劇場公演の夜の部が終わっても、少女は気が抜けなかった。夜には恐ろしい稽古が待っているからだ。少女はバレエ団の踊り子である。踊り子はバレエ団の権威を守るため、人々の目を楽しませるため、頭の先から爪先まで神経を張り巡らせ美しく踊ることを求められた。
少女の指導を務めているのは、かつては劇場の花形だったという、美しい女である。美しいが冷徹な女で、少女が練習を怠れば、厳しい折檻を加える。少女は夜ごと鏡の張り巡らされた稽古室で、電燈の仄かな明かりだけを頼りにバレエの練習を続けた。
しかし、古びた電燈は、稽古室の軋みに耐えかねたのだろう。天井から吊り下げていた鎖が切れ、重たげな電燈が、少女の華香な肉体を目がけて落ちかかってきた。その時である、少女を押しのけ、電燈を背に受けたのはあの冷徹な女であった。女は静かに口を開いた。
「あなたは昔の私に似ている。私も少女の頃は無垢な心で踊れていた。でも、いつしか芸一本で生きていくことができなくなってしまった。あなたには私の分まで踊り子としての本分を全うしてほしい」
そう語ると女は初めて少女に微笑みかけ、眠るように息絶えた。
武器種 | 格闘 | レアリティ | ★★★★ |
属性 | 闇 | シリーズ | |
追加日 | 2022年3月10日 | ||
EN | Lampe Etoile | ||
解放 | フィオ(彩涙光の少女) |