解体工事半ばに重機と共に放棄された廃マンションがあった。コンクリート基材が剥き出しとなった寂しげなその場所に、身寄りも行き場もない、かつての記憶を失った老婆が棲み付いた。
老婆はそこで暮らすうち、次第に頭の中が鮮明になり、失われていた記憶を少しずつ取り戻していった。まず思い出したのは、昔ここで自分が暮らしていたという事実。
あの階段。仕事帰りの夫が、毎日笑顔で駆け上がってきた階段。あの踊り場。幼かった娘が、近所の子と遊び場にしていた踊り場。あの忌まわしい事故がなければ、皆幸せなまま年を取ったのに。
どうして忘れていたのだろう。どうして自分だけ生き残ったのだろう。老婆は、重機から垂れ下がるチェーンをぐるりと首に巻き付け、足場を蹴り落とした。亡き家族に少しでも早く逢うために。
武器種 | 格闘 | レアリティ | ★★★★ |
属性 | 火 | シリーズ | 廃鋼 |
EN | Forbidden Scrapsteel Arm | ||