夜廻
【よまわり】
ジャンル
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夜道探索アクション
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対応機種
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プレイステーション・ヴィータ Windows 7/8.1/10
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発売・開発元
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日本一ソフトウェア
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発売日
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【PSV】2015年10月29日 【Win】2016年10月25日
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定価
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【PSV】 パッケージ:6,458円 ダウンロード:5,143円(共に税8%込) 【Win】1,980円 →1,000円 →2,000円
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レーティング
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CERO:C(15才以上対象)
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判定
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なし
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夜廻シリーズ 夜廻 / 深夜廻 / 夜廻三
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概要
ディスガイアシリーズなどで知られる日本一ソフトウェアがリリースした、クォータービュー視点の探索型ホラーアクション。
愛犬と姉を探し、懐中電灯一つ持って夜の町へと歩き出た主人公が恐怖の中大切なものを探そうとする姿が描かれる。
「夜の怖さをおぼえていますか?」というキャッチコピー通り、プレイヤーもまた恐怖に落ちることになる…。
ストーリー
幼い少女は、飼い犬と散歩していました。
しかし、
彼女の不注意によって犬は事故に合い、
どこかへいなくなってしまいます。
からっぽのリードを引いて帰ってきた彼女を見た姉は、
犬を探しに外へ飛び出していきました。
ひとり残された少女も遅れて家を出ますが、
そこに広がっていたのは、
見知った昼間とまったく異なる不気味な夜の街でした……。
(公式サイトより)
特徴・評価点
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夜を彷徨う、本質的な怖さ
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本作のほとんどの時間は、街灯もほとんどない暗い夜道を歩き回る事になる。懐中電灯で目の前は照らせるが、その明かりは危険な存在への目印にもなってしまう。
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本作をプレイする上で一番の評価点となるのがこれ。何処に何が潜んでいるのか、何が危険で何が安全なのかまったくわからない文字通りの手探りな探索は非常に怖く、その分面白い。
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特に「闇夜の見通しの悪さ」は絶妙で、視界に入った物体の正体が判然としない恐怖感はとても良く表現されている。
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人物は二頭身に可愛らしくデフォルメされており、背景も油絵のような温かみのあるタッチで描かれているのだが、そういったビジュアル面と不安や恐怖感を煽るような細かな演出が相まって独特の雰囲気を生み出している。
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また夜の学校、商店街、山林など、夜の恐怖を感じやすい定番スポットは安定して押さえられている。
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少女は、怪異への対抗手段を基本的には持たず、できる事は「逃げる」「アイテムを投げて気を引く」「草むらなどに隠れてやり過ごす」程度。また、怪異が近づくと心臓音が鳴り一部の行動が取れなくなる。
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接触した瞬間に暴力的な効果音と共に画面が血に染まりゲームオーバー。この非力さも夜を歩く心細さの演出に一役買っている。
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心臓音がお化けに対するセンサーであることの兼ね合いもあってか、ゲーム中は基本的に環境音のみ。
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なので本作ではBGMがPVやエンディングで使われているものと他1曲しかないが、前者の曲の評価は高い。どちらの曲もクリア後にあるアイテムを入手することにより、自宅にて聴く事が可能である。
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また環境音も「街灯の不安定な明滅の音」「自販機の稼働音」等々しっかり作り込まれており、夏の夜への没入感を高めている。
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怪異
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町のあちこちには正体不明の怪異が存在し、その殆どは少女を見つけると襲い掛かってくる。
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突然現れて道をふさいでしまう「道ふさぎ」や街灯の下に佇んでいる「街灯下の影」、金魚のような形をした「よまわりさん」など、種類も様々。
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どれも即死トラップのような存在だが、「音に反応する」「ライトを向けないと襲ってくる」などそれぞれに特徴がある。ただ怖いだけでなく、有効な対処法を見つけだして攻略していく観察と試行錯誤の楽しみ方もできる。
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先述したようにアイテムでも気を引くことができ、対応するアイテムは怪異によって異なる。
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一方で攻撃的でない「彷徨うもの」も居り、そういったお化けたちの哀しさもまた切なく深い。
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よまわりさんはクリア前のみ接触しても無害で、クリア後は攫われて工場のコンテナに運ばれてしまう。
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探索要素
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日本一ソフトウェアの例に漏れず、やりこみ要素として収集アイテムが用意されている。多くはストーリーに無関係。
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一部のアイテムは入手すると部屋の中に飾られる。いかにもまともでない経緯で拾った物や、気味の悪い物体ばかり拾っては平然と部屋に飾りだすため、幼い少女の意外な図太さを楽しむこともできる。
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町中のオブジェクトの中には調べると主人公が感想を述べるようなものがあり、飽きさせない
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ユーザーフレンドリーな部分
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上記のとおり接触即死だが、常時マップから自宅への帰還(通称:おうちワープ)が出来、マップ上の地蔵が簡易セーブポイントなのでやり直しは簡単。
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地蔵での中断セーブにはお供えするための10円玉が必要になるのだが、比較的手に入りやすいためこまめに拾っていればセーブには困らない。
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マップはかなり広大だが、調べた地蔵の位置は記録され、地蔵を調べた際に別地点の地蔵へとワープすることができるため、長距離の移動でストレスが溜まるということも起きにくくなっている。
賛否両論点
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プレイ回数を重ねると怖さが目に見えて減ってしまう。
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どのロケーションも初回到達時は夜の雰囲気たっぷり。特に序盤で姉を探しに外へ出た直後は上記のおうちワープもなく、懐中電灯すら無いため恐怖感が凄まじい。しかし、大抵は何度も死んでは繰り返し行き来することになるため、だんだん慣れてしまいやすい。
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ある程度遊んで構成がわかってしまうと「単なる即死性トラップアクション」になってしまう可能性も。一部ボス戦は特に死んで覚えろな部分があり、同じ場所で何度も死亡すると怖さよりもゲームとしての攻略意欲やだるさが勝ってしまったりも。
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慣れれば隠れたり石投げが不要に
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お化けの避け方がわかってくれば、石投げや隠れてやり過ごす必要がなくなってくる
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これ自体はプレイヤーの上達ともとれるのだが、そもそも隠れポイントが有効な場所に配置されているとは限らない
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敵のいない安全地帯にいくつもあって、敵の多い場所には全然無いことも珍しくない
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また一部のお化けは隠れても意味が無く、出てくるまでずっと待っている。当然出たら捕まりゲームオーバー。
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こういった要素から必然的に、隠れずに撒けるようになっていってしまう
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一応、隠れるとお化けが赤いモヤで表示されるため、索敵という使い方は出来ないこともない。
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石投げも不要になるとマップ内に落ちている大量の石が探索の邪魔にしかならなくなる。
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主人公の感知範囲がやたら広い
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「拾えるアイテム」「隠れるポイント」「リアクションするオブジェクト」をライトで照らすと主人公が「?」を出してヒントを示してくれる。
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しかしやたらと感知範囲が広く、壁の向こうやライトの範囲外に反応することもしばしば。
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「前方に何かある」ということが分かりやすい一方、アイコンの問題もあってどこにあるどれのことを指しているのか分からず紛らわしい場合も多い(問題点でも後述)。
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さらにお化けに対する感知範囲も広い。画面内にお化けがいなくても心臓音がなり、隠れて索敵してもどこにもいな…ということがよく起こる。
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どこに何が潜んでいるのか分からないもどかしさ・恐怖体験に貢献しているとも言えるが、敵がいないにもかかわらずダッシュに制限がかけられ、プレイヤーにストレスを与えることも。
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シンプルなシナリオ
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「幼い少女が大切な家族を探して夜を駆け回る」というシナリオは分かりやすく没頭しやすいが、雰囲気への没入感を重視したためかゲーム中で語られる設定はそこまで多くはない。
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背景を推測できる情報は提示されるため、考察に熱中するユーザーも居れば、肩透かしと捉えるユーザーも。
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考察要素の例(ネタバレ注意)
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たとえば、あらすじでも説明されている、主人公の不注意によって起こった車の事故。
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一見その説明通りにも見えるこのシーンだが、町の探索を進めていくと「事故現場はそもそも車両の進入制限区域」「仮に無理矢理侵入して来たとしても猛スピードで走り抜けるのは不可能な地形」「さらに言えば、通り過ぎた所で行く先など無い道路」であることが分かる。
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つまり、この事故は主人公の不注意どうこうの問題などではなく、まず人間の起こした現象どうかすら怪しくなってくる。
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この辺りホラー物としては良くできているが、いかんせん本編で言及されることが全く無い。むしろいちいち説明されても興が削がれてしまうものの、気付かないプレイヤーは気付かないだろう。
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ちなみにだがホラーゲームらしいショッキングな描写も当然それなりにある。「血の跡を背に青ざめて空のリードを引きずる主人公」という公式イラストからしてなんとなく察せられるだろうが。同社の『ホタルノニッキ』ほどではないが幼女に厳しい。
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ショッキングな描写の例(ネタバレ注意)
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そもそも愛犬の身に起こる悲劇についても、ゲーム中何の気なしにプレイヤーが取るような行動で発生させるためなかなかえげつない。
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無垢な少女が初めて経験する「大切な存在の取り返しのつかない死」というシナリオもそこそこ陰鬱だが、それを幾度もの危険を乗り越えて直面させる展開も容赦がない。
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エンディングにも手放しでは喜べない展開が待っているため、「もしかしてバッドルートなのでは?」という勘違いや、子供の主人公にとっては重いこういった展開に気分が沈んだという意見も時折見られる。
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もちろんこういったシナリオが好きになれるかどうかはユーザー各々の好みによると思われる。
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見た目や演出がフルプライスらしくない
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PSNではインディーズタイトル扱いされるなど、見た目のせいもあって「そこまで払うほどの価値があるかどうか」と考えてしまうユーザーも。もちろん、そういう点も込みで雰囲気を愛するユーザーもいるのだが…。
問題点
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?マークのわかりにくさ
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賛否の項でも先述した「?」マークだが、感知範囲が広いだけならまだしも何を感知してもアイコンが同じなので、どれを指しているのかわかりづらい。
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鍵やアイテムを探してる時に「?」が出ても隠れポイントだったりするとガッカリする。
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アイテムはライトで照らさないと見えないため、何度も見たマップでも隈なく探し回ることになるため、思わぬ場所をライトで照らして「?」が出た → ただの草むら、でガッカリ。
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一部の収集アイテムにランダム要素があり、コンプリートするにはイベント発生地点を何度も往復する必要がある。
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「ふこうのてがみ」を何度もポストに入れなおすことで「ひみつのてがみ」が得られるなど、わかりにくいものも。
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通常の敵は観察と試行錯誤によって楽な対処法を見つけることもできるが、ボス級の敵は瞬間移動直後に攻撃してきたり、上手に突進を誘導しないと回避できないなどアクション要素が強い。
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しかし実質的に使えるアクションは歩くか走るかだけなので、ワンパターンさが目立つ。
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ボリュームは少なめ。
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ゲーム内容は短く5~6時間、長くても10時間で全クリできてしまう。クリア後も探索・収集要素はあるがそこまで大量ではない。
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なのに50時間プレイすることで取得できるトロフィーが存在する。そこまでやることもないのに50時間は長い。
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セーブデータが1つしかなく、現在のプレイ時間も表示されないのに「1つのデータで50時間」というのも苦行度を上げている。
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さらにPSVは30分操作が無いとスリープ状態になってしまうため、放置もママならない。実質50時間張り付きが要求される。
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トロフィーだから嫌ならやらなくてもいい要素だが、わざわざ取得を遠ざけるようなトロフィーにする必要は無い。
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Steam版も50時間アクティブウィンドウで過ごさないとならないため、裏窓作業などは出来ず、かなりの根気が必要。ただアクティブウィンドウならスリープにならないので、こちらは放置可能。
総評
誰もが幼い頃に感じ、やがて忘れていった「闇夜の恐ろしさ」を思い出させてくれる一本。
しかし本格的にトラウマが掘り起こされる程に恐怖が続くほどでもないのが残念。公式サイトの恐怖描写など、凝っている分余計に…。
もしかしたら本作の最大の残念な所は、10月29日という初冬の発売になったことではないだろうか。人々が恐怖を求める夏の盛りであれば、もっと恐怖心を煽れたのかも知れない。
とは言え実際怖いものは怖い、ホラーが好きでアクションも好みと言う方は遊んでみてはいかがだろうか。
余談
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2017年2月21日に小説版『夜廻』が発売された。
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ゲームでは描かれなかった部分の詳細なストーリーが補完されており、ノベライズ作品としてゲーム経験者からの評価は高い。
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ゲーム未プレイでも楽しむ事が出来るようになっているが、やはり小説という媒体である以上、ゲームで表現された夜の恐怖感とはやや異なる所もある。
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2017年8月24日に続編にあたる『深夜廻』が発売された。
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2018年10月15日にはSwitchに2作品をカップリングした移植『夜廻と深夜廻 for Nintendo Switch』が発売された。追加要素は特になく、2作とも単純移植となっている。
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ただし、ソフト一本分の価格で2作ともが遊べるため、結果的に「値段に対するボリュームが少なめ」という難点が軽減されている。
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2020年6月2日にSteam版が1,000円に価格改定された。
最終更新:2023年12月01日 16:16