する余裕が無い。
      • オーガーはどこに現れるか把握できず、常にカメラを切り替える必要がある。ついストーリーが気になって耳を傾けようものなら、取り逃がした事を知らせるカウントが無慈悲に刻まれてしまうのである。
      • 当然、このまま放置すればゲームオーバーは必至。プレイヤーはオーガーの出現法則を把握しなければならない。
    • しかし再プレイの際は、一度見た出現タイミングを元にオーガーの位置を推理できる。何度もプレイし直せば、位置を完全に把握できるようになる。
      • するとプレイヤーはオーガー捕獲の時にだけカメラを切り替えれば良く、来たるべきタイミング以外は登場人物の会話を楽しんでいても問題無い。
    • こうして時間に余裕ができることで、初回では把握できなかった人物のストーリーも少しずつ明かされていく仕組みになっている。プレイヤーの上達に対応するように、自分で世界観を掘り下げていく楽しさが生まれるのである。
      • こうした形でストーリーが深まるコンテンツは他にあまり例が無く、固有の魅力が詰まっている。
  • このシステムに合わせ、周回をうながす工夫も随所に盛り込まれている。
    • 今作は死に覚えゲーとなっており、ストーリーを見直す機会は十分用意されている。
      • やり直しを要求されるストレスは「初回では追えなかったストーリーを見届けることができる」というメリットにより軽減され、長所と短所がうまく噛み合っている。
    • 複数のプロットが同時進行で進むのも工夫の一つ。
      • 1~2周だけではストーリーの把握が困難な代わりに、やり直しを要求された際に新たな物語を見出すのが楽しい。
  • メモを駆使することで、どんなプレイヤーでも地道に前進できるゲーム性
    • 3DO版の説明書ではメモの利用が推奨されており、これに沿うとカジュアルなプレイが可能。
    • オーガーの出現タイミングは毎回固定なので、何度も挑戦する度に攻略のヒントが浮かび上がってくる。
      • 最初は理不尽に侵入を許してしまいがちだが、登場時刻をこまめに記録すれば取りこぼしを阻止しやすくなる。
      • 再チャレンジ時にまた逃しても、出現場所は少しずつ絞られ、ゲーム展開は段々有利になる。
    • つまりプレイヤーが失敗すればするほど次の周回が楽になり、どんなにつまづいても、どんなプレイヤーであっても、努力に見合った見返りを確実に得られる。RPGのレベルアップのように、難しいテクニックを知らずとも確実に前進できるのである。
    • 自力で攻略チャートを作り上げ、確実に進んでいくその魅力は、マッピングを繰り返して攻略していくダンジョンRPGに近い楽しさがある。
  • バリエーション豊かなゲームオーバー
    • 特定のシーンではバッドエンド的な個別のゲームオーバームービーが入るが、「若者がオーガーに襲われる」「マーチン一家に吸血される」と言ったまともなものの他、「プレイヤー自身がトラップに嵌められる」「全てが終わった後で立ち去るケリーを捕獲する*6」など、思わず笑ってしまうようなものもある。
  • エンディングソングの「NIGHT TRAP」はなかなかの良曲。
    • 特にサビの部分の「ナイ~トトラップ♪」という発音は結構耳に残り、見事にクリアしたときの達成感はなかなか。
    • ストーリー中にも登場人物が実際に歌うシーンがある。

賛否両論点

  • 本作の暴力表現は、発売当時としては極めてショッキングなものとされた。
    • 一般的な映画に比べればかなりマイルド*7なのだが、ビデオゲームで行う内容としては当時の基準を逸脱しており、プレイヤーの恐怖心をそそったという。
    • 当時のセガは任天堂との差別化を打ち出すため、前代未聞な猟奇的描写を理由に敢えて本作の販売権を獲得したほどであった。
    • その内容は物議を醸し、ビデオゲームの歴史に関わる出来事にまで発展する(詳しくは余談で後述)。
      • 実はセガ内部でも「これを世に出したら問題になるんじゃないか」という声は前から挙がっていたが、それでも発売に踏み切ったのだという。当時の年齢推奨付き映画に比べると大した内容ではなく、一本のゲームだけで騒ぎが起きるのは杞憂と考えられていたようだ。
    • 以上のソースは『セガVS.任天堂 ゲームの未来を変えた覇権戦争』(2017年・早川書房)より。
    • 特に問題となったのが、前半のバスルームでゲームオーバーになった際のシーン。
+ 一応ネタバレ注意
  • 特定のタイミングでオーガーの捕獲に失敗すると、若者がオーガーによって血を吸われてしまう。
    • オーガーはドリル状の注射器のような装置を若者の首に打ち込み、装置に備え付けられたチューブとタンクに血が溜まっていく様子が描かれる。
    • 生々しさはあるものの、実際に出血する描写は無く、生理的にゾッとさせる類の描写となっている。
  • ただし これらの描写は現在の基準で見れば大した物ではなく、CEROに換算してもB~C程度のものでしかない。
    • のちの移植版において、北米レーティングのESRBはT判定(CEROで言うBとCの中間)、欧州レーティングのPEGIは12歳判定(CERO:B相当)でしかなく、日本のCEROは今作を収録した「メガドラミニ2」に対してCと判定している(つまり『ナイトトラップ』は確実にそれ以下)。
    • 裏を返すと、当時のゲームで馴染みの無かった実写表現は、プレイヤーにそれだけ大きなインパクトを与えていたのである。
    • また当時の北米ゲーム市場はセガが中高生以上のターゲットを開拓したばかりで、それ以前は「ゲームは子供の玩具」というイメージも根強かったようだ。
  • ちなみに3DO版や同時期の移植版は当該シーンがカットされ、周辺の映像がぶつ切りになってしまっている。
    • しかし何も知らずに見ると「オーガーが謎の機械で首を切断しようとしている」という誤解を招くような描写になっているため、これはこれで猟奇的に見えない事もない。
    • 後年のリマスター版は無事にノーカットで収録された。
  • インタラクティブ・ムービーのご多分に漏れず、ゲームらしい戦略性は控えめ。
    • ただし評価点にも書いた通り、(メモ帳使用前提なら)誰でも地道に前進できる敷居の低さがあるとも言える。
    • オーガーの出現位置やタイミング、カラーコードの変更タイミングなど、攻略に必要な映像タイミングを初見で推測する方法は一切ない。
    • プレイヤーはひたすら映像をザッピングし、「地道にオーガーの出現タイミング等を把握する」「特定の場面でボタンを押す」という地道な作業を行うことになる。戦略性と言えるものは全く無い。
      • トラップ発動ボタンを早く押してもペナルティは無く、レーダー反応前から連打していればそれだけでOKと見なされる*8。LDゲームやQTEのように「タイミングぴったりに押す」といった要素は存在しない。
    • 後年のリマスター版はオーガーの出現タイミングをランダムにするモードが追加され、映像のプレビューも一度に全て確認できるようになるなど、改善が図られている。
  • 上記を踏まえた上で、本作の受け取め方を人によって大きく変えるのがムービーの内容。
    • ゲーム性の薄いインタラクティブ・ムービーとなれば、映像の良し悪しによってゲームの評価も左右される。しかし肝心の内容はそこかしこにチープさの見えるB級ホラー映画そのもの。
+ よく挙げられるツッコミ所一覧
  • まず真っ先に挙げられるのが、トラップの内容。一言で言うとドリフターズのコントと同レベル
    • 忍者屋敷のごとく壁が回転して中に放り込まれたり、壁がピストンして窓の外に放り出されたり、階段が突然平らになって落とし穴にシュートされたり……
    • 発動の度にスモークが吹き付けてくるが、もはや「ガキ使」の「笑ってはいけないシリーズ」に代表されるバラエティ番組のよう。
  • オーガーのデザインもどことなくチープ。
    • 全身を真っ黒な衣装で覆い、でかいペンチのような変な武器(吸血装置)を振り回すというシュールっぷり。装置自体は恐ろしい代物なのだが……
    • 演技についても多くの素人が「ゾンビ的な何かしらの怪物」として考えるようなわざとらしい物で、得体のしれない化け物というよりまるで特撮番組の戦闘員のようで、人によっては恐怖感より困惑の方が先行しがち。
    • ゲームシステム上の関係だが、劇中で実際に若者を襲う個体以外はただ部屋の中をうろうろしたり無意味に物色するだけで何がしたいのかも分からない。「血を求めて獲物を探している」という設定なので理性は無い模様*9ではあるが、かと言ってストーリーイベント以外で若者に襲い掛かる訳でもなく、チープなデザインも相俟ってただの変質者にしか見えないこともしばしば。
    • オーガーを演じているのはスタントマンであり、このよたよたと歩くぎこちなさはいきなり落とし穴に落とされても対処できるようにらしい。
  • 特殊部隊とされるS.C.A.T.が悲しいくらい弱い。
    • 上司の厳しい態度とは裏腹に、あまりにもあっさりとバタバタやられていく。完全にかませ犬と化している。まあ、マーチン一家の正体を知れば、やむを得ないとも思えなくはないが…それにしても弱い。
      • うち3人は背後からオーガーに襲われ、抵抗する間もなくやられる。あまりにも隙を見せ過ぎである。
    • 上司は上司で開幕から何故かやたら当たりが強く、最初のブリーフィングを受けただけで「先が思いやられるよ」と吐き捨てられる。それだけでなく通信終了の度に機器を壊す、普通大問題だが?
      • 主人公に対しては一定時間での捕獲数が足りないだけでも(作戦中にもかかわらず)即刻クビを言い渡す滅茶苦茶な仕事ぶりだが、自身の部下の前述通りの不甲斐無さは徹底してスルー。本人も終盤の突入時にあっさりやられる。
      • それでいて、説明書には「素早く的確な判断で隊員たちを引っぱっていく」と書かれている。素早いのはプレイヤーへの解雇通告では?
    • ヒロインのケリーも「若いながら大変優秀」とあるが、作中の様子は他の若者と大差ない。銃は発砲する事なく即座に奪われるし、後半以降はプレイヤーに助けを求めながら逃げ回るばかり。この手のパニックもののヒロインらしいと言えばらしいが…大変優秀…?
  • ホラー作品なのに映像が全体的に明るい。
    • 後に明かされたところによると、撮影当時のゲームハードが出せる画質を考慮した結果らしい。
  • この他にも、後半になって唐突に登場する荒唐無稽な武器、要所要所の唐突な特撮描写、トラップにあっさり引っかかるマーチン一家など、ツッコミ所は満載。
    • 一応、マーチン一家はとても敵が多そうなので、「自分たちでもひっかかったら逃げられないほどのトラップを用意して屋敷を守る必要があった」と考えられなくもないが…彼らの正体を知った後だと、余計にツッコミ処になってしまう。
      • そもそもこれだけトラップを張り巡らせておきながら簡単に侵入とシステムの改竄を許すという杜撰ぶりはどうなのだろうか…。しかもシステムに繋いだケーブルはかなり目立つ。バッドエンドルートではバレて外されてしまうが、逆に言えばそうならない限り終始気付かないという節穴ぶりである。
    • S.C.A.T.が弱いとは上述したが、オーガーの方も特殊部隊に対してはやたら強い癖に、10代女子の細腕に簡単に力負けしたり、前述の武器(隣人の怪しげな発明)であっさり倒される情けなさである。
    • ゲームとして成立させる上で仕方ない点ではあるが、オーガーやマーチン一家がトラップの位置に来ても、然るべき時でなければ捕獲できなかったりなど、説明も無いストーリー上の都合に振り回される。
  • 登場人物についてはかなり投げっ放し。
    • プレイヤーに助けられた若者達は叫びながらマーチン家を飛び出していくだけで以降は登場せず、その後は語られない。ちなみにオーガーは家の外にもいる
    • オーガーに変装して侵入する隣人がいるのだが、地下室に入ったのを最後に以降は全く触れられない。
      • ちなみに彼はオーガーとして捕獲可能で、捕まえても特にペナルティは無い。まさかその体で話を進めている訳ではあるまいが…。
    • マーチン家に突入する際、S.C.A.T.隊員は5人居たはずなのだが、クライマックスには4人しかいない。
      • 突入時、2階の制圧に向かった隊員がいたのだが、彼は2階廊下を進む様子が映るだけで、その後降りてこない。しかし誰も気に留めない*10
    • マーチン一家のうち、ジェフだけはトラップで倒せなかった場合、抜け道と間違えて自分からトラップに引っ掛かって自滅する。倒せなければ即ゲームオーバーのサラ、後々ゲームオーバーの原因となるトニー、シーラ、ビクター*11と比較してあんまりな扱いであり、最早ギャグ。
  • その他演出・演技面もおかしな点が多数目に付く。
    • 明らかにカメラを意識している役者、そのシーンで一通り演じきったが中々次に進まず露骨に『待ち』に入っている様子の役者、キスシーンで大口を開けようとする、ハイタッチで何故か構えだけでタッチしない、首に機械を刺され血を抜き取られているのにいつまでも元気よく叫ぶ等。
    • 原語版では、俳優陣の棒演技も槍玉に挙げられている。*12
    • エンディングも率直に言って雑で味気ない。
      • マーチン家を全滅させ、ケリーがプレイヤーに礼を言って去っていくだけ。上述の通り救出された若者や、倒された隊員がどうなったのかは一切語られない。
      • バッドはバッドでこのシーンに生き残ったオーガーが映り込むシーンが雑に入り込む。しかも何故かカメラのド真ん前という非常に見づらい物。更にここからエンドクレジットへの場面転換もブツ切り気味という有様。
  • ただし映像面のリアリティにこだわりが無ければそれほど問題は無く、真面目なホラーゲームとして楽しんでいたプレイヤーも多い。
    • 特に当時のゲームは実写を扱える事自体が新鮮であったため、それだけで感動を覚えたという声もある。
  • 独特の安っぽさを「味のある作風」として受け止められるユーザーには問題無く、むしろ今作が長く愛されている要因にもなっている。人によっては本作を「バカゲー」とみなす向きもあるほど。
    • 突然始まる歌唱シーンや面白黒人といった、この手の映画のお約束もきちんと抑えてあり、スタッフもある程度狙って作っていると思われる。
    • 後半の展開も悪く言えばありがちな物だが、よく言えば王道まっしぐら。とりわけカルト映画好きにはたまらなく刺さる作品なのは間違いない。
  • しかし全てのプレイヤーにとって受け入れられたわけではなく、ゲーム全体ごと酷評するレビューも少なからず存在する。
    • 今作は斬新な作風や挑戦的な描写により「インタラクティブ・ムービーの名作」と評する向きもあるが、その陰では厳しい意見も少なからずあった。
    • 先述の通り、今作の魅力は「自力でストーリーを掘り下げる」という部分にも秘められており、ゲーム性も濃いとは言えない。肝心の映像部分を受け入れられないと、ゲーム全体がスポイルされるのは免れない。
  • 上記のB級映画っぷりに関連して、不条理かつツッコミどころ満載なオープニングは語り草となっている。
+ 詳細
  • ここでは上司がチュートリアルを行ってくれ、物語のあらすじや基本的な背景設定がわかるようになっているのだが、実はこの間にも裏で物語は進んでおり、オーガーは平然と家に侵入している。
    • 一通り話を聞いてゲームを開始してみれば、ゲーム内タイマーは2分くらいを指しており、オーガーは10回ほど侵入している始末。チュートリアルを聞いたらダメなゲームなど他にあっただろうか……
      • ちなみにこの時点では獲物となる若者はまだマーチン家に到着しておらず、家には主人たるマーチン一家しかいない。にもかかわらず続々と侵入していたり、それに全く気付かないマーチン一家などツッコミ所が早々に飛び出す。
    • 幸いメガCD版・3DO版ともに、説明書にはこの仕様があらかじめ書かれているので、初見でも回避することは可能。しかし初見は大抵、説明を聞くだろう…。
  • メガCD版の場合、この時に操作用の装置として出されるのはメガドライブのコントローラー
    • ゲームオーバーになると、このコントローラーを引っこ抜かれてしまう。
    • セガ以外から出されたバージョンだと、このチュートリアルのムービーは丸々差し替えられている。
  • 更にこのオープニング、最後まで見ると「怖気ついた」と見なされてクビにされ、そのままタイトルに戻される。
  • 後述のリマスター版では他のゲームと同様にオープニングは本編とは切り離されており、終わるまでゲームは始まらない。最後まで見てもクビにされないし、スキップも可能。
  • 良くも悪くも理不尽さ全開
    • 評価点に書いた通り周回をうながすシステムにはなっているのだが、それでもやりすぎなのが否めない。
      • 特にメモ帳無しの場合は難易度が爆上がりし、記憶力に自信のある人向けの高難度ゲームとなる。*14
    • ゲーム後半は失敗すると一発アウトのシーンが多く、20分近いプレイが全て水の泡になってしまう。
      • ある場面でケリーのヒントを鵜呑みにして行動すると、即座にゲームオーバーになってしまう*15。しかもこのゲームオーバーではケリーから「どうして!?」と責められる。お前の言う通りにしたからじゃい!
      • 更に酷いものだと、オーガーを捕まえてすぐカメラを切り替えないとバッドエンド確定となる場面がラスト直前に仕込まれている。
    • ゲーム前半にもパーフェクトを目指す上できついシーンがちらほらと見受けられる。即ゲームオーバーでなくとも、前の個体を捕獲後にすぐに適切なカメラを切り替えないと間に合わないオーガーも複数存在する。
      • 最初のコードチェンジからして、直前のオーガー捕獲から即座に切り替えてギリギリ聴けるようなタイミング。パーフェクトを目指すと本当に気が抜けない。
    • 捕獲可能なオーガーとそうでないオーガーの違いが最初のうちは判別が難しい。
      • メインストーリーに絡むオーガーは捕獲不可のものが多く、可能だとしても特定のタイミングまで待つ必要があり、それを注視していた所為で通常のオーガーを見逃す事も珍しくない。
      • そこで「Possible」の数字が頼りとなるのだが、一部数字が動くタイミングがトリッキーで逆にプレイヤーを翻弄する「トラップ」と化しているシーンもある。
      • 捕獲順は侵入順と同じとも限らず、例えば寝室に侵入したオーガーがトラップ発動地点に来るまでの間にリビングに別のオーガーが進入し、そちらの方が先にトラップ発動地点に来てしまう。というケースもあり、注意深く観察していても嵌められることすらある。
    • コードチェンジは合計4回行われ、緊張感を与える要素として機能しているのだが、その中で間隔が非常に短いものがある。
      • 最後の4回目は3回目のチェンジ後、僅か1回の捕獲後に行われる。敵(プレイヤー)への攪乱の目的だとしても早過ぎるだろう。
      • しかもこの4回目は日本語音声の場合、色を言うのが当人が部屋に入って口を開いた直後であり*16、知らなければ聞き逃す可能性が非常に高い初見殺しとなっている。
    • 実機ROMで遊ぶ場合、別売りの外部メモリーを使ってディスク切り替え時の一時セーブを退避させておくのも手である。
      • 通常だとこのデータは再開時に削除されるが、本体の外に置いておけば無視できてしまう。少しずるい裏技だが、これによってゲーム中盤から何度もやり直す事ができる。

問題点

  • メガCD版は画質に関する批判が多い。
    • 元々メガドライブは写真や実写映像を映し出せるようには作られていない。画面に同時に映し出せる色は64色しか無く、実写映像を扱うとジャギーや淡さが目立ってしまう。
    • 3DO版以降は3万色以上扱えるようになり、画質の問題解消された。
  • 3DO版は後半に行くにつれて徐々にローカライズが雑になってゆく。
    • 声優の好み良し悪しを除いても、外来語をそのままカタカナ語として引用することや、翻訳演出の担当が発言意図を組み入れていない台詞が飛ぶことは、メガCDが先行する以上粗と見られかねない。
    • 単純に全体的な演技力自体もメガCD版より劣る。メガCD版が有名所を押さえているという点もあるが、そもそも台詞に抑揚が無かったり活舌が悪かったりする人物も何人かいるのでメガCD版とは比べるべくもない。
  • 完全クリアを目指すと、どうしてもストーリーを聞き取れない場面がいくつか出来てしまう。
    • オーガー出現の裏で重要なストーリーが進むシーンもあり、完全クリアを目指すと聞き取ることが不可能になる。
      • それでいて、ベストエンドを見るにはオーガーを1匹たりとも逃すことが出来ない。
    • マーチン一家やオーガーの正体が明かされる重要なシーンにオーガー捕獲を強いられる場面も。
      • 気軽に周回できないゲーム終盤に来るのも厄介である。
  • 真エンド条件がわかりにくい
    • 今作は全てのオーガーを捕まえた上で、"ある事"をしないと真エンドにならない。真エンドの条件を満たせなかった場合、上述のような演出の雑さとは言え後味の悪い幕切れとなる。
    • しかしその条件はわかりづらく、プレイヤーによっては真エンドの存在に気付く事すらままならない。
+ 真エンド条件
  • その条件とはジェフ(マーチン一家の長男)を捕獲する際、レーダー反応直後にボタンを押すのでは無く、一度見送った上で再度レーダーが反応してから捕えるというもの。
    • これを行わないとオーガーを1匹以上取り逃がしたのと同じ扱いになり、ラストシーンでオーガーがケリーの背後を取る場面で幕を閉じてしまう。
  • なお間違って一度目にトラップを発動させた場合、S.C.A.Tの隊員もトラップに巻き込まれてしまうため、間違ったプレイングだと推測することは可能である。
    • また、この直前には、同じ条件でトラップを発動させないと突破できない場面があるので初見で気付くのは無理としても、勘付きやすくはなってはいる。
  • しかし「同時にジェフも問題なく捕らわれている」「オーガー捕獲失敗時のアラートが鳴らず、通常通りストーリーが進行する」「失敗の内容とバッドエンドの内容が一致していない*17」という様々な条件が重なり、ここに分岐点があると気付くのは難しくなっている。

総評

当時一般的では無かったCD媒体のアドバンテージが大きく活かされた作品。
今作の実写映像がもたらす表現は92年のゲームとしては斬新な物として受け止められ、インタラクティブ・ムービーの名作として高く評価されている。

ただしゲームジャンル自体が人を選ぶ上に、要の映像部分はゲームと見るか映画と見るかで見方が変わる。
まじめにホラーとして恐怖する人もいればバカバカしいB級ドタバタコメディとして楽しむ人もおり、メディアや媒体によって扱いは安定していない。
本wikiの判定で良し悪しを一意に説明するのは難しく、ネット上ではウェブサイトやレビュアーによっても違った感想が飛び出してくる作品である。
確実にわかるのは、そんな作品を送り出した米国セガの野心と、チャレンジ精神の凄さである。

ゲーム業界に影響を与えたホラー要素がどのような物だったのか、それが今の視点だとどう映るのかなど、グラフィックの進化の歴史を知りたい人にとっては新しい発見が待っているかもしれない。


余談

開発背景

今作は企画成立から発売まで、かなりの時間を要した事で知られている。
以下のソースはYouTubeの『My Life in Gaming』チャンネルで行われた25周年記念インタビュー、および『セガVS.任天堂』より。

  • 企画の原点は9年前の1983年、アタリショックの直後にまで遡るという。
    • 開発者であるジェームズ・ライリー氏はユニークな新型ゲームハードを紹介され、今作の元となるアイデアを思い付いた。
      • その新デバイスは"NEMO" (Never Ever Mention Outside)と呼ばれ、4つのVHSを同時再生して自由に映像を切り替えられるというものだったらしい。
  • やがて『Scene of the Crime』と呼ばれるプロトタイプが開発され、NEMOの発売元であるハスブロ社に提出した。
    • これは「監視カメラを切り替えて、盗まれた金の隠し場所を特定する」という5分程度のゲームであった。
    • このプロトタイプはハズブロから好評を得て、本格的な開発がスタートすることになる。
  • 当初は厳重なセキュリティのかけられた億万長者の家を舞台にNINJAが忍び込んでくるという物であったが、紆余曲折して製品版のシナリオに落ち着いた。
    • 16日間の撮影、数ヶ月にわたる編集、計6ヶ月に渡る開発の末、1987年に本作は完成した。プロットが特殊な事もあり、撮影時は同期のタイミングに苦労したのだとか……
  • ところが発売の直前になり、NEMOそのものが発売中止となり、『ナイト トラップ』もお蔵入りになってしまう。
    • 販売予定の価格があまりにも高かったことに加え、同時期には遥かに安いNES(海外版ファミコン)の襲来が迫っていたため、とてもしのぎを削る状態では無かったようだ……
    • その後はかの任天堂版プレイステーションに移植が検討されたのち、当時ソニーと懇意にあったセガが今作を拾い上げた。
      • 当時のセガは「任天堂に子供向けのレッテルを張り、向こうにはできないクールなゲームで勝負する」という方針を打ち出していた。NEMOから移植できるゲームは複数あったが、最も過激だった『ナイト トラップ』は消費者に選択の余地を与えるとし、下手すればスナッフフィルムとも捉えられかねない事は知りつつも勝負に出たという。
      • 媒体をVHSからCDに変え、世に出たのは92年秋。撮影から発売までに、実に5年もかけた難産タイトルとなった。
      • OPに出てくるメガドラコントローラーのシーンは、この移植のためにわざわざ新録したらしい。

表現問題

以下の情報は主に、英語版Wikipediaの記事と『セガVS.任天堂』を中心に抜粋。

  • 先述の通り、今作の表現は北米で大きく物議を醸し、アメリカ合衆国議会公聴会にて槍玉にあげられる事となった。
    • 『ナイト トラップ』の少し前には更に過激な『Mortal Kombat』が物議を醸したばかりで、今作にも厳しい目が向くのは必然であった。
      • こちらも公聴会で精査の対象となっている。
    • 先述したゲームオーバーシーンは「婦女暴行を助長している」とされ、非難の対象とされてしまう。
      • ただしこのシーンは「怪物が血を吸おうとしている」というバックボーンがあり、別のシーンでは男も同じ攻撃を受けている。セガ自ら過激さを認めるようなゲームではあったが、議会の指摘は言いがかりとの見方も強い。
      • そもそも問題のシーンに出てくる吸血装置は、暴力描写をマイルドに抑える目的で描かれたものであったとされている(後のPC版収録のドキュメンタリーより)。
      • 後年、デザイナーの一人は英国のゲーム誌『Retro Gamer』の中で、『Mortal Kombat』と同一視されたことに対して立腹する様子を見せていた。
    • この議会には北米ゲーム市場のツートップだった任天堂とセガの代表スタッフが呼ばれており、ゲームの暴力表現に対する弁明の機会が与えられた。
      • しかしこの議会では両社のシェア争いを巡る思惑も絡んでおり、任天堂側の代表者は『ナイト トラップ』を取り出して「ウチはこんなゲームを出さない」とネガティブキャンペーンを行った。対するセガ側も負けじとスーパースコープを取り出して「連射式機関銃をレーティング無しで販売している」とdisっていた(このとき間違えて「これはセガの商品なんです」と言ってしまう一幕も見られたという)。
      • 日本のゲーム市場からは考えられないギスギスっぷりだが、当時の北米のゲーム市場は任天堂とセガが拮抗していたうえ、セガが積極的に比較広告を打ち出して喧嘩を売り続けていた背景もあった。
    • こうして各企業は対策を講じる機会が与えられ、世界初のレーティング団体ESRB発足へとつながったという。
      • この団体によるレーティングは2022年現在も続いており、CEROの礎になったことでも知られている。
    • ちなみに公聴会は思わぬ宣伝効果を生み出したらしく、後日『ナイト トラップ』は5万本ほど売り上げを伸ばしたとのこと。
  • だが同年のクリスマス商戦を待たずして、世間の『ナイト トラップ』に対する風当たりは厳しい物となっていた。
    • 一部の玩具専門店では発売を取り下げ、セガも増産を自粛する羽目に至ってしまった。
    • あげくヒロインが叫んでいるだけのパッケージ(画像)が性差別扱いされるという過度な批判まで行われる始末。日本語版や他機種版では全て別のデザインに差し替えられてしまった。
    • こうした事情により、リマスターや移植などで日の目が当たった際には安堵するファンも少なくなかった。

その後の展開

  • 後に欧米市場のみ、スーパー32X版とMS-DOS/Mac版が発売された。
    • 32X版の発売元はメガCD版と同じセガ。PC版は開発元のデジタル・ピクチャーズから直々に発売されている。
    • 32X版は日本でも『コープス・キラー*18』も同時に発売予定だったが、遊ぶにはメガCDも用意する必要があり、ハード普及率の関係か発売されることはなかった。
  • 開発元のデジタル・ピクチャーズは93年11月に、今作のシステムを継承した『Ground Zero :Texas』を送り出した(日本未発売)。発売はソニー・イメージソフト。
    • また、同じく今作のシステムを継承した作品としてはメガCDにて『ダブルスイッチ』が存在し、こちらは1995年3月24日に日本でも発売された。
  • 2014年には原作スタッフ達の手で、リマスター移植のためのクラウドファンディングが立ち上がった。
    • しかし特典の微妙さや実現性の低い公約が足を引っ張り、企画は失敗に終わる。
      • 資金は33万ドルを目標としていたが、4万ドルも集まらなかったとのこと。
  • しかしその2年後、版権を持つスタッフが原作スタッフ達に積極的な働きかけを行った事により、再び移植の話が立ち上がる。
    • 先述のドキュメンタリー映像によると、ソースコードやマスターテープは既に残っていなかったがコピー映像はかろうじて残っており、当時のスタッフが移植に取り掛かったという。
      • ソースコードが残っていなかった都合、スタッフは各シーンの再生位置を確かめるために原作を何度もプレイし直したのだとか。
  • そして翌2017年、"25th Anniversary Edition''と銘打ったリマスター版がPS4/Steamにて配信された(英語圏のみ。Steam版は日本からでも購入可能)。
    • コレクターエディション版の外装は当時バッシングの憂き目にあったSega CD版を意識している。やはり問題は無かったようだ……
    • このリマスター版はUIが一新され、各シーンの映像がプレビューされるため、原作よりもかなり遊びやすくなっている*19。プレビューのオフも可能。
      • 画面切り替え時のロード時間も短くなり、テンポも向上している。
      • コンティニューも追加されたが、再開地点は約半数のオーガーが侵入した地点(事件が大きく動き出す直前)のみ。それでも問答無用で最初からのオリジナルに比べれば親切設計だが。
    • 特に画質の向上っぷりは顕著。
      • 60fpsになった上に発色も鮮やかとなり、リマスターの強みが存分に活かされている。
    • オーガーがランダムに侵入するsurvivor modeも実装され、遊びの幅が広がった。
      • ストーリーは無く、オーガー侵入ムービーがランダムで流れる。侵入順が予測不可なのは勿論、ムービー毎に異なるトラップ発動までの間隔も把握しなければならず、難易度は高い。
    • ギャラリーモードも追加された。特典映像が楽しめるだけでなく、分岐ごとのシーンも容易に楽しめる。
      • 設定資料やコンセプトアートの閲覧も可能だが、解禁条件は「◯◯がオーガーに捕まる」「××を誤って捕獲する」などのゲームオーバー巡りが主である。ギャラリーで閲覧可能なムービーも本編で見たものだけなので、ただクリアを目指すだけではなく未視聴のムービーを探す楽しみも付加された。
    • そして先述の前身作品『Scene of the Crime』もまさかの移植を果たした。
      • パーフェクトエンドの特典扱いなので、原作以上にパーフェクトを狙う意義が生まれた。
      • この『Scene of the Crime』を正解、不正解の両方でクリアすると、本作のタイムラインを参照可能になる。しかし当時の紙に描かれたものを撮影しただけなので非常に読みにくい。
    • オープニングは3DO版以降の物が使用されている。
      • Steamでスタッフが答えたところによると、メガCD版OPはセガに版権があるので使用できなかったらしい。
    • 翌年にはSwitchとPS Vitaにも配信された。かつてのネガティブキャンペーンを巡る逸話もあるため、任天堂ハードへの移植は驚きの声も挙がっている。
      • いずれも海外のみの配信だが、何故かSwitch版はメガCD版の日本語吹き替えも収録されている。公式サイトやニンテンドーeショップの対応言語表記にはJapaneseは含まれていないが、当初は日本版発売の予定もあったのかもしれない。Switchソフトは海外アカウントを使って日本からでも購入が可能なので、国内で遊ぶ敷居は大きく下がった。
      • ただ、テキストは英語かフランス語のみ。ゲーム中にテキストはほぼ無いとは言え、操作方法の確認には少し手間取るかもしれない。また、オープニングは3DO版以降のものを使っている都合か日本語吹き替えは無く、懐かしのエキサイト翻訳ばりの滅茶苦茶な日本語字幕が表示される。他にも一部、英語音声のままのムービーもある。
  • いずれも日本未発売ではあるが、本作の継承作品は他にもいくつかリマスター化されており、上記の『コープス・キラー』『Ground Zero :Texas』『ダブルスイッチ』も全て該当している。
    • 中でも『ダブルスイッチ』は2016年に先にスマホアプリ版が出ており、その移植作業を手掛けた人物は本作リマスター版も担当している。
  • 2022年秋発売のメガドラミニ2に、今作が収録された。
    • 同機はメガCD専用タイトルも収録対象に入っており、北米ローンチかつ色々と話題を呼んだ今作は納得のチョイスである。
    • バーチャルシネマとして共に送り出された『夢見館の物語』も同時収録されている。

その他

  • 今作には写真撮影スタッフとして、後に『フォレスト・ガンプ』の監督を務めるドン・バージェス氏が参加していた。
  • また、今作でS.C.A.T.隊員のケリーを演じているのは日本でも放映された人気シットコム*20『アーノルド坊やは人気者』のキンバリー・ドラモンドを演じていたダナ・プラトー氏である。
    • 当時の彼女はスキャンダルまみれなせいで女優としての仕事がほとんどなく、B級映画やソフトコアポルノに出る程度だった。とはいえ、かつての大スターを起用した試みは意義あるものだったといえる。惜しむらくはこれが彼女の復帰作としていい方向にはあまり繋がらず、後に34歳の若さで急死してしまったことだが…。
最終更新:2024年04月09日 21:49

*1 日本では1年近く遅れて発売されている。後述する表現絡みの問題が影響したと見られる。

*2 メガCD版は"Sega Control Attack Team"の略とされており、セガ以外から出されたバージョンだと"Special Control Attack Team"の略とされている。

*3 一部の若者は捕まってもゲームは続くが、遅かれ早かれそれが原因でゲームオーバーとなる。

*4 日本のメガCD版のみ「Trap」、他のバージョンは「Captured」となっている(3DO版以降は7セグメントによる大文字表記)。メガCD版は日本人でもなじみ深い単語になった反面、「Capturedが点滅=捕獲に成功した」という直観的な表現が損なわれてしまった。

*5 アラブ圏以外の人間は、視線を動かす際に左から物を見る習性がある(文字を読むときの癖によるもの)。このため3DO版以降は「部屋を選択する」→「カメラの映像に視線を映す」という動きを直感的にこなす事ができる。

*6 パーフェクトエンド中のみ可能なので、これの為にオーガー全捕獲を成し遂げなければならない。

*7 これは当初発売元になるだったハズブロ社が、厳しいコンプライアンスを要求していたのが由来である。具体的に言うと、今作はバスルームや軽めの着替えシーンがあるのにシャワーシーンは一切ないという、あからさまな自主規制が見られるほど。

*8 ただし状況によってはそのようなプレイをしていた場合護衛対象をトラップにはめてしまうこともあるので注意は必要。

*9 あるシーンではハイタッチしたり、斧で扉を壊したり、シャワー室に隠れて上から外を覗っていたり、そもそも吸血装置を活用したりと、理性の無い怪物らしからぬ行動も取るが。

*10 ちなみにこの隊員も捕獲可能だが、上述の隣人と違って即ゲームオーバーになる。

*11 トニーはケリーを捕まえてトラップの情報を吐かせる。ビクターとシーラはサラが倒された後にケリーを襲う。

*12 日本語版は吹き替えだけなので、この演技を聞く事は出来ない。日本で聞く場合は、メガドライブミニ2にて言語設定を英語にして遊ぶか後述するリマスター版をSwitchの海外アカウント等で入手する必要がある。

*13 ちなみに「オープニングデモを最後まで見届ける=プレイを放棄した」とみなされるゲームは他に『アイドルマスター』が、チュートリアルを最後まで見ると罵倒されるゲームは『michigan』が存在する。前者はアーケードゲーム、後者はゲームオーバーにはならないのでまた事情が異なってくるが。

*14 3DO版は説明書でメモの使用を推奨しているが、メガCD版には特に誘導が無く、ネット上のプレイ動画や当時の雑誌レビュアーの多くはメモ無しで遊んでいるのが確認できる。

*15 3DO版では、説明書であらかじめその存在が仄めかされている。

*16 「もう一度コードを変えましょう。○よ。」という様子。英語音声ではもう少し喋った後に色を言う。

*17 トラップに巻き込まれてしまった隊員が、真エンドではオーガーに対処してくれていたのではないかという推測は可能。しかし救出しても情けなくその場に倒れ込んでしまうので、本当にやってくれたのかは少々怪しい。

*18 実写映像でシューティングを行う、迷作インタラクティブ・ムービー。日本では3DO版しか遊べないうえ、出荷本数が少なくかなりのレアソフトとなっている。こちらは2019年~2020年にかけてPS4/Win/SwitchでHDリマスター版が発売された。

*19 ただ、賛否両論点で上述した通り、捕獲順と侵入順が不同のオーガーもおり、プレビューで正確な順番を把握していたが故に失敗し得るケースもある。

*20 「シチュエーション・コメディ」と呼ばれる物のうち、特に「舞台や登場人物の顔ぶれがほぼ固定」、「登場人物が毎度さまざまな状況・展開で立ち回るという話が中心」となっている基本1話完結のコメディのこと。