桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~

【ももたろうでんてつわーるど ~ちきゅうはきぼうでまわってる!~】

ジャンル ボードゲーム
対応機種 Nintendo Switch
発売元 コナミデジタルエンタテインメント
開発元 ロケットスタジオ
発売日 2023年11月16日
定価 6,930円
プレイ人数 1~4人
判定 良作
ポイント 舞台は『WORLD』以来の世界規模
ベースは『令和』
日本が舞台でないことに賛否
桃太郎シリーズ


概要

桃太郎電鉄シリーズ』の第24弾であり、前作『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』(以下『令和』)以来3年ぶりの新作。
『令和』と異なり舞台は地球規模の世界を舞台としており、海外(の特定の国)を舞台にした作品で言えば『桃太郎電鉄USA』以来、世界各国を舞台とした作品としては、DS版『桃太郎電鉄WORLD』以来となる。

2023年2月9日の「Nintendo Direct 2023.2.9」で開発が発表された。
本作では舞台を地球単位としているためか、マップが平面ではなく球体を意識したものになっているのが特徴的である。

新要素・変更点

本作はシリーズ作品であるため、基本的なルールは省略し、『令和』からの新要素・変更点を解説する。

舞台が世界規模になった

  • 『令和』をはじめとした本シリーズの基本的な舞台は日本列島であるが、本作では舞台が地球全土に拡張された。
    • 1国につき1駅しか物件駅がないケースも存在するものの、主要な国についてはほぼ網羅されている。
    • マップが広くなっているため、空路が増えている。
      • 明らかに空路の移動を妨害するカードも追加されており、空路を活かすことがポイントとなる。
    • 『WORLD』では本体スペックの問題もあってメルカトル図法での擬似的な再現だった世界地図が、球体マップとなり現実世界をほぼ完全再現。スケール感も現実世界とほぼ一致している。
      • 航路や空路は一気に進める距離が増えていたり、いわゆる過疎地は便利系マスが多かったりと変化が付けられている。
      • 北極点付近は環状交差点方式を採用することで進行方向の混乱を避けている*1
    • お金の表記は「円」のまま。為替などの概念はない。
    • カードの仕様が大きく変更された。例えば、周遊系は全廃、急行系カードは名前が一新され、一部を除いて3回まで使えるタンク仕様になった。

新しい特殊ボンビー

貧乏神・ミニボンビー・キングボンビーはもちろん登場。キングボンビーJr.(ポコン)とデストロイ号も続投したがビッグボンビーはリストラ。ボンビーモンキーは依然として出番なし。 そして本作では特殊ボンビーとして「世界旅行ボンビー」と「ばらまきボンビー」の2体が追加された。

  • 「世界旅行ボンビー」
    • 取り憑かれたプレイヤーのターン終了時にランダムでどこかの駅に移動し、移動した分のマス数に応じた金額を旅費として奪ってくる。
      • 移動先として目的地周辺が選ばれることもあるのでライバルを出し抜いてゴールできる場合もあるが、次のターンにはまた違う場所に移動させられてしまうため、カードがあるかどうかによっても脅威度が変わってくる。
      • 『2010』のエアプレンボンビーと似たような能力だが、こちらは地球上を走行するためダッシュする方向で移動先の判別が可能、移動先に到着してもさらに別の場所に移動することがある(その移動した分も合わせてお金が取られる)という違いがある。宇宙では動けないのは同じ。
      • 前作のビッグボンビーと同様、お金以外は被害をもたらさないため、カードがあれば対処しやすいが、カードがないと文字通り引っ張り回されてしまうだけになるため、対処が難しい特殊ボンビーといえる。
    • 顔がえらく怖い。結果発表画面でも登場し、おぞましい顔が画面いっぱいに広がる。開発段階では変身シーンでも怖い顔になる予定だったが、流し目で笑うだけに落ち着いた。
  • 「ばらまきボンビー」
    • 取り憑かれたプレイヤーのお金やカード、物件をいくつか周囲のマスにばらまく。物件は権利書という形でばら撒く。
    • ばらまかれたお金などは次にそのマスに到達(通過でも可)したプレイヤーが取得できるが、誰も取得しないまま一定ターン経過すると消滅する。
      • ばらまかれたお金などを狙いに近づいてきたプレイヤーにボンビーをなすりつけるかどうかという駆け引きが生まれる。
      • 他者に利益をもたらすという点では『16』のハピネスボンビーと似ているが、こちらではとりついたプレイヤーがばら撒かれたものを取り戻せる余地がある。
    • ちなみに「神さまのお手伝いでボランティア枠で参加している」と称する通り、その言動や見た目はカルト教団の教祖を思わせるような不気味なものになっており、エンジェルが出現している状態で取りつかれるとエンジェルが具合の悪そうな顔をする(表情が変わるのみで効果自体に影響はない)。
      • ミカエルが出現している場合は天罰を落として貧乏神に戻してくれる(この際、ミカエルに対して焦った様子を見せる辺り、ミカエルの偽物という体裁になっている模様)
  • 前作で登場した「キングボンビーJr.(ポコン)」と「デストロイ号」は続投したが、ビッグボンビーはリストラされた。
    • 「ポコン」の性質は基本的に前作と同じだが、不評も多かった「デストロイ号」については基本的な仕様こそ前作と共通であるが、以下の違いがある。
      • 前作では周囲の被害をなるべく多くするように移動していたが、本作では取り憑かれたプレイヤーの保有する最高額物件を破壊するように移動するため、結果的に取り憑かれたプレイヤーの被害の割合が多くなる(もちろん、その道程にある物件が根こそぎ破壊されるのは変わらないが)。
      • 前作では一度出現した後の再出現間隔は最短で5年だったが、本作では12年となっている。また、32年目以降登場しないのは前作と同じだが、結果的に4回まで出現できた前作に対して本作は最大でも2回しか出現しなくなっている。

歴史ヒーローとお祭り精霊

  • 過去作同様、歴史ヒーローが登場する。
    • 当然と言えば当然だが、登場する歴史ヒーローについても世界の偉人となっている。
    • 『WORLD』の登場人物とはかなり違いがある。あのクレオパトラは登場しないので安心。
  • 過去作の「名産怪獣」については「お祭り精霊」として登場する。
    • 大抵のお祭り精霊は周辺物件に利益か被害のいずれかをもたらすものだが、中には四択クイズを出してきて、正解するとご褒美がもらえるが、不正解だとデビル系カードを押しつけられるタイプのものも。
      • 日本のお祭り精霊はあの「ナマハーゲン」*2、しかも「ナマハーゲンカード」が新登場し、いつでも呼べるようになってしまった。この新仕様により、「ナマハーゲンとキングボンビーは共存できない」という仕様も撤廃された。そのため、2体から袋叩きにされる場合も。

大型イベントの導入

  • 通常ゲーム中に一定条件を満たすと3種類の大型イベントが挿入される。
    • 期間が長く、当該イベント発生中は特別なルールが適用されるため、意識した立ち回りが求められる。
    • なお、メインモードを50年以上プレイすると、ヒストリーモードが登場し、大型イベントのみを遊ぶことも可能。
      • 10年制限(延長不可)でイベントごとに最高総資産額等のプレイ記録が独立して残るようになっている。旧作の10年トライアルと近い性格を持っているが、あちらは1人専用でやり直し不可だったのに対しこちらは通常モードと同じく複数人プレイも可能である。
+ イベント内容
  • 「伝染病に打ちかて!」
    • 世界的に発生した伝染病を抑えるためのワクチンを開発することが目標となるイベント。
      • 各地にある製薬会社の物件を取得することでワクチンの開発が進んでいく。特定数のワクチンが納品されるか、10年経過するとイベントが終了する。
      • 製薬会社ごとに毎月納品されるワクチン数が決まっており、納品したワクチンの数に応じた臨時収入がイベント終了まで入手できる。
      • また、イベント終了時に納品した合計ワクチンが最も多かったプレイヤーには高額の賞金が出る。
    • イベント発生中は食品物件と観光物件の収益率が0%になってしまうデメリットもある。
  • 「救援物資をとどけろ!」
    • 紛争地である目的地に救援物資を届けることが目標となるイベント。
      • ……といいつつやることは、通常のプレイと同様で目的地に到達すればそれでいい。イベント発生後全員合わせて8回目的地に到達するか、10年経過するとイベントが終了する。
      • イベント発生中は安全確保という名目で目的地周囲の一部ルートがバリケードで封鎖され、移動できるルートが限られてしまう。また、バリケードはターン経過で配置が変わることもある。
      • この性質上、『WORLD』のショッカーO野ゲームよりも目的地への到達が通常よりも難しくなる。なお、到達した際の賞金などは通常と同様だが、イベント終了時にイベント中に目的地に最も多く到達したプレイヤーに賞金が出る。
  • 「IT長者をめざせ!」
    • IT物件の価格と収益率がランダムで上昇するイベント。10年経過した時点でIT物件のみでの総資産額が最も多いプレイヤーに賞金が出る。
      • イベント中のランダムなタイミングでIT物件の収益率が-10%から+1%に変化すると共に、物件の価格が2倍~15倍と大幅に増額される。どの物件がどの程度増えるかはランダム。
      • 入手した物件の価格が大幅に増えると収益率も相まって一気に資産増加が狙えるが、収益率の変動が遅れると赤字を抱えるリスクもある博打要素の強いイベントとなる。

総資産レベル

  • 旧作ではインフレ度合いやイベントの解禁は年数によって決まっていたが、本作では毎年4月の全員の総資産に応じて全16段階の総資産レベルが設定される仕様となった。
    • 全員の資産が増えると、早い段階でインフレしたり、大型イベントが始まったりするため、慣れたプレイヤー同士でプレイすればゲーム進行が早くなるようになっている。
      • カード価格が倍になる運賃改正も総資産レベルが上がると早い段階で発生するが、総資産レベルが低くても一定年数経過すると上がるようになっている。

新規カード・変更点

新規のカードは主に以下の通り。 なお、タンク系カードについては詳細は後述。

+ 一覧
カード名 タンク 再行動 効果
プロペラカード × 上から順にそれぞれ急行周遊カード、特急周遊カード、新幹線周遊カード、のぞみ周遊カード、ロイヤルEXカードに対応する新規カード。
なお、後述の通り、周遊ではない1回使い切りの移動系カードは後述のライトニングカードを除き存在しない。
双発プロペラカード
ジェットカード
音速カード
超音速カード
ライトニングカード × × リニアカードに対応するカードで1回使い切り。
なお、リニア周遊カードに対応するカードは存在しない
東へ!カード × × 現在地点より東側(西側)の緯度が近い駅にランダムで移動する。
旧作に特定方角へ移動するカードとして北へ!カードがあったが、あちらは今いる場所より北なら全ての物件駅に判定があった。
西へ!カード
エリア飛びカード × 選択したエリア(ヨーロッパ、中東、アジア、アフリカ、オセアニア、北米、中南米)のいずれかの駅にランダムで移動する。
空港飛びカード × 空港の中からランダムで選ばれた4つから1つの空港を選択し移動する。
4つの移動先を見て使用をキャンセルすることも可能。
熱気球カード × × 現在地から見える範囲(赤道付近で縦横3マス分程度)で任意の駅に直接移動できる。
通常のサイコロ移動と同じように移動先のマス効果は発動し、買い物可能な駅なら買い物もできる。
進路妨害(バリケードやうんちなど)があっても無視して移動することができるほか、距離の算出基準はあくまで画面内にあるかどうかなので移動距離が遠方であっても移動可能。
例外的にココ島の外からココ島の駅には移動できない。また、空路上では「熱気球を飛ばすのは危険」ということで使用できない。
落下傘カード × × 空路で利用すると、近くの陸路または海路のマスにランダムで移動する。低確率でやや離れたマスに移動することも。
海老で鯛をカード × 指定したプレイヤーの持っているカード1枚を選択して、海老で鯛をカードと交換する。
2~4回使うと海老で鯛をカードは消滅する。
消滅した場合を除き、カードはあくまで交換なので、当然そのまま持ち続けていればすぐに奪い返されてしまうこともある。
緊急着陸カード × × 空路にいるプレイヤーを強制的に近くの空港に移動させ1回休みにする。
地球の裏側カード × × 自分か指定したプレイヤーを現在地点から見て地球の裏側(の近く)にあるマスに移動させる。
裏側に相当する周辺にマスがない場合は使用できない。地球の7割は海なので使いこなすためにはある程度地理の把握が重要になる。
偏西風カード × × 他のプレイヤーを東方向にランダムで移動させる。
虎に翼×2カード × × 目的地に着いた際に得られる援助金が4倍になる。
なお、前作の「虎に翼カード」は本作も続投なので、単純上位互換のカード。
100億円カード × 利用するとそれぞれ100億円、1000億円が即座に手に入る。
ヒストリーモードでのみ登場し通常プレイでは出現しない。
1000億円カード
満タンカード × 1枚のタンク系カードを選択し、利用回数を最大まで回復する。
途中下車カード × × 使用後にサイコロを振った際、その出目で通過できる駅ならどこでも「途中下車」してその駅で移動を終えることができる。
通常のサイコロはもちろん、サイコロを使用する各種進行系カードと併用することもできる。
場所混ぜカード × × 自身を含めた全てのプレイヤーの現在地点を入れ替える。
秘境探検カード × × 指定したプレイヤーを秘境(ヌーク、ノリリスク、バルダイ、ジェームズタウン、アバルア、イースター、マオナス、プエルトモント)のいずれかに移動させ、1回休みにする。
順番変更カード × × 各月のプレイ順がランダムで変更される。
ナマハーゲンカード × × 強制的にナマハーゲンを登場させる。
ボンバーマンカード × × 現在のマスに爆弾を置く。2ヶ月後に爆発して縦横7マスの範囲に爆風が届き、爆風に命中したプレイヤー全員の所持金が減る。
爆風がうんちに命中した場合はうんちを消滅させる。爆風範囲内に別の爆弾があった場合は誘爆する。
めざましカード × × 冬眠カードなどによる移動不可効果を受けた際に消費し、移動可能となる。
秘境探検カードの1回休みなどのように効果が出ないものもある。
  • 旧作で複数回利用可能だった「周遊カード」については全廃、代わりに「タンク系カード」が実装された。
    • タンク系カードはカードの横に燃料のようなマークが3つ書かれており、1回利用することに燃料マークが1つずつ減っていく。燃料が1の状態で使用するとカードが消滅する仕組み。
      • 周遊カードと異なり、利用回数は一律で3だが、新登場の「満タンカード」を利用したり、マップ内に少数存在している給油駅(後述)に到着したりすることで利用回数を回復することが可能。逆に「ガス欠カード」は誰かのタンク系カードの残り使用回数を1にしてしまう。
      • 旧作の急行カードに代わるプロペラカードなど、サイコロを増やすカードは最上位のライトニングカード(および、うんち系カードに該当するもれちゃうぞカード)を除き、全てタンク系カードとなっており、1回しか利用できないタイプはそもそも存在しなくなっている。
      • サイコロ系のカードに限らず、ぶっとびカードや☆飛びカードなど、旧作で周遊系が存在した各種カード*3も全てタンク系カードに統一されている。
  • その他のカードの主な変更点については以下の通り。
    • 『令和』の10年トライアルで横行していた諸問題の是正に伴い、以下のカードが調整された。
      • ダビングカードの仕様が『令和』10年トライアル調整後に倣う形(使用後はターン終了、基準の販売価格が8億円に値上げ)で統一された。
      • シルバーカード、ゴールドカード、シンデレラカードはそのときの総資産レベルによって使用できる物件の上限額が制限されるようになった。
        総資産レベルが低いうちは低額の物件しか対象とすることができないため、特にシンデレラカードを用いて序盤で数千億円の物件を入手する、といったことはできなくなっている。
    • 6大都市カードの行き先がロンドン、ニューヨーク、東京、香港、サンパウロ、ヨハネスバーグに差し替えられた。
    • あっちいけカードがキングボンビーとデストロイ号を除く全ての変身ボンビーに対しても有効になった。
    • エンジェルカードは稀に仲間を呼び複数枚に増えるようになった。

新たな特殊駅「精霊教会駅」「給油駅」

  • 「精霊教会駅」
    • デビル系カードなどのプレイヤーに不利益をもたらすカード(赤字表記されるカード)を持っている状態で訪れると無料で全て駆除してくれる。
      • 性能としては従来までの「茶畑怪獣チャカテキーン*4」のマス版といった感じで、様々なカードを消す。
    • 上記とは別に手持ちのカード1枚を有料でダビングしてもらうこともできる。旧作のダビング駅に近いが、強カードのダビングが前作で横行しすぎた影響かこちらは弱体化された。
      • ダビング料金は概ねカード売り場での販売価格と同額で取り扱うが、強力なカードは総じて販売価格より大幅に高額になっている。
      • ちなみにタンク系カードをダビングした場合はその残量に関係なく未使用の状態でもう1枚手に入れることができる。
  • 「給油駅」
    • 持っている全てのタンク系カードを無料で満タンまで回復してくれる。前作の「周遊駅」に似た効果。
      • 残量が1のカードを使って給油駅に向かうと給油する前にそのカードが消滅してしまうため、2の状態のカードを使って辿り着く必要がある点は注意しなければならない。

その他の変更点

  • 地球全土が舞台となったことに合わせ、旧作の移動系カードの名称が汽車系(急行カードなど)から飛行機系(プロペラカード等)に置き換えられた。電鉄といいつつ、大抵の移動は航空機となる。
  • 100年プレイをすることで、通常とはちょっと違う特別マップを遊べるようになった。
    • とはいえ、空路が追加されるのとスタート地点が異なること以外は細かいマスの差し替えに留まり、基本構造に大きな変化はない。
      • 追加されるマスは玄人好みのものが多い。上級者向けマップとも言える。
  • スリの銀次がお金を奪うのは同様だが、本作では絶滅危惧種のために然るべき団体に寄付するという流れでお金を取られるようになった。
    • これに合わせ、お馴染みの変装の内容も絶滅危惧種に指定された動物で統一されている。
    • また、『令和』では初回イベント発生時は全額確定という凶悪な設定だったのに対し、今作は初回は4分の1固定と多少は情けのある仕様になった。
  • 桃鉄シリーズおなじみのあの物件は……
    + ネタバレ
    • 桃鉄シリーズを象徴する超高額物件「桃太郎ランド」であるが、本作では特殊な購入条件が課されており、
      条件を満たすことで特定の国の特定地域に出現するとある特別な駅に停まった上で、そこの物件(=建設資材)を全て独占することにより桃太郎ランドが完成→購入達成」という流れになる
      • 総額が『令和』よりもさらに跳ね上がっているが、後述の通り他の物件の収益額は抑えられているため、入手難易度は歴代最高。
      • ちなみに桃太郎ランド自体は桃太郎伝説の発祥地と言われる岡山県を象徴する物件でもあり、地球全土が舞台となったことでDS版『WORLD』に引き続いて岡山県が所在地ではなくなった*5

評価点

高い再現度を誇るマップ

  • 舞台が世界となっているが、特徴でも述べたとおり地形の再現度は非常に高い。
    • かといって、だだっ広い海をひたすら巡るバランスにはなっておらず、太平洋など大型の海はマス数が空疎で一気に進むことができるなど、マスの密度はしっかりと調整されている。
  • コロナ禍まっただ中であり現地取材が難しかった事情の中でも本作の魅力である各駅の物件はしっかり吟味されている。
    • 旅行ガイドブックである「地球の歩き方」の監修を受けて、物件の情報の正確さを上げたことが述べられている。
    • 国家のイメージは日本人の考えるテンプレ描写からはあえて外されている部分も大きく、アフリカや南米などの新興国にIT関連の企業が多数存在するなど、最新の国家情勢を可能な限り反映している。もちろん、レストランや観光地などについては比較的有名なものを多く取り上げている。
  • 国境線についても「日本旗章学協会」の協力を得るなど、様々な専門家の力を借りて精査したとのことである。
  • 世界が舞台なので、「夏は青マスの収益が多い」という伝統に沿うと北半球と南半球で収益が真逆になりややこしくなってしまうためか、一律で「6~8月は青マスの収益が増えて、12~2月は赤マスの被害が増える」で統一されている。
    • 効果が増大しているマスはわかりやすいエフェクトが発生し、サイコロを振る前にも現在の状況が表示されるため、初心者でも理解しやすい。
    • また、よく見ると青、黄、赤マスにそれぞれ異なる模様が表示されるようになった。色覚異常の人にもプレイしやすくなっている。
  • 「差別や戦争が存在しないすべての国が繋がった平和な世界」が舞台であることが強調されており、政治的に微妙な国も一通り何かしらの形では登場している。
    • 北朝鮮やウクライナなどの国も公平に登場しており、前述の紛争イベントを除き国家間の戦争などを思わせる描写は極力廃されている。
    • 国家帰属をめぐる微妙な問題が今なお続いているエルサレム*6や台湾*7などは国旗が表示されず、どこの国扱いなのかは曖昧にされている。
  • これだけ精査して作られていることもあって、旧作同様教育素材としても優秀。プレイしているだけでどんどん世界の地理に詳しくなれるだろう。
    • 貧乏神やクエスニャンのクイズでは、本作外の世界の地理クイズなども出されるため、ゲームを有利に進めるために世界の地理を学ぶ動機付けとしても機能している。
    • 目的地に到着するとその国の挨拶が表示されて歓迎される、次の目的地を決めた際に地球儀でどの辺にあるのか教えてくれるといった要素も。

比較的完成度の高い赤鬼AI

  • 今までのシリーズでは最弱~ブービー扱いだった赤鬼が復活したが、本作では最弱のまめ鬼のワンランク上という扱いは変わらないものの、「桃鉄初心者~中級者と概ね同じような動きをし、人間と同じ絶好調状態になる」という対人の代替AIとしての役割が強くなった*8
    • 慣れたプレイヤーには物足りない強さなのは変わらないが、「弱すぎてどうしようもない」というほどのヌルさは無くなった。初心者への接待用ならまめ鬼を使えばいいため、この程度の強さなのは妥当と言える。
    • 絶好調の効果そのものは人間と同じだが、エンマ名人の絶好調の効果で他の鬼と同様に絶好調になるという違いはある。

COMの行動の改善

  • 前作で問題視された不自然な挙動の多くが改善された。
    • 上位の急行系カードを惜しまず使う、給油駅を意図的に狙ってカードを回復する、あの6大都市カードを目的地以外に飛ぶ場合にも使う、など。
    • 「伝染病に打ちかて!」「IT長者をめざせ!」やスタンプラリーイベントの対象駅も正確に狙ってくる(余裕があれば目的地を無視して止まる場合すらある)ため、気が抜けなくなっている。
      • その割に「救援物資をとどけろ!」ではバリケードの外側をウロウロして何もできなくなることもままあるが……。
  • COMの汽車の移動速度が前作よりもかなり速くなった(プレイヤーがいけますよ!を使用したときも同じ速さになる)。ボンビラス星の遅さは変わらないが。

総資産レベルによるゲームテンポの調整

  • 過去作と異なり、インフレの調整が総資産レベルになったため、プレイヤー同士の腕前に応じてゲームの進行速度が変動する。
    • 上級者であればすぐにインフレが進んでいくため、序盤の展開を一気にすっ飛ばしていくことができる。
      • 具体例を挙げると、過去作で50年目に解禁される「100倍乗っ取り」「カード売り場のラインナップ更新」が、本作では20年目前後でも解禁可能。
    • 逆に初心者同士であればゲーム展開が遅くなり、まったりとプレイすることもできる。

3年決戦におけるバランス改善

  • 本作の3年決戦では目的地の援助金が10億円以上に引き上げられ、さらに到着回数でも増加していくようになったため、『令和』での宝くじ駅よりも目的地の価値が低い問題がなくなった。
    • 宝くじ駅の周回についても、カード集めと宝くじを両立できる場所が排除されていることや、世界旅行ボンビーなどによって対策されている。6~8月は普通にプラス駅に止まっていったほうが稼ぎが大きくなる場合が多い*9

インターフェースの改善

  • 虫メガネ使用中にプレイヤーの現在地や目的地を矢印で示してくれるようになった。
  • スペシャルカードやテレポートカード使用時に目的地までのマス数が表示される他、とっかえっこカードやベビキュラーカード使用時に各プレイヤーの持ち金が表示されるようになった。
  • 移動中、貧乏神が取りついたとき・なすりつけたときに効果音が鳴るようになった。
  • メッセージの文字がTVモードでも鮮明に描画されるようになった。
  • 目的地到着演出のスキップが1年目から使用できるようになった。

賛否両論点

舞台が世界となった

  • 本作ではフィールドが日本列島から地球全土となったが、この点が賛否両論。
    • 慣れ親しんだ日本列島と異なり、舞台が世界であるため、世界の地理に詳しくないプレイヤーにとってはほとんど分からない地名が並ぶことになる。
      地理の勉強にも活かせるシリーズとして有名なことを考えればこの作品が世界の地理を学ぶきっかけにもなるとはいえ、物件の特色を把握していなければ親しみも湧きにくい。
      • 目的地までのマス数は分かるが、エリア飛びカードなどを使う際にどのエリアが近いかなどは分かりづらい。
      • 最短となるルートを表示してくれる機能こそあるが、空路が多いこともあり、自分がどのように向かっているかもあまり分からず、結果的にリスクが高い通り道を選んでしまうこともある。
  • 世界各国を舞台にするという要素はDS版『WORLD』*10が先んじているが、本作は一部の都市ならず地球全土を舞台にするというスケールの大きさに合わせ、様々な新機軸となる要素も追加された、いわば実験作とも言える内容になっている。そうした作品の常として、やはり賛否両論の声が大きい。
    • 実際に「新鮮な体験ができて楽しい」という意見も多いが、「あくまで日本全土を舞台にしたこれまで通りの桃鉄をプレイしたいのであってこういうのは求めていない」という意見もある。
    • 改善されている点はあるとはいえ、ベースとなるシステムは『令和』と大きく変わっていないため、『令和』との大きな違いは「舞台となるフィールドのみ」といってしまってもよく、本作発売後においても『令和』の方が好きというプレイヤーも少なくない。

前作以上の超攻め寄りのバランス

  • サイコロが6個に増加しなおかつ3回使用できる「超音速カード」についても普通に購入できる上、ある程度総資産レベルが上がれば通常のカード駅からもドカドカ出てくるバランスであるため、全てのプレイヤーが平気で2、3ターンもあれば世界半周、半年ちょいで世界一周ができることもザラで、目的地の到達ペースは過去トップクラスといっていい。
    • あるプレイヤーがゴールした直後に次のプレイヤーが移動系カードを使ってゴール、そしてまた次のプレイヤーが……ということも同一ターンで普通に起こりうる。
      • これほどまでに世界中を巡るペースが速いゆえか、キングボンビーの悪行が更に凶悪化しており、トップから最下位まで一瞬で転落させられてしまうことも珍しくない。例を挙げれば、「高額な物件をサイコロの出目数だけ捨てる」というものがあり、桃太郎ランドは真っ先に捨てられる。その他、赤マスの損害が大きくなったため、「赤マス10倍」では兆単位の額を捨てるようになるなど。
    • 地球規模の世界が舞台となっているためゲーム進行のテンポ面を考慮すれば配慮の一環とも言え、逆転要素が増えたという評価もできるが、前作の時点で速かったゲームテンポが更に加速してしまいついていけなくなる人も増えてしまった。
      • シリーズ自体が初心者から上級者まで幅広いプレイ層が楽しめるゲームとして打ち出されていることを考えると、上級者向けに尖ってしまった感も否めなくなっている。

10年トライアルがなくなった

  • 『令和』の1人用プレイである10年トライアルが消滅したため、ソロのやり込み要素が減少してしまった。
    • このオミットは当該モードが数々のバランスブレイク要素が横行し後のアップデートで対策した結果ゲームバランスの悪化、という流れを繰り返していたこともあり問題点を多く抱えていたことにも一因はある。
  • 「10年固定」で「個別に記録が残る」という点では今作のヒストリーモードが似た性格を持っており、こちらに集約されたという見方もできる。
    • ただし、こちらはルールや前提条件が通常モードをベースとしていた10年トライアルとは一部異なる点や解禁自体に“通しで”50年以上のプレイと少なくない時間がかかる点、オンラインランキング非対応など、旧来のものを完全に代替できているわけではない。
    • ちなみに「ヒストリーモード」を遊ぶことでさらに解禁できる特典もあるが、3種類のうち1種類を一度プレイすれば解禁できるため「10年トライアル」より格段に楽になった。

問題点

物件収益のデフレ

  • 本作には1000億円以上の高額物件が数多く登場するが、収益率が3%を超えるものは皆無などころか、収益マイナスの物件も少なくないため、頑張って購入しても収益額の増加を実感しにくい。
    • 前述の「IT長者をめざせ!」イベントでも、IT企業が“爆上げ”しても収益率は一律1%にしかならず肩透かし感が強い。
  • 一方で総資産レベルのシステムにより、高額物件が買える頃には1回の臨時収入の金額が過去作と比べ物にならないほどインフレし、1年の物件収益を凌駕することも珍しくなくなる。
    • 総資産レベルの進行につれて物件を購入するメリットが薄れていく本末転倒なバランスになってしまっている。

一部の強力すぎる歴史ヒーロー

  • やはりというか本作にも強力な歴史ヒーローが何名(匹)かいる。COMに加勢を許してしまうとイライラする効果ばかりである。
    • チンギス・ハン(23億5000万円)
      他のプレイヤー1人の持ち金・カード・物件のいずれかを奪ってくる。しかも持ち金は奪う金額は最大で全額。こんなぶっ壊れの効果にもかかわらず独占額が激安。
    • 鄭和(26億7000万円)
      他のプレイヤーのカードを好きなだけ選んで2倍の値段で買い取れる。買い取られたプレイヤーにお金は入らない上、カードはそのターンから使える。
    • コペルニクス(27億4000万円)
      他のプレイヤー1人の持ち金を無条件でゼロにするというシンプルで凶悪な効果。持ち金がゼロになると100倍乗っ取りなどでコペルニクスを退場させることもままならない。「目的地を変更する」という効果はオミット。
    • タロとジロ(35億円)
      他のプレイヤーからの攻撃カードを高い確率で防ぐ。難点は駅への到達が困難なことぐらい。
  • 前述の通り本作ではデストロイ号の出現頻度の激減、乗っ取り放題カードの削除といった変更がされた。ジャンヌ・ダルクの殉死というトラウマ要素もなくなった。結果として『令和』よりも歴史ヒーローを守りやすいバランスに傾いている。

バリエーションが薄いお祭り精霊

  • お祭り精霊の数はある程度多いのだが、多くの精霊が精霊ごとの対象エリアとなっている物件を持っているプレイヤーのいずれか(全員の場合もある)に臨時収入を与えるか、損害を与える系であり、使い回し感がある。
    • 祝福か災いかの抽選の演出に至ってはすべて使い回しである。
  • 基本的に全員が抽選で選ばれる可能性があるため、『令和』のように止まったプレイヤーだけが一方的に損害を受ける様を見せられる確定演出にならなくなった点については救いである。

種類の少ないCOM

  • 相変わらずCOMは6種類しかいない。
    • 本作では赤鬼が復活したが、代わりに餓鬼がリストラされてしまった。

一部「桃鉄3年決戦!」に最適化されていないCOMプレイヤーの思考ルーチン

  • 上位のCOMはいずれも持ち金の余裕がある時はカード売り場に寄ってしっかりカードを買い込むという手堅い行動を取りがちだが、手番が残り少なくなってもその傾向が変わらないため、終盤にあたっては総資産を減らすだけのボーナス行動になってしまう。

「セーブして終了」の不備の未改善

  • 「セーブして終了」を選択して再開すると、再開地点が終了した月の最初からとなり1番手のプレイヤーから仕切り直しとなる仕様は改善されず。
    • この都合でイベント発生なども再抽選されるため、それまでに得られていた良い状況がなかったことになってしまうこともある。
      • 「セーブをして終了する」を選ぶ場合は1番手の人にしてもらうか、「今月だけセーブする」で月末にセーブしてからの終了を推奨。

総評

舞台が世界に変更されているものの、『令和』同様、様々なリサーチを経て作成されており、再現度は非常に高いものとなっている。
意欲的な挑戦作であるが、ベースの面白さは不変であり、遊んでいるだけで地理に詳しくなれる本作の面白さは健在である。
『令和』と比較すれば遊びやすくなっているものの、『令和』ならではの良さもあり、どちらが良いかは人それぞれとなってしまうが、
『令和』に並ぶ名作であることは間違いないため、舞台が世界であることが嫌でなければ本作もまた盛り上がり間違いなしの一作といえよう。

余談

  • 元々、『令和』が50万本売れたら次回作(本作)を開発しようと考えられていたが、予約だけで50万本売れたことから前作発売後すぐに本作の開発準備が始まったとのこと。
    • なお、本作についても発売後1ヶ月で100万本以上売れている。
  • ある意味シリーズのお約束とはいえ、『令和』と本作のパッケージデザインが似ていること、どちらが前作でどちらが今作かがタイトルからは判断しづらいことなどが相まって本作を購入しようとして、誤って前作を購入してしまったという話も聞かれた。
    • 実際、家電量販店などでは、前作と本作がほぼ近くで売られているケースも散見されている。
  • 本ソフトはNintendo Switch Online加入者が買える「2本でお得 カタログチケット」と交換できないソフト*11であったが、そうであると知らずにチケットで交換しようとする人が多かったため、任天堂サポート公式X(旧Twitter)アカウントが本作を名指しで注意喚起を促したことがあった(外部リンク)。
  • 本作の内容を活かして世界の地理についてまとめたガイドブック『桃太郎電鉄でわかる世界地理大図鑑』が発売された。
    • 本作で取り上げられた世界の地域をメインに、各地の地理や物件、特産品などについて詳しく解説している。
  • 『令和』と比べて大きなアップデートが実施されていなかったが、発売から1年を迎える2024年11月に無料アップデート「ムー大陸浮上!」が配信されることが発表された。

最終更新:2024年10月14日 18:18

*1 北極点をまっすぐ通り抜けられてしまうと、その度にマップの南北が逆転してしまうので非常に都合が悪い

*2 過去作同様に秋田駅に出現するが、本作の秋田駅はカード売り場駅となっている

*3 乗っ取りカード、スペシャルカード除く

*4 赤字になっている悪い効果があるカードを殺菌して消滅させてくれる

*5 同じ外国を舞台にした『USA』でも同じ立ち位置の超高額物件は存在したが、あちらはアメリカが舞台ということでディズニーワールドをパロった「ネズミーワールド」となっている

*6 国際法上は国連管理地。イスラエルが実効支配、パレスチナが東半分の領有権を主張。また、イスラエル・パレスチナ共に首都と主張しているが、日本を含む大多数の国家は認めていないため、首都の表示もされない。

*7 中華民国が実効支配。中華人民共和国が領有権を主張。日本は中華人民共和国の見解を「理解し、尊重」するが、支持はしない立場。

*8 過去作では二段だったが、今作では五段まで跳ね上がっている

*9 そもそも本作の6等は「8月のプラス駅の0.5倍の金額」といった控えめな設定になっているほか、プラス駅では金額が2~5倍になるチャンスがある

*10 厳密には同名の携帯アプリ版が先だが、DS版とは内容は別物。

*11 基本的にサードパーティー製のソフトはチケットで交換できない仕様。