ヤマノススメ Next Summit ~あの山に、もう一度~

【やまのすすめ ねくすとさみっと あのやまにもういちど】

ジャンル アドベンチャー+スゴロク


対応機種 Nintendo Switch
PlayStation 4
発売元 エンターグラム
発売日 2023年12月7日
定価 パッケージ:8,778円
ダウンロード:8,360円
プレイ人数 1人
セーブデータ 72個
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 なし
ポイント ボリューム不足
ヌルゲー化しているシステム
矛盾もあるが原作要素は豊富
エンターグラム作品


概要

アニメ『ヤマノススメ』のゲーム化作品。第4期『Next Summit』の名称を冠しているが、内容は第3期『サードシーズン』までの内容をもとにしている。

原作は、インドア派の少女・雪村あおいが、旧友の倉上ひなたとともに登山をこなしていく日常系作品。いわゆる「親父の趣味を女の子にやらせる」タイプの一作だが、実在の山が多数登場する面白さもあってブレイクし、3分のショートアニメが4期で30分の12話アニメになるほどの人気となった。

「あの山に、もう一度」とある通り、原作ですでに登頂済みの山に再挑戦することが本作のコンセプトとなっている。

システム

  • ADV、登山、ストーリーの3つのパートからなり、登山パートでの成績によってストーリーが分岐する。
    • 登山パート以外では基本的に任意の場所でセーブができるほか、準備パート開始時にオートセーブが行われる。また、ノベルパートでは通常のセーブとは別に、メニューを開かず巻き戻せるクイックセーブを設定できる。
  • 準備パートでは、育成ポイントを消費してスキルを入手したり、所持金を消費して装備を増やしたりできる。
    • スキルは「水分消費量減少」など登山パートで役に立つ効果が得られるほか、入手するだけで永続的に特定のパラメータが向上する。
    • 装備は「登山服」「登山靴」「ザック」「携帯品」からなる。
      登山服・登山靴・ザックは高額なものほどトラブル無効化など強い効果が得られるほか、ザックは登山に持ち込める携帯品の数に影響する。使ってもなくならない。
      携帯品には登山中に体力・水分などの回復ができる食品や、ルーレットの出目を操作できる「お守り」、アクシデントを防止する登山グッズなどがある。こちらは使用した時点で消滅し、都度買い直す必要がある(使用しなかったものを次回登山に持ち越すことは可能)。
  • 登山パートでは、すごろく形式のボードゲームをプレイしてゴールを目指す。詳細は後述。
    • ゴールできなくても次のパートに進むことはできるが、到着後ストーリーは見ることができない。
  • ADVパートでは、一般的なノベルゲーム同様にストーリーを読み進めていく。全編フルボイスである。

登山

  • 登山ではルーレットを回し、その出目にしたがってマスを進んでいく。既定ターンに達するかあおいの「体力」が0になった時点でゴールに到着できていなければ断念となり、登山をやり直すか次のパートに進むか選ぶことになる。
    • 道中には途中分岐もあるが、一度通ったマスに戻ることはない。
    • ルーレットは1〜6が出るものを基本に、特定の数字が多めのもの、体力が増やせるものなどが育成パートで入手できるほか、特定の状況下で強制的に特殊なルーレットを使用させられる場合がある。また、購入したアイテムを用いて出目を操作することも可能。
  • 登山に用いるパラメータには体力のほか「水分」「絆」「高揚」があり、いずれも高いほど有利に登山を進められる。また、準備パートで用いるパラメータとして「育成ポイント」と「所持金」も存在する。
    + パラメータ詳細
  • 体力は、登山パートの最重要パラメータ。準備パートでは「体力」のスキルを獲得することで最大値を増やすことができ、登山中は休憩マスまたは仲間のいるマスで回復できる。
    ルーレットを回すごとに消費され、1回の出目で多く進むほど消費量が大きくなる。次の準備パートに入った時に自動的に全回復する。
  • 水分は、体力の次に重要なもの。準備パートでは「知識」のスキル獲得で最大値が増加し、登山中は水場マスに止まると回復する。
    これもルーレットを回すと消費されるが、消費量は持っている携帯品の数によって決まる。0になってもリタイアにはならないが、減っていると後述するアクシデントが起きやすくなるほか、テンションが低下しやすくなる。次の準備パートに入った時に自動的に全回復する。
  • 絆は、仲間がいるマスの出現確率に影響する。最大値は一定で、仲間のいるマスに止まると値が増える。また準備パートでは「仲間」のスキル獲得で登山中の増加しやすさが上がる。
    絆が高い状態ほど仲間のいるマスが増え、助け合って体力が回復する確率が高まる。通常時は減ることはないが、アクシデント発生時に減少することがある。
  • 高揚は、「ハイテンションマス」の出現しやすさに影響する。
    ルーレットで4以上の出目を出すとテンションが上がり(2以下では低下し)、一定値に達すると豪華なプラス効果が得られるハイテンションマスが出現する。準備パートでは「高揚」のスキル入手で同マス出現に必要なテンションを減らせる。
  • 育成ポイントは、スキル獲得に必要なポイント。☆マークで表わされ、☆のあるマスに止まった時やゴール到着時に増える。マスで入手したものはゴールに到着できずスキップした場合でも入手できる。
  • 所持金は、装備の購入に必要なもの。登山パート終了後に自動で増加するほか、準備パートで「備え」のスキルを手に入れることでも増える。
  • アクシデントマスや難所マス、ハテナマスに止まると、マイナス効果となる「アクシデント」が発生することがある。受ける効果はルーレットで決まるが、一部はスキルや装備で回避できる。
  • ルート上にはイベントマスがあり、止まると簡単な掛け合いが見られる。

問題点

  • ボリューム
    • ステージ数は8つで、そのうち1つはクリア後のエクストラステージであるため、7つゴールすればクリアである。8000円超のゲームとしてはかなり物足りない。
    • 登山中にはイベントマスで掛け合いも見られるが、これはSDキャラによる非常に簡単な挿し絵と一言二言程度のセリフがあるだけで、積極的に閲覧する意欲は持ちづらい。
  • システムが練り込み不足
    • 結局は体力が大正義であり、これを強化・回復するスキルや装備品を備えればまず失敗することはなく、他のパラメータが空気になっている。
      • 水分が減るとアクシデントで熱中症になりやすくなるデメリットこそあるが、逆に言えばそれ以外に進行上の障害となる部分はない。アクシデントマスに当たらないまま進めることが多く、熱中症になって初めて給水すればそれで良い。
        熱中症についてもあくまでルーレットの出目のひとつであるため、水分0だからといって高確率で発症するわけではない。
      • 仲間のいるマスに止まった時の体力回復は非常に小さいため、絆のパラメータは上げても焼け石に水。高揚は、そもそもハイテンションマスに止まれるかどうかが運次第であるため、これも恩恵を感じづらい。
      • 携帯品も多数用意されてはいるが、体力・水分の回復以外は使う機会がほとんどない。特にアクシデント避けの物品は、序盤から発生する砂トラブルを除けば一度も使わずにクリアすることがほとんど。
    • したがって、体力やルーレット関係およびアイテム購入のための所持金が手に入るスキルだけを揃えていけば、よほどチンタラ進まない限りまずクリア可能である。ゲームとしてはかなりヌルいと言わざるを得ない。
  • 『ヤマノススメ』のゲームとして
    • 原作をなぞってはいるが矛盾するストーリー展開も往々に見られ、シリーズファンからするとモヤモヤしてしまう。
+
  • 例えば、三ツ峠山でのひなたによるサプライズがあおいにバレていたことは登頂時にひなたが気づいており、あおいにも伝えている(2期3話)。だが、本作ではバレていない扱いになっている。ストーリー上そうする必要があった場所でもない。

賛否両論点

  • 再登頂というコンセプト
    • 終盤に登場する1山とエクストラステージを除き、いずれの山も原作で登頂済みである。参加メンバーが変わっているなど全く同じシチュエーションではないものの、目新しさには欠ける。
    • だがifストーリーとして楽しんでいるプレイヤーも(ほのか・小春ファンを中心に)一定数おり、原作ファンの間でも賛否分かれている様子が見受けられる。
  • 富士山が未登場
    • 4期で富士山に再挑戦する前を描いている都合か、あおい最大の目標である富士山のステージが無い。本作最難関のエクストラステージではなぜか原作に無い全く別の山が登場するため、そこを差し替えてくれという声は多い。
    • もっとも富士山は途中分岐が基本的に無いことから、再現すると単調になってしまうのではという擁護意見もある。

評価点

  • ストーリー
    • 3期まではショートアニメだった都合上あまり描かれてこなかった、登山前の準備やひなたとあおいの親密な関係などが多めに描かれている。原作での失敗を教訓に工夫するという場面も多く、再挑戦というコンセプトに沿った展開が組まれている。
    • 原作で遅れて登場するほのか・小春は本作では早めに登場し、ストーリーを引き立ててくれる。
  • 原作再現
    • 先述したような単純ミスがある一方、(なぜか)細かい部分で原作要素が豊富に拾われており、納得感がある。
    • 携帯品に羊羹があったり、最序盤のトラブルとして砂トラブルがあったりと、一瞬しか触れられていない要素まで登場する。

総評

ボリューム・システムとも中途半端であり、8000円超を支払うゲームとしては厳しい出来となってしまっている。
ヌルいシステムはストーリーを楽しむためと考えれば理解はできるが、ボリュームに関しては擁護不可能。ストーリーの途中分岐もなく、登山中のイベントも簡素で、一度のプレイで十分となりやすいのも物足りなさに拍車をかける。
ストーリー面でもすでに登頂済みの山が中心であることから、途中出場のほのか・小春ファン以外には積極的におすすめできるものではない。クソゲーというほど崩壊しているわけではないが、お値段とはかなり不釣り合いであることが残念である。

最終更新:2024年05月18日 09:08