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THE HOUSE OF THE DEAD - (2017/07/31 (月) 21:44:17) の編集履歴(バックアップ)


THE HOUSE OF THE DEAD

【ざ はうす おぶ ざ でっど】

ジャンル ガンシューティング
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対応機種 アーケード(MODEL2)
販売・開発元 セガ・エンタープライゼス
稼動開始日 1997年
備考 SS移植版に関する記事はこちら
(劣化ゲー判定)
判定 良作
ポイント ホラーとSFを融合させた世界観
ゲームと密接に関わる残虐描写
画期的なルートの複数分岐
シリーズ中でも抑え目な難易度
THE HOUSE OF THE DEADシリーズリンク

概略

セガAM1研が1996年に開発、1997年に正式稼動した、一人称視点ガンシューティング。公式略称は『HOD』。
基本システムは同社の『バーチャコップ』をベースとし、それに『BIOHAZARD?』や映画『セブン』のテイストを導入した作品。

上記作の単なる模倣や追従に終わっていない巧みな演出や非常に良く練られたゲーム内容、キャラクターデザイン等は高く評価され、
ナムコの『タイムクライシス』と共に「ガンシューティング」というジャンルの国内知名度を大きく上げた代名詞的作品でもある。


ストーリー

1998年8月。某国政府の極秘研究機関「DBR Corp.*1」の所長で、バイオリアクター分野の権威である「ロイ・キュリアン博士」が突如解任された。
それから3ヵ月後の11月、DBR研究員の連続失踪事件が発生。12月、国際諜報機関「AMS」はこれをキュリアン博士によるものと睨み、エージェント数名を彼の館に潜入させる。
その結果、キュリアン博士がマッドサイエンティストに変貌、「ソフィー・リチャーズ」率いるDBR研究員達を誘拐し、非人道的な人体実験を強いていることを突き止めた。

だが、12月18日、AMSの介入を察知したキュリアン博士は外部との連絡を断った上で研究員達を拘束。自らを蔑ろにした人類に対する復讐という恐ろしい野望を剥き出しにする。
同月20日、事態を重く見たAMSはキュリアン博士の排除と研究員救出の為、2人の凄腕エージェント「トーマス・ローガン」と「G(コードネーム)」をキュリアン邸に急行させた。
特にトーマスはソフィーと婚約予定であり、この任務を快諾したが、到着した彼らが目にしたモノは、ゾンビのような怪物が研究員を襲う凄惨な光景だった…。


システム

  • 専用のハンドガンを用いて襲い掛かるゾンビなどの怪物を倒してゆく*2という内容。
    • 弾数は最大6発、ハンドガンの銃口を画面外に向けた状態で引き金を引くと弾が補充される。
  • ライフ制で、敵の攻撃を受けてしまうと1回の攻撃につき一律1ライフを失う。ゼロになるとゲームオーバー。

特徴

  • 基本的には「自分で移動するのではなく勝手にスクロールしていく」進行形式で、「敵の攻撃を受ける前に素早く敵を倒す」ことが求められるゲーム。
    これまでのガンシューティングとルール的に大差のあるものではない。本作の妙は巧みに作られた演出である。
    • ポリゴンを駆使して作られた敵ゾンビは非常にグロテスクで、小さい子供が見たら泣きだしてしまいそうなレベル。当時としてはテクスチャも最大限にリアリティを追及されている。
      更にゾンビ達は奥からのしのし歩いて間合いを詰め、どアップになって攻撃してくる。特に50インチプロジェクター仕様のDX筐体におけるインパクトは絶大であった。
      • ゾンビの欠損描写もえげつない。撃つと出血と共に頭や胸に穴が開き、倒した際に血反吐や目玉が飛び散るのは勿論、腕を撃てばもげてなくなり、上半身が無くなることも。
        しかしそれでも生きていて、唸り声を上げながら残った下半身で体当たりしようとする敵がいるのも、「ゾンビらしいしぶとさ」を見事に表現している。
    • カットシーンやカメラワークも映画風で非常に巧み。得体の知れない洋館(研究所)を進んでいくエージェント達を、第三者と当事者の2つの視点でとてもよく表現している。
      ホラー映画の常である「振り返ると・ドアを開けるとゾンビがいる」というお約束も幾度も存在するのだが、決して単調にならないようにシーンによって微妙に異なっている。

評価点

  • シリーズの基本システムは本作でほぼ固まっていた。
    • 非戦闘員の救出によるライフ回復。
      • 逃げ遅れた研究員があちこちでゾンビに襲われており、助けることにより進行ルートが変わったり、ライフアップアイテムを貰えたりする。
        ただし、迅速に敵を排除しないと命を落としてしまうし、誤射した場合は更にプレイヤーのライフまで1つ失ってしまう。
      • ステージクリア時のリザルトで、救出人数が4人以上で1ライフ、6人以上で2ライフも回復するので、救出するほどゲーム展開も楽になりやすい。
        全員救出に成功すると最終面中盤でアイテムだらけの隠し部屋に行ける為、助けても御礼しか言わない人にも救出の意義がある。
  • 『バーチャコップ2』から大幅に進化したルート分岐。
    • 『バーチャコップ2』では各面1つずつだったが、本作は複数配置され、しかもその殆どが従来の選択式ではない、プレイヤーの直前直後の行動が反映されるようになっている。
      分岐条件も研究員の救出可否・敵を倒す順番・背景の特定部分を撃ったか・敵の攻撃を受けたか…とかなり多彩で、全てを見るには一筋縄ではいかず、リプレイバリューが高い。
    • 例として『廊下の先に落とし穴があり、振り返ると背後に体格の良い敵が迫っている』場合。素早く敵を倒すと「道を引き返し、何事もなく館の中を探索する」。
      しかし「敵を倒せず(倒さず)に1Pか2Pのどちらかがダメージを喰らう」と、穴の中に突き落とされ、地下道を探索する破目になる。…と言った具合。
    • チラシで「ストーリー分岐システム」と謳われている通り、分岐先の殆どでそれぞれ異なる研究員救出シーンやカットシーンが用意されており、飽きにくいよう配慮されている。
  • 倒す順番・部位狙いの戦術。
    • 本作では意図的に飛び道具を持つ敵が少なく設定されており、殆どが肉弾戦を挑んでくる。この為、近くの敵から倒していけば、攻撃体勢に入るまでの時間的余裕を得られる。
    • 頭を撃ち抜くのが最も効率良く敵を倒せる手段で点数も高いが、どうしてもキツければ先に腕を撃っておいて殴り攻撃を潰しておくという戦術も取れる。
      敵もそうすると噛みついたり体当たりしてくるが、腕よりも間合いが短い為、プレイヤーにより近づいてくるので、時間の猶予や弱点を撃てる可能性がだいぶ増える。
    • 遠距離攻撃は物品(斧、ドラム缶、ナイフ等)の投げつけが殆どである為、何回か銃撃で相殺してしまえばタネ切れとなり、ダメージを受けずに先に進めることが多い。
  • プレイヤーの腕前により敵のライフが上下するランクシステムを採用。
    • 本作では全16段階の内部設定*3があり、50秒経過*4や2人プレイ時のコンティニューでランクが上がり、ダメージでランクが下がる。
      低ランクは少ない弾数で敵を倒せるが、高ランクではランクの影響を受けない頭部を撃つ事がほぼ必須となり、自ずと射撃の腕前も上達できる仕組みになっている。
    • この絶妙なシステムと、シリーズ中でもかなり抑え目な難易度が相まって、中級者レベルの腕前があれば充分にワンコインクリアを目指せる。
      本シリーズに興味があるならば、本作から入るのがベストである。現在プレイできる環境があればの話ではあるが…。
  • 製作チームのセンスの良さが伺える、キャラ造形の上手さ。
    • 主人公のトーマスとGは凄腕のエージェントという設定で、茶色いトレンチコートや黒いスーツを着た渋い容姿の外国人*5*6である。
      「キュリアンに対し敵意を燃やすトーマス」、「静かに熱い『G』」と、1人・2人プレイ時とでカットシーンの人数と台詞が変わる点も細かい。
      • ちなみにコイン投入時にコマンドを入力する事で、外見を上記ストーリー欄で紹介されたトーマス達より前に潜入した名無しのエージェントや、ソフィーに変えられる。
  • 雑魚敵のゾンビ達は先述の通り科学的に作られた生物兵器だが、その殆どがみすぼらしい容姿で、筋組織が各所に露出していたりと、
    「こっちに来るんじゃない!」と思わず言いたくなるような、ゾンビ映画に通ずる露骨な生理的嫌悪感を完璧に表現している。
    • 上記の概要欄にもあるが、種類や攻撃手段が多種多様で、その殆どに公式名称も付いている。ただの薄っぺらい『BIOHAZARD』の追従で終わらなかった好例である。
  • タロット・カードの大アルカナのコードネームを持つ存在感溢れるボス達。
    • どこか格好良く、「汚さ」を感じにくい数少ない敵となっており、リアルなホラー路線に微妙に混在したSF要素のケレン味が良いアクセントになっている。
    • 特にラスボスの「マジシャン」は全力でオカルトな見た目で、「こんなものを科学で作れるのか?」と思わずにはいられないが、むしろ「高貴さ」「格好良さ」に溢れている。
      プレイヤーの間からもマジシャンは外見・曲と共に人気が相当高かったようで、後のシリーズ作においても、AMSの宿敵として登場し続けることになる。
  • BGM・SEの出来が非常に良い。
    • BGMは基板故に音源が少々寂しいが、屈指の良曲揃い。ホラーゲームとは思えないような派手な曲調*7が多いのだが、雰囲気に見事にマッチしているのは素晴らしい。
      • 特に「Chapter 1 惨劇 ~Tragedy~」は勇壮ながらどこかおどろおどろしく、未知への恐怖が入り混じった曲調で、ガンシューティング史上に残る良曲・有名曲である。
        後のシリーズでも使われ続けただけでなく、本作の外伝である『ゾンビリベンジ』と同作が登場した別作品『PROJECT X ZONE』にも、この曲のアレンジが採用されている。
      • ラスボス戦の楽曲「THE THEME OF MAGICIAN」もシリーズを代表する有名曲。この曲を聴きたいが為にプレイするという人もいた程、非常に評価が高い。
        上記の通り、後のシリーズ作においてマジシャンが復活・登場する度に、この曲もアレンジされて使用されている。
      • 他にもステージクリアやゲームオーバーの曲も、シリーズを通してアレンジされて使用されており、HODの世界観構築に一役買っている。
  • SEも実にリアリティがあり、BGMの邪魔をしない音で作られており世界観を盛り立てている。
    • 文章で表現するのは難しいが、ゾンビ達の叫び声が実にいい味を出している。興味を持たれた方は是非一度聴いて頂きたい。
    • 1Pと2Pで違う拳銃の発砲音や一部効果音等、『バーチャコップ』からの流用*8もあるが、何れも違和感は無く、随所には細かいこだわりも見える。
    • 普通にプレイしていると「まるでBGMの合いの手として、これらのSEがタイミングよく挟まる」ようになり、何ともいえないプレイ中の昂揚感を作り出すことに成功している。

賛否両論点

  • グロテスクな描写が苦手な人にとってはキツめの面があること。
    • シリーズ中最も人体欠損描写が激しく、更に筐体設定の血の色がデフォルトで「」である為、そういうのが生理的にダメ、という人には向かない・楽しめない可能性が大きい。
      血だまりに横たわる研究員の死体、槍で串刺しにされた惨殺死体や、おびただしい量の血だまり、食肉フックに無造作に吊るされた人間の上半身等のオブジェクトも存在する。
      • 一応、筐体設定で「」「」「」に変更可能ではあるが、基本的な残虐描写は変わらない*9ので、焼け石に水と言ったレベルである。
    • マスコミにそのグロテスクさを取り上げられテレビ放映されたり、新聞の読者投稿欄に「(HODは)人殺しの訓練をしているようなもの」等の極論に近い意見が載ったこともあった。
      • セガもこれらを重く見たのか、97年中に直営店に対して血の色を「緑」として稼働するよう要請し、以降Xbox版『III』まで、日本版のみ血の色は緑で固定されていた。
  • 成績やコンティニュー回数に応じてEDが変わる(全3種類)。
    + ネタバレ注意
    • ノーマルエンド…車に乗る前に洋館の方を振り返ってEND。
    • バッドエンド…振り返った直後、洋館の入り口までスライドし、ドアを開けるとゾンビになったソフィが出てくる。
    • グッドエンド…↑と同じだが、ドアを開けると人間のソフィが「Thank you」と言いながら駆け寄ってくる。
      • 『III』では主人公の娘を操作することになるので、グッドエンドが正史とされた。バッドまたはノーマルエンドしか知らないプレイヤーも安心。
    • グッドエンドを見るにはかなり点数を稼がないとならず、必然的にルート選択も限られたものとなってしまう。
      点効率が悪いルートでは、ほぼ絶対にグッドエンドを出せなくなってしまう*10という事態も存在する。

問題点

  • 2Pでプレイしているとバグにより不利な場面が頻出する。
    • 1面の屋敷2Fの女性研究員や1Fの檻に捕らわれた研究員達を救出しても1Pのライフアップ表記が出て、2Pのライフが増えない、
      スコア面では一部研究員の救出スコアや、最終面のボスラッシュ時に登場する2面ボスの撃破スコアが入らない…とやけに不遇。
      • その為、スコアアタックを行うならば、1Pでプレイする事が必須となり、少々煩わしい面がある。
  • どんなに稼いでも、全クリしないとスコアランキングに載らない。
    • 「載せたければまずクリアをしろ」というわけで、初心者にとっては長い長い壁となる。
      • このランキングの仕様は続編でもそのままになっている。
  • 3D黎明期のゲーム故仕方が無いがキャラククターの使い回しが非常に多い。
    • 特に救出対象となる人間キャラクターについては、ソフィー以外の全員が「白服の研究員」であり個性といったら顔つき程度。
      • 本作は研究施設を兼ねた洋館が舞台だが、味方キャラクターを多く使い回す関係で舞台設定を決めたとしか言いようが無い。

総評

本作は概略の通りバーチャコップとバイオハザードを合わせた訳だが、単なる模倣に終わらず新たなる面白さを作り出している。
人間サイズの敵に対し「部分欠損」「数発打ち込む必要性と爽快感」をガンシューに導入した点も大きい。
撃ちこみについては、バーチャコップでも3ポイントシュートと3発までならできたが、更に発展させたものといえる。
また敵がゾンビとした為、部分欠損による攻撃をスカらせたり等のアクションも斬新かつ説得力がある。
演出も徹底しており、暗く重い、何がいるか解らない雰囲気がグラフィックからも見えてくる。

これらもあって好評を博し、以降のシリーズ化や様々な展開に繋がることになる。
ガンシュー史において、『リーサルエンフォーサーズ』『バーチャコップ』などに続き記される名作といえるだろう。