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バイオニックコマンドー (GB) - (2021/08/04 (水) 08:19:31) の編集履歴(バックアップ)
バイオニックコマンドー
【ばいおにっくこまんどー】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ゲームボーイ
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発売元
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カプコン
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開発元
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水口エンジニアリング
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発売日
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1992年7月24日
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定価
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3,568円(税込)
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配信
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バーチャルコンソール 【3DS】2011年11月16日/411円
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判定
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良作
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バイオニックコマンドーシリーズ
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概要
アーケードゲーム『トップシークレット』をFCにアレンジ移植した『ヒットラーの復活 TOP SECRET』をさらにGBでリメイクした作品。
基本的にはFC版の『ヒットラーの復活』とほぼ同じ内容。ジャンプを排除し、代わりにワイヤーによる移動と攻撃を全面に押し出した『ワイヤーアクション』がテーマ。
しかし無数の変更点・改善点が存在するのが強みとなっている。
なお、『バイオニックコマンドー』という名称は元々『トップシークレット』及び『ヒットラーの復活』(以下「FC版」)の海外版タイトルであり、日本で発売された作品のタイトルに使用されたのは本作が初めて。
これが契機となり、本作以降のシリーズ名称は国内外を問わず全て『バイオニックコマンドー』で統一されている。
FC版からの変更点
ナチス要素の徹底排除
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FC版のヒットラーに相当する人物「マスターD」は存在自体がカットされ、代わりに「ワイズマン総統」が順当にラスボスへ昇格することとなった。
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元々ナチス要素やヒットラーはどうにでもできる程度のものであったため、海外進出がスムーズになる点などを考慮しても削除が妥当な判断と言える。
キャラクターデザインおよび、背景デザイン
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対象年齢を引き下げるためか、全体的に「80~90年代前半のSFアクションアニメ」のようなライトなものに徹底変更されている。背景デザインは「ダーティペア」などにイメージが近いか。
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主人公であるFF部隊隊員ラッド・スペンサーはFC版の面影が全く残っていない最も大胆な変更が施されている。
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FC版のラッド・スペンサー大尉は、茶髪のチクチク頭、サングラス、バズーカ、腰に下げたワイヤー、タスキのように軍服に巻いた弾丸の帯…という重装備でいかにも屈強な、当時のカプコンらしいデザインだった。
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それが、
赤い全身タイツにメタリックなボディアーマー、顔に半透明バイザー、そして武器はロックバスター風の細身男性
となった。
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救出すべきキャラであるスーパージョーもデザイン変更が著しく、FC版のみプレイした人は必見。
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「ラッド以上の歴戦の勇士」であると一目で分かる点は共通しているが、現役の戦士であるというニュアンスが強くなっている。
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敵の大ボスであるワイズマン総統も「ステレオタイプの偉そうな中年軍人」から「SF的(+微妙にファンタジー)ないかにもな悪の帝王」風のデザインに変貌。ラスボスとしての威厳自体はバッチリである。
ストーリー面
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基本的には同じだが、ストーリーの肝である「アルバトロス計画」の内容にもアレンジが加わっている。
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ネタバレになるため詳細は省くが、キャラデザインに合ったSFアクション的な変更だと言える。
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また、ラッドのライバルとなる敵幹部「ライル・ハインダー」が追加され、より一層SFアクションらしいノリが活かされている。
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ストーリー上の変更点の一部は、後に『ヒットラーの復活』XBOX360・PS3アレンジ版『バイオニックコマンドー マスターD復活計画』に逆輸入された。
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これらの変更により最終ステージ最後の戦いも、ハリウッド的なものから漫画ヒーロー的な雰囲気に変わっている。ぜひともプレイして自分の手で戦いに決着をつけて頂きたい。
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ステージとしては、縦スクロール面が削除された。
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マップ上を移動する敵部隊と接触した場合に突入する乱入ステージは容量の都合か、FC版と異なり通常と同じ横スクロールのまま。
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途中現れる大型敵を撃破することでコンティニューアイテムが入手出来るのは同じ。
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ちなみに、初期状態でも3回のコンティニューが可能。うっかり乱入ステージのことを忘れたままゲームオーバーになっても、即振り出しに戻るということは無くなった。
評価点
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ゲームシステム・バランス面の調整箇所が膨大
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プレイヤー周りだけでなく、ゲーム内におけるほぼ全ての要素に手が入っている。
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しかも各内容が、オリジナルであるFC版をやり込んだプレイヤーにとって変更した意図を良く理解(納得)できるものばかりで、作り手のセンスが窺える。
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ワイヤーアクションの自由度が大幅にアップしている
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主人公・ラッドの落下速度が大幅に低下したため、咄嗟のアドリブや無茶が利かせやすくなった。
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また、FC版では超高等テクニックだった「ワイヤーを真上に引っ掛けた状態から一度切り離し、すかさず斜め上に伸ばして振り子状態に戻る」というテクニックも普通に行えるようになった。
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これはゲーム後半では必須のテクニックであり、親切にも説明書にまで詳細な手順が記載されていて好印象。
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初期ライフが多くて遊びやすい
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本作では最初からライフを3メモリ所持しているため、初期状態で攻撃を受けると一発アウトだったFC版よりはかなり取っつきやすくなったと言える。
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なお、敵が落とすアイテム「カートリッジ(薬莢)」を一定数集めることでライフのメモリが増えるというFC版の仕様も残っている。
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パスワードコンティニューの追加
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アクションステージをクリアするとパスワードを入手することが可能。クリアステージ、所持アイテム、経験値が記録される。
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縦4×横6のマス目に三種類の記号+空欄を組み合わせたもので、後に同社が開発した『ロックマンワールド4』でも同様の物が採用されている。
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これによりパスワードさえメモしておけば、コンティニュー回数を使いきってゲームオーバーになっても最初からということもなく、またゲームの中断再開も容易になった。長時間プレイを想定していない携帯ゲーム機ならではの良仕様といえる。
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なお、中立エリアやゲームオーバーでは新パスワードを取得出来ない仕様となっている。
賛否両論点
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キャラクターデザインの変更
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FC版からの最大の変更点であり、FC版のファンからは「渋くて男臭い雰囲気が無くなって台無し」「コロコロかボンボンの漫画みたいで安っぽい」と否定的な意見も多い。
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しかし、グラフィックの完成度はかなり高い部類に入る。「90年代前半のSFアクションアニメ風」というのも、実際に発売されたのが1992年であることを考えれば時代に合わせた妥当な変更だとする肯定的な意見も決して少なくはない。
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少なくとも当時の子どもたちにとって「ムキムキマッチョの厳つい歴戦の男」よりは「サイバー的装備を身につけたスマートなヒーロー」のほうが主人公として感情移入できたのは間違いなく、GBプレイ層を対象にした良改変だと言える。
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通信室の仕様変更
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FC版では交信・盗聴を一回行う度に強制的に通信画面から出てしまうが、本作ではそのまま連続して行うことが出来るようになった。
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盗聴を行い敵に見つかった場合も、警報が鳴って敵が来るまでに演出が挟まるようになったため、FC版のように心臓に悪い思いはしなくなった。
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交信や盗聴を行う相手はFC版では全て男性だったが、本作では女性兵も登場するようになった。
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通信室では武器と通信機を変更することも可能に。
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ただし、通信機をその場で変更出来るということは、間違ってエリアに合わない通信機を持ってきてもその場で持ち替えれば良いだけということになり、通信機が複数存在する意味が「単なるストーリー進行上のフラグ」程度のレベルに薄れてしまったとも言える。
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またアイテムは変更出来ないため、回復薬を使った上で別のアイテムに変更といった事は不可能で、その点は甘くない。
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武器バランスの調整
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FC版では断トツの性能を誇ったロケット砲(本作では「グレネードランチャー」の名称で登場)の威力が大幅に低下。
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一応他と比べればまだ高い方だがFC版のような高威力ではなくなり、連射力の無さのせいで貫通力の高さが裏目に出るという弱点が浮き彫りに。
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バランス面では致し方無い類の調整だが、場面により他の武器の使用も検討する必要が出てきた。
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これとは別に最後に手に入る選択可能な武器がどうしようもない最弱武器というのは、FC版から引き継いでいる要素ではある。
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FC版と異なり、最終局面で渡される武器が最後まで使用できるようになった。敵は1体しかいないが、圧倒的な威力を確認できる。
問題点
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ゲームバランス調整で序盤の難度が下がりとっつきやすくなった事は良いのだが、反面、後半の難度は相当上がっている。
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些細なワイヤーアクションのミスが即転落ミスや大幅なタイムロスにつながる局面が多い。
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パッと見ではワイヤーで渡れるか分かりにくいポイントも多いのでトライ&エラーが求められる。
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FC版同様、アイテムが1つしか持てないのが惜しいところ。
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自機の基本性能を底上げ出来るもの、1度だけ任意のタイミングでどこでも回復できるものなどがあるが、回復アイテムが滅多にステージに登場しないので、回復薬以外のアイテムを選びにくい点は改善されなかった。
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「カートリッジ」についても、画面サイズなどの都合上FC版よりかなり大きくなり、小さいブロックの向こうからワイヤーで回収しようとしてもブロックに引っ掛かって落ちてしまうため、結局自分で取りに行かなくてはならなくなってしまった。
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武器・アイテム選択画面で説明書きが一切無い。
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FC版と同様。この点は不親切なままである。
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しかもアイコンはSFなデザインとモノクロ4階調の色彩が足を引っ張り、どれが何なのか見ただけではFC版以上に判別しづらくなってしまった。
総評
名作との誉れ高い原作『ヒットラーの復活』にもっと磨きをかけようという、開発陣の意気込みが伝わってくる力作。
未経験者はもちろんのこと原作ファンにこそプレイして欲しい作品である。
ストーリー面も強化され、単体でもGB屈指の名作アクションゲームだと言えるクオリティを誇る。
またパスワードコンティニューのおかげで原作よりリトライがしやすくなっている。後半の難易度上昇も、これが採用された事による調整であるとも考えられる。
バーチャルコンソール版(後述)ではパスワードよりやり直しが容易で根気さえあれば十分クリア可能なため、原作ゲームを知らない人もぜひ。
余談
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開発元の水口エンジニアリングは『ロックマンワールドシリーズ(2を除く)』の開発も担当しており、本作のSEが後にあちらへ流用されている。
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また、本作のBGMにはロックマンを思わせるものがある。
移植
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2011年11月からニンテンドー3DSのバーチャルコンソールで配信が始まった。
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説明書は起動画面、もしくは任天堂公式のソフト紹介ページにあるPDFファイルで閲覧可能。
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3DSのバーチャルコンソールの仕様により、いつでもセーブ・ロード・リセットが可能。パスワードをメモする必要もなく、ミスした時のやり直しも容易なのでオリジナルよりも更にクリアしやすい。購入が容易なのも利点である。この機会にいかがだろうか。