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NieR RepliCant Gestalt - (2021/05/23 (日) 01:31:19) の編集履歴(バックアップ)


本記事では国内PS3版『NieR RepliCant』と国内Xbox 360版『NieR Gestalt』に加え、海外両ハード版『NIER』について記述しています。



NieR RepliCant / NieR Gestalt

【にーあ れぷりかんと / にーあ げしゅたると】

ジャンル アクションRPG

対応機種 RepliCant プレイステーション3
Gestalt Xbox 360
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 キャビア
発売日 2010年4月22日
定価 7,800円
レーティング CERO:D(17才以上対象)
廉価版 RepliCant アルティメットヒッツ
2011年4月21日/3,990円
Gestalt プラチナコレクション
2011年4月21日/3,990円
判定 良作
ポイント 『DOD』の世界観を継承
ドラッグ オン ドラグーンシリーズ


一人のために、全てを滅ぼせ。



ストーリー

遠い未来。滅びゆく世界。
死をもたらす黒き病。兄と妹。壊れし日常。消える日常。
封印されし書物。蠢魔の力。
呪われし存在「マモノ」

犠牲。差別。抱擁。別離。破戒。記憶。
狂気。光。救済。崩壊。巨人。黒き力。

翻弄される運命と、最後の代償


概要

  • 本作はキャビア(現:マーベラス)の、『ドラッグ オン ドラグーン』の製作陣によって開発されたアクションRPGである(ただし販売はスクエニ)。
    • 裏設定として、『DOD』のEエンド(通称新宿エンド)から千数百年後の世界が舞台となっているものの、ストーリー上の関係は殆どない。
    • Eエンド後からゲーム開始までの経緯や『DOD』との繋がりは、設定資料で明らかとなっている。
  • あの『DOD』を開発したキャビア製作の作品、しかもそのEエンド後の世界観が舞台という事で「またとんでもないシロモノになるのか」と多くのユーザーは冷や冷やし、同時に期待していた。
    • そして、発売後はいい意味でユーザーの心配と期待を木っ端微塵に△○※□する事となった。
  • なお、当初は『RepliCant』の内容で制作されていたものの、上層部や海外スタッフの意向によってデザインを変更した『Gestalt』も制作されることになった。
    • 本記事ではPS3版『RepliCant』の情報を基準として書き、360版『Gestalt』及び海外版『NIER』の相違点は後述する。

特徴

  • 『DOD』と同じ世界観のゲームだが、ゲーム中には所々に『DOD』プレイヤーが喜ぶ要素が入ってる程度のもので、設定資料を見ない限り同じ世界観であることを正確に知ることはできない。そのため『DOD』のプレイ経験の有無は関係なく楽しめ、新規タイトルと考えて良い。『DOD』をプレイした上で設定資料集を読めばもっと楽しめる、という風になっている。
  • 『DOD』と同様に本作はマルチエンディングであり、周回または特定の条件を満たす事によって異なるエンディングを見ることができる。
  • 登場人物・武器等にも『DOD』シリーズと共通するものがある。他ゲームのパロディもある。
    • ゲーム内に随所に存在する独特の記号は【天使文字】というもので、『DOD』シリーズにも登場した実在言語である。
    • ボスの1体である【シャハリヤール】は、初代『DOD』の雑魚であるガーゴイルキューブとデザインが同じ。
    • また、シリーズお馴染みのウェポンストーリーも、ゲーム内での閲覧こそ不可能だが設定資料集ではしっかりと語られている。ちなみに、ほとんどのウェポンストーリーは『DOD』シリーズのそれと繋がりはないが、草原の竜騎槍のみ繋がっている様な内容となっている。ただし、『DOD』に毒されている人以外は期待してはいけない。
  • 全体のストーリーとしては、黒文病という不治の病への糸口を探して封印されし言葉というものを探したり鎮痛薬の材料を探したりするという、お使いゲーム的なものである。
    • なお、ストーリーは前編の「少年期」とその五年後の「青年期」に分かれている。二周目以降は青年期からのスタートであり、周回が苦にならないよう配慮されている。ただし、少年期にしか発生しないクエストなどもあるので注意が必要。

ゲーム性

  • ゲームシステムは、『DOD』同様のオーソドックスなアクションRPGであり、「1.5倍速にした3Dゼルダ」と言われる事もある。
    • セーブポイントはポストであり、手紙を出すことでセーブすることになるが、ボス手前フロアにも常設されている。恐らく、多くのユーザーはボス戦前にセーブできると思ってなかっただろう。
    • 武器によるコンボ・二段ジャンプ・回避・受け身・防御・魔法など、3Dアクションにありがちなシステムは全て備わっており、癖がなく取っ付きやすい。
      • オリジナリティがないかと言われればそうではなく、ステージによっては上や真横からの視点の2Dアクションになる。また、魔法使用時にはターゲットサイトで狙いを付けるTPSにもなる。また、とある場面には何とサウンドノベル*1まである。様々なゲームシステムを上手く取り込み、飽きさせない、または新鮮さを感じさせる工夫が施されている。
  • 戦闘は片手剣・両手剣・槍の三種類の武器を活用して戦ってゆく(ただし少年期は片手剣のみ)。
    • それぞれ、攻撃力は低いが使いやすい(片手剣)・圧倒的な攻撃力と攻撃範囲を持つが隙が多い(両手剣)・攻撃力が高く隙も少ないが攻撃範囲が狭い(槍)という特色を持つ。どの武器も、不死鳥シリーズといわれる武器が強力で、これが手に入ったら他の武器は実質飾りになりやすい。
    • 三種類の武器とアイテムは、方向キーで変更または使用を行うようになっており、ストレスを感じる事はまずない。
    • なお、本作に登場する武器の半分以上は、『DOD』シリーズにも登場した武器である。また、DLCにてファンには嬉しいとある武器が追加された。もちろんウェポンストーリーも存在する。
  • 武器以外にも、LRボタンに任意に設定した魔法を使うことができる。
    • ボスを倒すごとに使用できる魔法が増えていき、対応できる状況が増えていく。
  • ワードエディットというシステムが存在し、これにより武器や魔法を強化できる。
    • 敵を倒したときに入手することが出来、武器や魔法の前後に言葉を追加することで威力の強化・MP回復速度上昇・特殊効果付加・ドロップ率や経験値の向上など、様々な効果が与えられる。
    • 出てくる言葉は簡潔で当たり障りのない言葉だったり痛々しい言葉だったりする。組み合わせ次第では、かなり病んだ文章となる。
  • ちなみに、本作は主人公の名前をユーザーが任意に決める事ができる。むしろニーアという名前自体がゲーム中にも説明書にも提示されない裏設定となっているため、事前に外部の情報から主人公の名前だと知っていなければ入力できず、クリアしても「ところでニーアって何?」となってしまう。
    • ちなみに「ニーア」という名前が1か所だけボイス付きで呼ばれるシーンがある。ただし効果音で名前の部分は殆どかき消されて鮮明には聞こえない。

本作の魅力

  • 本作が名作扱いされる最大の理由は、やはり「キャラクター」「ストーリー」「BGM」の三点にあるといえる。

キャラクター

  • キャラクターはどれも『DOD』に負けず劣らず強い個性を持っており、ユーザーから高い評価を得た。ただし、『DOD』ほど歪んだ性格・趣味の持ち主はおらず、基本的に根はいい人である。もっとも、マイノリティな人はいるが。
+ キャラクター一覧
  • 主人公(ニーア)
    • 妹のヨナと二人で暮らしている少年。お人好しかつ仲間思いであり、唯一の肉親であるヨナをとても大切にしている。
      そのため行動理念はほぼヨナを最優先としており、ヨナが男の子と文通していると知った時は相当動揺していた。
    • 青年期では常にどこか影を感じさせ、笑顔を見せる事は少なく、言動も少々乱暴。マモノに対して極めて強い恨みを持っており、どんな状況でも相手がマモノならば容赦のない行動を取る。
      しかし、これはヨナと仲間を守りたいが故であり、良くも悪くも目的に対してブレが無い事の表れでもある。「良くも」の部分はユーザーに共感や好評を得ている一方、「悪くも」の部分が描かれる印象的なシーンやクエストも。
    • 余談だが、ニーアの誕生日は6月6日、つまり兄の日である。
    • なお、先述したように「主人公の名前がニーアである」という情報はゲーム内のどこにも存在していないが、設定資料集にはそう記載されていた事もあってユーザー間には浸透しており、当記事でも便宜上ニーアと呼ぶ。
  • 白の書(シロ)
    • ゲーム序盤でニーアと出会う、人語を話す「封印の書物」である。博識で尊大だが、時々ボケたりするなど憎めない性格の持ち主。
      ニーア一行からは「シロ」と、サブキャラクターの女性陣からは「シロちゃん」と呼ばれており、威厳が全く無いためかなり不満げ。
    • ニーアが魔法を使うために必要な存在でもあり、シロがいない時や異常が発生した場合は魔法が使えなくなってしまう。
    • 声優は『DOD』シリーズのアンヘルに引き続きピーター氏が担当している。
      似た役でありながらしっかりとキャラクターの違いを演じ分けており、改めてその演技の上手さをユーザーに印象たらしめた。
  • ヨナ
    • ニーアの妹。ニーアを気遣い、とても大切に思っている。生まれつき病弱であったが、更に謎の奇病「黒文病」を患ってしまう。
      不治の病に冒されながらも、自らのために奔走する兄を思う姿勢は、見ていてとても健気である。
    • 料理は得意ではないようで、煮込みすぎたりしてしまう。
    • ローディング画面では彼女の日記が表示される場合があり、心境などを垣間見ることが出来る。
    • 名前の由来は旧約聖書の一つの「ヨナ書」から。
  • カイネ
    • 左半身をマモノに侵されている「マモノ憑き」の女剣士。その可憐な容姿に反して、口も態度も乱暴、大雑把で大飯喰らい。というよりも悪食に近く、まずい上に猛毒な木の実をうまいといって平気で食べてしまう。
    • 北平原の先にある崖の村の出身だが、村で暮らしてはいない。
    • 日光に弱いマモノの侵食を抑えるために肌の露出面積を増やすなどの理由で、常に下着姿(仮にも王族の結婚式でもこの格好)。そのため、シロからは下着女と呼ばれることが多い。なお、この下着は曜日ごとに着替えてちゃんと洗っているらしい。
    • 本作を語る上で欠かす事のできない強烈な個性を持つキャラクターであり、ひとたび口を開けば放送禁止用語の嵐が巻き起こる。
      例:「貴様の△○※□裏返して、蹴っ飛ばしてやるよ!
      特にシロとカイネのやりとりは非常に好評であり、ユーザーを爆笑の渦に巻き込んだ。
    • 戦闘では双剣や魔法による攻撃でサポートしてくれる。
  • 実験兵器7号
    • とある出来事がきっかけで、ニーア達と共に旅をする事になる、骸骨のような謎の生き物。
    • こちらもカイネ同様に、本作を語る上で欠かす事のできないキャラクターであり、そのキモ可愛い容姿は本作のマスコットとして愛されている。
    • 見てくれこそ初見ではまず敵にしか見えないものなのだが、実は本作屈指の良識人。特に終盤のとある展開では多くのプレイヤーを感動させ、またとあるシーンにおいては大いに脱力させた。
    • 戦闘では攻撃魔法や回復魔法を駆使する。
    • 名前の由来はグリム兄弟の末弟から。
  • デボル
    • 村に住む双子の姉妹の片方で、村の噴水や酒場で歌を歌っている。
    • 少年のような口調をしており、活発な性格である。ただし、酒には弱く、少しでも飲むと可愛い言葉遣いになるらしいが、残念ながら作中では見ることはできない。
    • 彼女のいるフィールドでは、彼女の歌声が聞こえるようになっている。
    • ちなみに、『DOD』シリーズではデボルポポルという武器が存在していたが、本作では背信の刃という名称になって続投。
  • ポポル
    • 村に住む双子の姉妹の片方で、図書館の館長。
    • 才色兼備の上に優しい性格で、人々から厚い信頼を受けている。また、村長的な立場でもあり、他の村と手紙などでやり取りをしている。
    • 自分たち同様2人で生きているニーア兄妹をとても気にかけており、様々な情報を集めてくれる。
    • デボルと同様美声の持ち主だが、極めて特殊な酒を飲まないと歌ってはくれない。さらに、酔い過ぎると暴れて店を壊すなどしてしまう。デボルの件を含めてニーアからこの話を聞いたシロは酒とは怖いものだという感想を漏らしている。
+ ネタバレ
  • テュラン
    • カイネに取り憑いているマモノ。
    • 猟奇的な性格で、人間だろうとマモノだろうととにかく殺したいとカイネに力を貸している。カイネの魔力や再生力はこいつの力。
    • 針振りきったようなハイテンションで悪意に満ちたセリフを吐きまくり、声だけながら強烈な個性を発揮している。外道ながら憎めないキャラである。

ストーリー

  • 開発スタッフも公言している通り、ストーリーの大筋は「さらわれたヨナを救うために旅をし、魔王を倒す」という王道的なもの。
    • 王道だが「王道を通り越して陳腐」というような評価はされていない。むしろシナリオの魅せ方が上手いがために、王道さを微塵も感じさせない。
    • サブクエストの「伝えたいこと」等も独特の世界観を上手く使ったエピソードであり、ユーザーからの評価は高い。
    • また、「台詞や文章を用いずにキャラクターの表情で語る」という演出方法も見事なものである。
    • 実験兵器7号やカイネの一見すると強烈すぎる設定も、ストーリーに上手く組み込んでおり、しっかりとプレイヤーの評価を得ている。
  • 周回プレイ
    • 一度ゲームをクリアすると、レベル・武器・クエストの進行状況等を引き継いでの二周目がプレイ可能。
    • 一周目と二周目以降との違いは、「一周目では語られなかった描写・エピソードが物語全体に追加される」というもの。一見些細な変化に思えるが、実は追加要素の尽くがユーザーの価値観を根底から覆してしまうものだらけだったりする。
      • ムービーやカットシーン、戦闘中の会話等も大きく増加するので、「一度見たから」と言ってスキップはしないように。
    • この二周目の描写が追加されたストーリーは恐ろしいほど評価が高く、ネタバレは避けるが機械の理・忠誠のケルベロスのエピソードなどは特に好評。
    • この二周目をプレイして初めて、パッケージ裏の【一人の為に全てを滅ぼす】・PVの【その戦いに正義を求めてはならない】という一文の意味が理解できる構成になっている。【忠誠のケルベロス】といった敵キャラの二つ名も同様で、後述の設定資料集では更にこの方向性に拍車が掛かる。
  • また周回ごとにエンディングも変化するが、どのEDも、どこか割り切れない部分もありながら、壮美なED曲も相まって不思議とスッキリした後味を残す造りとなっている。
  • この独特な世界観・舞台設定は、本作の大きな魅力の一つである。
    • しかし、その多くは断片的に示唆されるのみで、作中では多くは語られない。興味がある人は、紹介・考察サイトや設定資料集等に目を通すとよい。真実を知ると共に、これまた価値観ががらりと変わる事だろう。

音楽

  • 本作のBGMは飛び抜けて高評価であり、ゲームの雰囲気をより一層、幻想的かつ儚げになものにしてくれる。
    • ストーリー・キャラクターと同等かそれ以上に、本作を名作たらしめる決定的な要素として作用している。
  • 本作は長いゲーム史でも数少ない、もしくは殆ど例を見ない、ほぼ全てのBGMがボーカル曲の作品なっている。
    • バックグラウンド・ミュージック/ビデオゲーム・ミュージックではなく、楽曲単体としても聴き応えがあり、物語との相乗効果も見事。
      • 多くの楽曲でボーカルを担当するEmi Evans(Emiko Rebecca Evans)女史の声色、歌唱力も本作の雰囲気に非常によくマッチしている。
    • 全体的に捨てる曲がないほどの名曲揃いだが、特に「カイネ/救済」「イニシエノウタ/運命」「魔王」等は非常に評価が高い。
      • 「一つの旋律を複数の曲に渡って多用する事で統一感を生み出す」という手法をとった作品の1つであり、同じメロディでも曲調の違いで様々なシチュエーションを印象付けている。
    • 例えば村で流れる「イニシエノウタ/デボル」は、村の歌姫が歌っているというシーンに合わせ、普段はインストゥメンタルだが、彼女の近くに行くとボーカル曲に変化するなど、表現も凝っている。
      • また、この曲自体も村の、ひいては作品全体の虚ろな雰囲気が非常に上手く表現されている。
      • 上記のイニシエノウタには、「イニシエノウタ/デボル・ポポル」というパターンもあるが、やはりこちらも評価が高い。しかしこちらは「少年期のクエスト進行によるその一時のみで聞ける」と、非常に限定的な場面でしか聞けないのが惜しいところである。
    • 真っ白で美しいスタッフロールの中で流れる「Ashes of Dreams」も、本作の物語を見事に表現した名曲と評価が高い。
    • 最終ボス戦で流れる「魔王」という曲は特にストーリーの演出や展開にマッチする素晴しい曲で、「様々なシーンやキャラの心境をたった一つの曲で演出した」と評価されている。もちろんこの曲もボーカル入りであり、曲単体の評価も高い。

その他の評価点

  • メインキャラの人気も然る事ながら、フィーア・国王・副官などサブキャラの人気もかなり高い。
    • いずれのキャラクターもしっかりとした個性があって感情移入でき、ゲーム内で重要な役目を果たしている。
    • 『DOD』で人気(?)を博した狂気も健在。とある兄弟の弟や、終盤のとある女性の狂いっぷりは『DOD』ファンを歓喜させた。
    • メインキャラ・サブキャラ問わず、声優さんの演技も非常に上手い。演出やストーリーの良さも相まってゲームを盛り上げてくれる。
  • 釣り・栽培・武器のカスタマイズ・クエストなどやり込み要素も豊富。
    • 栽培はあるクエストをこなせば解禁され、野菜・穀物・花等を育成できる。ゲームの進行には関係ないが、金策やサイドクエストに関連する。
    • カスタマイズに使うアイテムは出現率が低い物が多い。収集・コンプリートには相当な時間を要するので注意されたし。
    • クエストに関しては、途中の選択肢によって最終的な展開が変化してしまうものが存在している。またクリアして消滅したクエストの状態も全て以降の周回に引き継がれてしまうので、一度選択した結末は後味が悪かろうとロードしてやり直す以外は修正不可能である。
  • PS3のXMBで確認できるプラチナトロフィーのコメントが、なんと『DOD』のあの台詞である。スタッフの遊び心だろうか。

賛否両論点

  • ストーリーが説明不足
    • プレイ中、随所に見られる伏線の大部分がゲーム内では放ったらかしにされる。謎が残ったままエンディングを迎えるので、煮え切らない思いを抱くプレイヤーは少なくない。
      • これは「主人公のニーアにとっては妹と仲間が全てでありそれ以外はどうでもいい」という表現とも言える。恐らくこれが最重要テーマ。
    • 公式設定資料集で伏線はほぼ全て回収されるが、最初からゲーム本編に入れるべき等、不満もある。
      • この設定資料集ですら全く明かされていない事柄もある。『DOD3』において、横尾氏が考察の余地を残すために意図的に伏線を放置している旨を語っているので、本作もそうなのかもしれない。
    • 設定を全てゲーム内に入れるとソフ倫に引っかかるから、規制されるから、考察も楽しい等の擁護・肯定的な意見もある。
  • メタ的な要素
    • ゼルダの伝説・ドラクエ・FF・バイオハザードといった人気を博したゲームの内容をオマージュしている部分が多い。
      • スタッフの遊び心とも思えるが、ケレン味のある独自の世界観や物語が評価されている事もあり、何故?と疑問視する人も少なくない。
      • 一つ例を挙げると、南平原に存在する洋館はカメラワーク・演出ともに初代バイオハザードそのものである。流石にゾンビはいないが。
  • 最後のエンディングを見るためにはとある事をしなければならない。
+ その「とある事」とは…
  • 最後のエンディング、すなわちDエンドを見るとセーブデータが消滅し、そのセーブデータで使用していた主人公名が二度と使用出来なくなる
    • ある意味本作らしい演出ではあるが、唐突にデータを消されるプレイヤーからしてみればたまったものではない。
    • しかも厄介なことにこのDエンドは、選択肢次第では3周目で到達可能。つまり3周目でCエンドを見ずにDエンドを見てしまうと、そこで同一の主人公名を使ったデータが全て消滅。再びCエンドに到達するのは早くて7周目という悲劇的なことに…。
    • もっともDエンド選択後は「セーブデータが消えます」という警告がしっかり出る。複数回に渡って警告される上、最後は主人公の名前を入力する必要があるため、適当にやってたらデータが消えたということはまず無いように作られている。
    • なお、この演出は本作が「7周完結」構成だった頃の名残である。スタッフ対談によると、企画段階ではこのイベントでカイネの記憶が消滅、その後リセットした状態で再び3周することでカイネの記憶が取り戻され、その際に1周目の主人公の名前が鍵となるという構成だったらしい。

問題点

  • 使用キャラの問題
    • 個性的なキャラクターは沢山いるのに、使用できるキャラクターはニーアしかいない。
      • 『DOD』シリーズは主人公以外のキャラクターも使用できたので、「せっかく仲間が三人もいるのに勿体ない」と嘆かれた。
  • グラフィック関連が今一つ
    • PS3作品でありながら、お世辞にも綺麗なグラフィックとは言えない。PS2以上PS3未満である。
    • ゲームプレイに差し支えるほどの影響ないものの、ゲーム中に表示される字幕が読みづらい事が多い。
      • 判別しづらい文字も多く存在する他、白い背景に白文字が表示される場面もある。
    • 広けた場所では問題ないが、ロボット山や南街道といった狭いロケーションでは、カメラが扱いにくいのもマイナスポイント。
  • 判定処理が雑
    • 敵や味方の当たり判定は見た目通りではなく、箱のように四角型になっているため引っ掛かりやすい。オブジェクトの間に隙間があるように見えても引っかかって進めないなどザラ。
      • 仲間ユニットは「プレイヤーから一定距離離れるとワープで追ってくる」という仕様になっているのだが、こちらの移動の邪魔になる位置にワープで現れる事もしばしばある。
    • 地形の判定も雑。どう見てもジャンプで越えられる程度の段差を越えられなかったり、足場に見えても乗れなかったり、逆に越えられそうもない場所は越えられたり…。
  • 戦闘システム周りが全体的に大味
    • 特にボス戦闘で顕著だが、敵が目まぐるしく動く一方でこちらには大して行動の選択肢はない。戦略云々などはほとんどなく、せいぜい回避と攻撃の使い分けを迫られる程度。単に強い武器で殴りつけるのが最適解となる場面が殆どである。
    • 『DOD』シリーズと比べると武器ごとの個性が薄まっており、単純な攻撃力で優劣が付きやすく、出番の無い武器が多い。
      • 特に、青年期以降は強力なワードも集まり、対複数では魔法でアーマーを剥いだり、雑魚を一掃が基本になる。故に、動作が比較的速く、火力もあり、出の速さ、距離詰め、吹き飛ばしを兼ね備えた突進を使える「槍」が飛び抜けて強い。
      • 逆に「片手剣」は火力に乏しく攻撃範囲も狭いため、後半はほとんど出番が無く不遇。
    • 魔法に関しても使い分けを求められる場面はほとんど無く、強力な魔法を2つ程度見繕っていけば難易度ハードでも最後までいける。
    • 死んでいるシステムも多い。例を挙げるとネタプレイですら使い所の無い「壁蹴り」、敵の出現箇所に予め置いておくぐらいしか使い道の無い(それでも使いづらい&正直通常攻撃で十分な)「チャージ攻撃」等がそれにあたる。
    • 大体そんな具合の大味なバランスのため、少しレベルを上げればボスも攻撃連打で撃破可能。アクションゲームとしては作り込みが浅い。
  • クエストや移動関連が面倒
    • プレイ中、NPCから「クエスト」という形で依頼を受けることがあるが、その多くはおつかいイベントである。
      • また「素材集め」系クエストの中には「ダンジョン中を駆けずり回っても2~3個出れば良い方ぐらいのレアドロップアイテムを10個集める」など面倒な依頼もある。
      • 「釣り」関連も面倒。本作の「釣り」は無駄に難易度が高く、一匹釣り上げるごとに時間と集中力を要するのだが、「○○(魚名)を10匹釣って来い」のようなクエストが幾つも出される。
      • これらは当然受けても受けなくても良いのだが、本作の豊富に用意されたクエストとそれに伴うサブストーリーは世界観を深める為に欠かせないものとなっているので、無下にはしづらいのが悩みどころ。
    • また、本作の移動手段は基本的に徒歩。クエストではあちらこちらへ行ったり来たりのおつかいイベントが多いためだれやすい。
      • 青年期に入ると船で要所間のワープが出来るようになるが、「崖の村」「神話の森」といった内陸地にはワープ出来ない上、行く頻度が高い「仮面の街」にはワープ地がないなど、結局ある程度は歩く必要がある。
  • その他不評点
    • ゲーム内のとあるシーンでプレイできるサウンドノベルは、選択肢を間違えると即ゲームオーバーという単純かつ面倒な構造が多い。
    • 採取や栽培などのモーションは冗長で、テンポがかなり悪い。敵からの剥ぎ取りなどは必要回数が多いため、特に顕著。
    • 「石の神殿」の使い回し回数が多く、前半で一回、後半でさらに二回も攻略する必要がある。マルチエンディングを全て見るためには後半を何度も周回する必要があるため、ここでダレやすい。
      • その他にも、スタッフロールがスキップできない、周回するたびにワードの装備がリセットされ再設定が面倒等、周回に際して不親切な部分がある。
    • 入手できる期間が限定されているワード、アイテム、チュートリアルが多い。入手しなくとも問題は無いが、コンプリートプレイを目指すユーザーにとっては気になるかも知れない。
    • 少年期・砂の神殿では、一度入るとクリアするまで外に出られない上に、中にセーブポイントが存在する為、ギリギリの状態でセーブしてしまうと詰んでしまう可能性がある。
      • もっとも砂の神殿の難易度は高くなく、ボスもあまり強くないので、詰む可能性は低いが。

総評

グラフィック・システム面ではそれなりであり、さほど高い評価はされなかったものの、ストーリー・キャラ・BGMの三点がそれを補って余りある高評価をされている。
固定視点の箇所がある、周回前提の構造、鬱要素のある設定など独特のクセはあるが、『DOD』シリーズに馴染みがないプレイヤーにも概ね受け入れられている。
初週で6万以上も売り上げ、殆どの店が軒並み品切れ状態となったが…スクエニがあまり出荷してないため在庫がない状態が続いた。
そこから口コミで広まって10万以上も売り上げている辺り、本作が如何に高い評価を得ているかが見て取れるだろう。
14~15万本という数字は今の時代完全新作のRPGとしては十分ヒットと呼ぶことができ、ゲシュタルト含め世界累計は39万本に達している。


余談

  • 本作と同時期に発売したサウンドトラック、後日発売された公式設定資料集も高売り上げ高評価を得ている。興味があるなら買ってみてはどうだろうか。
    • なお、設定資料集には『DOD』から本編までの出来事や、人物や事象の本編に描かれていない設定など、とても膨大な量の設定が事細かに解説されている。また、様々なサイドストーリーを描いたSSも数本掲載されている。
      • ちなみに、これらの大半が非常にショッキングな内容であり、読む場合は相当な覚悟が必要。また、制作者インタビューでも笑いながらとんでもない話をしている。やはりキャビアはキャビアだった。
      • 初代『DOD』にもまつわる情報*2がいくつか載っているので、そちら方面で気になる人は見てみるといいかもしれない。
    • 2011年4月27日にはドラマCD「ウシナワレタコトバトアカイソラ」が発売された。ゲームや資料集で描かれなかったストーリーであり、本編および付属のブックレットから新たな設定を知ることができる。
      • しかし相変わらずショッキングなことになっており、これを聴くのにもまた覚悟が必要。
      • 本編は全体的に暗く重い話なのに対し、おまけシナリオの「私立レプリカント高等学校 体育祭編」はその名の通りキャラ、世界観、ストーリーなどあらゆるものがぶっ飛んでいる爆笑モノの学園パロコメディになっている。
      • 本編では『DOD』のあの曲が流れたり、おまけではゲームで見られなかったデボルポポル姉妹の酔った姿が見られたり、教頭が中の人繋がりの『DOD2』のあの人の台詞を言ったり、ファンにうれしい要素も多い。
      • そして、締めくくりはやはり『DOD』のあの台詞である。もはや恒例か。
      • また、7号のエピソード「宇宙大戦争」は、ギャグじみたノリでありつつも、下記の続編への橋渡し的な重要エピソードとなった。
  • スクエニ製カードゲーム『LORD of VERMILION Re:2』にも本作のキャラがゲスト出演。出演するのはカイネと7号の2人。
  • 今作は『DOD』シリーズで好評を博した「ウェポンストーリー」が収録されなかったため、残念がるユーザーが多かった。
    • これはディレクターの横尾氏がウェポンストーリーの好評ぶりを知らなかった事、また元々ウェポンストーリーはボリュームアップのためのおまけのつもりで入れた要素だったため、あまり重要視されていなかった事が原因である。
    • しかしそういった不満の声を受けてか、後に雑誌『電撃ゲームス』にて連載企画としてウェポンストーリーの執筆が開始され、またさらに後日発売された上記の公式設定資料集にも、雑誌収録分も含めた全ての武器のウェポンストーリーが掲載された。
      • 中身も(狂気的な意味も含めて)ファン納得の出来に仕上がっており、好評。『DOD』で人気の高かったあの武器も、まあいつも通りと言えばいつも通りの結末に仕上がっていたりもする。
      • 『DOD』のヒロインを模したあの武器もしっかり書かれているので、気になる人はぜひ確認を。こちらはこちらで、こっそり驚きの内容が記載されている。

Xbox 360版『Gestalt』と海外版『NIER』について

  • 日本国内だとPS3版は『NieR RepliCant』と、Xbox 360版は『NieR Gestalt』と銘打たれ、内容は大筋こそ同じであるものの若干異なる。
    • 海外では両ハード共に『Gestalt』の内容で発売されており、タイトルも『NIER』のみとなっている。
      つまり『Gestalt』は海外向け仕様の内容であり、国内版の音声も英語のみで、日本語字幕付きとなっている。
    • 本来はPS3独占タイトルとして『RepliCant』のデザインで発売する予定だった。しかし、上層部や海外スタッフが「このデザインでは海外だと売れない」と反発し、主人公のデザインを筋肉モリモリの中年男性に変更してしまう。
      その一方で、元のデザインを残したいという開発スタッフの強い要望があり、売上も考慮して日本でのみPS3版をオリジナルの『RepliCant』として、360版を海外向けに主人公のデザインを変更した『Gestalt』として2バージョンのマルチタイトルで発売という現在の形に落ち着いた。
    • なお、主人公の変更に伴いヨナとの関係を「兄と妹」ではなく「父と娘」に変更している。
      • また、立場やキャラクター性の変化に伴って発言内容や言い回しにも多く変化がある。
  • 主人公と音声の変更により、一部の演出の印象が変わったり、少年から青年への成長による演出の効果が失われている等、ユーザーからの評価は芳しくない。
    • ビジュアル変更の影響と思われる例として、物語の序盤で筋骨隆々の中年男性が自分の娘ほどの年齢差はあるであろうポポルに仕事を斡旋してもらったり*3、生きる意味を失ったカイネに対して「俺たちはもう仲間だ」と青臭く説得する等。
    • また、シナリオ中で大きく時間が経過する際に眼帯をし始めるのだが、どういう経緯でそうなったのかには触れられず、推測するしかない。
      • もちろん決定的に妙なシチュエーションというわけでもない為、どう感じるかは人によるかと思われる。例えば仕事を紹介してもらう中年男性ぐらいは現実にも良く居るであろうし、中年男性が青臭く生きる価値を説いてはいけないわけではない。
  • そして当の海外ユーザーには受け入れられたとも言い難く、青年主人公のほうが良かったという意見も珍しくない。
    • 日本では2バージョンを選択できるのに対し、海外では両機種とも『Gestalt』固定であるのも不満を後押ししている。
    • 日本のゲームを好んでプレイする海外のユーザーは意外にも多い。 』『ペルソナ4』の高評価や賛否の分かれた『BIOHAZARD 5?』、FFシリーズの売り上げを見ても、如何に日本のゲームをプレイする海外ユーザーが多いかが伺えるだろう。
      • 海外市場を狙いわざわざ中年男性にしたのに関わらず、皮肉にも国内版『Gestalt』も海外版『NIER』も売上ランキングにすら載らず全く売れなかった。
  • 公式でのその後の扱いも少々寂しい。
    • 日本での攻略本等での扱いもほぼ『RepliCant』がメインで、『Gestalt』は「ゲシュタルトのほうも内容は概ね同じです」といった注釈が加えられる程度にしか触れられなかったり。
      • 上記のSSやドラマCDなどのメディア展開も全てレプリカントの世界観・キャラクターの作品となっている。まぁ日本で英語音声のドラマCDを出されても困るのだが…。
    • とは言え、後発作品でも可能な形で『Gestalt』の要素はしっかり押さえていたりと、『RepliCant』をベースとしているコンテンツの中でも親父ニーアが拾い上げられる事はそこそこ多い。
    • 後述のようにそこそこ支持を得ている事は開発陣も知っているのか、決して忘れ去られゆくキャラにするつもりは無いようである。
  • 尤も、親父ニーアには中年男性特有の渋さがあり、青年版には無い魅力もあるので一概に悪いとも言えない。実際、これはこれで良いという声もある。
    • 既婚故にそういう方面のセリフが妙に生々しくなっていたりする。具体的には男の浮気調査の依頼中に言う台詞「浮気も甲斐性」が青年版には無い含みを察せられたり、結婚する友人相手への発言が「ご愁傷様」に変更されていたり。両方ともギャグで言っているが説得力がありすぎる。
    • 「大剣は親父に使わせた方が似合う」「兄妹より父子の関係性の方がしっくりくる」といった好意的な意見も決して少なくはない。
    • 声優は英語版でも評価が高い。シロのとぼけた演技やニーアとの掛け合いには『RepliCant』にはない個性がある。
      • なお、字幕は『RepliCant』のものを微妙に変えて使い回しているだけなので、向こうの声優がやりたい放題やっているように見える。
      • 特に顕著なのがカイネの罵倒で、とあるシーンはゲシュタルトだとOP最初のセリフになっていたりする。台詞は字幕で修正が入っているのだが、英語版だとなぜか音声は無修正。 ガッ×ムだのアス×ールだのファ×クだのと非常に素晴らしいカイネの罵倒が聞ける。物好きな方はどうぞ。
  • 有料DLCである「15 Nightmares」が配信されているが、そこで『RepliCant』では『Gestalt』の主人公を、『Gestalt』では『RepliCant』の主人公を操作できる。

その後の展開

  • 2017年2月にまさかの続編『NieR:Automata』が発売された。詳細は作品ページを参照。
  • 2021年4月22日に『RepliCant』の復刻兼バージョンアップ版である『NieR Replicant ver.1.22474487139…』がPS4/One/Winで発売された。開発は元キャビアの開発メンバーたちが所属しているトイロジック*4が担当する。
    • また、オリジナルでは短編小説として公開され人気を博したエピソード「人魚姫」をゲーム本編にエピソードとして収録。この「人魚姫」は予算の都合により収録出来なかったものらしく、11年越しでゲーム内収録となる。
    • その他フルボイス化やBGMの再録されており、ピーター氏が休業している為シロの声優が『NieR:Automata』でポッド042を演じた安元洋貴氏に変更されている。
      • なお、この復刻版は海外でも日本と同様の仕様で発売されており、ようやく海外のユーザーも本来の『NieR』を遊ぶことが出来るようになった。