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Milk inside a bag of milk inside a bag of milk and Milk outside a bag of milk outside a bag of milk
【みるくいんさいどあばっぐおぶみるくいんさいどあばっぐおぶみるくあんどみるくあうとさいどあばっぐおぶみるくあうとさいどあばっぐおぶみるく】
| ジャンル | アドベンチャー |  | 
| 対応機種 | Nintendo Switch | 
| メディア | ダウンロード専売 | 
| 発売元 | Forever Entertainment(Switch) | 
| 開発元 | Forever Entertainment(Switch) Nikita Kryukov(原作)
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| 発売日 | Switch版 2022年11月11日 | 
| 定価 | 1,000円(税込) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| レーティング | IARC:12+(恐怖) | 
| 判定 | なし | 
| 備考 | Steamにて発売された2作品のカップリング販売 | 
| ポイント | ゲーム性はほぼ無く、ノベル作品に近い | 
 
概要
本作はロシアのゲーム開発者Nikita Kryukov氏が制作し、2020年8月26日にMissing CalmよりSteamにて発売された『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』と、
同じくSteamにて2021年12月16日、こちらは開発・販売ともNikita Kryukov氏にて発売された次回作『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』のカップリング作品である。
以下、第一作目を『Milk1』、第二作目を『Milk2』と略する(Steam販売サイトでも一部このように略されている)。
両作とも全体としてはテキストアドベンチャーの体裁をとっており、「プレイヤーは精神疾患を患う少女の"彼女だけに聞こえる声"となって、彼女と会話をしながら彼女を導いていく」という内容となっている。
『Milk1』では「牛乳を買いに行く」というおつかいをこなし、『Milk2』ではおつかいを終えて帰宅した夜の彼女の行動を体験していく。
ゲーム内容:Milk1
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大まかには、選択肢を選んで進めていくごく基本的なテキストアドベンチャーである。
 選択肢は存在するがシナリオ分岐はなく、基本的には一本道である。
 しかし、少女に対して誤った選択を繰り返すと彼女はプレーヤーを「役立たず」と見限り、一方的に会話を打ち切られてゲームオーバーとなる。
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全体として色使いが赤・黒・紫でおどろおどろしく、かつ粗いドット絵で描かれたビジュアルだが、
 これは彼女の眼を通した世界がこのように見えていることに由来する。
 そのため、一部のシーンを除いて彼女の姿は画面に映らない。
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ちなみに、プレイヤーが選択する選択肢だけでなくテキストウィンドウまでも彼女には「見えて」いる。
 それも勝手に見えてしまうのではなく意図的に見るようにしているのだが、その理由は作中で彼女の口から語られる。
 
 
ゲーム内容:Milk2
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本作を開始すると、オープニングムービーが流れる。
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これは本作が始まるまでのあらすじ、つまり「Milk1」のおさらいということになるのだが、第三者の視点で描写されている。
 よって世界の色彩は普通だし、店内では普通の人が普通に買い物をしている。
 だが「プレーヤーの声」は彼女にしか聞こえていなかったため、彼女は事あるごとに独り言を口走っている(ように傍からは見えている)。
 Milk1のプレーヤーは彼女に感情移入しながらプレーすることになるため彼女の思考や世界を受け入れてしまいそうになるが、
 このオープニングでプレーヤーは「そういえば彼女は普通ではないのだった」と状況を再認識することになる。
 
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ゲーム本編は、大筋ではMilk1と同様に選択肢の選択で進むテキストアドベンチャーが主軸となっているが、
Milk2では彼女の部屋を調べるポイント&クリックパートが挿入される。
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本作はマルチエンディングとなっているが、このポイント&クリックパートで何を調べ・何を調べなかったかが分岐に大きく影響している。
 
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Milk2は、彼女の主観的な世界を描いていたMilk1と違い、彼女が周りから客観的にはどう見えるかという視点で描写されるシーンが多く、少女の姿が多くの場面で映し出されている。
 また、粗いドット絵だったMilk1とは異なり解像度も上がっており、色使いも(Milk1よりは)まともになっている。
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とはいえ基本的なゲームシステムは変わらず、プレーヤーは「少女に語りかける声」となってゲームを進行していく。
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全体的に支離滅裂な言動が多かったMilk1に対して本作の少女は割合平静を保っていて文章も読みやすくなっている。
 ゲームの進め方によって、少女の身に起きた過去の出来事がおぼろげに見えてくる。
 
評価点:Milk1&2共通
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精神を病んでいる者から見た世界や思考をリアルに描写している。
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特にMilk1ではそれを彼女自身の視点で追体験することになるため、彼女が抱える苦しみを共感しやすい作りになっている。
 
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海外の作品だがローカライズの質は高い。
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Milk1とMilk2は翻訳者が異なっており、文体の雰囲気に違いが感じられる。
 どちらかと言えばMilk1の方が不気味で不可解な印象を受け、Milk2は割合整然としていて理解しやすい文になっている。
 が、Milk1とMilk2ではそもそも視点や絵柄や作風が異なるため、それによる違和感は少ないだろう。
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翻訳が難しいゲームであろうことは想像に難くないが、なんと9か国語に対応している。
 
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少女が声に出したセリフは「ペラペラペラ」という感じのSEが鳴るので、わかりやすい。
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両作ともコントローラ操作・タッチ操作の両方に対応している。
評価点:Milk2
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安価ゲームながら、オープニング・エンディングにアニメーションムービーが流れる。
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ボイスこそないものの作画は十分な出来で、使われ方も効果的で印象に残るものとなっている。
 
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Milk2ではMilk1と異なり第三者の視点で少女と関わっていくことになるが、
 「えへへ」と声に出して笑うなど彼女は感情を表情豊かに表現する子だということがわかり、
 ジャパニメーション的なデフォルメのきいた絵柄もあってかわいらしく愛着を持ちやすい
 (配色こそ異なるが、Milk2本編で使用される画風は本ページ上部の基本情報表に掲載されているものが参考になる)。
 少女は語彙も豊富で数学的な知識も持つなど意外と聡明であり、「精神を病んでいる以外は普通の人間である」と実感させられる。
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また、彼女は彼女なりに自分が普通ではないということを自覚し、「普通に」生きていくために並々ならぬ努力をしていることがわかる。
 その結果として家具を1センチたりとも動かさないよう気を付けて生活したり、とうに枯れた鉢植えを部屋に飾り続けるという奇行をとっているが
 これも彼女がなんとかまともに生きようと必死に努力した結果だということがわかる。
 それらを彼女の立場になって見ることで、健常者に理解し難い異常な行動や思考にも感情移入しやすくなっている。
 本作を通して、精神疾患を患う人に対する考え方が少し変わるかもしれない。
 
賛否両論点:Milk1&2共通
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バックログがない。
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バックログが必要なほどのボリュームがあるわけではないが、手違いで読み飛ばしてしまった時には不便。
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しかし、映画やアニメのように始めから終わりまでを通して見ることで完成する作品ともいえるため、
UIを便利にしすぎるとそれはそれで雰囲気を損ねてしまうかもしれない。
 
問題点:Milk1&2共通
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発売当初は日本語翻訳に難があった。
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何故か先行してリリースされていたSteam版とは翻訳が異なっており、機械翻訳したかのような文章になっていた。
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後のアップデートでSteam版準拠の翻訳に変更された。
 
 
問題点:Milk1
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ボリュームが非常に少ない。
 初見でかなり丁寧に時間をかけて読んだとしても、クリアまで15分以上はかからないだろう。
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選択次第で唐突にゲームオーバーになる以外は完全な一本道であり、エンディング分岐もない。
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尤も、Milk1はSteam版で税込み120円のソフトである。
 Milk2は930円、加えてサウンドトラックが100円で販売されているが、
 本作は追加コンテンツなしに「ジュークボックス」がメニューから利用できるため、
 1000円でこれら全てが楽しめることを考えると価格に対して不相応に短すぎるということはない。
 しかし「もう少し高くてもいいのでもっとボリュームが欲しかった」と感じることはあるかもしれない。
 
問題点:Milk2
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Milk1ほどではないが、やはり短い。
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こちらにはバッドエンドが存在せず、代わりにエンディング分岐が存在する。
 しかし、ネタバレになるので詳細は割愛するが、エンディングの内容自体は非常に大きく異なるものの
 エンディングに至るまでの過程・そしてエンディング後にどうなるかという結末に変化はない。
 
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ポイント&クリックパートで通気口を調べるとメッセージ送りが不可能になり、詰む。
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フリーズはしていないのでポーズメニューが使えるが、結局のところタイトルに戻ってやり直すしかなくなってしまう。
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ちなみに画面左下のゴミ山にカーソルをあてると激しく蠢き調べても何も起こらないが、Steam版からの仕様。
 
総評
本作はボリュームが少なく、プレイヤーが介入できることも極めて少ない。
言ってしまえば、ゲームという媒体でなくとも小説やアニメ・動画などでも彼女の心情や彼女が見る世界は表現できたかもしれない。
しかし、ごくわずかな選択肢を(あるいは、1つしかない選択肢を)、プレーヤーがボタンを押して決定する。それに彼女が反応する。
たったそれだけのことが本作を「ゲーム」たらしめており、プレイヤーを「少女とは無関係の傍観者で居られない」ようにしている。
健常者には理解し難い思考や世界を第三者の視点から見るのではなく、本人と一緒に体験するというのはまさにゲームでしか成し得ないことだろう。
本稿では「ゲームとして」の評価を「判定なし」とさせていただいたが、1時間足らずで終わるこのゲームをプレイした後、「1つの作品として」どう評価するかは実際にプレーして感じて欲しい。
余談
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タイトルの「Milk inside a "bag" of...」という部分について
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牛乳が入っているのはバッグ(袋)ではなくパック(箱)ではないのか?と疑問に思うかもしれないが、開発者が住むロシアでは袋詰めされた牛乳が売られている。
が、Milk2のムービーでは普通に牛乳パックを買っている。
 
    
    
        | + | ネタバレではないが、余計な先入観を持たないようプレイ後の閲覧を推奨 | 
両作における「プレーヤー」は、少女の病状がもたらす幻覚症状ないしイマジナリーフレンドであるという見方をするのが最もシンプルな解釈であるが、Milk1における「今度は別のやつでやってみることにするよ」や「新しいお薬は効いた?」といったセリフなどの描写から
 プレーヤーを精神安定剤の銘柄(ないし、その作用によって現れた幻覚)と解釈することもできる。
 いずれにせよプレーヤーの正体の限定を避けるため、本稿ではプレーヤーを「少女が見る幻覚」などと限定する書き方を避け「少女に語りかける声」というような表現で統一した。
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最終更新:2025年05月04日 18:48