希望

ある日、大怪獣が死んだ。

人類存亡を賭けたあとしまつが今、始まる。


「怪獣の名前は、『希望』であります」

映画『大怪獣のあとしまつ』に登場した怪獣。きぼぜつやhumi氏は無関係。
ある日突然日本に出現し、軍の攻撃を全く寄せ付けない強靭な肉体とその巨体で人類を未曽有の恐怖に陥れた*1が、
ある日突如現れた謎の光エネルギーに包まれた後絶命しており、劇中では死体しか登場していない。
死因は不明だが、巨大な外傷が確認されたため、自然死や病死ではないようだ。
また「希望」という名前もこの怪獣の死後に付けられた物で、生物学史上に残る貴重な環境資源となることを期待されて名付けられた。
そして「高尚な権威者達わざわざ集めて命名するとかどんだけ税金無駄遣いするんだ」「死者も被害も甚大な怪獣に何を不謹慎な名前つけてんだ」と大炎上した

+ 邦画『大怪獣のあとしまつ』について
特撮映画であまり描かれることがない「怪獣が死んだ後の死体処理」にスポットを当てた映画。
当初は製作は松竹と東映の初の共同、元アイドルの山田涼介氏、女優の土屋太鳳氏ら気鋭の俳優らを主演に迎え、
脇を固めるのは特撮経験者でもあるオダギリジョー氏をはじめとする大物俳優や実力派の俳優陣、
怪獣「希望」の造形には特撮映画史で様々な怪獣のデザイン・造形を担当した若狭新一氏、
といった事前情報により、『シン・ゴジラ』的なSF色が強い本格志向の映画だと思われていた。
実際、この怪獣もデザイナー曰く「日本一有名な怪獣に似ないよう気をつけてデザインした」らしい。意識しまくってました

……が、その実態は、
「怪獣の死体が放つ腐臭がウ○コの匂いかゲ○の匂いかで国が紛糾、収拾のため総理が政府の公式見解として『銀杏の匂い』と発表するものの、
 デモ隊がそれに激怒して『政府は嘘をついている!ウ○コとゲ○を足した匂いだろ!』と叫ぶ」
「女性がキノコに汚染された男性の股間を指差して『別の種類のキノコが生えてる!』と言う」等に代表される下ネタと、
一見すると脈絡もなく盛り込まれる三角関係や複雑な人間関係、
怪獣の死体が燃えるゴミか燃えないゴミか、死んだ場所が河川敷だから管轄はどこだと責任を押し付け合うも、
怪獣の死体が研究材料や観光資源として莫大な利益をもたらす可能性が大きいとなると、
今度は利権の奪い合いを始める私欲に満ちた政府関係者の足の引っ張り合い(更には外国政府の横やり)に翻弄される現場
……といった政治風刺が満載の、「脱力系ナンセンスコメディ映画」である。
そのギャップから本格的なSF映画と思って観に行った特撮ファンからは、
「処理作戦がギャグで終わって次に移行するから何を以て作戦失敗扱いになったのか分からない」「令和の実写版デビルマン
「一番面白かった場面は本編上映開始前の『シン・ウルトラマン』の予告映像」「オダギリ・ジョーの経歴に泥を塗るな」
などと炎上・酷評されるに至った。
ただし、主演陣の演技力が壊滅的で支離滅裂なデビルマソと、演技はしっかり出来ており話も一応はスジが通っている本作は雲泥の差があるとの声もある。
「とりあえず、山田君が格好良かったから良し」「土屋太鳳こんな映画出演でも美しい」と言う芸能人ファンがそれなりに居たし…
特に「特撮映画における怪獣」とは「自然災害や核兵器、戦争といったもののメタファー」と感じる特撮ファンや製作者は多く、
それを下ネタや政治風刺で味付けした結果、合体事故を起こしてギャグが盛大に滑り倒している本作は、
仮面ライダーの脚本家として知られる小林靖子女史からも、「大災害に立ち向かう素晴らしい人間の叡智に往復ビンタを喰らわせる映画」
オブラートに何重にも包まれて酷評された。

あと、「怪獣の死体処理」を前代未聞と謳っているが、長い特撮史の中には「放射能や毒物などが死後も残留していて危険なので宇宙などに持って行く
細胞の一片でも残すと危険なので死体処理専門の部隊がいる」「怪獣の死体から有用な物質を採取、技術的に取り込む
倒された怪獣をサイボーク化したりメカ○○として復活させる」等の前例や、
死体ではないが、珍作戦の連続をコミカルに描く前例もあるため、濃い特撮オタクには新鮮味も薄かった。
ついでに『シン・ウルトラマン』にも本作ラストを彷彿とさせるシーンがあったりもした。意識してかは不明ながら、「後始末が大変」なんて台詞も
余談ではあるが、『ウルトラマンティガ』第5話「怪獣が出てきた日」は、本作同様腐敗する怪獣の死体処理に取り組むエピソードだったために
(さらにこちらは件の怪獣がゾンビ化して動き回る)、「TSUBURAYA IMAGINATION」で『ティガ』が公式配信されていることもあり、
本作の公開以降に上述の『シン』の一場面と併せてにわかに注目されるという珍事が発生していた。
また、本作の「希望」を「特撮史上最大の怪獣」と紹介している記事も存在するが、実際にはこれより大きな怪獣は過去に複数存在する
(そもそも昭和ウルトラシリーズの時点で「全長:無限大」な
 バルンガQ)やバキューモン()、シルバーブルーメレオ。ただし設定変更後)等が登場している)。
つまり、「前代未聞」でも「史上最大」でも無く、この辺りのリスペクトの無さ・リサーチ不足も不興を買った一因であろう。

一応、ダムの爆破などの特撮シーンは見応えがあり、バカ映画の類として見れば面白いとする評価もあるのだが……。*2
更にはスタッフやキャストの顔ぶれからして、特撮オタク向けではなく所謂「一般層」に向けた映画である事は明白と言う擁護意見もあり
(本作の脚本・監督を担当した三木聡氏からして脱力系の笑いを交えた作風が特徴の人物である)、
「特撮・SFオタク向けの視点はハナから介在していなかった」と考えればこうなったのも幾分か説明できるのではないかと思われる
(後述のインタビューでも本作の肝は「政治風刺」と「コメディ」の2点としており、「SF特撮要素が本筋では無い」旨を示唆している)。
……が、一般層が「怪獣の死体の後始末」なんてマニアックなネタに興味を持つわけもなく(前述の通り俳優目当てな観客なら居たが)
どう考えても『空想科学読本』や『空想法律読本』みたいなネタで盛り上がるSFオタクをターゲットにした作品でない方がおかしい。
また、事前の予告を報じるマスコミに「コメディ」という言葉を禁句にするよう通達していたという話もあり、最初から騙す気満々であったとの噂も
そのためか、 劇場公開後のインタビュー に応じた本作のプロデューサーらは「意図が正しく通じなかった」という旨を述べている。
……が、「観客が自分達の意図を理解できないのが悪い」とも読み取れてしまう発言内容だったため、
反って火に油を注ぐ結果になってしまい「『大怪獣のあとしまつ』の後始末に失敗」と揶揄される羽目に。もしかして:炎上商法

最全長380m、全高155mと怪獣映画屈指のサイズが特徴。
また、キノコのような背びれをしているが、これは冬虫夏草のように生物に寄生する菌類によるものらしく、
立ち入り禁止区域にわざわざ侵入した結果希望の死骸から出た廃液に呑み込まれた迷惑系動画クリエイターの身に、
全身を覆い尽くさんばかりに体から謎のキノコが大量に生えてくる出来事が起きている。
そして、死体に腐敗による発酵が起きたことで事態はより深刻になる。
細菌による分解で生じたウ○コとゲ○を足した銀杏のような臭いの腐敗ガスや腐液が死体に溜まって隆起した「腐敗隆起」が各所に発生し、
内圧500キロパスカルに上昇すると座礁鯨の死体のように爆発を起こしかねない状態になったのである。
仮に爆発すると死体を中心に北西20km圏内がウ○コとゲ○を足した銀杏臭のガスに覆われてしまうばかりか、
腐敗ガスに含まれる菌類により、範囲内の人間はおろか土地も動物も菌類に寄生され、
キノコによる大規模なバイオハザード(生物災害)が起きかねない危険性がある。
また、軍の攻撃を全く受け付けなかった強靭な肉体は生物学的に貴重な研究材料となる以外にも、
観光資源としての価値も莫大なものになるという試算が出たため、
「なるべく元の形を残したまま腐敗ガスを処理する」という無理難題が主人公・帯刀アラタに課せられるのだが……?


MUGENにおける希望

カーベィ氏の製作したキャラが公開中。何故作った…まあ故人が作られた前例は結構あるか…
映画公開後数日で製作する辺り氏のフットワークの軽さが窺える。

kMIKEj氏製作のバスタトサウルス・レックススプライトを改変して作られており、
ちゃんと背中にキノコが生えている他、しゃがみとダウン時のスプライトが片足を上げた姿になるのが特徴。
カーベィ氏曰く「劇中で動いてなかったので好き勝手やらせてます」とのことで、
主に「尻尾攻撃」や「とびかかり」などの近接攻撃を中心に戦う性能をしている。
超必殺技はいずれも1ゲージ消費で、「必殺噛みつき」「突撃」「ウ○コの香り」の3つ。
最後のは死んで腐ってからの武器じゃないのか、とか突っ込むな。
ていうか作中開始時点の死体で背ビレにキノコ生えてたしマジで生きてた頃から寄生されてこんな体臭だった可能性も割とある
AIもデフォルトで搭載されている。
怪獣を倒したらちゃんと後始末もしてください(1:32~)

出場大会



*1
たった一体の怪獣「希望」との交戦で防衛軍に多数の戦死者が出たらしく、それを補うためか徴兵令が発令されており、
街中のポスターにも「兵役は国民の義務」といったものが確認できる(怪獣が死んだ事で有耶無耶になったようだが)。
また、「怪獣の接近を知らせるアラート」や「対怪獣部隊の車両は道路上ではいかなる緊急車両よりも優先」といった事も確認でき、
怪獣「希望」による被害の大きさが窺い知れる。

ただ、こうした「怪獣が現れたら政府はどう対応をするのか」という意味では、
言うまでもなく『ゴジラ』『ゴジラ('84)』『シン・ゴジラ』が都度都度時代に合わせたシュミレーションを行っており、
またコメディ作品ではあるが「怪獣が出現した日本で右往左往する一般市民」を『大怪獣東京に現わる』が、
そしてやはりコメディ作品だが「怪獣が出現し超人と戦う世界の日常」を『大日本人』がリアルに描いている事もあって、
「リアル路線を目指したにしては荒唐無稽だし、ギャグを目指したにしては(ブラックジョークとしても)笑えない」という結果になってしまっている。

*2
オチで明かされる事実を頭に入れておかないと、各キャラの行動が人によっては不可解を通り越して不愉快に思えるため、
コメディとしても人を選ぶという声も……。

+ オチで明かされる事実(ネタバレ注意)
「希望」の死亡状況から察した人も居るかもしれないが、「希望」を倒したのは所謂光の巨人というべき存在である
(作中の呼称は「選ばれし者」。なおその姿は影と足先しか本作では分からない)。
そしてその正体は主人公の帯刀アラタ。
ニ年前、怪獣対策の特殊部隊「特務隊」に所属していたアラタは、無茶をする恋人を庇った際にまばゆい光に包まれて失踪。
そしてその光が怪獣を撃破し、残された恋人は、その時の戦いで片足を失ったアラタの恋敵と結婚。
現在は政府の高官となった二人が大怪獣のあとしまつに奔走していた所、突如としてアラタが帰還を果たした……というのが本作の本当のあらすじなのである。

ラストは政府のあらゆる怪獣のあとしまつ政策が万策尽き、最後の上昇気流でオゾン層までガスを噴き上げ分解させる作戦も恋敵の妨害で失敗、
元恋人が見守る中、光の巨人に変身したアラタが「希望」を抱えて宇宙に飛び立って行く……という、最初からそれやれよ!なオチ。
つまり本編の内容は全て茶番でしかなかったのである。アラタを演じた山田氏も脚本を読んだ際に思わずツッコミを入れたとか。

何故すぐに変身しなかったかと言うと、希望が死んだ(光の巨人が倒した)後にアラタが数年間失踪し、
その間に恋人も別の男性と結婚するなど周囲との軋轢も生まれていた事から鑑みるに、
恐らく一度変身すると長期間戻って来られず、人間関係に支障をきたす事を恐れていたのだろう
(ノベライズ版では、アラタは「選ばれし者」となってから地球外の星であらゆる事件を解決していたと思しき独白が描かれている)。

政府内閣の一部(首相等)はこれを把握しており(といっても「怪獣を包んだ超常的光が怪獣を殺した」、程度の把握だが)緊張感が無く、
一部の高官(というか他ならぬアラタの元恋人と結婚していた同僚、現首相秘書)は独自にアラタの正体を理解した後彼を積極的に挑発している他、
上記のオゾン層ガス分解作戦時もアラタが怪獣希望の上で頑張っているのにミサイル撃ち込み許可を出したりしている
それでアラタが堕ちしたらどうするつもりだよ……と言うか資源利用の話は?
まあぶっちゃけると「今更帰ってきて俺達の夫婦仲を邪魔するな、地球から出ていけ」という個人的本音もあるんだろうが
伏線は一応張られているのだが、人類自身の知恵で解決すると信じて待っている観客にとっては、
下らないギャグの数々によって本筋を阻害するノイズにしか見えない形で良くも悪くも丁寧に隠されていたため、初見で気付くのは難しく、
観客からすれば「本筋とどう繋がるのか謎な不倫の横行」や「痴情のもつれでアラタを攻撃しているようにしか見えない高官」といった、
しょうもない争いを延々見せられる羽目になった。
というか最後の最後にようやく事情が分かった所で別に笑えもしないしスッキリもしないので、オチとして普通に弱いとも言えるが

大怪獣の名前に関しても「人類同士の下らない争いに失望したアラタ(光の巨人)が希望(怪獣)と共に去っていってしまった」と考えれば、
実に皮肉が効いていると言えなくもない。
尤も、エンドロール後に「怪獣再出現!今度は火を吹く亀のような怪獣で名前は『メラ』!」と安直なパロディに奔ったり、
更には「予算半額以下で続編決定!?」とかましたりと、「希望は無くなってしまった」という空気ではないので、深読みし過ぎだと言える

ついでに言うと「第二怪獣のカメ型出現!」なんてネタは、『大怪獣東京に現る』の作中で既にやってたりもするので二番煎じ以下だったり
監督はラストについて「『なんで最初からそうしないんだ』というナレーションを入れようとしたが、観客に委ねる事にした」と、
ギャグと捉えていた事を 満員御礼舞台あいさつ にて明かしている。
前述のインタビューと合わせて考えると、
「自己犠牲を強いられるヒーローの悲哀とそれを強いる者の醜悪さ」をテーマにしようとしたと思われるプロデューサーとは齟齬が生じ、
真面目に見ようにも真面目になれず、笑おうにも妙に深刻で笑えないものになってしまった……という事なのかも知れない。
まあ「ウルトラマンになってしまった男の葛藤」「掌返しで彼に戦わせようとする人々の醜悪さ」っていう意味でも『大日本人』が既にやってるんだけどね

結局の所本作は「大怪獣のあとしまつ」という作品タイトル通りのテーマ・題材の作品ではなく、
「大怪獣のあとしまつ」を舞台にした「ウルトラマンになってしまった男を中心とした三角関係のナンセンスコメディ」と受け取るべきなのだろう。
問題はその「ウルトラマンになってしまった男」という部分が大オチのため、一切事前に告知されなかった点だが……。


最終更新:2023年11月07日 17:34