食虫植物

登録日:2019/10/06 Sun 22:10:03
更新日:2025/04/30 Wed 16:44:49NEW!
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読んで字のごとく虫を食べる性質を持つ植物のこと。

概要

名前からいかにも禍々しいイメージが付いて回るが、実は 本質的には生態系の中では弱者に分類される 植物。
なぜかというと、食虫植物も本来なら他の植物同様、と水と土の養分だけで生きていた方が効率がいいのでそうやって生きていたいのだが、他の植物との生存競争に敗れて養分の乏しい土地で生きざるを得なくなってしまった為、独立栄養生物と従属栄養生物としてやっていくしかなくなった故。
そのため不足しがちな窒素やミネラルなどを虫から得られるよう進化したのである。
……が、実は虫が全く取れなくても枯れるほど致命的な問題は生じない。
なんだかんだ本質は純粋な独立栄養生物の植物と一緒であり、葉で光合成を行い、根からの水分や栄養があれば基本的に生きていられる。
伊達に虫捕りしているわけでもないので流石に生育は遅くなるが。
また、熱帯や湿地帯産の種類が多く、ある意味虫以上に欠かせないのが潤沢な水。
消化液を維持する為にもとにかく水を吸うので、腰水(鉢を半分以上水没させること)にした水耕栽培もよく行われる。

見た目がカッコいいため趣味の園芸の植物としてもマニアックながら根強い人気があり、また創作でモチーフとされることも多い。

虫を捕食する原理別分類

感覚器を持つかどうかで大きく2タイプに分類される。
  • 獲物がかかったことを感知し能動的に捕らえるタイプ
  • 仕掛けを用意して獲物が勝手にかかるのをひたすら待つ受動タイプ
である。
はさみわな式と粘着式が前者、落とし穴式や袋罠式は後者。

  • はさみわな式
食虫植物と言えばコレ、ハエトリグサが含まれるグループである。
というかハエトリグサとその亜種しかない。
葉がかみつき式の罠になっており、その中に生えた毛にうっかり触れた羽虫を捕える。
他の食虫植物と異なり「能動的に動く」ところが非常に中二心をくすぐる。

葉が閉じるスピードは 0.5秒
ちなみに我々人類の反射速度は0.25秒くらいだが、そもそものつくりから違う(植物である以上や神経がない)のだからこれは驚嘆に値する。
しかも、ゴミなどがうっかり入り込まないように2回連続で毛に触れられない限り閉じないような安全機構付き。

なお、育てていると葉が閉じるところを見たくてついつい突きたくなるが 葉を閉じるのは植物にとってかなり多大なエネルギーを要する 行為。
あまりやりすぎるとハエトリグサ自体が弱ってしまうので注意。
オジギソウで我慢しましょう(こっちも負担は大きいけど)。

  • 粘着式
モウセンゴケなどが含まれる。
とにかくネバネバな粘液で虫を捕えるタイプ。
獲物がかかると他の繊毛も動き出し、獲物を包み込むように絡め取っていく。
種類によっては葉っぱ全体が獲物を挟み込むように押し包むタイプも。
ハエトリグサやウツボカズラと比べて見た目が地味なためあんまり人気はないが、エロ方面で採用される機会は割とある……かもしれない。

  • 落とし穴式
ハエトリグサと双璧を為す代表的な食虫植物であるウツボカズラ(ネペンテス)が含まれるグループ。
壺のような形に発達した捕虫器の中に消化液をため込み、そこにうっかり入り込んだ虫を消化する。
壺の中はつるつると滑るためはい出ることができない他、蜜を発して能動的に虫をおびき寄せるタイプもある。
ただし種類によっては消化液はほとんど能力を失っていたり、特定の虫に対しては無効なこともあり
無効な虫がずっと中に住み着いて、蜜の匂いで誘引されて入ってきた他の虫を食べて出した糞を養分にするという
食虫植物というよりは共生関係を作っている植物もある。

また、サラセニアもこのグループ。
違いはウツボカズラはつる性でサラセニアは地上から直接生えていること。
かつては同じ属で形態が違うだけ、とされてきたが、収斂進化による他人の空似らしい。

  • 袋罠式
タヌキモのグループ。
地味ではあるが、実は世界中の食虫植物の半数が含まれる最大派閥。
水中において、小さな袋状の捕虫器を無数に用意し、うっかり触れた虫を一気に袋の中に吸い込む、という捕食形式。

何気に根も葉も茎も一切観察されないという被子植物としては非常に珍しい特徴を持っており、食虫植物の中でも一番完成された形態の一つと考えられている。

反面、フィクションでは圧倒的不人気を誇るグループ。何より地味だしね。

  • 触手式
細長いツタ状の触腕で獲物を絡め取るタイプ。
当たり前だが、運動能力がないのでこのような植物は現実には発見されていない。今後もおそらく発見されないだろうし、化石しか残っていないものにもないだろう。
ただしエロ方面では大活躍


食虫植物の育て方

基本的には普通の園芸植物と同じような育て方でOK。
特別な設備は必要ないので、園芸初心者にも意外と向いている。
気を付けるべき点は、
  • 湿地帯に生える植物なので水気を切らさないこと
  • 温暖な気候出身のものが多いので低温や霜、雪は極力避けること
この2点ぐらい。
ただし、ムシトリスミレは過剰な水に弱かったり、ハエトリグサは多少の寒気はへっちゃらだったりと食虫植物の種類ごとに気を付けるべき点は変わるので、その辺りはきちんと調べておこう。

逆にやってはいけないのは、
  • 虫を与える……普通に育てる分に虫をわざと与える必要は基本的に皆無。むしろ植物が弱る。この為、害虫対策には向いていない。食べすぎが良くないのは人間も植物も一緒。
  • 捕虫器に過剰に触れる……前述したようにハエトリグサは何度も葉を閉じさせるとあっという間に枯れてしまう。他の食虫植物も捕虫器は大抵弱いので過剰に触れないこと。


フィクションにおける食虫植物

そのまま「虫を食べる植物」として登場することは基本的に ない
大抵の場合極端に巨大化し、人間含む動物も積極的に捕食する「食人植物」として登場する。
独立したモンスターとして登場することもあれば、木属性/植物属性の技として召喚獣のように使われることもある。

前述したように人気が高いのはハエトリグサ型とウツボカズラ型。
後は種類は定かではないが「触手型」というのも割と多い。特にエロ方面。

食人植物のモンスター

  • トリフィド(トリフィドの日)
1951年発表のSF小説に登場する、元祖・食人植物。
大の大人を超える上背という巨体で、頂部に生えたムチ状の茎に毒のトゲを持ち、
これで獲物を打ち据えて仕留め、死体の腐肉を食らう恐怖の植物。
しかも三本の太い根っこを器用に動かして、積極的に歩き回るという困ったチャン。
こんな厄介者でありながら、良質の油が摂れるために人里で栽培されているという設定。
物語は美しい彗星が夜空を照らした次の朝、実は彗星から照射されていた謎の宇宙線によって人類の大半が失明した世界で
栽培場から逃げ出したトリフィドが人を襲う恐怖が描かれる。

記念すべき最初の植物怪人。
名前の通りサラセニアがモチーフだが、見た目にサラセニア要素は薄い。
一応、触れた相手を消化吸収する能力を持つ。
また、サラセニアに擬態することも可能。
本作では他にもドクダリアン(架空の人食い花)やハエトリバチ(ハエトリソウ)といった肉食植物の怪人達がいる。

パックンと噛みついてくる食人植物。
なぜか土管に生息。
亜種に火を吐いてくる奴とか空を飛ぶやつとか白骨化したやつとか地面を歩く奴がいる。
アンタら本当に植物か?

ハイラル世界のパックン。
デクの実やデクの棒を落とす。
こちらも派生種が多いがパックンフラワーの陰に隠れがち…でも手ごわいボスだっていますよ!?

名前の通りウツボカズラをモチーフにしたポケモン。
作中では触れられていないが、ポケモン図鑑によると相当数の犠牲者が出ている模様。
アニメではやたらとコジロウを飲み込むが……大丈夫なのだろうか?

ハエトリグサをモチーフにしたポケモン。
ウツボットと異なり「獲物」の種類について明言はされていないが……
1.4mとさほど大きくはないので人間は獲物の対象外……かもしれない。
なお、ウツボットと異なりくさ単タイプであるため、むしとりポケモンの癖にむしタイプに弱いことは頻繁にネタにされる。同じく虫を捕食する動物がモチーフのジュカインゲッコウガなどもネタにされやすい。

惑星ゼーベスのブリンスタ・密林エリアの中ボス
ブリンスタは日照時間が平均2時間と極端に短く、多くの植物が食虫植物として進化したとされている。
ここでは弱者でもなんでもなく食虫植物が当たり前なのだ。
スポア・スポーンはその中でも最大種である。
チタンより硬いと言われる殻を持つ捕虫器官を振り回してサムスに襲いかかってくるトンデモ植物。
…但しTASさんにはスルーされ、ゼーベス共々爆殺される。
合掌。

元はごく普通の植物だったが、T-ウィルスの影響で食人植物になったという珍しいパターン。
主に根っこを獲物に突き刺して養分を吸い取るえげつない捕食方法を取る。

バイオハザード2』では上記のプラント42を参考に開発されたプラント43、通称イビーが登場した。
動きが緩慢ながらも自立した移動が可能で、ツタ(両手)でひっぱたいて来たり、消化液を吐き出してくる。
表編でB.O.W.を弱体化させるP-εガスを散布していると、裏編で毒イビーに変異する。

しかし研究所という終盤の登場でありながらそこまで驚異ではなかったためか、リメイクの『Re:2』では大幅な変貌を遂げ、温室でプラント43が生育されプラント43に捕らえられて種子を植え付けられて研究員が変異した姿がイビーとなった。
そのためプラント43自体はイビーとは別の扱いであり、敵として登場しない。
そしてこのイビーがかなり厄介な存在になっており、銃器で核を全て撃ち抜けばダウンさせられるものの、火炎放射器かグレネードの火炎弾で焼却しないと時間経過で復活してしまう。
何より遠距離攻撃こそないものの意外と素早く、即死攻撃持ちであり、組み付きに対してカウンター出来るディフェンスアイテムを所持していないと頭がパカッと割れて食べられてしまう

  • オードリー・ジュニア(リトル・ショップ・オブ・ホラーズ)
オリジナル版の映画が1960年公開であることを考えると、恐らく映画界最古の食人植物。
言動はどこかユーモラスだが、最初は血液だけで満足していたのがあっという間に人間を捕食するようになるなど恐ろしい一面も。
そして喋る
どうやって発声器官を得たのだろうか…

植物怪獣としては随一の知名度を誇るバラとゴジラ細胞と人間のキメラ
触手の一部にハエトリグサのような口と牙を備えたタイプがあり、これで相手にかみついたりする。
「でも女性の意識もあるから人間は食べないでしょ?」と思った人。
カットされたシーンで、ボートに乗っていた自衛官数名に食らいついて捕食してるんです

突如として東京に開花した巨大植物。
根っこを駆使して人間を襲い、吸血して成長する。
日本の実写特撮でも希少な皇居にまで被害を及ぼした怪獣。

数百年に一度、砂漠でしか咲かないとされる伝説の植物。
その正体は太古の昔に宇宙から飛来してきた吸血植物で、捕獲した生物の血を吸って成長した末に宇宙大怪獣アストロモンスへと変貌する。
アストロモンスの腹部に咲く巨大なチグリスフラワーは第2の口となっており、これで超獣オイルドリンカーを一呑みにしてしまい、テレビの前のチビッ子たちに大きな衝撃を与えた。

あまりにもまんますぎる名称を持つ鉄十字団のマシーンベム。
見た目はハエトリグサ系統。
蜘蛛人間であるスパイダーマンにとってはまさに天敵とも言える存在……だが、作中ではそこまで強敵ではなかった。
さりげなくレオパルドンによる最短撃破記録保持者でもある。

ライジャとデズルが生み出した暗黒合成獣。
食虫植物の特性を持った怪人で、口から吐く溶解液でビーファイターのアーマーを溶かし、そこに口から伸ばした管を突き刺し昆虫パワーを吸い取っていくという、ビーファイター殺しとも呼べる能力を持っている。

惑星キマエラに生息する巨大植物。
地中に潜み、その上に動物などがやってくると丸ごと呑み込んで捕食し再び地中へと潜る。
弱点である球根を破壊する以外の手段では有効打を与えられず並の人間では太刀打ちできない。
原作ではあくまで地中に潜む植物だが、アニメでは触手で自走することまで可能になり完全に怪獣。

ダンジョンの地下二階に自生している食肉植物。
パラセリア自身に捕らえた獲物を消化する能力は無く、触手に絡め捕られた死骸が堆肥になるのを待って養分にするタイプの食肉植物。
獲物を引き寄せる狙いもあるのだろうが、その果実は普通に美味。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の「殺し屋蔦(アサシン・ヴァイン)」が元ネタだろうか?

上記パラセリアと同じく獲物を堆肥にするタイプの植物だが、こちらは獲物を絞め殺すどころか自分の根本に生き埋めにしてしまう
また、蔓が3本指の手のような形をしていて余計に不気味。

遊戯王ARC-V』の登場人物の一人、ユーリが使用するモンスター群。読みは「プレデタープランツ」である。
闇属性植物族モンスターであり、食虫植物のイメージに違わない禍々しい外見とユーリ自身の陰険さが滲み出たような嫌らしい効果を持つ。
融合を主軸としており、また場のモンスターのレベルを上げ下げすることで相手のシンクロ・エクシーズ戦術を妨害する事に長けている。
融合で出てくる大型モンスターも勿論食虫植物モチーフ。
漫画版では遊矢が場に出していたイケメンモンスター2体を融合させ、漫画版オリジナル設定により重度の面食いと化していた柊柚子の「イケメンとイケメンが融合したら更なるイケメンになるのでは!?」という淡い期待を見事に打ち砕いた

  • 蟲惑魔(遊戯王オフィシャルカードゲーム)
同じく『遊戯王OCG』のカード群の一つ。「こわくま」と読む。
「蠱惑的」と「小悪魔」を掛けたであろうネーミングに違わず、どこか挑発的な仕草の人間の美少女と恐ろしい怪物が合体した様な姿をしている。
一部の設定を見るに、どうやら美少女の部分は疑似餌の類らしく、本体は怪物の部分と思われる。

昆虫族と植物族が混在しており、昆虫族タイプは肉食昆虫を、植物族タイプの一部は食虫植物をモチーフとしている。
と羊を同じ檻で飼うような状況であるが、特に昆虫蟲惑魔と植物蟲惑魔の仲が悪いような設定は見られない。
特徴として、『遊戯王OCG』に於いて伝統的かつ強力な罠カードである『「落とし穴」シリーズを自在に操る』『自身は「落とし穴」にかからない』という遊戯王随一のトリッキーな効果を持ち、様々な悪さを企てる事ができる。
「見た目の美しさに釣られた馬鹿な男を、張り巡らされた罠で捕食する美少女」という姿は、正に小悪魔にして食人植物である。


食人植物使い

様々な植物を操るが、意外と食虫植物モチーフの技は少なめ。
「食妖植物」ぐらいだが、むしろ「魔界のオジギソウ」の方が強力だった。

植物を操る魔導具「木霊」の使い手。
主に植物の質量を生かした攻撃や絡めとって絞め殺す攻撃を得意とするが、終盤では巨大ハエトリグサ「鋼鉄の処女(アイアンメイデン)」とそこから派生した最強技「木竜」を編み出した。
また、モウセンゴケを食人植物に改造したりしたこともある。

主に地属性・植物系のARMを得意とし、ガーディアンARM「メヒィトス」は巨大ハエトリグサを召喚するもの。

新世界編以降、巨大植物を自在に操る技「緑星」を習得した。
なお、その正体は超弩級食人植物の島から持ち帰って来た特別な種である。
普段はサニー号で栽培している模様。

  • 玖珂司(Diabolic Garden -ディアボリックガーデン-)
悪魔を退治する退魔士にして、喫茶店を経営する植物愛好家。
世間を騒がす悪魔を愛する食虫植物の餌にするのが彼の生業である。

  • ユーリ(遊戯王ARC-V)
上記捕食植物(プレデター・プランツ)の使い手。
何れも少なからず快活・熱血な面を持つ遊矢シリーズの中では珍しく陰湿・残虐な面が強く、お世辞にも爽やかとは言い難い性格。
他の遊矢シリーズが遊矢の前に立ちはだかった時は「ライバル」的な面が強かったが、彼だけは一貫して「悪」であった。

漫画版では遊矢の別人格として登場、敵の卑劣かつ姑息な作戦に苛烈な面を見せた事もあるが基本的に善玉キャラであり、
口調も穏やか、面食いな漫画版柚子を前にナルシストめいた発言をするなど、どこかコミカルなキャラになっている。



追記・修正は食虫植物を愛でながらお願いします。

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最終更新:2025年04月30日 16:44