あの新薬がまだ実験段階であったことは、私には聞かされていなかった。とはいえ、それを患者に投与し、命を奪ってしまった責任はすべて私にある。ゆえに私は今、自室で首を吊ろうとしている。自ら命を絶つこと以外、患者の命を奪った罪を償う方法などないのだ。
一首吊りは失敗したのだろうか。私は明瞭な意識のもと目を覚ました。しかしそこは私が首を吊った自室ではなく、小さな病院であった。一体何が起きたのだろう? そう考えていると、私の傍らのベッドで眠っていた患者の少女が、驚くべき真実を語りだした。
ここは遠い未来。不治の難病を患った少女は時間逆行装置とやらにハッキングし、私をこの時代に呼び寄せたのだという。歴史上でただひとり彼女と同じ病気を治した医者――それが、私なのだそうだ。信じがたい話だが、目の前の患者を見捨てるわけにもいかない。
しかし実際には、私は彼女の病を治す方法を知らなかった。そして彼女が息を引き取ると同時、私は元の時代に戻っていた。私はなんて不甲斐ない医者なのだろう。だが、ここで泣いていても仕方ない。生きて生きて、いつか彼女の病を治す術を見つけなくては。
武器種 | 格闘 | レアリティ | ★★★★ |
属性 | 風 | シリーズ | 時間操作 |
追加日 | 2022年4月26日 | ||
EN | AGW-S21 |