イハナシの魔女

【いはなしのまじょ】

ジャンル ラブコメ×ファンタジー
対応機種 Windows(Steam/Microsoft Store)
Nintendo Switch
プレイステーション5
プレイステーション4
Xbox Series X/S
Xbox One
発売元 【Win(Steam)】フラガリア、セイケイプロダクション
【CS/Win(MS Store)】ケムコ
開発元 フラガリア
発売日 【Win(Steam)】2022年8月20日
【CS/Win(MS Store)】2023年4月28日
定価 【Win(Steam)】1,980円
【CS/Win(MS Store)】2,860円
プレイ人数 1人
レーティング IARC 12+(12歳以上対象)
備考 CS/Win(MS Store)版にはソフト内に
電子書籍『イハナシの魔女 Append』を収録
判定 良作
ポイント 沖縄の離島を舞台とした伝奇ジュブナイル
描き込まれた心理描写による青春群像劇
ケムコノベルアドベンチャーシリーズ


概要

同人ゲームサークル・フラガリアが制作したビジュアルノベル。コミックマーケット100にて頒布された後、SteamなどでDL版が販売。
うちSteam版は中国のメーカーであるセイケイプロダクションからの共同配信となる。
その後に本作をプレイしたケムコの担当者からCS機へと移植して欲しいとオファーがかかり、移植が実現した。
CS/Win(MS Store)版では後日談の短編小説やイラストが描かれた冊子『イハナシの魔女 Append』がソフト内に収録されている(Steam版ではDLCとしての別売り)。

あらすじ

高校生の少年・西銘光は幼少期に両親を亡くし叔母夫婦と暮らしていたが、ある日突然沖縄への航空券を渡され祖父の実家がある沖縄の離島「渡夜時島」へ行けと言われる。
言葉通りにして渡夜時島へと渡った光だが、祖父の姿は無くさらに叔母夫婦の夜逃げも発覚し高校への編入手続きも取られていなかった。
自分は捨てられたと気付き、途方へ暮れる中でサトウキビ畑で一人サバイバル生活をする少女・リルゥと出会う。
程なくしてリルゥが魔法を使える魔女である事を知り、祖父とも連絡が取れた光は彼女と共同生活を送る事にする。

特徴

  • 沖縄の架空の離島*1が舞台であり、日常描写では琉球文化や離島での暮らしの様子が多く取り入れられている。
    また、魔法の存在が主軸となっており世界観はローファンタジーにあたる。
  • ストーリーは完全な一本道のノベルゲームであり、全三章仕立てとなる。
    • 選択肢も一応存在するが、分岐を無視しても本編の進行が可能である。その代わり、サブストーリーや沖縄の特色に触れた内容となっており、世界観をより楽しむことが出来る(『ひぐらしのなく頃に』におけるTIPSに近い)。
  • 音声は立ち絵が用意されているキャラクターのみの実装(主人公である光を除く)。

主要登場人物

  • 西銘光
    • 主人公。叔母に疎まれて育った元高校生の少年。育ち故かどこか冷めた性格だが、なんだかんだで情に厚い。
    • 立ち絵では「琉球王国」と書かれた黄色の変Tを着ている
  • リルゥ・ジャミティダ
    • メインヒロイン。島に勝手に小屋を立てて住み着いていた異国の少女。服装もさながら、日本の文化や常識を理解しきれていないなど、浮世離れした雰囲気を持つ。
    • 物言いなどの態度こそぶっきらぼうだが時折優しさも見せるクーデレ。また、魔法により身体能力を上げているとはいえ、意外と腕っ節が強い。
  • 赤摘明(アカリ)
    • サブヒロイン。島一番の美少女を主張するお調子者の女子高生。ロボットアニメ好き。西銘とは面識がある。
    • 名家の生まれであり実際に島ではアイドル的な人気を持つが、本人は夢を叶えるために将来的に待ち受けるある役職を勤める事を危惧している。
  • 比嘉紬
    • サブヒロイン。おっとりとした美人のお姉さんだが、非常に失敗が多いトラブルメーカー。一方で時折大人らしい達観とした一面も見せる。
    • 非常に酒癖も悪く、ビール一缶で悪酔いするほど。また、腕っ節も強く素手でサーフボードが割れる。
    • 立ち絵でしょっちゅう変なポーズをする
  • 勲茶殿(くんさでん)妃里子
    • 妙に難しい苗字やピンクドレスに金髪縦ロール、おほほ笑いなど典型的なお嬢様。アカリとは名家同士で交流が多くライバル的な関係。
  • 兼城丈
    • 地元のヤンキー集団を束ねまとめるリーダー。リゾートで有名な久々島在住。
    • 金さえ貰えばどんな汚れ仕事でも引き受けるというが、義理人情に厚く面倒見も良い。見た目通りのマイルドヤンキーといったところ。
    • 実は隠れオタクであり、台詞の節々も観てるアニメからの影響である。

評価点

  • 王道的なボーイミーツガールストーリー
    • 光とリルゥの関係性に特に焦点を当てつつ、魔法による人助けを交えながら未来や過去、現在に向けて問題に取り組んでいく姿が丁寧に描かれていく。
      日常におけるコメディと多くの登場人物に纏わるシリアスとの緩急の付け方も良く、互いにストーリーを引き締めていく。
    • 物語が進むにつれ主要人物を始め、多くの登場人物による視点が描かれていき、何を考えているのか、どのように相手の事を考えているのかなど心情描写も多く映し出されてゆく。
      • 主要人物たちは一見クセが強いように見えて、話が進むにつれて率先して人助けを行うなど、好感が持ちやすくなる描かれ方をしており、魅力的に映る。
    • 終盤では多くの人物の視点が目まぐるしく変わっていき、主要キャラだけでなくサブキャラクターをも交えてストーリーが進行し、さながらセカイ系のような展開を見せていく。
  • 離島での暮らしの正負
    • 一見美しく見える沖縄文化の魅力だけでなく、村社会ゆえの排他的かつ閉鎖的な環境や現代の視点では奇妙に写る古くから伝わる因習、
      少しの移動でもフェリーを使う他、台風が特に脅威となるなど日常描写でも不便に感じさせる点が多く描写され、決して綺麗さだけではない事を描いている。
    • この特殊な環境や沖縄の伝承が魔法の存在と強く結び付けられており、現代日本を舞台とした事での神秘性を強めている。

問題点

  • インデックスが大雑把すぎる。
    • なんと選択できるのは各章のスタートからのみで、途中のシーンから読み返すことが出来ない。
      このため見たいシーンを読み返すには場面ごとに個別にセーブするしかない。
  • ゲーム本編だけでは説明されていない箇所が見られている。
    • 例えばある人物が最初は敵対しつつも次第に友好的な関係となるが、主人公の光はともかく別の人物とも仲が良くなっているなど、若干唐突に感じやすい。
      また本編内で説明する余地が無かったとも取れるものの、詳細があまり語られていない設定も多い。
    • これらに関してはゲームクリア後に閲覧が出来るサイドストーリーや資料集などで補完されている。

総評

人間模様が丁寧に描かれた青春ストーリー作品である。王道的なボーイミーツガールが好きな人には特にオススメできるタイトルと言える。

余談

  • 当初はボイス無しになる予定だったが、中国語翻訳版を制作するにあたってボイスの実装が決まったとの事。
    • このためか、体験版にはボイスは実装されていない。
  • PC版はSteam/MS Store以外ではBOOTHやDLsiteでも販売されている。これらはパブリッシャーを介さないフラガリア単独での販売となり、同人ゲーム扱いとなる。
    • また、DLsite版でのみ『Append』は販売されていない。
  • 海外北米圏でのみPS5及びSwitchパッケージ版が販売されている。
最終更新:2025年02月26日 22:33

*1 モデルは存在するが、当時のコロナ禍の影響による交通規制もあり取材が出来なかったため、内情は完全にファンタジーとのこと。