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(1) | ポイントが明確で読みやすいこと | 高度な内容が書かれているにも関わらず、中川氏の主張が極めて明瞭なため、政治思想の初心者であっても、何とか読み進めることが出来ること。 |
(2) | ガイドブック機能が高いこと | 著作中に、西洋思想を理解する上で知っておくべき良書(正しい思想家)と悪書(間違った思想家)の充実したリストを掲げており、中川氏の解説を頼りに、それらの古典に順次挑戦していくことが可能なこと。 |
(3) | 自主憲法制定まで視座に据えていること | 単に西洋思想の解説に留まらずに、それらの理解を現実の日本政治の改善にどう活かすか、を考究し、究極のゴールとして明治憲法に範を取った自主憲法制定を志向し、その具体的内容まで提案していること。 |
朝鮮半島や東南アジアについては日本が侵略した訳ではないが、中国については日本の侵略戦争であり、日本は中国に関してはきちんと謝罪すべきだ |
靖国神社に祭られている一般の英霊には感謝の念を表すべきだが、東条英機元首相などのA級戦犯は分祀すべきだ |
中川八洋氏の西洋思想の解説は非常にお勧めですが、残念ながら同氏の戦前~戦後の日本の政治・思想状況に関する著作は、 | |
①読みやすく興味深い内容ではありますが、②実証的裏付けが乏しく、余りお勧めできません。ご注意下さい。 | |
戦前~戦後の日本の政治・思想状況に関しては、当ページ下部や丸山眞男「天皇制ファシズム論」、村上重良「国家神道論」の検証などのページで紹介していますが、 | |
堅実な実証研究に基づく論説を発表している ①竹内洋・井上義和・植村和秀氏のグループや、②新田均・八木秀次氏のグループの著作をお勧めします。 | |
<1> | これについては、西洋思想という膨大な諸観念の塊を、自在に切り分けて整理し要点を抽出する中川八洋氏の強力な「構想力」「独創性」が、地道な事実検証を積み重ねること、あるいは他の研究者の研究結果と比較し整合性を検証すること、により自分の仮説を躊躇なく修正していく必要が生じる実証研究に際しては、残念ながら逆に仇となってしまっている、ことが原因と考えられます。 |
<2> | その点で、①竹内・井上・植村氏や、②新田・八木氏の研究成果は、一種の集合知としてバランスの取れた内容が提示されており、当サイトの戦前~戦後(さらに現代)に至る日本の思想問題各論ページも、この①・②を機軸としてまとめられています。 |
【ステップ1】 | 中川八洋氏の著作を読む | →予めゴールを知っておく | |
【ステップ2】 | 政治思想の古典を読む | →有益vs有害:4X3、プラス1 | |
《1》 | 自由を守る4人の有益な思想家と著作 | バーク、ハミルトン、ハイエク、ポパー | |
《2》 | 隷従への道を囁く3人の有害な思想家と著作 | ルソー、ヘーゲル、マルクス | |
《3》 | 有益だが見過ごせない問題点のある思想家と著作 | ロック | |
【ステップ3】 | 理論派保守として乗り越えるべき壁 | →標準的な政治思想を押さえる | |
《1》 | 現在の標準的な政治学の教科書を読む | 批判的にチェックしていこう | |
《2》 | 西洋政治思想を毒するJ-J.ルソー対策として | フランス革命の誤謬を知る | |
《3》 | 日本政治思想を毒する丸山眞男対策として | 日本ファシズム論の誤謬を知る | |
《4》 | 西洋思想の標準的知識を押さえる | 分析哲学の概要まで押さえることが必要 | |
【ステップ4】 | 理論派保守の目標地点 | →憲法と法理論を押さえる | |
《1》 | 法学基礎理論(基礎法学)をまず押さえる | ドイツ系法学と英米系法学の違い | |
《2》 | 次に様々なスタンスの憲法基本書を一瞥する | 芦部信喜、佐藤幸治、阪本昌成、各々の憲法論 | |
《3》 | 最後に保守主義・自由主義の立場からの憲法構想を把握する | 日本会議による提案、中川八洋案 |
ステップ1 | 50~100時間 | 結論だけ知るなら、これで十分 |
ステップ2 | 150~300時間 | 以下はステップ1の論証です |
ステップ3 | 150~300時間 | |
ステップ4 | 150~300時間 | |
計 | ミニマム500時間、マックス1000時間 | いざ! 左翼・売国奴討伐に出陣! |
『正統の哲学 異端の思想―「人権」「平等」「民主」の禍毒 (単行本) 』(中川八洋:著)
西欧哲学の正統保守主義(真正自由主義)の系譜と、それに対立する邪悪な全体主義思想(自由を圧搾する偽りの思想)の系譜を峻別して分かり易く解説。 正統の思想・邪悪な異端の思想の各々の思想家と代表的著作の一覧表が大変参考になります。 | ||
<目次> | ||
第1部 総論 真正自由主義離脱の代償 | 第一章:近代がうんだ「反・近代」―全体主義の源流フランス革命 | |
第二章:「進歩」という狂信 | ||
第三章:真正自由主義―伝統主義、保守主義 | ||
第2部 各論 隷従の政治か、自由の政治か | ||
第四章:「平等教」の教祖ルソー―全体主義と大量殺戮の起源 | ||
第五章:フランス革命―人類の「負の遺産」 | ||
第六章:「大衆」―全体主義の母胎 | ||
第七章:「人権」という狂信―全体主義への媚薬 | ||
第八章:迷信の「国民主権」、反・人民の「人民主権」 | ||
第九章:「進歩」の宗教、「進化」の神話 | ||
第十章:平等主義―自由抑圧の擬似宗教 | ||
終章:伝統・権威と自由の原理―保守する精神 | ||
文献リスト | 「悪書」の過剰と「良書」の欠乏 | |
『保守主義の哲学―知の巨星たちは何を語ったか (単行本)』(中川八洋:著) | ||
ハイエクの思想を機軸に西欧哲学の正統保守主義(真正自由主義)の系譜と、それに対立する邪悪な全体主義思想の系譜を峻別して分かり易く解説。 エドマンド・バークを初めとする正統保守思想の概略をこの一冊でマスター可能。 後は本書で紹介されている興味の湧く各思想家の書に挑戦しましょう。 | ||
正統の憲法 バークの哲学 中川八洋著 中公叢書 (2002年) | ||
米・英・仏・日(明治・昭和)の憲法をその来歴から「正統の憲法」と「異端の憲法(偽りの憲法)」に切り分けて論じた目から鱗の名著 | ||
<目次> | ||
序: | 正統の憲法、異端の憲法―祖先の叡智を保守する精神 | |
第1章: | 保守主義のアメリカ憲法―デモクラシーへの不信、人民への警戒 | |
第2章: | イギリス憲法の母胎―封建遺制と中世思想 | |
第3章: | フランス憲法、負の遺産―血に渇く神々を祀る宗教革命の教理 | |
第4章: | 「日本の知的遺産」明治憲法―自由と倫理が薫る英国型憲法 | |
第5章: | GHQ憲法のルーツ―スターリン憲法の汚染、ルソー主義の腐蝕 | |
第6章: | バーク保守主義の神髄―高貴なる自由、美しき道徳 | |
あとがき: | 「改革」の魔霊に憑かれた日本 | |
※内容に関しては、 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋 も参照のこと |
国民の憲法改正―祖先の叡智日本の魂 | |
第1部 正統の日本国憲法 | 中川草案 | |
第2部 「国民の憲法」の絶対三条件―皇室、国防軍、家族 | 「世襲の共同体」日本の皇統―天皇への崇敬は悠久の日本の礎 | |
美徳ある国民 | ||
名誉ある国家―道徳の主体としての国防軍 ほか | ||
第3部 国家簒奪・大量殺戮の思想を排除する―根絶すべきフランス革命の教理 | 「国民主権」は暴政・革命に至る―「デモクラシーの制限と抑制」こそ憲法原理 | |
「人権」という、テロルの教理―文明と人間を破壊した「フランス人権宣言」 ほか | ||
第4部 亡国に至る三つの憲法改悪―一院制、首相公選、地方分権 | 参議院の再生―「法の支配」の番人 | |
国の伝統と慣習の守護 | ||
中曽根「首相公選」論の正体―スターリン型独裁への中間段階 ほか |
№ | 有益な思想家 | 主著 | 評価 | 説明 |
1 | A.ハミルトン(1755?-1804、米) | 『ザ・フェデラリスト 』(1788)(マジソン、ジェイと共著) | 有益度:S | アメリカ独立戦争でワシントンの副官として活躍。その後13邦に分立したままのアメリカを一つの連邦にまとめる合衆国憲法案の批准を訴える論説をJ.マジソン、J.ジェイと共にニューヨーク州の新聞に連載し合衆国発足に貢献。その論説集『ザ・フェデラリスト』は現在に至るまで合衆国憲法の最良のコンメンタール(注釈書)として揺ぎ無い地位を保ち続けている。 |
2 | E.バーク(1729-1797、英) | 『フランス革命の省察 』(1790) | 有益度:S | 当時英国領であったアイルランド出身のホイッグ党(自由党の前身)の有力下院議員。アメリカ独立戦争では植民地側に理があるとしてこれを支援したが、フランス革命が勃発すると逸早くその全体主義的・狂信的本質を見抜いて、これを糾弾する名著『フランス革命の省察』を著し英国のフランス革命反対の世論形成に大きく貢献した。 |
3 | F.A.ハイエク(1899-1992、オーストリア→英) | 『隷従への道 』(1944)『自由の条件 』(1960)『法と立法と自由 』(1973-79) | 有益度:S | ノーベル経済学賞を受賞。しかし「隷従への道」執筆後は経済学に加えて法思想・政治思想の分野を総合した哲学者として晩年まで精力的に活躍。第二次世界大戦を挟んで膨張する一方の社会主義に警鐘を鳴らし、自由主義の価値を訴え続けた。1970年代末に始まる英国のサッチャー改革はハイエクの思想をバックボーンとして実行された。⇒ハイエクと自由主義 |
4 | K.R.ポパー(1902-1994、オーストリア→英) | 『開かれた社会とその敵 』(1945)『歴史(法則)主義の貧困 』(1957) | 有益度:S | ハイエクと共に、マルクス主義・全体主義の似非科学性を厳しく追及・糾弾し、相互批判に向けて開かれた自由な社会を擁護し続けた。なお上記の様にポパーの名著『The Poverty of Historism』は日本では左翼文化人の久野収によってワザと『歴史主義の貧困』と誤訳されている。 |
№ | 有害な思想家 | 主著 | 評価 | 説明 |
1 | T.ホッブズ(1588-1679、英) | 『リヴァイアサン』(1651) | 有害度:S | 英国の清教徒革命(1640-60)期にスチュアート王朝もクロムウェルの共和制も双方とも擁護可能な御用理論として『リヴァイアサン』を著し、一旦社会契約を交わして国家を創立した後には、人民は国家に対する絶対的服従を要求される、とした。 |
2 | J-J.ルソー(1712-1778、スイス→仏) | 『社会契約論』(1762)『人間不平等起源論』(1755) | 有害度:S | 社会契約を締結した人間は、その契約の結果形成される「一般意思」に完全に従属する(喜んで従う)、とする個人の自由意志を完全に滅失した集団主義的・全体主義的思想(Collectivism:集産主義と訳す)を唱えて、フランス革命やヘーゲル更にマルクスの思想に大きな影響を及ぼした。 |
3 | G.W.F.ヘーゲル(1770-1831、ドイツ) | 『歴史哲学』(1840)、『法哲学』(1821) | 有害度:S | ドイツ観念論の大成者。「歴史とは世界精神(世界を支配する絶対的な理性原理)の展開過程である」とする歴史法則主義を唱えて、マルクスの思想に多大な影響を与えた。 |
4 | K.H.マルクス(1818-1883、ドイツ) | 『共産党宣言』(1848)、『資本論』(1867) | 有害度:S | ヘーゲル左派から出発し、F.エンゲルスと出会って以降フランスなどで提唱されていた初期の社会主義(空想的社会主義)に接近。これに科学の装いを施し「共産主義社会の出現は歴史的必然である」とする科学的社会主義(マルクス主義)思想を打ち立て、さらにプロレタリア革命を実現するための実力行使を広く呼びかけた。⇒マルクス主義と天皇制ファシズム論 |
フランス革命についての省察ほか | |
中公文庫か、みすず書房の翻訳本を薦める。岩波文庫版は悪訳。 要検証: 2011年に出版されたPHP研究所刊行のものはどうか? | |
ザ・フェデラリスト(抄訳版)
A.ハミルトン(初代財務長官)、J.マジソン(第4代大統領)、J.ジェイ共著 | |
アメリカ合衆国憲法のコンメンタール(注釈書)として不動の地位を確立している名著。福村出版の完訳版は残念ながら非常に高額のため岩波の抄訳版をお勧めします。これと中公文庫『世界の名著』シリーズの1巻で重要な部分はかなりカバーできるはず。 | |
『隷属への道』(F.A.ハイエク:著)(※西山千明氏による新訳を薦めます) | |
計画経済と生産手段の共有という社会主義政策が、なぜ全体主義に至ってしまうのか。自由を守るために心に留めなければならないことは何か。「法の支配」の真の意味と重要性とは。後年のハイエクが、自己のエッセンスが全部詰まっているとして一般の読者に薦めた一冊。 | |
第二次大戦末期にアメリカで好評を得たあと、1989年にベルリンの壁が崩れ91年までにソ連が崩壊していった時期に、その恐ろしいまでに的確な全体主義社会の分析によって、この本は再度、西欧世界で熱心に読まれ初めました。 | |
全体主義を厳しく排撃するハイエクを、戦後長く意図的に無視し続けてきた日本の出版界にも1980年代の終わり頃から漸くハイエクの著書を出版する動きが出てきました。かなり難解だが、渡部昇一先生の解説本『自由をいかに守るか―ハイエクを読み直す 』を頼りに読み進めて欲しい。なおハイエクの割と平易な編著作として『市場・知識・自由―自由主義の経済思想 』があるので、『隷従への道』がどうしても難しい人はこっちに挑戦する手もある。 | |
『開かれた社会とその敵』(全2巻)K.R.ポパー著(1945) | |
第一部:プラトンの呪文 第二部:ヘーゲル、マルクスとその余波 | |
2冊本だが、論旨明快で読み易い。プラトンから始まり、ヘーゲルを経てマルクスに至る全体主義思想を厳しく論駁した必読の名著。 |
人間不平等起源論 | |
『社会契約論 』よりもこちらの方が読みやすい。興味が沸けば『社会契約論』に進むべし。 | |
歴史哲学講義 | |
ヘーゲル哲学の滅茶苦茶さは『歴史哲学講義(上・下)』を読めば十分わかるはず。興味が沸けば『法哲学講義』へ。 | |
共産党宣言 | |
ヘーゲル&マルクスの政治思想の滅茶苦茶さ・問題点は、上のK.R.ポパー著『開かれた社会とその敵』で的確に指摘されているので、マルクスは『共産党宣言』だけ読んでおけば十分。 |
統治論(市民政府二論) | |
超有名であり、内容もさほど難しくない。なお同じ社会契約論のホッブズ『リバイアサン』は長過ぎ&内容が古過ぎて読む価値が余りない。 |
政治学 (New Liberal Arts Selection) | ||
「七人の侍」の政治学 | ||
第1部 統治の正統性―政治の課題とは何か | 政策の対立軸 | |
政治と経済 ほか | ||
第2部 統治の効率―代理人の設計 | 議会 | |
執政部 ほか | ||
第3部 統治のプロセス―代理人の活動 | 政策過程 | |
対外政策の形成 ほか | ||
第4部 統治のモニタリング―何がデモクラシーを支えるか | デモクラシー―理想と現実 | |
投票行動 ほか) |
(1) | 西洋の政治思想について | J-J.ルソーの思想を隠れた機軸とし、バークやハイエクの思想を故意に隠蔽し(バークの思想)、または「古い世代」などと婉曲的に否定(ハイエクの思想)していること。 |
(2) | 日本の政治思想について | 「国民主権を貫徹するために天皇制を打倒」することを最大の目標としていた“日本を代表する政治学者”丸山眞男の思想を実は基調としていること(著作者は丸山の弟子筋ばかり)。 |
絵解き ルソーの哲学―社会を毒する呪詛の思想 | |
渡部昇一(監修)・中川八洋(解説)両氏のコラボが実現した、分かり易い漫画付き解説本 | |
第1章 「孤児」ルソーの、放浪の生と異常な性 | |
第2章 5人の子を棄てた啓蒙哲学者の誕生 | |
第3章 文明社会を破壊せよ!―「野蛮・未開社会こそユートピア」 | |
第4章 性道徳の破壊と人間の改造―『新エロイーズ』と『エミール』 | |
第5章 全体主義体制の教祖・ルソー | |
第6章 迫害、放浪、ひどくなる狂気 | |
第7章 『夢想』と恍惚の果てに | |
第8章 死せるルソーの煽動―血塗られたフランス革命 | |
『革命について』ハンナ・アレント(1963) | |
自由な立憲政体を建設したアメリカ独立革命と、暴虐のテロと全体主義に沈んだフランス革命・ロシア革命を鮮烈に対比した名著。ルソーの絶大な影響下に実行されたフランス革命への幻想を完全に打ち砕く。 |
丸山眞男と平泉澄 昭和期日本の政治主義 植村 和秀(著) 柏書房 (2004/10)単行本 | |
丸山眞男といえば、進学校の学生が全共闘世代の教師に「夏休み(冬休み)の課題に『日本の思想』(岩波新書) の中の一章を読んで感想を書け」と言われて、面白くも無いヘンテコで拗けた文書を読まされて難儀するのがオチの“戦後日本を代表する政治思想家”なのだが、そうした丸山の思想に半ば洗脳されていた著者(京産大法学部教授、ドイツ政治思想史専攻)が、京都の古本屋でたまたま、丸山眞男と思想的に対極にある平泉澄の戦前の著作を手に取り、その流麗な文体・精緻な論理構成に打たれて、可能な限りの事実検証・文献検証を重ねて両者の思想的対立の根源に迫った好著。 | |
「筆者には丸山眞男も平泉澄も、その支持者の多くのように、無条件に支持することはできない。丸山には心情的には共感できるが、しかし論理的には納得できない。平泉に論理的には共感できるが、しかし心情的には納得できない。それにもかかわらず、丸山と平泉の思想史的な意義の重さと、人間的な偉大さとは、素直に承認したい。」(著者:植村氏)…丸山眞男的あるいは進歩派文化人的な「戦後民主主義」思想にドップリ漬かった人への解毒剤としてお勧め。また昭和初年~昭和40年頃までの日本の思想状況の本当の所を知りたい人にもお勧めしたい。 | |
「生きて皇室を守るべし。雑草を食っても生きよ」終戦前後の混乱期における平泉同学の知られざる奮起、まさに大日本帝国の殿(しんがり)としての貢献、阿南惟幾・下村定の陸軍最後の二人の陸相と平泉博士とのエピソードも興味深い。 | |
相当にハイレベルだが、“理論派保守”を目指す人は是非挑戦してほしい。西洋の保守思想に留まらず、日本の保守思想への扉を開く貴重な一冊 | |
昭和の思想
植村 和秀 (著) 講談社選書メチエ(2010/11)単行本 上記『丸山眞男と平泉澄昭和期日本の政治主義 』が内容的にハイレベルすぎて、初心者のみならず中級者でさえ中々に読みこなせないという難点に答えるかのように2010年秋に出版された簡潔な昭和期政治思想の概略本。 内容(「BOOK」データベースより) 「戦前=戦後」だけでなく、昭和はつねに「二つの貌」を持っていた。皇国史観から安保・学生運動まで、相反する気分が対立しつつ同居する昭和の奇妙な精神風土の本質を、丸山眞男・平泉澄・西田幾多郎・蓑田胸喜らの思想を元に解読する。 <目次> 第1章 日本思想は二つ以上ある 第2章 思想史からの靖国神社問題―松平永芳・平泉澄 第3章 思想史からの安保闘争・学生反乱―丸山眞男 第4章 思想史からの終戦と昭和天皇―阿南惟幾・平泉澄 第5章 思想史からの世界新秩序構想―西田幾多郎・京都学派 第6章 思想史からの言論迫害―蓑田胸喜 第7章 二〇世紀思想史としての昭和思想史 |
現代政治理論 | |
《1》で紹介した政治学 (New Liberal Arts Selection)
や同じ有斐閣アルマの現代政治学
が丸山眞男や彼の称揚した(ルソー的な意味での)「民主主義」をあまり疑問なく肯定しているのに対して、2006年出版とより新しいこの本は、「日本を代表する政治学者・政治思想家」丸山眞男の紹介もなく、またdemocracyを「民主主義」として変に賞賛せずにきちんと「デモクラシー」(政治思想ではなく政治制度の一つ)として考察する姿勢をとるなど、左翼思想の刷り込みが比較的少ない。 また「自由主義」と一般には訳されるliberalismの解説が詳しく、特に他書が意図的に忌避しているハイエクの思想の解説も比較的多くお勧めである。 | |
『知の歴史―ビジュアル版哲学入門 (大型本)』(ブライアン・マギー:著) | |
イギリスの標準的な哲学・思想解説本(分析哲学以前の伝統的な哲学が中心)。左翼の強い日本では意図的に紹介されない英国保守思想の大家エドマンド・バークにも確り数ページが割かれている。 著者ブライアン・マギーは、ハイエクの盟友カール・R・ポパーと深い交流のあったイギリスの代表的な哲学解説者で、イギリス左翼の代表的思想家バートランド・ラッセルとも交流のあった人物。 この本で特に興味深いのは、デカルト以来の大陸合理論が、ガリレオ・ガリレイからケプラーを経てニュートンによって完成した古典力学の決定論の大きな影響を受けていること、しかし20世紀に入ってアインシュタインの相対性理論・ハイゼンベルクの不確定性原理が発見され、絶対と思われたニュートン力学が否定され、それがハイエクやポパーの合理主義批判に影響を与えていること、がポパーの解説部分の前後に述べられている点である。 他にバートランド・ラッセルの『西洋哲学史(第三巻)近代哲学 』もまずまずお勧め(ただしラッセル自身は愛国的左翼なので注意)。 | |
『分析哲学講義』(青山 拓央:著) | |
ブライアン・マギーの上記図書では分析哲学の紹介がほぼ欠落しているので、こちらも必ずチェックして欲しい。 分析哲学とは「哲学の役目は《概念の分析》《問題の明晰化》にある」として、ア・プリオリ(先験的)な観念論に囚われた伝統的な形而上学的思想・哲学の殻を打破して戦後の英米圏で圧倒的な主流となった哲学潮流であり、当ページ・ステップ4《憲法と法理論》に進む上で簡単にその考え方をチェックしておく必要がある。 (逆に、これを一通り押さえずに憲法論・法理論に進むと、保守主義・自由主義ではなく独善的な「右の全体主義」に陥ってしまう危険が高くなってしまう)。 | |
『保守主義の社会理論―ハイエク・ハート・オースティン 』(落合 仁司:著) | |
?F.A.ハイエクの自生的秩序論、?H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール論)、?J.L.オースティンの言語行為論(SPEECH ACT THORY)という20世紀哲学の諸潮流の内的関連性を、?ウィトゲンシュタインの言語ゲーム論とも絡めながら解説し、社会哲学の観点から「20世紀以降の保守思想」を論じた名著。書中に多々登場する哲学・思想用語を一つ一つ辞書等でチェックしていく根気さえあれば、論旨明快で読みやすいはず。 ※参考ページ 落合仁司『保守主義の社会理論』内容紹介 |
日本国憲法とは何か | |
平易でありながら、憲法を考える上で最低限必要な知識をきちんと教えてくれる名著。姉妹編の『明治憲法の思想―日本の国柄とは何か 』と併せて読んで欲しい。 | |
『自由の条件』(全3巻)F.A.ハイエク著(1960) | |
第一部:自由の価値 | |
第二部:自由と法 | |
第三部:福祉国家における自由 | |
三巻本。続編の『法と立法と自由』も三巻本で、一冊一冊が高価だが、図書館などで見つけて目を通して欲しい。サッチャー政権の保守主義改革の理論的根拠となったネオ・リベラリズム(新自由主義=新保守主義)の代表作。論旨明快なため、内容はさほど難しくないはず。 | |
憲法1 国制クラシック 、憲法2 基本権クラシック | |
著者・阪本昌成氏(近畿大学教授・憲法学者)はハイエクの自由論とハートの法概念論をベースに自由主義的憲法学を展開する稀有の碩学。右記の2冊本は保守のための憲法基本書として唯一無二の価値を持つ名著であり、宮沢俊義→芦部信喜と続く左翼憲法学の誤謬を完膚なきまでに粉砕する内実を備えている。2冊とも2011年秋に改訂されており、最新の判例をも取り込んでいるところも嬉しい。 ※重要参考ページ ⇒ 1. 阪本昌成『憲法理論Ⅰ 第三版』(1999年刊) ⇒ 2. 阪本昌成『憲法1 国制クラシック 全訂第三版』(2011年刊)} | |
公正としての正義 再説 | |
著者ロールズは現代リベラル思想の代表者。かなり難解だが、標準的な政治思想・法思想を押さえる上で欠かせない一冊であり批判的に読んでおく必要がある。 | |
現代法理学 | |
ハイエクとロールズの両思想を押さえた上で読むべき法思想・法理論の標準的解説本(ただし超難解)。憲法その他の実定法をいかなる思想を持って定立すべきかを、かってのドイツ系の「法哲学(legal philosophy)」の立場からでなく、英米系の「法理学(jurisprudence)」の立場から考える重要な一冊。ここまで読んでおけば理論派保守として免許皆伝? 厄介な左翼相手の論争で無敵の王者になれるかも? |