CRYSTAR -クライスタ-
【くらいすた】
ジャンル
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泣いて戦うアクションRPG
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対応機種
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プレイステーション4 Windows(Steam) Nintendo Switch
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開発元
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ジェムドロップ
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発売元
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【PS4/Switch】フリュー 【Win】スパイク・チュンソフト
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発売日
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【PS4】2018年10月18日 【Win】2019年8月28日 【Switch】2022年2月24日
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定価
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【PS4/Switch】7,980円(税別) 【Win】6,290円(税込)
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判定
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なし
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ポイント
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コンセプトは「美少女×涙」 バイオリンとピアノの美しいBGM 長すぎるダンジョンと同じ見た目の敵
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概要
フリューより発売されたアクションRPG。開発は近年では『ゆるキャン△ VIRTUAL CAMP』や『Kizuna AI - Touch the Beat!』といったゲーム以外にも、アニメ『ゴールデンカムイ』第3期の3DCGパートの技術協力など多方面での実績もあるジェムドロップ。
主人公の幡田零(はただ れい)は2人で暮らしている妹の幡田みらいと共に「辺獄」という死後の世界に引き込まれてしまう。
辺獄でみらいを死なせて絶望してしまった零は、双子の悪魔メフィスとフェレスから契約を持ちかけられる。
プレイヤーは零や仲間を操作し、辺獄を跋扈している幽鬼を倒しながら、辺獄の最下層にある再生ノ歯車へと向かうみらいの魂を追いかける。
キャラクターデザインはリウイチ氏、オープニングムービーはシャフト、楽曲は削除氏、オープニングテーマとエンディングテーマはやなぎなぎ氏が担当。
用語解説
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再生ノ歯車:ここに魂が辿り着くと、その魂は全ての記憶を失い輪廻転生する。
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死んでしまったみらいの魂がここに到着する前に追いつく、というのが主人公の目的である。
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幽鬼:元は死んだ人間の魂。その中でも自我が一定以上保たれている存在を指す。頭部に黒い輪を持つ。
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他の魂を食らう事で魂の破損部分を補い、その果てにヨミガエリ(蘇生)を目論んでいる者がほとんど。
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代行者:悪魔と契約し、彼らの代わりに幽鬼を狩る存在。
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幽鬼が魂を捕食しても消滅はせず取り込まれるだけだが、代行者に倒された魂は完全に破壊されるため、そのことを知る幽鬼からは蛇蝎のごとく嫌われている。
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ゲームにて敵を倒してドロップするお金「スピリッツ」は破壊された魂の欠片である。
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代行者になる際、体の一部に契約の紋章が刻まれる。この紋章は、その人物のトラウマに起因する箇所に出現する。
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理念(イデア)
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零たち代行者が悪魔から回収を命じられた結晶上の物体。
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辺獄で感情の高ぶりと共に、涙によって排出される性質がある。
登場人物
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操作キャラ
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幡田 零
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高校にも行かず引きこもりで内気な15歳。両親は既に他界しており、妹のみらいと2人で暮らしている。料理はみらいにまかせきりだが、ポテトばかり食べる。みらいのことを大切に想っており、彼女のことが絡むと激情にかられ、勝手な行動に走ってしまうことも。
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戦闘では序盤こそパッとしないが、中盤以降は遠距離から攻撃できる魔法や、発動から暫く場に残り続け多段ヒットする魔法などを習得し使い勝手が向上する。物理方面も素直な性能で、総合的に癖が少なく使いやすい。
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必殺技は万物流転(パンタ・レイ)。ヒット数は少ないが、こちらも敵に近づいていれば素直にフルヒットする。
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契約の紋章の位置は手首。
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不動寺 小衣(ふどうじ こころ)
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零より先輩の代行者。年齢は21歳。零と仲間たちの中で最も年上であり、普段は彼女たちに対して大人で包容力のある対応をとる。しかし、とある事情により幽鬼アナムネシスには怒りや憎悪をむき出しにする。
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戦闘では高い物理攻撃力を活かした拳による近接戦闘がメイン。通常攻撃が使いやすく、最終段に打ち上げ効果があるため起き上がりに攻撃を重ねれば一部の敵以外は封殺できる。
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混乱効果付きの貫通魔法持ちなのもポイントだが、魔法の威力は低くスキルの挙動も扱いづらいものが多めで、得意不得意がハッキリしている。
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必殺技は不動心(アパティア)。正面に波動を放出して連続ダメージを与えた後、パンチを叩き込む。基本的に近接技で構成されているのだが、最後のパンチ後の爆発がやや離れた位置に発生するため、大型のボス以外だと前半と後半のどちらかは外れることが多く扱いづらい。
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契約の紋章の位置は腹部。
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恵羽 千(めぐみば せん)
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生きている状態で辺獄に引き込まれてしまい、成り行きで代行者となる15歳の少女。情ではなく法の正義を重視する検事の父の影響を受けルールと正義に執着しており、ラーメン屋のルールすら厳守するほど。一方で、父と母が離婚した際には、放っておけない母の側にいる決断をしたが…。
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戦闘ではニ刀流による多段攻撃と、相手を貫通する物理属性の飛び道具が持ち味。通常攻撃は一部モーションの判定が小さく空振りしやすい上、攻撃間隔も長く一発一発のSP回復量も少なめ。スキルも真価を発揮させるには敵を誘導して固める・ある程度距離を取る・縦軸を極力合わせるなど工夫が必要なものが多く、総じて上級者向け。
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必殺技は宿善応報(エウゼーン)。圧倒的な多段攻撃で敵を切り刻む。通常時とは対照的に素直な性能で使いやすい。
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契約の紋章の位置は肩。
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777(ななな)
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零たちが辺獄で出会う幽鬼。何故か零の事がお気に入り。遊ぶこと、楽しむことが大好きで、零の事情も聞く耳持たず強制的に遊びにつき合わせる。仲間になった後は、零に対して献身的な態度をとり続ける。
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戦闘では魔法攻撃・防御力が高い代わりに、HP・物理方面が低い魔法使いタイプ。通常攻撃が遠距離攻撃で連射もきき、火力は低いものの近接型の敵なら一方的に攻撃できる。
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スキルの火力も高く一部スキルはやや壊れ気味な性能を持つが、先述のようにHPと物理防御は最低で非常に打たれ弱い。
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必殺技は静穏隔絶(アタラクシア)。拡散攻撃を複数見舞った後、鎌で斬りつける。拡散攻撃であるため、至近距離で使わないと威力が下がる。
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契約の紋章の位置は首。なお、元々は幽鬼の紋章だったが、契約の際に改変された。
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アクション面
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弱攻撃、強攻撃、回避、ジャンプ、スキルによる攻撃が可能。敵のロックオンも可能で、ロックした敵を画面の中央に捉えるよう、カメラが自動で動く。スキルは各キャラ4つまでセット可能で、発動の際にSPゲージを消費する。
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「涙ゲージ」は、敵に攻撃を当てる、またはSPを消費して「泣く」ことで溜まっていく。最大まで溜めると「守護者」を呼び出すことができる。
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アップデートにより攻撃や着地硬直を、回避やジャンプでキャンセルすることが可能になった。
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アイテムは各ダンジョンのスタート、またはボスの手前にいる行商から購入、またはダンジョンの宝箱から入手する。
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用途はHPや状態異常の回復で、メニューから使うことができる。各操作キャラクターは自力でHPを回復する手段を持たないので、基本的に回復手段はアイテムのみ。アイテム購入に必要な通貨であるスピリッツは、幽鬼を倒して入手する。
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装備品は幽鬼を倒した場合のみ、ランダムで入手できる。装備品は同種・同レベルのものと素材を消費すると1レベル上げることができる。
大まかな流れ
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各章の最初にメフィスからシレンというミッションのようなものが言い渡される。
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零の自室で武器・防具の強化やセーブ・ロード等の準備を行い、シレンを達成するために辺獄に向かいダンジョン奥のゴールまでたどり着き、零の自室へ戻ってくる。
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そして、新しく増えたシレンを達成するために準備を行い…という感じで零の自室と辺獄の行き来を繰り返していく。
評価点
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各メインキャラクターの密接な関係が、次第に明らかになるストーリー
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プレイヤーから見ると、序盤はみらいのヨミガエリの他にも、わかりやすい悪者アナムネシスが軸となって物語が進んでいく。
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次第に各キャラクターの過去や目的が明らかになり、みらいやアナムネシス、序盤では部外者気味のとある仲間の関係が明らかになる。
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物語が停滞せず、次々に事実が明らかになっていくストーリー構成は、読んでいてプレイヤーを飽きさせない。
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目的が分かりやすく感情移入しやすい登場人物
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登場人物はそれぞれが大事にしているものがあり、それにのっとって行動しているので「キャラクターの行動の原因が分からない」「このキャラは何を考えているか分からない」といったことになりにくく、理解、感情移入のしやすさに貢献している
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大切にしているものは、零:妹のみらい、小衣:復讐、千:正義、777:楽しみ
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武器防具に込められたメッセージ
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今作の装備は同じものを2つ集めると+1に強化でき、+1の同名装備を2つ集めると+2、+2を2つ集めて+3にまで強化できる。
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そして、各装備にはメッセージが表示されており、+3まで強化することで完成したメッセージを見ることができる。例えば、小衣の初期装備「オアス・オブ・ヘイト」(忘れない。)を+3まで強化すると(忘れない。許さない。この手で必ず、報いを)となる
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ストーリー進行具合、つまり各キャラの心境に合わせて入手する武器のメッセージは変化していく。例えば、序盤では痛ましいメッセージの武器が多かった小衣も、終盤では「エクスビエイション」(彼女らの笑顔があの子の喪失感を埋めていく)という内容になる。このように武器を強化することで戦力の増強だけではなく、各キャラクターの心情を知ることができる。
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防具は最後の専用装備を除けば、どのキャラクターでも装備でき、メッセージは標語のような内容になる。例として初期防具はプライド・オブ・ソロー(哀しみは失ったものの価値の証明だから)となっている。
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全ての敵に死に至る物語がある「死者回想録」
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ダンジョンにいる各幽鬼は倒すと「断末魔の思念」をドロップすることがある。これを零の自室まで持ち帰り浄化すると武器防具が手に入り、幽鬼が人間だった時から死に至るまでの物語を読めるようになる。各幽鬼に3つの物語があり、3つ全て集める事で死の原因が発覚するようになる幽鬼もいる。
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後述の問題点で記載されるように、同じような幽鬼と何度も戦うことになる今作だが、幽鬼の名前や色、ボスエネミーの場合は戦闘する場所が違えば、それは別のエネミー扱いで死者回想録も異なるので、戦いの数少ないモチベーションとなりうる。
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ボスであっても3回戦わないといけないことは変わりはない。
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回顧録の中には、同社の別ゲームのキャラを髣髴させる内容だったり主要キャラについてとても気になる情報が提示されていたりもする。
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また、続編と思われる『クライマキナ』に繋がりそうな情報も存在している。曰く、理念の回収にちなんでか、現実世界が少しずつ希薄になっているという。
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美しいBGM
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音楽は各種音ゲーシーンを中心に活躍する削除氏が手掛けている。主にバイオリンやピアノが使われており、辺獄の各層のイメージや今作の雰囲気を表現している。
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考えられた名前の設定
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幡田零の必殺技は万物流転(パンタ・レイ)で、パンタレイはこの作品のテーマでもある「万物は流転する」という思想で、名前の「はただれい」もこのパンタレイから来ている。そして、零の守護者「ヘラクレイトス」はこのパンタレイを提唱した哲学者の名前。
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このように主要キャラクターの本名、必殺技、守護者の名前は結びついており、考え抜かれたものである。
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マップやキャラクター切り替えによるロードの頻度は少ない
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1つのマップが大きいため、何度もマップを切り替えて頻繁にロードが入る問題は起きず、シームレスに好きなキャラを操作できる。
賛否両論点
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「777 Doodle」が強すぎる
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777がゲーム後半に覚える必殺技で通称「777ビーム」と呼ばれ、絵具を777の前に発射する魔法攻撃で、とにかく威力が高く射程も長い。
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まずはビーム1本の技を覚えて、さらにレベルが上がるとビーム3本版の「777 Doodle*3」を覚えてより凶悪さが増す。遠距離からひたすらこの777ビームを連発するだけで、ラスボスを含めた多くの敵は溶けていく。
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発動にはSPを消費するが、777は遠距離攻撃で安全にSP回収もできてしまうため、SPに困る事はほぼない。操作するのは1人だけなので、777ビームを覚えると残り3人の戦闘面での出番は一気になくなる。
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唯一の弱点が「魔法攻撃」扱いのため、魔法防御が高い敵にはあまりダメージが出ないこと。
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この777ビームで戦闘にかける時間を大幅に短縮する事が出来るので、戦闘が苦痛だとすれば777ビームのお陰で助かっている面もある。
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電話に出ない仲間たち
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零の自室ではいつでも仲間キャラクターに電話をかける事が出来る。しかし、仲間が電話に出てくれるのはストーリー上必須、またはラストダンジョン直前の時がほとんどで、基本的には誰も応答してくれない。よって、仲間キャラと通話を楽しむことはできない。
問題点
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ダンジョンが長すぎる
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ダンジョンは「スタート地点からマップのどこかにあるゴールを探す」を3回繰り返すと、そのダンジョンをクリアしたことになる。ダンジョンによっては3つ目のゴール地点にボス敵がいる。
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1つの層につき3つダンジョンがあるので、最短でも1層クリアするのに3マップ×3ダンジョン=9回ゴールを探す必要がある。
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このマップが広いうえに視界が建物や木で遮られるので、スタート地点でゴールの位置を予測することは難しく、ひたすらダンジョンを駆け回ることになる。
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敵を無視しようにも場所によっては、敵を倒さなければ先に進めないギミックがある場所もある。あまりに無視しすぎて経験値が少なくなると、ボス戦で苦労することになる。
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一度クリアしたダンジョンであっても、スキップしてゴールに移動する機能はないので、ボスから専用装備や死念を集めたい場合は、走ってゴールへの移動が3回必要になり、非常に手間である。
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そして、物語の都合上6~8層は計3回繰り返してクリアする必要があり、繰り返しの際はマップの形が変わるため、ゴールに最短距離で辿り着くことはできない。
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同じ見た目の幽鬼たちと何度も戦う
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モデリングの手間削減のためか、今作は使いまわしの敵が非常に多い。攻撃方法も大して変わらないので、ストーリー序盤から後半まで同じような敵と戦うことになる。
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道中の敵に留まらず、ダンジョンの奥にいるボスすら「一般エネミーのサイズと色が違う」「色すら同じで違いが分からない」ケースもしばしばあるので、ボス戦の緊張感がないダンジョンも多い。
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とある中ボス集団に至っては、ストーリークリアまでに10回も戦うことになる上、その性質から非常に戦いづらくストレスが溜まりやすい。
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単調になりがちなアクション
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後半は一部スキルが強すぎるが、一方で序盤は頼りになるスキルが少ないのが問題となる。最初に操作できるのは零1人で、スキルも高いダメージを出せるものが無いので、基本は近づいて弱攻撃と強攻撃で戦う。
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次に仲間になる小衣も状態異常の混乱魔法は便利だが、ダメージがそこまで出るわけではないので、結局は近づいて通常攻撃と強攻撃で戦うのがほとんどになりがち。
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そして、この2人は弱攻撃と強攻撃のモーションが変化せず攻撃の射程も短いため、ひたすら同じような「近づいて殴る」を繰り返して進むことに。
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強攻撃でモーションが変化する千が仲間になるのは、第3層の一番奥にいるボス戦で、この2人だけを操作する期間が少し長いので更に辛い。
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千と777が加入すれば少しはマシになるが、だからといってアクションの単調さが解消されるわけではない。777はビーム以外のスキルが弱めなので、覚えるまではひたすら弱攻撃ボタンを連打する。
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後半ではあまり頼りにならない「守護者」
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涙ゲージがMAX時に操作キャラクターは「守護者」を呼び出す事が出来る。守護者がいる間は涙ゲージが減っていくが、操作キャラの通常攻撃時に追加で攻撃を行い、敵の攻撃を一定確率でかばってくれる。ゲージが0になると自動的に必殺技を放つ。
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攻撃面から見ると、ゲーム後半の戦闘ではスキルをメインにして、消費したSP回復する目的で通常攻撃を使う。つまり、スキルを全く強化せず、通常攻撃しか強くしてくれない守護者は、ダメージ増加には役に立たない。
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守備面では、発光する守護者が操作キャラの背後に出現して、プレイヤーからは操作キャラが見づらくなってしまうので、敵の攻撃を回避できなくなる、とこちらでも役に立っていない。
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777に至っては、守護者は出ないので視覚面では少しマシだが、通常攻撃が敵をホーミングする代わりに、攻撃の発生と硬直が悪化する仕様で、むしろ弱くなっている始末である。
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Switch版での画質劣化や一部演出の劣化
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気軽に遊べるのがウリのSwitch版だが、スペックの都合上画質はかなり落ちる。YouTubeなどで見比べてみると一目瞭然で、せっかくの美麗なキャラクターや(ベースは使い回しだが)ステージのモデルなどの強みが薄れてしまう。
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加えて、何故かシレン開始時の零の「紋章をこすって目を閉じ、現世から辺獄へワープ」と言う演出時、PS4版ではきちんと現世から姿を消すのに対し、Switch版ではワープ演出後に目を開いて姿も残る…という謎仕様。
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移植時の設定ミスなのか、本体のスペックの問題なのか…探せばまだありそうである。
総評
ストーリー、雰囲気、登場人物、音楽などの多くの要素が評価が高い一方、肝心のゲームとして「泣いて戦うアクションRPG」のアクション部分に少なからぬ問題がある作品。
単調で作業感のあるアクションにイライラしてしまえば、肝心のストーリー部分も楽しめなくなるだろうし、単調作業が苦にならない人であれば、ストーリーを楽しむことに専念できるだろう。
重きを置く部分の違いによって評価が変わって来る作品といえよう。
その後の展開
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流れを汲む新作『クライマキナ/CRYMACHINA』が2023年7月27日にSwitch/PS5/PS4で発売された。
最終更新:2023年12月08日 16:26